影浦雅人の『兄貴』   作:瑠威

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 あ…ありのまま、今起こったことを話すぜ!
な……何を言っているのか分からねーと思うがおれも、何をされたのか分からなかった。……頭がどうにかなりそうだった…。催眠術だとか超能力だとかそんなチャチャなもんじゃあ断じてねえ。だってよォ、おれはハーメルンを開こうとしたんだッ! なのに、何故pixivを開いていたんだッ!!? これはよォ、誰の仕業なんだ…おれは馬鹿だからよォ、兄貴に面倒みてもらわねーと分からねーんだ。推しは全員死んで逝ったんだッ!!

 まあ、簡単に言うとJOJOにハマってました。


第35話

 

 病院に強制送還された次の日の朝、静雅は鬼と形容しても間違いなしの看護婦長にそれはそれは怒られた。流石「長」をつけるだけの実力はある。40代ぐらいのふくよかなおばちゃんだった。以下、抜粋。

 

 

「あなた!! 自分がどれだけ重症患者か分かってないんですか!? 一時期は本当に生死をさ迷っていたんですよ! それに2週間も目を覚まさなかったんです。そんな身体で出歩くなんて──トリガーを使用したから問題ない? 何を言っているんですか!! 私はねぇ、ボーダーのことなんて全然詳しくありませんよ。嵐山隊ぐらいしか知らないただの一般人です。でもね、医療に関わる端くれとして分かるんですよ。そんなボロボロの身体で無茶しても何もいいことなんてないんですよ。そのトリガーとやらがどれだけの力を発揮したとしても、あなたの怪我をなかったことには出来ないでしょう。出来るんですか、ええ!! ほら、出来ないじゃないですか! なのに何を偉そうに。それに、そんな不機嫌そうな顔をしたってお説教は止めませんからね! だいたい自分の怪我の具合も分からない人に街が──」

 

 とにかく、それはもう長かった。約1時間に渡る説教は中々看護婦長が帰ってこないと顔を出した医師が止めてくれるまで続いた。それでも尚、止まることを知らない看護婦長は医師が呼んだ応援(他の看護婦達)に引き摺られてその場を退場することとなる。

 

 そんな引き摺られて退場して行った看護婦長達と入れ替わる形で風間を除く風間隊の面々が病室に入ってきた。また脱走されたらたまったもんじゃないと拘束される形で寝そべっている静雅を見て菊地原が「うわ…」と声を漏らす。歌川と三上は苦笑いを見せた。

 

 

「風間は?」

「静雅さんの脱走を手伝った、見つけたのに病院に連れ戻さなかった等々の理由により(テイ)の反省文を書いてます」

「風間さんって意外とお堅い部分あるから、自主的らしいですよ」

「うえ、マジか」

「ちなみに巻き込まれて迅さんも反省文書いてます」

「静雅さんは書かないんですか? 脱走した張本人でしょ」

「書かねーよ。誰がそんな面倒なことすっか」

 

 

 ちなみに風間隊の面々は誰一人として引き摺られて退場した看護婦長を話題には出さない。どうやら見なかったこととして処理するつもりらしい。

 

 

「それにしても静雅さんはたんこぶ作ってないんですね」

「あ?」

「風間さんはたんこぶ作って帰ってきましたよ」

「どれだけ石頭なんですか」

「たんこぶ作った本人よりも菊地原くんの方が痛がってたよね」

「ねえ、余計なことは言わなくていいから」

 

 

 三上がからかうように言うと菊地原は口を尖らせながらぶうぶうと文句を言う。状況が理解出来ていない静雅が首を傾げると歌川が「風間さん、医務室に行かないでうちで手当したんです」と付け足した。それを聞いてなるほど…と静雅は頷く。

 

 

「でも、意外と元気そうで良かったです」

「一時期は本当に危ない状態だったらしいですから…」

「カゲさんとか心ここにあらずってカンジだったし」

 

 

 「犬飼先輩を前にしても舌打ちもしなければ罵倒もしないって荒船先輩が気味悪がってました」とは歌川談である。それは中々に重症だ。静雅はまだ家族とは会えていないが、風間から聞いた話では小難しいなんとか手術をしている時、雅人は心配そうにうろちょろうろちょろとそこらを歩き回っていたらしい。家族の中でも一番落ち着きが無く、徹夜してまでも静雅が目を覚ますのを待ってたりと結構心配をしてくれていたらしい。

 

 

「でも影浦先輩もやっぱり静雅さんの弟ですよね。ヒカリちゃんの独断行動を怒るだけ怒ったあと、小さく「本当に生きててよかった」って力の抜けた声で言った時は私もなんかうるっと来ちゃいました」

「ていうか泣いてたじゃん。ゾエさんも号泣してたし」

「仁礼さんも号泣だったよなあ」

「ユズルくんも涙目だったし」

 

 

 どうやらヒカリのことは静雅が寝ている間に雅人達が灸を据えてくれたらしい。雅人達が言ってくれたのなら自分は何もヒカリに言うまいと念頭に置き「そうか」とだけ言った。

 

 

「元気な顔を見れて良かったんですが、今日はそれだけのために来たんじゃないんです」

「あ? じゃあ何しに来たんだよ」

「論功行賞ですよ。要するにボーナスですって」

「ふーん」

「興味なさそうですけど、静雅さんの名前も入ってるから一応教えとけって風間さんに念を押されてるんですよ。聞き流してくれていいですから、小耳ぐらいには挟んどいてください」

 

 

 静雅があまりにも金に興味がないので見かねた菊地原が「もう少し金の使い方を〜」と金のありがたみについて語り始める。そんな菊地原を遮るようにして三上が論功行賞を言っていく。ちなみに、静雅は特級戦功らしく風間隊は一級戦功なのだそうだ。そして意外にも諏訪隊も一級戦功なのだと言う。

 

 

 

「まあ、捕虜を本部まで送り届けてますから当たり前ですよね」

「私は特級でもいいと思うんですけど」

「上には上の考えがあるんでしょ」

 

 

 ちなみに、独断行動をしたヒカリは二級戦功を貰えたのだとか。独断行動とはいえ、ヒカリは捕虜扱いとなったエネドラと中々に仲がよろしくなり、今では開発局で雷蔵を入れてゲームをする仲だという。そのため、まあ戦功をあげてもいいんじゃないかと主に鬼怒田と忍田が推薦したらしい。ちなみにエネドラの中の「仲間」という定義がミラの一件で壊れたのか、今回の遠征メンバーについてゲームで一勝ちにつき1個漏らして行っているとか。エネドラ自身もこの国のゲームに疎いため、ヒカリや雷蔵で勝てるようで頼みの綱国近を出すまでには至っていないそうだ。

 

 

「そういや、玉狛にネイバーが一人増えてるけどお前ら何か知ってんのか」

 

 

 静雅は捕虜で思い出した。サイドエフェクトで感じ取った玉狛にいるネイバー。玉狛という時点で静雅は警戒していない。どうせ迅が何かを画策しているのだろう。

 

 

「さあ。僕達は何も」

「風間さんなら知ってると思うんですけど」

「玉狛にも捕虜がいる、ってことですかね…」

「まあ、玉狛には迅もいるしいざって時は肉体の信用が出来る木崎も居る。何とかなるだろ」

「…木崎さんに対する肉体の信用度……」

 

 

 ちなみに、まだ静雅は1人目のネイバーにすら会えていない。迅からは「面白いやつだから時間ある時に会ってあげて下さいよ」と太鼓判を貰っているのだが、中々にその時間が作れていない。というか会うのが面倒くさいとも思っている。あっちから会いに来るならまだしも、なぜ俺から会いに行かにゃならんのだ、勿論それは口に出していない。これを口にだしたら風間が強制連行で空閑の元へ連れていくか、迅が空閑を連れてくるだろう。

 

 

「そういえばボーダー、記者会見したんですよ!」

「…懲りねぇ奴らだな」

「誰も静雅さんをもう1回記者会見に出そうとかしてませんから。終わった話だし」

「あれは三雲くんが凄かったよなあ」

 

 

 歌川の言う「三雲」が静雅にはピンと来ない。誰だソイツ。そんな奴居たか…?と記憶を探るが、静雅の頭の中には忌々しい太刀川や五月蝿い生駒、その他三馬鹿ぐらいしか出てこない。あ、シスコンのやつか…?

 

 

「三雲くんは風間さんに一勝した人ですよ」

「ああ、ああ…ソイツか」

「…もうちょっと他人に興味持ちましょうよ」

 

 

 確かに少し前、風間がB級の誰かに負けたと言うのを太刀川に聞き、風間を揶揄った記憶が静雅にはあった。誰に負けたのかまでは聞いていなかったし、聞いていたとしても記憶していないだろう。何故なら、興味のない他人までは静雅は覚えないからである。

 

 

「ちなみにシスコンのやつは?」

「それは三輪くんだと思います」

「三輪先輩に殺されますよ」

「一度やられてきた方が正常な頭に戻るんじゃないの」

 

 

 シスコンで通じる三輪のシスコンぶりは見ていて晴れ晴れとする。あそこまでネイバー絶許を掲げるのは些か心配にもなってくるが…まあ、あの手のやつは無駄に口を出しても聞き入れはしないだろうし、逆上してくるのがオチだ。関わらないのが賢明な判断だろうし、普通に面倒くさい。

 

 

「三雲くん面白いんですよ! 遠征のことバラしちゃったんです!!」

「…組織拡大もいいことだけじゃねぇよな」

 

 

 秘密を知り過ぎるとどこからかその秘密は漏れ出すものである。やはり馬鹿なやつはいる、ということだろう。

 

 

「でもまあ、色々と流れは変わったンか…。じゃあ俺が遠征に行かねェ未来は──」

「ありませんよそんな未来」

「それはないと思います」

「何がなんでも遠征部隊に入っちゃうんじゃないですかね…」

 

 

 被せるようにして言われた否定の言葉に静雅は項垂れた。静雅のサイドエフェクトは遠征で重宝される。しかし、その代償は重いため、静雅は遠征に行きたがらない。いつも遠征が近づくと雲隠れをしようとするため、風間隊の面々は苦労しているのだ。

 

 

「チッ。もっと頑張れや三雲ォ…!!」

「「「(んな無茶な…)」」」

 

 

 なんとも言えない雰囲気が病室を支配する。微妙な間にどうしたものかと歌川や三上が悩んでいると、病室のドアがノックされた。

 

 

「誰だ」

「俺だよ」

 

 

 病室に顔を出したのは静雅の双子の兄だった。手元には着替えなどを入れたらしきバックを持っている。兄は静雅の顔色を見ると安心したように息を吐いた。

 

 

「病院を抜け出すぐらいだから元気だとは思ってたけど、うん。顔色良さそうでよかった」

「雅人は」

「朝、静雅が目を覚ました連絡来たからそれ伝えてとりあえず寝かせた。目ェ覚ましたよって伝えたら安心したらしくて自分から寝に行ったよ」

 

 

 「ああ、抜け出したことは伝えてないよ。雅人にも母さんにも」そう兄は言った。父の名は出していないので、父には伝えたのだろう。

 

 

「三上ちゃんも歌川くんも菊地原くんもおはよう。わざわざありがとね、こんな朝早くから」

「いえいえ、全然!! 私たちが来たくて来てるだけですし!!」

「逆にこんな長時間お邪魔してすみません」

「僕たちそろそろ帰りますよ」

「え? いいのに。もっとゆっくりしていきなよ」

 

 

 兄はお見舞いのフルーツを片手に言うが、3人はそれを拒否し「お大事に」と言って病室を出て行ってしまった。去っていく3人の後ろ姿を見届けた後、兄は言う。

 

 

「あの3人と蒼也。後…迅くんに諏訪くん、木崎くん、緑川くん、米屋くん、出水くんに18歳ズ。たくさんの人達がお前のお見舞い来てくれたんだ。元気になったらちゃんと礼を言いにいけ」

「んなこたぁ言われんでも分かってるわ」

「…どうだか」

 

 

 「静雅は照れ屋だからなあ」と兄は笑う。

 兄は近くにあった椅子に腰がけると「りんご食べるだろ?」と皮を剥き始めていく。

 

 

「俺はさ、お前たちがボーダーに入ったこと良かったと思ってるよ。蒼也しか友達のいなかった静雅に、ゾエしか友達のいなかった雅人。お前たち二人の友好関係が広がってくれて嬉しい」

 

 

 サクサクとりんごの切れる音がする。

 

 

「でもさ、今回みたいなことが続くのであれば俺はボーダーを辞めて欲しいって思うよ。機密事項とかがあるんだろ、蒼也からも言われた。でも進む道によってはお前が死ぬ未来があるのかもしれないとも言われたよ」

「……」

「でもさあ、俺や父さんがお前らにボーダー辞めろつっても話を聞くとも思えねぇんだよなあ。だからさ、覚えとけよ静雅」

 

「──もし、ボーダーの戦いでお前が命を落としたとして、お前の死に逝くときお前が晴れやかな心情だったとしても。遺された俺たちはお前を思い本当に晴れやかになることは無いと」

 

 

 「それだけは覚えておけよ」そう言って兄はりんごをひとかじりした。

 

 

 





 












PS.前書きだけを見たら形兆兄貴が推しみたいに見えるけど別に違うからねッ!! オ…オレ…、この小説を完結まで持ち込んだら学校に通うよ。更新速度遅えーのに完結出来るのかって他のやつにバカにされるのも結構いいのかもな…。

ちなみに私の最推しはイギーという犬です。最初のしわくちゃな顔も、後のキリッとした顔もどちらも好き。いつか私は彼と結婚します。ペットショップ(天敵)とヴァニラ・アイス(変態)は許さない。ディアボロはジョルノに凄い仕打ちを受けているのでギリ許します。ナランチャはあくまで二推し。

太刀川、おたおめ! 君のおたおめ閑話はありません

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