影浦雅人の『兄貴』   作:瑠威

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先週は投稿出来なくてすみません。書き上げていたのですが普通に予約投稿するの忘れていました。連チャンで投稿するので許して!

連投その1!!


第4話

  

    授業をちゃんと受ける気なんて彼にはなかった。

    小学1年生の勉強なんて勉強では無いし、そんな授業を受ける時間は彼にとって、ただただ眠くなるだけだ。

 

    「1+1は?」とか「あの書き順は?」とか彼は既に知っている。ひらがなはもちろん、カタカナ、漢字、英語だっていけるのに今更何を教えてもらうというのか。

    だから彼はサボることに決めた。サボり場所なんて見つけていないけれど、退屈な時間を繰り返すぐらいならば、家にでも帰った方がマシだ。

    …まあ、それをすると後々面倒になるのは目に見えているのでさすがの彼もやらないが。

 

    勢いで教室から飛び出してきたのはいいものの、どこに隠れようかと彼は考える。ここはやっぱり、定番の『屋上』だろうか。

    小学校の屋上が開いているなんて普通は危ないので開いているはずがないが、ものは試しだ。普通の階段と比べると小さな階段を上り、屋上へと続く階段を上りきった。

    ドアノブを勢いよく捻ってみれば、物の見事に開いてしまうものだから拍子抜けしてしまう。

 

    おいおい、この学校のセキュリティ大丈夫かァ?  

    彼がそう思ってしまうのは仕方ないことだ。これが過保護な保護者や、PTAにバレればこの学校はかなりやばくなるんじゃないだろうか。少なくとも、校長はどこかに飛ばされるに違いない。

 

    最も、サボり場所をわざわざチクるようなマネを彼はしないし、ここを失ってしまったらまた1から探さなくてはならなくなるので、誰にも言うつもりは無い。彼に自殺願望などもないので、バレさえしなければ問題になることもないだろう。

 

    ドアを開けて、屋上に出てみれば暖かな春の風が彼を包む。気持ちよさそうに彼は目を細めると、服が汚れることも気にせず、寝転んだ。

    彼が寝転んだ場所はちょうど日陰になっており、眩しくない。今が春だということもあり、少し肌寒い気はするが、それだけで特に不満はなかった。彼は、以外にもこの屋上を気に入っているようだ。

 

    雨の日はさすがに使えないであろうこの屋上は、晴れの日だと抜群に相性がよく、彼は暖かな日差しと風に眠気を誘われていた。

 

 

    ウトウト    ウトウト

 

    彼の目が開いたり、閉じたりを繰り返す。最終的には眠気に負けてしまい、彼は寝てしまった。

 

 

 

 

  ***

 

「おい、おきろ」

 

 

    小学生にしては、低い声で呼ばれたような気がする。しかし、彼は聞き間違いだと思い、打ち合わなかった。

    何故なら、彼が今いるところは立ち入り禁止な屋上であり、そんなところに小学生が来るはずがないからだ。先生だとしたら、声変わりも終わっているはずなので、もっと低いに決まっている。でも、先程の声は声変わりどころかまだ幼い声で、明らかに小学生の声だ。

 

 

「にどねをするな。じゅぎょうにでろ。……おい、いいかげんにしろよ」

 

 

    ゆさゆさと肩を揺すられ、ようやく自分に話しかけているのだと彼は理解した。そして、理解したと同時に飛び起きる。

 

    クリクリとした赤い目に、短めな黒い髪。服は小柄な彼のサイズとあっていないのか、かなりブカブカだ。そんな彼は、少し不機嫌そうにこちらを見ていて、その顔はどこかで見たことがあるような気がした。

 

 

「…誰だ、テメェ」

 

 

    気持ちよく寝ていたのを無理矢理起こされたことと、何故コイツがここにいるのかと状況を理解できているようで、理解できていない彼は不機嫌な声で問うた。

    そんな彼の不機嫌な声に怯えることなく、目の前の少年はキョトンとした顔をした後に何言ってんだコイツ、みたいな表情に変わった。

 

 

「かげうらのとなりのせきの、かざまそうやだ。となりのせきのクラスメイトのなまえぐらい、おぼえておけ」

 

 

    なんか、偉そうだなコイツ。

    それが第一印象で、隣の席と聞いてどうりで見たことがあるような気がするわけだと思った。

    小学校に入学して、かれこれ1週間ほど経つが、彼は未だにクラスメイトの名前を1人も覚えていない。もちろん、威張って言えることではないし、彼の友達のいなさが伺える。

 

 

「ンで、なンの用だよ」

「おまえはいつもじゅぎょうをサボっているな」

 

 

    風間は小学生にしては、喋り方が大人っぽかった。表情も、どちらかといえば大人びていて、服のサイズ以外には違和感は感じられない。

 

 

「ああ。そうだな。それがどうしたァ?  テメェに関係ねェと思うンだけどォ?」

 

 

    茶化すような喋り方。風間も少しイラッとした表情をした。もし、彼が喋りかけたとしてこんな返しをされれば、殴り掛かるに違いない。それぐらい自分でもウザいとわかっての喋り方だ。遠回しに早くどっか行け、という念も込められている。

 

 

「あにに、たにんをしりたいなら、おなじこうどうをしろといわれた」

「はァ?」

 

 

    急に何を言い出すンだァ、コイツは?頭が沸いたかァ?

    そう彼は思ったが、さすがに声には出さなかった。泣かれたりでもしたら面倒だからだ。

 

 

「おまえは、いつもじゅぎょうをサボっているが、おれはそんなおまえにきょうみがある。だから、いっしょにサボってみようとおもってここにきた」

「あ゙?  興味…?  ンなもンもつンじゃねェよ。ウザってェな」

「もってしまったものはしかたない。おれは、こうきしんおうせいなんだ」

「知るかよ」

 

 

    正直、早く消えて欲しかった。一緒にサボるなんて言い始めて、折角ゆっくりできると思っていたらこれだ。無理矢理起こされるし、変なのに興味を持たれるし、本当についていない。

    帰るつもりもないのか、普通に風間は地面に座った。

 

    もちろん、会話は続かない。当たり前だ。彼は風間に興味を示していないし、風間だって半ば無理矢理居座っているようなものだ。風間だけが静雅に興味を示しているという歪な関係に、会話のタネになるようなものはなかった。

 

 

「おまえ、こんなところにひとりで、ひまじゃないのか?」

 

 

    数十分経った頃だった。風間がふと、静雅に聞いた。静雅は考えることなく、即答で答える。

 

 

「別に。好きでここにいる」

 

 

    静雅は1人でいることに慣れていた。転生する前は、喧嘩などに明け暮れていて──正直、今もあまり変わってはいないのだが──1人でいることに慣れているのでどうやって時間を潰せばいいのか熟知していた。

 

 

「そうか」

 

 

    それ以降の会話はなかった。

    1限目から5限目まで、2人は屋上でサボっていた。

    会話がなかったのに、不思議と嫌な感じがしなかったので、彼は表情には出さないが、少しイラついていた。人と一緒にいてホッとするなんて、今世の家族以外なかったので、戸惑っていたのだ。

 

 

「けっ」

 

 

    キーンコーンカーンコーン

    5限目の終わりのチャイムがなった。1年生は5限しかないので、この後帰りの会を受けたら終わりだ。

    風間が立ち上がる。それに少し遅れて静雅も立ち上がった。

 

 

「かえりのかいはいつもでているな」

「親への連絡事項があったら面倒だろォ」

 

 

    パサパサと風間はおしりについた砂を叩きながら聞いた。至極当然みたいな感じを出して静雅は言っているが、授業をサボっていると母親にバレた時に「サボるのは勝手だけど、連絡事項とかちゃんと伝えなさいよ?  静雅の口から聞かなかった連絡事項はたとえお兄ちゃんから聞いていても、静雅には教えてあげないし、必要な書類とかわざわざお母さんが先生に貰いに行ったりしないから」と言われたので出席しているだけだ。

 

 

「そうか」

 

 

    ふっと鼻で風間は笑った。何も知らないはずなのに見透かされているこの感じがイラつくと、彼は思った。

 

    階段を降りて、1階まで2人は降りる。教室に入れば、クラス中の視線が集まり、風間は首を傾げ、静雅は舌打ちをした。

 

 

「風間君!」

 

 

    「どこに行っていたの!」担任は静雅を睨みながら怒鳴り、聞いた。どうせ担任は静雅に誑かされたとかそんなことを思っているのだろう。もちろん、事実は違う。

    しかし、そんな雰囲気を感じ取れなかった風間は真剣な目で「サボっていました」と担任に言った。

 

    馬鹿正直にも程があると静雅は思う。このまま、静雅のせいにしておけば何もかも楽に済んだだろうに、何故馬鹿正直に言うのか。静雅の中で風間は頭の硬いバカ真面目だとインプットされる。

 

    風間の口から事実をつけられた担任は一瞬ポカーンとした表情を見せると、「後で先生の所に来なさい!」とまた怒鳴った 。

 

    正直、静雅は担任のことが好きではなかった。怒鳴るだけ怒鳴り、こっちが理解しなかったら放置だ。放置して、静雅達に何かあったら彼女の問題になるというのに、彼女はそれを理解出来ていないらしい。見た目からして、まだ20代前半なので、経験不足なのだろう。

 

    担任の命令によって、席につかされた子供たちは静かに担任の話に耳を傾ける。そのおかげもあってか、10分もしないで帰りの会は終わった。

    終わると速攻で静雅は教室を出る。このまま教室にいても退屈なだけだからだ。担任に呼び出されていた風間が少しばかり気になるが、あれは自業自得だ。勝手に隣に居座っていたのだから、彼は何も悪くはない。

    青になった横断歩道を渡ってそんなことを考えていれば、彼は何かに気がついた。

 

    彼は普通の人とは少し違う。

    だから、後ろをコソコソとつけてきている()()に気がつくのも遅くはなかった。

 

    静雅は足を止めた。

    そして、また歩き出した。静雅の後をついてきているということは、風間は担任の呼び出しをバックれたらしい。あんな真面目そうな顔をしておきながら、意外にも風間も中々の悪のようだ。

    そんな彼は少しニヤケながら、風間につけられているとわかっていてなお、彼は足を止めることなく、風間に指摘するわけでもなく、家に帰った。

 

 

 

 

  ***

 

    ドアノブを捻り、玄関に入る。と、同時に静雅は腹に鈍いタックルを受け、倒れそうになった

 

 

「おかえり!  にいちゃん!!」

 

 

    静雅にタックルをした犯人は弟の雅人だった。雅人も人とは少し違っていて、そのせいか、外に出たがらなかった。おかげで、保育園や幼稚園に行けていない状況がこの前まで続いていた。

    頑なに幼稚園に行きたくないと雅人は言い張り、結局幼稚園に通わせることを諦めた両親は少しだけだが、店の手伝いをさせているらしい。

 

    さすがに重要な仕事を任せられるわけでもないので、お手伝いと言っても少しお客さんの相手をしてもらうだとか、簡単なことだ。店に来るのは大体、見慣れた常連だし、雅人に相手させるのも常連なので、雅人も悪い気はしないだろう。雅人本人もやりがいを感じているらしく、いつも嬉嬉として何を手伝ったのかを静雅に話してくれる。

 

    静雅の下校時間が近づくと雅人は玄関で静雅の帰りを待つのだという。時々、静雅よりも早く兄が帰ってくることがあり、その時の落胆と言葉の毒が凄いと1度兄からクレームが来たこともあった。雅人にそんなに懐かれて羨ましいとも言われたが、安定の無視だ。

 

 

「にいちゃん!  かくれんぼしよう!」

「ほォ…。俺に隠れんぼを挑むか」

「むぅ!  きょうこそは、にいちゃんにかつぞ!」

 

 

    静雅は特殊な力のおかげで隠れんぼでは無敵だ。隠れ方によっては一日中探したとしても見つけられないであろう程には自信がある。

    雅人も特別な力を持っている。雅人が言うには、何かがチクチクと刺さって来るらしい。が、どうやらそれは相手が雅人を認識していた時に限るらしく、隠れんぼでは役には中々たたない。見つける側なら勝機があるのだが、隠れる側となると幾分か不利である。

 

    そんな2人でやるかくれんぼのルールは至ってシンプルで、家から出てはいけないだとか、お店の方に行ってはいけないだとか、物を壊したりしてはいけないという感じだ。

    制限時間も決められていて、時間は5分。基本、探す側、隠れる側両方に有利な静雅が勝ってしまう。全くもって大人気ない。そんな隠れんぼを体力には自信がある2人は、5セットしたりする。

 

 

「静雅!  帰ってきたなら、手を洗いなさい!  雅人!  静雅の邪魔をしないの!  ちょっと店混んでるからお兄ちゃん呼んで静雅も手伝って!!」

 

 

  いざ、かくれんぼが始まろうとしていたのに、まさかの母親から呼び出しをくらってしまった。静雅と雅人は顔を見合わせ、肩を落とした。漸くこの決着が付けられると思ったからだ。

 

 

「…また今度やろォな」

「…うん!」

 

 

   少しぶーたれた様子の雅人だったが、静雅が頭を乱雑に撫でてやれば嬉しそうな顔へと変わった。その変化を見て、静雅も嬉しくなった。

 

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