影浦雅人の『兄貴』   作:瑠威

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今週は諦めてたって?
あたいも諦めてたさ。でも、感想欄で「風間じゃなくて迅だと思ってた」って言われて、風間ポジションが迅だったら、それはそれで面白そうだなあって構想練ってたら気がつけば書き上がっててびっくりしたよね!
ちなみに、迅の方は需要があれば番外編で出そうかなって思ってるから、みたいなって思った人は感想欄に一言「需要ある」って言ってくれ!  
気が向けば書くかもしれない!!


第6話

 

    ピピピピと高音の機械音が鳴る。

    その音の正体である、体温計の数字を見て母親は残念そうな顔をした。

 

 

「39度。風邪ひいちゃったわね。…折角、今日はお兄ちゃんから聞いてた静雅のお友達を家に連れてきて貰おうと思ってたのに」

 

 

    残念そうに目を伏せる母親を見て、静雅は戸惑った。静雅は、友達を作った覚えが全くないのだ。しかも、その嘘情報が母親に渡っているという事実、そして思い出した。

    昨日機嫌があんなに良かったのはそれが原因か、と静雅は一瞬にして理解した。多分ではあるが、静雅と雅人がお使いに出かけている間に、静雅が居ないことをいいことに兄から何やら吹き込まれたのだろう。静雅の前で、そんなことを母親にリークできるほど静雅の兄は馬鹿ではないし、折角授かったこの命を無駄にしたくない筈だ。

 

    そして、静雅は風邪に感謝した。母親の言う『友達』が誰を指しているのかは分からないが、碌なヤツじゃないのは確かだろう。静雅の周りにまともな奴が居ないことは静雅が1番理解している。面倒事を回避できて良かった。

 

 

「お兄ちゃんまで風邪ひいちゃってもう。雅人はわかるけど、お兄ちゃんはどうしたのかしらね?  双子のシンクロ?」

「ゴホッ……ぜったい、ねてるあいだに、しずかにうつされた…しずかもおれのこと、すきだなあ」

 

 

    顔を真っ赤にして、嬉しそうに言う兄は途轍もなく気持ち悪かった。その赤い顔はなんだ。風邪のせいで赤いのなら許せるが、変な妄想でもして赤くしているのなら、ちょっとそこの市役所まで行って兄弟の縁を切ってもらわなくちゃいけなくなる。…市役所で兄弟の縁が切れるのかどうかは知らないが。

 

 

「気色悪いこと…言って、ンじゃ、ねェ……。殺すぞ…」

「こらこら、お兄ちゃんに殺すぞなんて言っちゃダメでしょ」

「…たった数分、早く生まれた…だけじゃねェか……」

 

 

    そもそも、たった数分早く生まれたアイツを「お兄ちゃん」と呼ぶのが理解出来なかった。勉強面や運動面で兄を静雅は勝ち越しているのだから、兄のメンツなんて丸つぶれだろう。なのになぜ兄と呼ぶ。ただの調子に乗ってるクソガキじゃないか。

 

 

「こほっ、くちがわるいなあ、しずか、は。よく…カザマくんはしずかと、なかよくなってくれたよね……ゴホッゴホッ」

「おい。ババアが言ってた友達って風間のことか…!!  ゴホッッ!ゴホッッ!!」

 

 

    聞き捨てのならない言葉が聞こえた静雅は、慌てて飛び起きる。射殺さんとする静雅の目は冷たく、容赦ない。病人のする目ではないことは確かだった。

    対して、「ババア」という聞き捨てならない言葉が聞こえた母親は光の速さで病人である静雅の頭に重い一撃を与えた。全くもって容赦ない女である。

 

 

「誰がババアじゃ!  もういっぺん言ってみろ!!」

「つーか、無視すンじゃねェ!! 目ェ合わせろや!!  こっち向きやがれ!!」

 

 

    兄の胸倉を掴み、前後に揺らす静雅と、静雅に「私はまだまだ若い!!」と怒鳴っている母親のその光景はカオス以外の何ものでもなかった。ギャーギャーと騒いでいた声が1階まで聞こえていたので、駆けつけた父によって事態は収拾したが、静雅の熱は2度上がった。

 

    父親のおかげで、カオス的状況を乗り越え、静かに寝ていた彼はどうにも嫌な予感がする。こんな時の嫌な予感ほど当たるものである。

 

    『風間蒼也』

    静雅にとって、いけ好かないチビの名前だ。風間はいつも静雅に付きまとい、静雅はそれから逃げるようにして姿を消す。

    風間の場所も()()()()のおかげでどこにいるかわかっているはずなのに、気がつけば見つかり無理矢理授業を受けさせられている。一時期は風間にも特別な力があるのかと疑ったが、別にそんな力は持っていなかった。完全なる静雅キラーだ。

 

    小学一年生のくせに、謎の威圧感。そして目付きや口の悪い静雅にビビることの無い度胸。後、無駄に整った顔。全てが静雅は嫌いだった。

 

    いや、()()()()()()()()のだ。

 

    影浦家では基本、両親は放任主義である。子供達がなにか過ちをおかしたら、怒ることは当然、罰だって与える。普通に殴られたりする。けれど、それは愛のムチであって仕方ないことなのだ。

    静雅が授業をサボっていることを両親は知っている。けれど、それに関して両親は怒らなかった。静雅が頭のいいことを知っているからか、子供達と考えが合わないと理解しているからかは静雅には分からない。とにかく、怒らなかったのだ。「静雅の好きなようにしなさい。授業を受けたくなったら、一緒に受ければいい」と言って。

 

    静雅は前世のこともあって他人からの干渉を嫌っている節がある。前の両親が干渉なんてしてくることがなかった為に、それが当たり前となり干渉されることを嫌うのだ。両親はそれを理解していた。だから、静雅が嫌がるギリギリの境界線を見極め、静雅を見守っていた。

 

    なのに、そんなことも知らない風間は土足で静雅の領域を荒らし、干渉してこようとするのだ。他人との付き合いはクソ喰らえと言う静雅に近づく物好きはお節介そのもので、それがまた静雅をイライラさせていた。

 

 

「…ねぇ、しずか」

 

 

    静雅の隣で寝ていた兄が静雅に話しかけた。もちろん、話しかけていた声は聞こえていたが、平然と静雅は無視をする。いつもの事だ。

 

 

「なんでしずかは、カザマくんをきらってるの? カザマくん、ふつうにいいこじゃん。しずかをじゅぎょうにだしてくれるし」

「あ゙? いい子だァ?」  

「カザマくんとね、すこしはなしてみたけど、ふつうにいいこだった。しずかにかかわろうとするひとって、どこかあたまのおかしいひとたちばかりだし」

 

 

    意外だった、とでも言うかのように兄は言った。確かに、静雅と関わる人間は大体静雅のカモであり、喧嘩という拳の話し合いでボコボコにされた使えない自称舎弟達だ。兄が「頭のおかしい」と称しても仕方ない。何せ負けると分かっていて挑んでくるのだから。

 

 

「…うぜェんだよ。アイツはいい子ぶってる訳じゃねェ。俺への好奇心、後は当たり前って言う常識で動いてンだよ。担任にいい子ぶってるわけでもねェ。授業に出るのが当たり前、宿題をするのが当たり前。その常識がアイツを動かしてやがる」

 

 

    だから嫌だった。まだ、大人の前でいい子ちゃんであろうとするのなら、むかつきはしただろうが、納得はできた。でも、風間は違う。

    何度も居合わせた筈だ。静雅が高学年の連中を1人でフルボッコにしている姿を。なのに、風間は静雅に畏怖することはなく、いつものように静雅の手を無理やり引いて授業に出させるのだ。

 

    1度、聞いたことがあった。「てめぇはどうしてそこまで俺に関わろうとする」と。風間からの返答は「当たり前だからだ」というなんとも面白みのない返答であり、やはり静雅の理解できない返答だった。

 

 

「アイツ、俺を見ても怯えねェンだ。1度、寸止めしたが、殴りかけたことがあった。でも、アイツは避けようとも、目を瞑ることもせず、俺を見てたンだ」

 

 

    有り得ないと思った。

    そして、少しだけ憧れてしまったのかもしれない。

 

    静雅は友達という存在が理解できない。最近、家族というものを理解し始めたばかりで、そんなものに構っている暇がなかったからだ。

 

    きっと、きっと。風間が静雅であれば、あの前世を風間が体験していたとしても、風間の周りには友が溢れていただろう。静雅が為すことの出来なかった『当たり前の日常』があっただろう。

 

    それは『もしも』の話に過ぎない。でも、力や頭脳では静雅が勝つであろうが、心の強さではきっと風間に負けている。それがわかっているからこそ、嫌いだ。

 

    小学一年生の小さな餓鬼に負けている自分が嫌い。

    自分のことを知ろうとしてくれている人間に素直になれない自分が嫌い。

 

    言い出せば、キリがない程に自分の嫌いな場所が出てくる。そして、出てくる度に風間のことも嫌いになっていく。

 

 

「べつに…ふかくかんがえなくて、いいとおもうけどなあ……」

 

 

    気がつけばコイツに話していた。風邪で頭が少しイカれていたんだろうが、確実に話す相手をミスった。コイツに話してもいいことなんてひとつもないだろう。

    それに、見透かされているような気分になった。全く胸糞悪い気分である。

    コイツは1を話し10を理解するなんてマネは出来ないので、全部を見透かしているわけではないだろうが、それでもコイツにだけは見透かされたくなかった。

 

 

「ふふ、おれはふたごのおにいちゃんだぜ?  わかるよ、すこしぐらいは」

 

 

    異様にドヤ顔がムカついたので、足を思いっきり蹴ってやった。




書き方が定まってないような気がする…
許してくれ……

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