Hello parallel World! Possibility of a carrier 作:何処にでも居る佐藤
「また随分と唐突に呼び出したな研究者。で、今度は一体なんなんだ?」
私とタクヤは研究者に呼び出され、研究所に戻って来た。ロストに向かうのと同時に、問題を起こしたりするタマシイ達を鎮めるのも、私達の目的の一つだから、先ずタマシイ関連である事は間違いなかった
「…先日、並行世界のタマシイ達がこの世界に来た事件があっただろう。今回も、恐らくは並行世界からのタマシイだ」
「…なんだって!?」
並行世界のタマシイ。それはサトルの姉、フミコが並行世界の観測をしていた時にトラブルが発生してこの世界に現れた、この世界のタマシイ達とは違う可能性の姿をしたタマシイ
「それで、今回はどのタマシイが現れたんだ?アリス、アイリ、アキラ。前回来たのはこの辺りだったか。…ま、どうせ今回もクセのある奴なんだろうな」
「…タクヤ君、今回は君にとって非常に苦痛の伴う案件になるだろう。…心して掛かってくれ」
「…どういう事だ」
「…今回のタマシイ、それは…
君自身だ」
「…タクヤ、大丈夫?」
あれからひと通りの話を聞いて、私達は目的地に向かった。その間、私はタクヤに声を掛けられないでいた。研究所から出て漸く経ってから、言葉を掛ける事が出来た
「…ああ、大丈夫、心配するな。…契約は果たす」
いつものタクヤの声には、どうしても聞こえなかった。タクヤのその背中には、いつもと違う雰囲気が漂っていた
「…大丈夫よ、並行世界の貴方がどんな人でも、タクヤはタクヤだもん」
「…ありがとう、ユキ」
…少しだけ、タクヤの声が軽くなった気がした
「…さぁ、集中しよう。そろそろ指定された区域に辿り着く。ユキ、何か感じるか?」
「…!タクヤ!強い想いを感じる…!すぐそこまで来てる!」
なんて重く暗い力…!これが本当にタクヤの想いなの!?
「…あぁ、ユキじゃ無くても分かる…無色なのに重い…!」
…そして、それが姿を表した
「「!?」」
真っ白で顔色の悪い顔。それとは不釣り合いな程にギラギラと輝く瞳。なのにそのタマシイからは何の想いも感じない。それなのに…!
「なに、このちぐはぐなタマシイ…!圧の強さと想いの強さが不釣り合い過ぎる!」
「ユキ!落ち着くんだ!確かにこいつは俺と同じ顔をしている、だが近付いてわかった!こいつは俺だがこの世界の俺じゃ無い!この世界のタクヤはお前じゃ無い!この俺!唯一人だぁ!!!」
「タクヤ…!」
タクヤのその言葉が虚勢じゃ無い事が伝わってくる!タクヤは違う可能性の自分を見て、それがたしかに自分である事と、それでもこの世界にいるのは自分だと心の底から信じてる!だったら…私が、それを証明する!
「ええ!私が、貴方の存在を証明する!だから並行世界のタクヤ!私達は貴方と戦う!そして打ち勝つ!」
「行くぞユキ!俺達なら、絶対に勝てる!」
「…やった、のか?」
「多分、そうだと思う…ぁ!」
「どうした!?ユキ!?」
「…これは…彼の記憶…?」
俺は自分で言うのも何だが、組織の一員としてかなり貢献したつもりでいた。最も、それを証明するモノはもう何一つないがな。俺は組織ってやつを真の意味で知らなかった。何処でどんなふうに躓いてしまうのかも、それで起き上がれるのかも。そして…下っ端は身代わりにしかならない事も。
「お前がタクヤだな」
俺は狭い牢の中にいた。黒フードの男からは、何処か優越感の様な者を感じさせた
「俺がここにいる時点でそうだろう。さっさと要件を言え」
「お前の実験内容が決まった。心が死んだ者から生まれたタマシイの強さを測る為の実験だ」
「…そうか」
俺の末路をわざわざ言いに来た黒フード。それだけで、あいつの性格の悪さを知る事が出来た
「フン、そんな態度を取れるのも今のうちだ。この実験は長期間に渡って行われる。想いの強さがそのままタマシイとしての強さに直結する。それが長らく言われていたタマシイの強さの絶対条件。たが、あのお方は違った。
「うぅ…!」
「ユキ!大丈夫か!」
「う…うん」
…なんて酷い事をするのだろうか。そこからの記憶も見えたが、それまでの記憶と比べて恐ろしい程に鮮明なのだ。感情が消えたのなら、どの記憶も何も思わないのだろう。だから自衛の為に記憶を消す必要も、忘れる必要も無い。…でも、だからこそ恐ろしい。もし感情が失われ、理性のみで動くのであれば、それこそ人間は器械になってしまうのだろう。いや、実際にさっきの並行世界のタクヤには無駄が無かった。想いは無いのに、タマシイとしての力だけが恐ろしい程に引き出されていた。…酷く、恐ろしく思えた。でも何より安心した。だって
「あのタクヤも、元はやっぱりタクヤなんだってわかったから」
「…そうか」
タクヤも何か感じてくれたのだろうか。そうだったらいいな