Hello parallel World! Possibility of a carrier 作:何処にでも居る佐藤
く…やはり、俺一人では無理があったか…?クソ!組織の恐ろしさは身に染みていたというのに…!…意識が………
「タクヤ君、いきなり電話してすまない。君たちに頼みたい事がある」
「ったく、こっちはさっさと氷柱に辿り着きたいんだがな」
「そんな事言わなくてもいいじゃない。で、どうしたの?」
「ああ、氷柱の中心部から特異な反応を検知した。そしてそれが消えた後、また違う地点の氷で全く同じ反応が検知された」
「…えっと、どう言う事?」
「謎の力が氷を伝って君たちのところまで辿りつこうとしている。出来る限りでいいから、データを集めて欲しい。勿論、報酬は弾む」
「…はぁ、わかった。つまり障害を排除すれば良いって事だろ?結局やらなきゃならないなら、同じことだ。ユキ!行くぞ!」
「わ、わかったわ!」
「それで、目的の方向には向かえているのか?」
「ええ、この先から強い想いを感じる。でも…」
「どうした?」
「すごく不安定なの…まるで海みたい…」
「…よく解らんが、警戒するに越した事は無いな」
「ええ、それで良いと思う…!タクヤ!来るわ!」
〈!やった…やっと見つけた!!〉
「!?」
「…まさか、俺か!?」
〈ああ、俺はタクヤ。BLACK ORDERと戦う者だ〉
「ブラックオーダー!?まさか…生きていたのか!」
「黒ギークの話で、てっきり死んだとばかり…!」
〈…残念だが、それは間違ってはいない。俺は現に死にかけた〉
「!!」
「…そんな」
〈復活の方法は今は省く。それよりも、俺に協力してくれないか。この力があれば、夢にまで見たブラックオーダーの転覆が実現出来る…!〉
「な!?」
「え!?」
〈勿論虚言じゃ無い、俺はそれだけの想いと力を発現した。今なら俺の世界をひっくり返せる!それだけじゃ無い!他の世界に伸びる筈だったブラックオーダーの魔の手も切り落とせるんだ!頼む、俺と戦ってくれ!〉
「…ユキ、どうする?」
「わからないけど、向こうのタクヤの想いが限界まで高まってる!このままだと世界を渡る前にこの辺りが吹き飛ばされる!」
「クソッ!我ながら恐ろしい力だ!ユキ!突破するぞ!」
「…すまない、あまりにも気分が高まっていて…」
「…いやまぁ、落ち着いてくれたなら良いんだ。それで、どうやって世界を渡るんだ?」
「…そうね、黒ギークもいないし、シズマのゲートも無い。手段は無いように思えるけど」
「わかった、少し待っててくれ………フン!」
「「!?」」
バキッと言う音と共に、空間にヒビが入る。そしてそのヒビは円形に広がり、そして人が入れそうな穴に変化した。氷柱世界の二人が唖然として黒タクヤを見る
「これが俺の力、全てを救う力だ!」
「…そうね、たしかにその力があれば、世界を救えそう」
流石のユキとタクヤも顔が引きつっていた。いつかのタイヨウを遥かに凌駕した力だった
「よし、とにかく道は開けた。行こう、ブラックオーダーの世界に」
「ええ、行きましょう」
「…ありがとう」
「なんだよこの力ぁ!!!」
ある研究所にて、一つの声が響く。狂科学者マミの声だ。
「えっ!ど、どうしましたかマミ様!?」
マミに与えられた兵器により偽りの魔法少女となったマミの
「…何、この圧倒的な力。ブラックオーダーの誰よりも、それどころかさらって来た人間の想い全てを集めた量よりも大きい!!」
「そうだよ!これさえあればブラックオーダーの悲願なんて簡単に実現出来る!ナツメ!構成員達を集めろ!一刻も早く全幹部に報告!なんとしてでもこいつを捕まえろ!」
いつになく必死の形相でマミがナツメに喰らい付く。ナツメは上司のいつもとは違う姿を見て心を騒つかせるが、直ぐに冷静になり
「承知しました。必ずや、私の命に変えても奴を捕縛して来ます」
と言った。マミもまたその言葉に満足気に
「あぁ、頼んだよボクの魔法少女。必ずブラックオーダーの悲願を実現させるんだ!」
とナツメに叫んだ。
「…今日が記念すべき革命の日…!ブラックオーダーが歴史から消え去る日だ…!!」
元の世界に戻って来た黒タクヤが興奮気味に言う。目は極限まで開き、額には青筋が立ち、拳は爪が食い込みそうな程に握り締められ震えている。それを見ていた二人はその顔に若干の恐怖を滲ませていた
「タクヤ、私怖い…」
「あぁ、あれはしょうがない。俺ですら背筋が凍りそうだ」
なるべく黒タクヤに聞こえない様に小声で話す二人。その二人に黒タクヤはゆっくり振り返る。その顔は先程までと違って冷静そのものだった
「…じゃあ行こうか。ギーク…お前達の言う黒ギークや先導者、未来からの協力者にも既に俺は会っている。向こうも協力してくれるとの事だ、急ごう」
「ええ…ねぇ、少し聞いていいかしら?」
「…移動しながら聞こう。敵も俺の存在に気付いている筈だ。優秀な科学者は向こうにもいるからな」
それがマミの事を指すのか、シズマの事を指すのか、二人はわからなかった
「そうだな、早い所移動した方がいい。…向こうに無能はいないからな」
タクヤの言葉が想像や憶測で無い事は三人共に良く分かっている。三人は移動した、黒タクヤの拠点に。その間、黒タクヤとユキは話をしていた
「この戦いが終わったら、貴方はどうするの?」
ユキの問いに黒タクヤは直ぐには答えられなかったが、少し唸った後、質問に答えた
「…死ぬつもりだ」
…いきなりのその重い言葉に二人は一瞬息を忘れた。だが、直ぐにその言葉の意味を理解する
「お前、この世界から想いの力を無くすつもりか」
タクヤの言葉にユキは混乱する
「確かに想いの力は危険かもしれない…いえ、実際に危険だもんね。でも、上手く使えば不治の病を治す事も出来る。それだけじゃ無い、世界の色んな問題を解決する事が出来るのよ?なのにどうして…」
ユキの言葉に嘘は無い。実際ブラックオーダーはそれをやってみせたのだ。だが黒タクヤはゆっくり首を横に振る
「それじゃ駄目なんだ。想いの力という超常の力は人間が扱っていい物じゃ無い、あれは文字通り人智を越えている。…あんな物に頼っていては、人間は進化出来ない!人は考え、検証し、実現させる。そうやって進化して来た。…それを人知を越えた力ですっ飛ばすなんて間違ってる!…だから俺は、ブラックオーダーを許さない。人間の歴史に、想いの力という単語も、奴らの名前も書き記す訳にはいかないんだ…!」
それはまるで、人類の進化の過程を見てきたかのような言葉だった。それと同時に、二人は理解する。黒タクヤは、ブラックオーダーでは無く、想いの力自体を否定しているのだと言う事を。そしてそれは確固たる意志からの行動である事も
「…それだけ覚悟があるのなら、俺からはもう何も言わない。ユキはどうだ?」
不意にタクヤがユキに話を振る
「…ちょっとまだ考えが追い付かないわ。でも、一つだけ安心した。貴方もタクヤなのね。…ちょっと考えが過激だけど」
「…フン」
ユキの言葉に黒タクヤは吐き棄てるかのように息を吐く。複雑な顔をしていた
「所で…」
と、タクヤが黒タクヤに声を掛ける
「そのバイク、一体何処のメーカーだ?俺のスクーターとも、アキラのバイクとも違う見た事も無い機種だ。この世界だけのものだったりするのか?」
タクヤの言うアキラは、ユキの元SPの事である。彼もまたバイクの心得があり、ユキの精神世界でアキラはユキをバイクで導いていた
閑話休題
黒タクヤのバイクはタクヤの見た事も無い構造をしており、また無駄な装飾を省いた機動力重視のバイクだった
「…いや、言いたく無いなら「このバイクが、俺の復活のカギだった」…は?」
「このバイクを形成しているのは、誰も知らない金属だ。俺はあの時、瀕死の重傷を負い、今にも死にそうだった。その時こいつに出会った。俺は決死の覚悟で肉体と魂をその金属に結合して、一命を取り留めた。その後俺はゆっくりと肉体を再生させながら世界を見ていた。…世界がブラックオーダーに落ちていく様を。そうしてから俺は、いつの間にか金属をアーティファクトとして扱える様になっていた事に気付いた。物理法則を無視した変形を見て俺は、これを使うしか無いと思った。それからは早かった。今や俺はこいつを十二分に扱える。俺とこいつは完全に同体だ。この力で俺は世界を元に戻すんだ…!」
それから暫くして、三人は黒ギークのガレージにたどり着いた。そこには今までの協力者たちが揃い踏みであった。だが
「…」
とても重い空気が漂っていた。
無理も無い、自分達が救おうとしている者の救い方はほぼ想いの力に頼るものである為だ。では何故黒タクヤは彼等と協力出来ているのか。それは救おうとしている者達がそうなった原因が想いの力による物だからだ。黒タクヤは想いの力というフレーズ自体を歴史に残したく無い。ではどうするか、証拠隠滅だ。死ぬ前に救い、その全てを歴史から揉み消すのだ。その為に黒タクヤは協力している
「…お爺さま」
レイナが黒のジンに話しかける。その声と顔は良いものでは無い
「解っている。だが、世界は救えなくとも、皆は救わせてもらうさ…そう言う契約だろう?…タクヤ!」
遂にジンが叫んだ。黒タクヤがギークのガレージに来た時から一触即発と言わんばかりにジンは不機嫌だった。それがある事を理由に爆発した。…最も、それだけは黒タクヤは悪く無いが
「何故叫ぶ、俺はあの時限り無く正解に近い話をお前にした筈だ」
あくまで冷静に黒タクヤは話す。それにジンは更にキレた
「ふざけるな!たしかにこの世界の人間は真っ黒だ!だがお前はそこから更に俺達の事を『現実から逃げ続ける卑怯者ども』などと!」
そう。黒タクヤの想いの力への限り無い反抗心はそこから来ている。自分の体にある力だけで生きてきた人間が突然超能力もどきを使って超常現象を起こす。黒タクヤにとって、これは卑怯者以外の何者でも無かった
「人間のクセして人を辞めたお前達が悪い。人間なら人間の器の中に収まっていれば良かったんだ。それをお前達は…!下手をしたら世界が底からひっくり返る様な事が起こるかもしれなかったんだぞ!俺の考えをハッキリ言おう!お前達は世界の破壊者だ!常識も法則も全部ぶっ壊しやがってこのSCPもどき共が恥を知れ恥を!!!」
「皆を助けるにはそれしかなかった!新たな世界への扉を切り開き、みんなを救う為に!」
「そこから間違いだと言っているんだ!人は望みを叶える為に長い年月、実験、討論を重ねて何代にも渡って望みにゆっくり進んでいった!それを何だお前達は!想いを集めて!?ゲートを開いて!?世界を作り直して!?願いが叶う世界に!?アホかぁ!!!!楽な方楽な方選びやがってこの底辺!!!!ブラックオーダーによく人が集まったもんだよこの自堕落なニート共!!!」
どんどんと激化していく論争は、突如起きた爆発によって突如終了した
「そんな事をさせる訳にはいかないな、タクヤ!まさかお前が生きているとは思わなかったぞ!!」
ギークのガレージに乗り込んで来たのはブラックオーダー、その重要人物ばかりであった。作戦が無意味になった事を理解し顔を強張らせ、身構える革命軍の中で、黒タクヤだけが唯一その顔を愉悦に歪めていた
「…会いたかったぞ、ヨシアキ…いやブラックオーダー!!俺が正しい事を証明する為にはお前達を叩きのめすのが一番早い!!」
想いの力を否定するタクヤと、想いの力を悪用するブラックオーダー。
…滅ぼし合うのは、ある意味当然の事だったのかもしれない
「随分と戯言を抜かす様になったなタクヤ!その想い、我らの悲願に余す事なく使ってやろう!」
「おや?ボクを何度もコケにしてくれた二人もいるじゃないか!!黒タクヤと同じく、君たちもボクらの悲願の礎になれ!」
「…ハハッ、いつもより心が沸いて仕方がねぇ…!漸く俺の失った記憶を取り戻せるのか…!」
「マミ様を愚弄してくれた罪…その身を持って償なさい…!そして、ブラックオーダーの悲願のため、その命を捧げなさい…!ァッハハハハ!!!」
「貴方の想いがあれば…あの人を救える…!ふふ、待っててね…もう少し、もうすぐだよ…!」
「…ふふ、私の忠実な下僕に、なってくれるわよね…?」
「…タクヤ、貴方と戦う事になってしまったのは残念だけど…私は、貴方を倒す。いずれこうなる事は理解していたから。…さぁ、覚悟はいい!?」
「フン!ブラックオーダー!お前達を残らず殺し尽くしたその時!お前達の歴史は無へと還る!そして、正しい人類の歴史が復活する!さぁ!大義の為の犠牲となれ!!!」
そして、世界を塗り潰す黒と、黒を破壊しつくす漆黒の決戦が幕を開けた
黒タクヤ君にはかなりの過激派になってもらいました。ここから更に暴走します
6月二十日 追記しました