BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 - 作:津梨つな
『今日は一緒にお散歩をします!!』
そう張り切って言い切ったお姉さんはどこへ行ってしまったのか。
また花音さんに呼び出された俺は、数時間前にアパートを訪れた。
…さすがにもうチャイムを鳴らす前にドキドキすることはなくなったけど、それでもやっぱりよくわからない。そもそも女の人の家に上がり込むって言うのが、ね…。
入ってみると、珍しくジャージ姿の花音さん。珍しく、いや初めて見るかもしれないその格好に、慣れたはずの部屋がまた居心地悪いようなむず痒い感覚を覚えた。話を聞いてみると、
『ふぇぇ、なんだかちょっと太っちゃった気がして、ね…。思い切ってウォーキングを始めてみようと思ったのです!』
とのこと。
ウォーキングでジャージまで着こなしちゃって(このために態々買ってきたらしい。)、もうほんと花音さん可愛すぎるよ…。どうやらウォーキングというものがどの程度のガチさでやるものなのかもわからないようなので、一緒に散歩する~くらいの気持ちで良いのではと提案したところ、冒頭のセリフが飛び出したというわけだ。
断る理由もないのでOKしたが、その時の小さなガッツポーズもまた可愛かった。心臓を鷲掴みにされるような、そんな衝撃の強い可愛さをぶつけてくるよなこの人は。
「でも…どうやったらこんなだだっ広い河川敷で逸れられるんだろう…。」
最初は家の周辺をグルグル回る様に歩いていたのだが、「折角なら綺麗な場所を二人で見たい」という花音さんの要望でここに来たのだが。夕日を反射しキラキラと煌めいている川面を見るや否や走り出していってしまい、それきり姿が消えたのだ。
建物はおろか、遮蔽物の一つもないこの場所で一体どうやって見失ったのか、…未だに疑問でしかない。
一先ず、こういう時は探しに出る前に一旦待ってみることが大事だと何かで読んだ気がする。ふらっと戻ってきたときに誰も居ないのがまずいってやつだ。頭の中でその知識を引っ張り出しつつ、近くのベンチに腰掛ける。
「あぁ…確かにこりゃ綺麗だ。」
ぼんやり見つめる川面は相変わらず橙の光を乱反射していて…。
…!?その中で、何かが動いた気がした。それも、川の中で動いていること自体おかしいもの。
「…花音、さん!?」
思わず走り出す。
間違いない、あのジャージ、花音さんだ。何だって川の中なんかに…!?
「はぁ…はぁっ…花音、さん……」
「あ!〇〇くぅん。どうしたの??」
「それはこっちのセリフですよ…。普通散歩って、陸の上を歩くんですよ?」
「ふふっ、知ってますよ~だ。これ、見て。」
花音さんが指さしたのは川の中。光がきれいとかそういうかんじ?
「??川がどうかしたんですか??」
「川のね、底のところ。…水がきれいだから、見えるでしょ??」
「……?はい。」
「きらきらしてる光が、水面の揺らぎに合わせて揺らいで、何だかくらげみたいじゃない?」
「はぁ?」
「もー!わかってくれないならいいもん。くらげがいっぱい居るみたいで可愛くて、つい近くで見たくなっちゃったの!!」
「…そうですか。」
「ふぇぇ…反応が冷たいよぅ…。…あきれちゃった?嫌いになっちゃった??」
ずぶ濡れになったジャージの裾を絞りつつ、不安げにこちらを覗き込んでくる花音さん。あぁ、もう…その表情も声もずるいんだよなぁ…。
「…別に、あきれてないですよ。
何だか、子供みたいなところを見ちゃった気がして。…その、放っとけないなぁって…。」
「むぅ、馬鹿にしてる?君よりずぅっとおねーさんなんだからね?」
「…怒ったんですか?」
「べっつにぃ。」
「…怒ってる花音さんも、可愛いですよ。」
「ふぇ!?…そ、そう、かな…えへへ…。」
「……と、とにかく。濡れたままだと風邪とか怖いので、い、一緒に帰りましょう!…ほらっ」
恥ずかしさから居た堪れなくなり、手を取って帰路に就く。少し強引かもしれないがこうでもしないとまた花音さんのペースに飲み込まれる。
…たまには俺が空気をリードしなければ。
「ふぇぇ…手、〇〇くんから握ってくれるなんて…幸せすぎるよぅ…」
「何か言いました?…あ、足元気を付けてくださいよ。」
「ふふっ、わかってるよぅ。あ、帰ったら一緒にお風呂入ろっか??」
「もう、揶揄わないで下さいよ…。」
「本気なんだけどなぁ…。」
相変わらず花音さんはつかめない。
<設定更新>
〇〇:ついにいった。握ってやったぞ。
花音:川の底が云々の件は、作者が昔川で溺れた時の景色から書きました。
プールとかでも同じ現象がみられる。結構綺麗。
それはそうと、ジャージ姿も可愛い。