BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 -   作:津梨つな

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そんなこんなで花音さん

 

 

 

「花音さん!遊びに来ました!!」

 

 

**

 

 

 丁度晩ご飯を食べていた時だった。花音さんから電話がかかってきたのは。

 …よりにもよって家の固定電話の方に。

 勿論俺はご飯中で手が離せないし、母さんが外行用の声で出た。

 

 

「もしもし↑。…↓あらぁ!かのちゃん!○○かい??」

「!?」

「…あぁ、うん。……へぇー!!わかったわかった、今替わるよ。…ほら、あんたに電話だよ。」

「花音さん、何だって?」

「……まぁ、出たらわかるさ。あんたも父さんに似て、大変な子を引っ掛けたね…。」

 

 

 どういう意味だ。

 まぁいいや、花音さんが態々電話を?一秒でも早く出なくちゃ。

 

 

「もしも…」

『あぁ!!○○くんらぁ!!…お電話で聞く声もかぁいいれぇ…』

「…ほんとに花音さん?」

 

「ブフゥッ!」

 

 

 後ろで盛大に吹き出す母さん。母さんの名誉のために言っておくが、決してこいた訳ではない。何とは言わない。

 

 

「ねえ、花音さん?具合悪いんですか?…それとも……酔ってたり、します?」

『えっへへへへ~。全然そんらことないよぅ。』

「………。」

 

 

 絶対酔ってる。これで素面だとしたら、今まで俺は一体誰と会っていたと言うんだ。色んな意味で若干の不安を覚えながらも、ひとつ提案をしてみる。

 

 

「大丈夫ですか?花音さん。…もしキツそうなら、介抱に」

『あ、そうだ!!○○くぅん…?今から遊びに来ないぃ?お菓子とかも買ってあるよ~?』

「……あ、じゃあ行きます。」

『やったぁ!!お着替えしてまってるね!!』

 

ガチャ…ツー、ツー、ツー…

 

「……母さん。」

「行くんなら食べ終わってからにしなよ?食器片付かないから。」

「母さん……。」

 

 

**

 

 

 で、冒頭の続き。

 もうすっかり慣れてしまったこの玄関の扉も、予め手渡されていた合鍵で突破する。部屋に足を踏み入れた途端に香ってくる大人の香り。あぁ、これだ。花音さんに包み込まれるような、まるで空気自体が花音さんのような…。

 相変わらず綺麗にしてんなぁ…。

 

 

「……あれ?」

 

 

 さっきの電話のテンションからするに、部屋に入ったあたりで出迎えてくれると思ったんだけど…。や、別に残念とかじゃないんだけどさ。ほんとだよ。

 そのまま奥、リビングの戸をそっと押し開ける。

 

 

「お邪魔しま……あらら。」

「ぅぅ……ん。……む、…ぅにゅぅ……。」

 

 

 さっきの電話から三十分くらい経っちゃってるもんな。お酒が入ってるなら尚更、か…。

 花音さんはリビングのローテーブルから後ろに倒れる形で完全に熟睡していた。おへそ、出ちゃってますよ…。そのままベッドまで運んでいこうかと思ったが、その最中で起こしてしまうのも悪い。

 近くに転がっていたクラゲ型のクッションを頭の下に差入れ、寝室から持ってきたタオルケットを掛けておくことにした。

 

 

「この表情が、素なのかな…?」

 

 

 女の人の寝顔をじっくり観察するなんて失礼なことなのかもしれないけれど。その整った顔立ちに、やはり年上のお姉さんなんだと改めて実感してしまう。でも…。

 

 

「なんだかいつもと違う雰囲気だな。」

 

 

 眠っているから勿論、なのだが。

 表情がないというか、こう…あぁ、眉が一文字、まっすぐなんだ。いつも若干眉根の下がった、困ったような笑顔が魅力的な花音さん。

 思えば、無表情だったり真剣な顔だったりってのは見せてくれたことがないのかもしれない。

 …変な感じだ。

 これが完全に素、油断している時の表情なのか。それとも――

 

 

「…嫌なことでも、あったのかな。」

 

 

 酔っ払っている、という状況もそうだ。

 花音さんがお酒を飲むなんて聞いたことがない。何かあったのだろうか。…と、花音さんを観察していると、少し肌寒そうな格好をしていることに気づいた。そういえば、さっきも電話で「お着替えしておく」とかなんとか言ってたな。

 ちらっと、タオルケットをめくってみ…すぐに戻した。これはちょっと刺激が強すぎるな。俺にはまだ早い。

 何でこんな露出高いの着てるんだ…?

 

 

「…あっ。」

「………ぇへへ、おぁよう。」

「…おはよう、ございます。」

「あんまりみないで、ほしいかな…。恥ずかしくなっちゃうよ…。」

「花音さん、なんかあったんですか?」

「………。」

「別に、言いにくいことだったら言わなくていいですけど…。」

 

 

 目を覚まして見つめ合ってしまった挙句、気まずくなるような質問をしてしまった。黙り込んで視線を逸らした花音さんに悪いし、直ぐに取り繕うようなことを零してしまう。誰にだって訊かれたくないことのひとつやふたつ、あるよな。

 

 

「うん、本当に、何でもないから、ね?

 心配かけちゃってごめんね…それに、恥ずかしいところも見せちゃったしね…。」

「あ、それは全然いいんですよ。僕こそ寝室とか勝手に入っちゃいましたけど…問題なかったです??」

「うん、大丈夫だよぉ。ありがとうねぇ。」

「えっと、もう酔いの方は…」

「もう大丈夫。迷惑かけてごめんね。お母さんにも、謝らないとね。」

「いや本当にうちは大丈夫なんで…。というか花音さん、寒くないですか?その格好。」

「え…?…えっ、あっ、み、見ないで!」

 

 

 やっぱり自分でもよく分からないで着てたのか。すけすけだし布地の面積は狭いし…下着なのか水着なのか、そのレベルの服?なんだもん。

 素面だと恥ずかしいよね。

 

 

「とりあえず…着替えてきたほうがいいかもしれませんね。あ、それか、体が冷えているなら一旦お風呂とか…。」

「うん…今日はすごく面倒見がいいんだね。…いつもは私にべったりな甘えんぼさんなのにな~。」

「あれは花音さんが甘やかすせいですよ。」

「え~?○○くんが甘えたそうな顔してるからだよぉ。」

「もー!またそうやって揶揄って…。早く着替えちゃってください!夜だし寝巻きでいいんじゃないですかー?」

「うん、そうするねえ。……○○くん。」

「はい?」

 

 

 ごそごそと衣擦れの音がもするし、着替えているのだろう。見てしまわないように背を向け、返事だけを返す。

 

 

「…別に見ちゃってもいいんだけどね。ええと、今日は遅いし、泊まっていくでしょ~?」

「…遅いって言っても、家すぐそこですよ。」

「泊まっていって…ほしいな。」

「………花音さん?」

「あっ、えっと、ほら!最近○○くんとくっつけてないから、○○くん分が不足しちゃってるなぁって…ダメかなあ??」

 

 

 酔いが覚めると無性に寂しくなるとかそういうのがあるのかな?

 珍しく元気がない花音さんに、そんな余裕のないところを見せられたら何も言えないよ。まぁ見えてないんだけど。

 

 

「もうこっち向いて平気だよ??」

「あ、了解です…ブフッ!?」

「えっへへ~、これもこの前買ったばっかりの新しい下着なの~。…ピンクは嫌い?」

「…もう、もうちょっと自分を大事にしてくださいって言ってるじゃないですか…。

 ピンクも確かにいいですけど、ひらひらしてるのがクラゲみたいで可愛いと思いますよ。」

「えへへ~ありがとうね。そっか。買ったときは意識しなかったけど、確かにこれクラゲさんみたいだよね~。

 …ん。○○くんは発想力も天才並だねぇ。」

「…もう!早く服着てくださいって!ほぼ素肌の状態で抱きつくの禁止!禁止です!ぅぷっ。」

 

 

 花音さんのすべすべの肌が顔いっぱいに広がる。まだ喋ってるっていうのに、口は硬い布の感触で塞がれてしまった。

 

 

「…ちょっと早いけど、お布団行こっか。」

「…………。」

「お姉さん、ちょっと今日は疲れちゃったかなぁ~。朝までずっと、ぎゅーってして寝ようね。」

「……花音さん。」

 

 

 いつもと違って、弱々しく腕を回してくる花音さんが心配で、寧ろ俺の方から抱きしめつつ。ただただ振り回される普段の花音さんは何処へやら。本当に疲れているのか、若しくは…。

 再び聴こえる花音さんの小さな寝息と震える身体。俺より僅かに高く思える体温を感じながら、悶々とした夜を過ごすのだった。

 

 

 




<設定更新>

○○:勘は良くても踏み込む度胸はない。
   まだまだ遠慮期間。だってお姉さんとはやっと友達になれたくらいだもんね。
   振り回されてばかりじゃない紳士。

花音:ヒント・飲まされた。
   今回は多くは語らないのである程度は脳内補完しつつ次にご期待ください。
   いつかは明かされる時が来るんでしょうか。
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