BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 - 作:津梨つな
…何処行ったんだろうあの人。まさか一本道でも姿を消せるとは。…まるで異空間だな。
夕日の射す住宅街。キョロキョロと周りを見回すも、水色のお姉さんの姿はない。
路地があるわけでもなく遮蔽物もない。暫くは曲がり道もない俺の通学路。
「学校までわざわざ迎えに来ちゃって…嬉しかったんだけどなぁ…。」
そういえば初めてだったな。あの、一人で知らない道を歩くと100%次元を超えてしまう花音さんが俺を迎えに来てくれたの。
ま、その嬉しい時間も、僅か7~8分程で終わっちゃったわけだけど。探すといってもこの一本道を戻ることしかできないので、その間今日のハイライトでも思い返してみよう。
**
―――昼休み。
午前中はずっと電源を
「……え"!?」
届いていたメッセージを見るなり思わず大きな声を出してしまった。学校では物静かなクールボーイで通っている俺だ。周りのクラスメートの目を集めてしまうのも無理はないでしょうね。
と冗談はさておき。いつも通りの『おはよう!』のスタンプの後に続いたメッセージ。
「『今日学校まで迎えに行っちゃおっかな??』って…何考えてるんだあの人…。」
二軒隣のコンビニを目指して他県まで行っちゃう人だぜ。
あれはもう才能だと思うわ。うん。
「『期待して待ってますね~』…と。ま、本当に来たら明日は台風でも来ちゃうかもわからんね。」
面白い冗談として受け取ることにした。
…ふと、自分でも気付かなかったが、無意識のうちに口角が上がってしまっていたらしい。お陰で数少ない友人のうち二人がにやけながら話しかけてくる。
「おい○○、エロ画像でも見てんのか??」
「…あ?お前と一緒にするなよな。」
「まっ、失礼しちゃうわねぇこの子はぁ。」
「…それは何キャラなんだよ、
やたら剽軽なバカっぽいこいつは
「…○○、アレでしょ?年上彼女とベタベタしてるっつー、いつものでしょ?」
「いつものってなんだよ…まぁ、年上云々は否定しないけど。」
「いいよなぁ。素敵なお姉さんとお付き合いとか、憧れちゃうねぇ。」
「…お前はものごっつ可愛いねーちゃん居るからいいじゃん。それか
こっちの物静かそうなのは
因みに、同じクラスの
「…心の中で惚気けんのやめない?」
「…すごいな凪樹。」
エスパーかね。
この賑やかな連中に絡まれている間も花音さんからのメッセージは着々と届いていたが…まぁ、クラスでの付き合いも大事ということで、見るのは後にすることにした。
この時チェックしておけば、そして気の利いた返事を返しておけば放課後のアレを未然に防げていたのかもしれない…。
**
―――放課後。
昼食後の授業につきものの眠気のせいで、昼休みにみたメッセージのことはすっかり忘れていたが。席に駆け寄ってきた鑑真の一言は、このあとの展開を予感させるに十分なものだった。
「おいおい!校門のところにすっげー色っぽいお姉さんが来てるぞ!!」
「…へー。」
「窓から見え…おぉ、人だかり出来てんぞ!!○○!お前もこっちきて見ろよ!!」
「…や、あんま興味ないし…。か、帰るわ。」
マジでか?マジで来たのか?
それは期待だったか焦燥だったか、とにもかくにも早鐘を打つ心臓を抑えるように早歩きで校門へ向かったのだった。
「うわっ…あの人集り、男しかいねーじゃん…。」
昇降口から見ても分かる。余程綺麗な人が来ているんだろう。集っているのは全て男子だ。ネクタイの色からするに、学年関係なく来てるな…。
その一団からほんの少し距離をとりつつ、ただ視線のみ渦中の人を探すように向けながら校門を出―――
「あっ!!○○くぅん!!!きたよぉ!!」
「………マジカァ」
人集りを掻き分けるようにして水色のふわふわお姉さんが駆け寄ってくる。その癖のある髪の毛が跳ねるのを見ながら、本当に来てくれた嬉しさと集っていた男子の恨めしそうな視線に、本日二度目の口角が釣り上がる感覚を感じた。
ものの数秒で目の前に辿り着く花音さん。
「おつかれさまぁ…。いろんな人とお喋りして、疲れちゃったよぉ…。ふえぇ。」
「花音さん…。」
また今日の格好も艶かしいなぁ…。
短いスカートから覗く太ももは眩しく、ほんのり汗ばんだ綺麗な肌に、肩で息をするちょっと苦しそうな笑顔。熱のこもった熱い吐息…。あぁ、儚い…。
「本当に来たんですか。」
「ふぇっ!?…こ、来ないほうが、よかったかなぁ…??」
「ううん。まさか本当にたどり着けると思わなかったからさ。」
「ひどいっ!」
「えへへ、…すっごい嬉しいよ、花音さん。」
「はうっ」
照れさせてしまったようで、顔を抑えて悶絶する花音さん。その姿も可愛い。
とはいえ、このまま
「えっ?…あっ」
手を取って歩き出す。
…どうでもいいけど、こういうとき二人の家の方向が同じだと便利だね。
**
で、今に至ると。
あの時の気恥ずかしさとか幸福感だとかは何処へやら。花音さんと一緒にどこかへ行ってしまったようだ。
「あっ。」
遠巻きに、花音さんを見つけた。どうやら、背の高い男の人と喋っているようだ。…なんだ、知り合いにでも捕まったのかな?
邪魔しても悪いので待機しよう、と…自販機の方に道を逸れたところで、途切れ途切れではあるが会話が聞こえてくる。
聞かないように聞かないように…と思いながら。途切れているとは言え、聞こえてくるキーワードに頭の中では色々と考えてしまう。
考えるな。きっと大丈夫だ。ただ、学校の知り合いか何かと偶然会っただけなんだ。…一生懸命意識を逸らそうとはするが、買った缶コーヒーのプルタブに掛けた指が震える。…なんだこの胸のモヤモヤは。
何分かかっただろうか。体感時間では数時間に感じた後。ようやくプルタブの小気味いい音が響いた頃。
「お、お待たせだよぉ。…○○くん?」
「………ぁ、花音…さん。」
「……顔、怖いよ?」
今自分はどんな顔をしているんだろうか。少なくとも、さっきまでみたいに口角が動く感覚は無い。
花音さん、何を隠してるの?
「…あ、か、帰ろ?ごめんねぇ、が、学校の友達に、会っちゃって…」
「………うん。」
「………あのね、○○くん。」
「…はい。」
「私ね……○○くんが、好きだよ…。」
「……そう、ですか。」
「………ごめんね。…でも、好きだから。」
「…………。」
「…手、繋いでいいかな?…え、えと、さっきみたいに…?」
「…花音さん。」
これは、訊いていいことなんだろうか。
果たして訊いてどうするんだろうか。
でも、気になるんだから仕方ない。
花音さんの「好きだ」って言葉。…それは、信じられるものなんだろうか。
「さっきの人…。…彼氏さんですか?」
「………………。」
「…花音」
「…か、帰ろ?ほら、暗くなっちゃうし!!」
花音さん、何も答えてくれないんですね。
<設定更新>
○○:気分がまるでジェットコースターのよう。
少し、想像力が豊かすぎるところはある。
花音:可愛い。
ちょくちょく異次元に行っているとしか思えない失踪の仕方をする。
彼女もまた、か弱き乙女なのだ。
…ヒントはお母さん。
尚:友達①。鑑真と呼ばれつつも余りにも掛離れた元気を持つ。
由来は大和尚で検索検索ゥ!
凪樹:友達②。可愛らしい双子のお姉さんがいる。
メチャクソモテる。が、同級生には興味がない。
拓馬:クラスのお調子者。鑑真と若干キャラ被りのため名前のみ登場。