BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 -   作:津梨つな

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チェイス

 

 

 

「はぁ………。」

 

 

 憂鬱だ。学校にいても友達と駄弁っていても家に帰ってきても…。

 あの日からずっと、あれからずっと花音さんに会えていない。花音さんは「いつでも遊びに来てね」と言っていたが、とてもじゃないが行く気分じゃない。…花音さん、結局何も話してくれないんだもんな。

 

 

「はぁぁ…………。」

 

 

 もう何度目だろう。こうして無駄に二酸化炭素を吐き出すのは。

 花音さん…全部話してくれよ。

 

 

「……もう、全部投げちゃおうかな…。」

 

 

ブーブブッ…ブーブブッ

 

 

 スマホが震える。

 母さんかな。帰るの遅くなるとか言ってた気がするし……。

 画面の通知を見て、叩きつけるようにスマホを置く。……花音さんからだ。

 

 

「何だって今頃…。」

 

 

 悪い報せではないように、そして画面が割れていませんようにと祈りつつ、再度画面を見る。…よかった。ヒビひとつ入っていない。

 

 

「………?…なっ。」

 

 

 文面を見て、そのあまりに唐突な展開に急いで玄関へ。若干の緊張を覚えつつドアを開ける。

 

 

「うわぁ!!」

「ひゃぁっ!?」

 

 

 緊張のあまりドアを全力で開けてしまったところまでは良かった。…ただ、そんな密接して人が立っているとは思わないでしょう。

 凄く嫌な手応えと共に、大好きな人の悲鳴。

 

 

「ご、ごめん花音さん!!どこにぶつかったのっ!?」

「ふぇぇぇ……お、おでこがジンジンするよぉ……。」

「うわぁ…赤くなってるよ……。」

「は、腫れちゃわないかなぁ……。」

 

 

 恐る恐るおでこを触ってはビクゥッ!と手を引っ込める。…痛いならよせばいいのに、それを何度も繰り返してふえふえ鳴いている花音さんを改めて見やる。

 ……体中泥やら草やら…今ドアにぶつかったからってここまでは汚れないだろうに。

 

 

「花音さん、その服……。」

「ふぇ?…あ、あぁ…これ。

 え、えへへへ。自分一人で○○くんのおうち目指したんだけどね…?……気づいたら、山の中にいて。」

「いやいや…すぐ近所じゃないですか。」

「だ、だってぇ…。」

「はぁぁ……全くもう、花音さんは俺がいないと…ぁっ。」

 

 

 今俺は何て言おうとした?"俺がいないと"だって?…笑っちゃうよ。花音さんにはあの人がいるじゃないか。俺よりもずっと大人で、俺よりも絶対力になってくれて。

 

 

「…○○くん。……ええと、入ってもいい??」

「…………どうぞ。」

 

 

**

 

 

「…ええと、○○くん。」

「…はい。」

「……怒ってる?」

「……別に。」

 

 

 嘘。めっちゃ怒ってますよ花音さん。俺に隠し事だなんて。

 

 

「…ええと、今日はね、報告があって。」

 

 

 くそ、これは悪い流れなんじゃないか?……何かいい手は、この状況からそのお別れを思い止まらせるいい手…。

 …あっ。前に凪樹に相談した時に聞いたあれを試そう。上手くいったとしてもちょっぴり仕返し~くらいにしかならない気もするけど、やらないよりましだ。

 

 

「俺からも報告があるんです。」

「ふぇっ??」

 

 

 言え。

 

 

「実は俺…花音さんと会わない間に…。」

 

 

 言うんだ。

 

 

「……クラスの子に告白されまして。」

 

 

 言ってやった!!

 

 

「……どう思います?花音さん。」

「……ぁ………ぅ…ぇ…??」

 

 

 あれ。…聞いてた話と違うぞ。凪樹の姉ちゃんズはわーわーと騒ぎ立てるように嫉妬をぶつけてくると聞いたんだけど…。

 おい凪樹、どうしてくれんだ。…花音さん、口をぱくぱくさせながら呻き声のような掠れ声を零すだけになっちゃったし、目は何処か遠くを見ちゃってるし。

 俺のことなんかまるで、レイヤーの違う絵であるかのように認識してくれない。…もしかして俺、やらかした?

 …少し後悔し始めた頃…

 

 

「ぅ………ぅ………うぅぅ……」

 

 

 ポロポロと。正にその表現がピッタリといった風に、花音さんの両目からかなり大粒な涙がこぼれ出す。

 

 

「か…花音……さん?」

「…ぅ……うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……。ふぇぇぇえええええええ!!!」

「ちょ、ちょっとちょっと」

「ええぇぇ…。ひ、ひどいよ…折角……折角、覚悟決めてきたのに……っ。ふぇぇぇえ」

 

 

 覚悟…?花音さんが決める覚悟ってなんだ?

 

 

「あぁもう…うそ!全部嘘ですよ嘘!!」

「…うそ??」

「はい嘘です!……花音さんが、どうせあの元彼さんとヨリを戻すって話するんだろうなと思って、先制でちょっと仕返ししたっていうか…見栄張ったっていうか…。」

「……じゃ、じゃあ誰にも告白されてないの?」

「まぁ……最近は。」

 

 

 …俺は初めて見た。涙がまるで逆再生のように引っ込んでいく様を。

 

 

「ほ、ほんとにほんとっ!?」

「……えぇ。花音さんと違って、そんなにモテませんから。」

「…私も別にモテないけど……。じゃ、じゃあ、私、言ってもいいかな?」

「…はい?」

 

 

 何を言う気だ?…と気にする暇もなく、俺の体は気付けば花音さんに包み込まれていて。

 

 

「…花音さんっ??」

「……あのね。…ずっと言いたかったんだけど、どうしてか○○くんにだけは冗談でも言えなくて…。

 でも、誰にも取られたくないから言うね。……私の、私の彼氏さんになって…くれない、かなぁ…?」

 

 

 時が止まった気がした。…でも実際止まったのは呼吸だった。

 

 

「―――っ!!――っ!!!!」

 

 

 苦しい。苦しいよ花音さん。締めすぎ締めすぎ…

 タップを繰り返すこと数回、漸く気づいてくれた花音さんに開放はしてもらったが…死ぬかと思った。割とマジで。

 

 

「ということで、何も耳に入ってこなかったので改めて言ってください。」

「ふぇぇっ??…む、無理だよぉ、恥ずかしいもん…」

「……まあいいですけど。…元彼さんはいいんですか?」

「あっ、それなんだけどね…」

 

 

 花音さん曰く。

 連日良い寄ってきてしつこいのに、一度誘われた飲み会を断り切れなかったせいで悪化しているとの事。元彼というだけでも面倒な上、別れた理由が向こう側の女遊びと散々なようだ…。

 俺の事は一目惚れだったらしく、今ではその気持ちが抑えきれず告白に至ったらしい。…ほんとかいな。

 

 

「それでそのぉ……付き合って、くれるかな…?」

「勿論。……これからも、ずっとずっと宜しくお願いします。」

「ふぇぇぇぇ………ここ二年くらいで一番幸せだよぉ…」

 

 

 数字が具体的すぎるんだよな。

 

 

「じゃあ恋人になった花音さんに提案があります。」

「ふぇぇ?」

「…俺としても、花音さんが元彼に付き纏われるのは胸糞悪いんで、ここらで一発かまして決着をつけましょう。」

「……でも、どうやって…?」

「簡単ですよ。…俺と付き合ってるからって言っちゃえばいい。何なら、その場に俺も行けば万事解決では?」

「……ぁあ!!そ、そんなことまでしてくれるのっ??」

「…勿論。恋人ですから。」

「〇〇くぅん……///」

 

 

 次回、解決編!!元彼との直接対決をお楽しみにぃ!!

 

 

「〇〇くん……しゅき。」

 

 

 …やったぜ。

 

 

 

 




<設定更新>

〇〇:多分駆け引きには向いてない。
   あまり先の事を考えて動けないタイプ。
   今回は凪樹くんにやられた。

花音:モテる女の子はつらい。 
   元彼のことも大して好きじゃなかったが顔が良かったので付き合ってみたら…
   といった感じらしい。
   今度は中身も含めて好きなので大丈夫でしょう。大丈夫ですよね?
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