BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 -   作:津梨つな

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夢見屋「山吹ダイアリー」

 

 

 

「……でね?式場の候補をリストアップしてみたんだけど…。」

 

 

 手を止めて声の方を見ると、手作りと思われる数ページの冊子を持った彼女の姿が。

 こういうところ、キッチリしているというか真面目というか…。

 

 

「ん?…あぁ、確かに。そろそろ考えなきゃいけない時期だもんなぁ。」

「でしょ。この前チラッと見てみたあそこはイマイチだった?」

「あぁ…流石に浮島で挙げる式は嫌すぎるだろう。いろんな意味で…。」

 

 

 アレは流石にな。

 何処の国だったか覚えちゃいないが、一歩踏み込んだだけでグラグラと、直立もままならない状態だった。

 祝福の日に事故やら怪我やらは見たくないしな。

 

 

「まあねえ。…面白そう、とは思うけど。」

「おにーちゃーん!おねーちゃーん!」

「??」

 

 

 走ってくるのは我がスイートリトルシスター・紗南。

 純白のヴェールがとても良く似合っている。

 後ろに控える純もパリっとしたタキシードが映えるなぁ。ちっちゃいけど。

 

 

「おにーちゃん!おねーちゃん!紗南と純くんの式場も決まったよ!」

「はぁ?」

「あのねー、山の奥にねー、おっきい教会があるんだぁー。」

「山の…何だって?」

 

リンゴーン

 

 まてまてまて、山?教会?

 いや、こいつら実の兄妹だろ??なんの式場だ??つーかここどこだ?

 

リンゴーン リンゴーォン

 

 何だよさっきからうるせえ鐘だな。人が真剣に考え事してる時に大音量で鳴らしてんじゃねえよ?

 

 

「こらお前、大事な式の最中によそ見をする奴があるかボケが。」

「あぁ?…親父?何言ってんだてめえ…」

 

「○○…「  」、しないの?」

 

「へ?」

 

 

 突然話しかけてきた親父から声のする方に意識を戻す。

 あぁ、沙綾。素敵なウェディングドレスだ。…で、何だって?

 

 

「だから…誓いの「  」、しないの?私、ずっと待ってたんだよ?」

「さ、沙綾…。」

 

 

 目を閉じて()()()をじっと待ち侘びる愛する妻。

 待ってろ、今その重大な任務を遂行しに…

 

 

 

**

 

 

 

「…あ"っ。」

 

 

 夢か。道理で流れも世界観も滅茶苦茶な訳だ。

 結婚式とか、俺別にそういうんじゃ…いや、最近の沙綾のべたべたっぷりに影響されている部分も認めなくてはいけないかな。

 それはそうとここは、いつもの沙綾の部屋。最近はほぼここで寝泊りしている気がする。

 ちらりと壁に掛かっている時計を見る限りもう昼らしい。部屋の主は今頃下で手伝い中だろうな。

 日曜の昼時ってことは、常連新規問わずにそこそこの賑わいを見せる頃だろうしな。面倒だろうし下には降りないようにしよう。

 …にしても、久々に予定のない日曜だからって少し寝すぎたらしい。

 おまけに姿勢も不自然だったようで、首やら肩やら少し凝り固まっているようだ。

 

 

「もうすぐピークも引くだろうし、それまで少し時間潰していこうか。」

 

 

 改めて沙綾の部屋を見渡す。

 大体面白そうなものは漁り尽くしちまったし、他に何か時間を潰せそうなものは…と。

 

 

「…あれ?こりゃなんだ。」

 

 

 机の上に見つけたのは一冊のノート。

 こういう場合、ありがちな展開としては「思わず開いたそれが沙綾の日記で、内容を読んだことが沙綾にバレて」みたいな流れかね。

 まぁそんなアホな定番もないだろ。あんなのは作り話のわかりやすいテンプレでしかないさ。

 何の気なしに適当なページを開くと

 

 

 

”7月4日

 

今日も○○がうちに居る。

 

紗南は最初から心配していなかったけど、純も少しずつ懐いてくれているようで嬉しい。

 

このまま―――”

 

 

 

…おい、まじか。

 

 

「…沙綾。こんなところに置いとくお前が悪いんだからな。

 これはもうフリにしか感じられないぞ…。」

 

 

 少し読んでしまった手前、気になるのは確かだ。

 もう一度開き、続きを読む。

 

 

”7月4日

 

今日も○○がうちに居る。

 

紗南は最初から心配していなかったけど、純も少しずつ懐いてくれているようで嬉しい。

 

このまま2人が本当の弟・妹になって、○○が本当に私を貰ってくれるといいな。

 

なんちゃって。気が早いよね。”

 

 

 

「―――ッ。」

 

 

 またパラパラとページをめくり適当な日を見る。

 

 

 

”7月14日

 

お店が忙しいせいもあってすごく疲れた。

 

でも、お父さんもお母さんもあんなに一生懸命になって頑張ってる。

 

まだ若くて動けるはずの私が弱音なんか吐いてちゃだめだよね。

 

ファイトだ!!

 

 

そういえば、昨日と今日は○○と話もしていない。

 

自分の家にいるんだもんね。

 

お父さんと仲良くやってるかな?ご飯、ちゃんと食べてるかな?”

 

 

 

 …あいつ、ほぼ大体の日で俺について触れてんな。

 もっと色々考えることもあるだろうに。店も忙しいんだし。

 

 

「…あれ?」

 

 

 次の見開きは真っ白。空白の2ページ。

 流れからすると15日・16日か。確かその時俺はここに泊まってた気がするが…

 あぁ、次の日は書いてあるな。

 

 

 

”7月17日

 

一昨日と昨日はずっと一緒にいられた。

 

昨日なんか、朝からお父さんが「パン屋の仕事を教える」って張り切ってたな。

 

お父さんが楽しそうなのはいいけど、この家が嫌いにならないといいな。

 

夜は一緒に眠ったし、朝は私が起こしてあげた。

 

○○の寝顔、いつ見ても赤ちゃんみたいで可愛い!!

 

 

でも反動かな。

 

今日、家の前で別れてから寂しくて心細い。

 

何か悲しいことがあるってわけじゃないけど…

 

 

会いたいよ。話したいよ。触りたいよ。

 

○○。”

 

 

 

「……沙綾。」

 

 

その次の日も。

 

 

 

”7月18日

 

朝起きて隣に○○がいない。

 

普通のこと、のはずなのに、なんか変な感じ。

 

寂しい?ちがうか。

 

 

もう、○○が居ないと私が私でいられないのかもしれない。

 

それくらい、○○は私にとって必要なんだ。

 

 

○○が大好きなんだ。”

 

 

 

 これ以上はきっと読んじゃいけない、いや読むべきではない、か。そんな気がした。

 俺は多分今一番あいつの近くにいる。こんな裏技であいつの気持ちを知るのはずるいと思った。

 そっとノートを下の位置に戻し壁の時計を見ると、思ったより時間は経っていて。

 床越しに少し聞こえていた階下の賑やかさも収まっていた。

 

 廊下の様子を伺いながら部屋を出て、階段を下る。

 

 …沙綾が、毎日俺に対してあんな気持ちを持っていたなんて。

 本当に気まぐれで、ただの行き過ぎた友達関係からこんなことになっていると思っていた。

 沙綾は俺を必要としている?一緒に居たいと、本気で願っている?

 仮に俺が傍に居たとして俺に何ができる?いつも面倒を見てもらっているだけの俺の役目は――

 

 

「あ!おはよう。…今日はお寝坊さんだね~。」

「沙綾。」

「…どうしたの?顔、怖いよ?」

「あ、あぁ、悪いな。」

「??…まだ寝ぼけてんの?怖い夢でも見た?」

 

 

 ふと、先程まで見ていた頭の悪い夢を思い出す。

 結婚、か…

 

 

「ははっ、いや、まあな。」

「そっか~。…ごめんね?起こしてあげられなくて。」

「んーん。今日も忙しかったろ?

 …つか、やっぱエプロン似合うな。」

「まぁ、日曜だしね。…エプロンはいつものだけど、急にどうしたの?」

「んー…。気にしないでくれ。

 それよりさ、例えばの話なんだけど。」

 

 

 目の前のこいつが何を望んでいて何を求めているのかは分からない。

 

 

「もし俺が、ここに暫く居候させてくれって頼んだら、どう思う?」

 

 

 だからこそ、訊いてみるんだ。

 わからないなら直接訊く。俺と沙綾の間なら、下手に気を使ったり機嫌を伺うよりその方がよっぽどいい。

 しっくりくるんだ。

 

 

「…え?」

「…ま、迷惑だよな。すまん、なんでもない。」

 

 

 どんな答えだろうと、今は飽く迄「クラスメイト」だから。そこから進んでも外れてもいないから。

 言いたいことは面と向かって言う。訊きたいことは訊くべきだと思う。

 周りが違うって言っても俺はそうするし

 

 

「め、迷惑なんかじゃない!

 私、ずっと言わなかったけど、本当はずっと傍にいて欲しい。えと…その…

 なんというか、朝起きた時におはようって言える場所に、ずっといて欲しい。っていうか…」

「沙綾。」

「ごめんね、うまく説明できなくて。ええと…」

「いいんだ。大体予想はついていたから。」

「えっ…」

 

 

 日記を読んだ、と態々言う必要もないだろう。

 今言わなきゃいけないのは、関係を進めるという()()だ。

 

 

「これは俺の気まぐれなんだけどな。

 …よかったら、暫く居候させてくれないか?もっと沙綾と一緒にいたいんだ。」

「……ッ!」

 

 

 いつの間にか俺にとって、お前の傍が居心地のいい場所になってたみたいなんだ。

 

 

 




<今回の設定更新>

○○:変な夢を見た後って普段と違う行動取ったりしちゃうよね。
   それはそうと、居候が決定しました。
   …ただ、本人は恋愛感情100%ではなく、沙綾を寂しがり屋の友達だと思っています。
   因みに両家のご両親はとっくに了承済みで、本人たちが踏み切らなかっただけです。
   
沙綾:日記では素直な気持ち吐き出す系少女。
   まさか見られるとは思わなかったし、今も見られたと思っていない。
   最初からずっと本気でアプローチしていて、やっと実りそうでよかったね。
   ただ初めて泊めた日から同じベッドで寝泊まりしている時点でね…
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