BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 -   作:津梨つな

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わかみ屋「沙綾プラス黒船」

 

 

「…おはよ。〇〇。」

「………んぁ?」

 

 

 いつもと変わらない朝。

 吐息のかかりそうな距離でにっこり微笑むのは、俺が居候しているここ、山吹ベーカリーの長女だ。

 一緒に寝ることが恒常化して改めて気づいたが、"香ばしい焼きたてパンの香り"×"少女特有の甘い香り"というのは素晴らしい方程式だ。

 

 

「……もう朝?」

「ふふっ、気持ちよさそうに寝てたね。」

「何時?」

「さっき目覚ましが鳴ったばっかりだから…もうすぐ4時半ってところかなぁ?」

「お前、超早起きな…。…ふぁあ………ねむ。」

 

 

 パン屋の朝は早い。

 よくお義父さんが言っている言葉でもあるが、日常として体感すると改めて尊敬する。

 手伝い…というには役割が多い、娘の沙綾でさえこの時間に起きるんだ。よっぽど気合入ってないとできないよな、ホント。

 俺もたまにお手伝いはするが、大体その後の授業時間を睡眠で浪費することになる。早く起きられるようになった分スタミナが持たないんだよなぁ…。

 

 

「おっきなあくび…!かわいいね。」

「そりゃどーも…。まだ行かなくていいのか?」

「〇〇が起きるの待ってたの。」

「一応訊くけど、なんで。」

「一応言うけど、いつものが無いと動けないからかなぁ。」

「………ん。」

 

 

 言うや否や目を閉じる沙綾。別に二度寝しようってわけじゃない。

 朝起きた時と寝る前、つまり「おはよう」と「おやすみ」は必ずキスをしなければいけないらしい。

 …お義父さんとお義母さんも毎日してるし、山吹家のしきたりなのかもしれないな。

 最初こそ抵抗あったものの、居候歴一週間少々にしてすっかり馴染んでしまった。

 そりゃ毎日ちゅっちゅちゅっちゅやってりゃそうなるさ。

 

 

「んっ……えへへ、ありがと。」

「ん…。がんばって行っておいで。」

「うん。…あ、着替え、どうしよう…。」

「?あぁ、今日はワンピースタイプのパジャマだったか。

 スカートのとこ、引っ掛かっちゃうかもな。」

「うん……。流石にこれにエプロンはひらひらしすぎだよね。」

 

 

 ふわりと広がったワンピースの裾を摘まみ上げ、考え込む素振りを見せる。

 差し込む朝日が照らす、均整の取れた健康的な腿が眩しい。

 

 

「着替えて行けば?部屋着か何かに。」

「んー…でもさ、この後また制服に着替えるでしょ?二度手間感がねぇ。」

「どっちか諦めなよ。」

「うぅ……わかった、着替えるよぅ…。」

 

 

 渋々ワンピースを脱ぎだす。

 この濃紺地に水色と桃色の水玉模様が散りばめられたワンピース。前にも聞いたがどうやら彼女のお気に入りらしい。

 数種類持っているパジャマの中で、一番見かける頻度が高いのもこれだ。

 部屋着含む普段の服装には、割とパンツタイプのファッション傾向が表れているので、俺も見ている身としてこのパジャマを気に入っているんだよな。

 

 部屋の中をあっちこっちへうろうろしつつコスチュームをチェンジしていく沙綾を目で追いながら、窓から入ってくる早朝の涼しい空気を吸う。

 この状況にもすっかり慣れたもんだ。

 

 

「そういえば、今日って〇〇日直じゃなかった?」

「…まじ?」

「昨日先生に言われてたでしょ??」

「うわぁ…もう一人は?」

「えっと……あ、今日はイヴかなぁ?」

「若宮か……苦手なんだよなぁ。」

 

 

 若宮イヴ――名前からも察せるように、ハーフの女の子だ。

 物腰は柔らかく、純粋で素直といった印象の子だが、どうにも掴みどころがなく苦手なんだ。

 ハーフと聞いて、初対面時にぐっちゃぐちゃの英語で話しかけたのも嫌な思い出だ。

 未だにあの、『アナタも私に興味があるんですか??面白い人ですね~』とかいう流暢な日本語が頭から離れない。

 ハーフってだけで皆からちやほやされてたしな。仕方ないっちゃ仕方ないか。

 

 

「あー、あの時の話?」

「それもあるけど、未だによくわからん。あいつ。」

「良い子だとは思うけどなぁ…。」

「んー………。遊びにでも誘ってみるかな。」

「えっ???」

「仲良くなればもっと掴めるのかなーってさ。

 …まぁ、今日にでも話してみるか。いい機会だし。」

「えっ?えっ??本気?」

「おうよ。プラス思考だ、プラス思考。」

 

 

 嫌なことに対して嫌だ嫌だ言ってても仕方ないしな。何事も前向きに考えよう。

 俺が一方的に苦手意識を抱いているだけかもしれないしね。

 

 

「ぷ、プラス思考って…。別に、無理して仲良くならなくてもいいんじゃないかな?あはは…」

「向こうがどう思ってるかはわからないけど、人と仲良くできるに越したことはないだろ。

 …それに、考え方自体はお義父さんからの受け売りでね。

 『嫌に感じる物事の、何か良いところを1つ見つけられたら、そこから見える景色が変わってくる』って。…めちゃ格好良くねぇ?」

「……お父さんめ。」

 

 

何やらお怒りのご様子だ。

 

 

「えと…あ、ほら、手伝い行かないとヤバいんじゃないか?結構時間たってるぞ?

 …俺は、なんだ、その…もっかい寝る!おやすみ!」

「…ふーんだ。いってきます。」

 

 

 どこが気に障ったのだろうか。…ツンとした表情のまま部屋を出て行ってしまった。

 まあいいか。機嫌悪い日くらい誰にでもあるだろう。

 今は取り敢えず、もう二時間くらい寝ておこう…。

 

 

 

**

 

 

 

 さて、もうすぐ一日も終わりだ。

 沙綾がベッドで手招きをしているので手短に今日の成果を書き記しておこう。

 

 

 まず、そう遠くないどこかの休みの日にイヴと沙綾と俺、三人で遊園地に行くことが決まった。

 イヴはモデルをやってるらしく、仕事が忙しいので決まり次第、と言っていた。…あ、因みに呼び方を下の名前にしたのはイヴ本人からの要望だ。

 『仲良くなるために、まずは距離感を縮めましょー!それがブシドーです!』との事。

 武士道は別に志しちゃいないが悪くはない展開だ。…にしても、女の子って皆名前呼びしてほしいもんなのかな?いつかの沙綾もそんな感じだったし…。

 

 というか、沙綾も休日は基本的に家が忙しく、今までも遊びやら何やらは断り続けていたはずなのに…。

 そんなに行きたかったのか?あの"ミッシェルランド"とかいう遊園地。

 

 

 で、次。

 今さっきやっと解放されたところなのだが、珍しく酒を呷るお義父さんの話に付き合ってきた。

 どうやら沙綾と喧嘩したらしい。珍しい事ってのは重なるもんだ。

 「嫌われちゃったかなあ?余計な事って、俺何言ったかなぁ?」と終始悲しんでいらっしゃった。

 

 

 今となってはすっかりご機嫌な沙綾。明日もまた早起きなんだろうか。

 

 

「〇〇ー、早くー。電気消すよー??」

 

 

 あ、じゃあそろそろ寝る時間なんでこの辺で。

 

 

 

 




<今回の設定更新>

〇〇:沙綾は友達。親友くらいには思ってるかもしれない。
   無事イヴちゃんとも仲良くなれそうでちょっと浮かれている。
   
沙綾:もう嫁じゃん。
   実は主人公用に宛がわれた部屋もベッドもあるのだが、
   そちらで過ごすことを沙綾がやんわり阻止するため、毎日を同じ部屋で過ごしている。
   不思議なことに何も起きていない。

イヴ:初対面の時のへったくそな英語が印象に残っており、
   主人公への近づく機会を窺っていたところでの日直当番だった。
   …波乱、起きそうです??
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