BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 - 作:津梨つな
「……ええと、この手は何??」
「知らない?恋人繋ぎって言うんだって。」
「…それは知ってる…けど…」
態々学校の中でまでする必要ないだろ。
あの長かった風邪から復帰してからこっち、もう4、5日くらいにはなるが、登下校も含めて大体の時間はこうして手を握られている。
…おかげで、学校の居心地が悪くて仕方がない。同級生からは哀れみなのか微笑ましさからくるものかわからないが、生暖かい目で見られていることは確かだ。
後は、前にもましてイヴがちょっかいかけてくるくらいか…。
「嫌…なの?」
「嫌ってわけじゃないぞ。…いや、場合によってはかなり嫌かなぁ。」
「そう、なんだ……。」
しまった。目に見えてわかるくらいシュンとしてしまった。最近は何故か髪を下ろしていることが多く、今日もご多分に漏れずそうなので、より一層落ち込んでいるように見える。
ポニテは元気の証だったのかなぁ……。
「あぁいや!嫌だって言う言葉が間違ってたなぁうん!ええと、ほら、ご飯食べてる時とかもさ?右手繋いじゃうと俺箸使えないからさ?そういう…」
「確かに。…じゃあ、私が全部あーんしてあげるから、それならいいよね?」
「は………」
参ったな。八方塞がりだ。
甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのは非常に有難い話だが、最近の沙綾は少し行き過ぎている気がする。どうしたもんか。
「今日もラブラブですね!お二人さん!!」
「イヴ…」
「イヴ、なんか用?」
おいおい、いきなり喧嘩腰は良くないぞ沙綾。
相手がイヴだから気を悪くしていないだけで、他の同級生にやったらギスるから本当にやめよ。な?
「サーヤさんは、最近どーしてずっと手を繋いでるですか?」
「…別にイヴには関係ないでしょ。」
「えぇーっ?気になりますし、羨ましいんですよっ!!
やっぱり、落ち着くですか?…それとも興奮するです?」
「……両方、間違っちゃいないかな。」
「…お前、手ぇ繋いでる間ずっと興奮してたの?」
「ち、ちちち、ちがうもん。そういう興奮じゃなくて、その……」
「わかりますっ!大好きな人と体の何処かが触れ合っている…とても興奮、というか高揚?しますよね!」
嬉しくてハイになるって感じか?…確かに、それならわからなくもないけど…
ところでイヴ。…お前いつの間に俺の左手とドッキングした?全く気付かなかったんだけど、しっかり恋人繋ぎやん。照れる。
「あぁ…何となくわかるわ。…今凄く幸せな気分だもん。」
「…ほ、ほんとっ!?〇〇も分かってくれるんならずっとこのままで……」
「確かにこれは素敵なものですっ!繋いでいる部分から温もりが広がっていく気がしますね!」
「…何でイヴも〇〇と手繋いでんの?…私の特権なんだけど…」
おいおい、そんな特権俺も知らんぞ。というかここでヒートアップするのやめよう?教室中ざわついちゃってるし、この一歩引かれたような距離感って取り戻すの大変だと思うんだ。
「サーヤさんと〇〇さんはお付き合いしてるですか?」
「うっ……ま、まだ、正式には、してないけど…。」
若宮イヴの先制攻撃!……沙綾は狼狽えている。
「正式とかあったのか。」
記者会見でも開くんかね。
「じゃあよくないです??」
「うぅぅ、でも!でも……」
若宮イヴの追撃!!………沙綾は泣きそうだ!
「…私に取られそうですか?」
「………別に、心配は、してないけどさ…。〇〇、私にべったり甘えてるし。」
若宮イヴの変化球!……沙綾は少し惚気ている。
「…まぁ、言い方はアレだけど世話にはなってるよ。」
「〇〇…。」
俺のサポート!…沙綾は
…疲れたからこのノリやめていいかな?
実際家にも置いてもらって、身の回りの色々なことを世話してもらって…。あれ、沙綾って奥さんって言うよりお母さん??
「でも、だからって〇〇さんを独占する権利はないと思います。手を繋ぐくらい別に……ねー?」
「ねー。……あっ、ごめんつい。」
「…なに〇〇。〇〇もイヴの方がいいんだ?イヴをお嫁さんに貰いたいんだ?」
何故そんなぶっ飛んだ話に…。嫁の話なんてしてないだろうに…。
「あっ、ウェディングドレスならこの前着ましたよ!…見ます?〇〇さん。」
「おぉ、そりゃ興味あるな。…写真?」
「むむむむむ……」
胸元からスマホを取り出すイヴ。今明らかに収納出来なさそうなところから取り出していたが、今は気にしないことにしよう。
…ふんふんと鼻歌混じりに操作し、お目当ての写真を見せつけてくる。
「おぉぉぉぉぉおお……!!!」
「ふわぁぁ…!!」
「綺麗です??」
もう何つーか、芸術品みたいだった。これぞ花嫁、清楚の極み。身に着けている純白のドレスはまるで特注のように馴染んでおり、その綺麗な背中と相まって今にも翼でも生えそうなほど神々しい。
…こんなお嫁さんを貰える奴はさぞ幸せだろう。
「最高だな。」
「…イヴ、すっごく綺麗…。」
「わぁいっほんとですか??…見せといて何ですが、スッゴク照れます…。」
「……ッ。」
その恥じらう表情までもが……。こと美少女要素に関しては世界一かもしれないなぁ、この武士道少女は。
隣の沙綾も、先程迄の不機嫌さはどこへやら。純粋な賞賛をイヴに贈っている。
「…私も、いつかこんな風にウェディングドレス着るのかな。」
「……着たいのか?」
「そりゃぁ…ね。私も一応、女の子だから。」
「ふぅん。……きっと似合うと思うぞ。沙綾、美人だから。」
「はぅ…。」
その日がいつかは分からないが、きっと素敵な事だろう。…沙綾の結婚式ねぇ……その時、隣に立っている男はどんな奴なんだろうか。
その時俺は、素直に祝福できるんだろうか。
「…ふぅん。…これは中々にややこしいですね。」
「何か言ったか?イヴ。」
「いえー。……〇〇さんは、サーヤさんの事好きじゃないです??」
「え?好きだけど?」
「………うーん、これは強敵です…。」
一体何のこっちゃ。
ま、妙なギスギス感は無くなったようでよかったよ。…と、再度繋がれた両手の温もりを感じつつ、しみじみ思った。
「……イヴ。」
「なんですかぁ?サーヤさん。」
「…この男、相当分かりやすく伝えてあげないと難しいと思う。
私なんて毎日一緒に寝泊まりしてるのにこの扱いだもん。」
「…強敵ですね。」
だからどうして俺を敵にしたがるんだねお前さんは。
沙綾も、どう扱ってほしいってんだよ。
…どうもまだまだ分からないことだらけらしい、俺の周りの女の子は。
<今回の設定更新>
〇〇:幸せ者め。
恋人繋ぎをされても、指の間汗かくわーくらいにしか感じないレベル。
全人類の敵かもしれない。
沙綾:がんばれ。まだまだ報われないぞ。
イヴ:地味ーに攻めてきている。行く行くは乗っ取りか??