BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 -   作:津梨つな

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依存屋「二人の為に」

 

 

 

 ―――俺は初めて、学校を()()で休んだ。

 いや、ある意味これは病気なのかもしれない。

 

 

「あっ、こらー。ちょっとトイレ行ってくるだけだってばー。」

「本当か?どれくらい?」

「…女の子のトイレの時間訊くとか、デリカシーないなぁ…。」

「あっ、いやっ、その」

「ふふっ。……ちょっとだけ、待っててね?」

 

 

 扉を閉めて部屋を出ていく沙綾。沙綾の匂いで満ちた部屋には俺一人。

 …と同時に止め処無く流れ出す滝のような汗。また()()か…。

 あの日以来。……俺がアイツに、みっともない姿を晒したあの日以来、この"発作"が続いている。

 昨日まではまだ学校も行けた。それでも……今はこのザマだ。沙綾の体温を感じられなくなると…途端に手は震え視界は揺れ焦燥感に駆られる。

 視界に揺れ動くあの綺麗な髪が、耳に染み渡る澄んだ声が、慈しみを感じる繊細な指先が…そのどれもが、今の俺には必要不可欠になっているんだ。

 

 

「さぁ…や……さあや………さあ…」

「ただーいま。」

「沙綾!!」

「わっ!?……っとと、もー○○ったら、犬みたい…。」

 

 

 ―――依存。

 このままじゃいけないのはわかってる。沙綾だってきっと、こんな俺は好きじゃないと思うし。

 

 

「ごめんな?…沙綾まで、学校休むような事態になっちゃって…。」

「いーのいーの。○○が体調崩してるのに、学校なんて行ってられないでしょ?」

「……いや、その理論はおかしい。…いやでも嬉しいし…ええと…」

 

 

 すっかり考えも纏まらなくなってきた。頭が正常に働かない。

 そんな、俺を絡め取るような魅力…いや魔力が、沙綾にはある気がする。

 

 

「ふふふ。…ほら、また具合悪くなったら困るでしょ?

 …一緒に居てあげるから、少し寝よ?」

「え?…あぁ……うん。沙綾。」

「なあにー?」

「……好きだ。……おやすみ。」

「ふふっ、私もだよ。…ゆっくり休んでね?」

 

 

 こうしてまた、全てがあやふやなまま時間だけが過ぎていく。

 甘いだけの、幸せな()()の時間が。

 それでもやっぱり、このままじゃダメなんだ。こんなの、嫌なんだ。

 

 

 

**

 

 

 

「んー?…んふふ、起きたの?○○。」

「…………あぁ、おはよ。」

「…あれ?」

 

 

 目覚めた時、寝る前と同じように隣で寄り添っている沙綾。まるで子猫に寄り添う親猫のようだ、と思った。

 

 

「んしょ……と。」

「あ、あれ??○○??具合、良くなったの??」

「…………沙綾。」

「へっ?な、なに??」

 

 

 ベッドから抜け出て体を伸ばす。…同じ姿勢で眠っていたのだろう。縮こまっていた背筋に、言いようのない快感が広がると同時に()()()目覚めを感じた。

 やっぱり、こんなのおかしいんだ。このままじゃ、誰のためにもならない。

 

 

「ここ何日かは本当ごめんな。…迷惑かけた。」

「えっ、えっ??どうしちゃったの?迷惑なんかじゃないよ!?」

「……アレは何というか…俺らしくなかったじゃんか。なぁ?」

「そ、そんなことない!全部全部、私の可愛い○○だったもん!!」

「………沙綾は、俺のこと好きなんだよな?」

「勿論だよ!私は○○が好き…!一瞬だって離れられないくらい大好きなの!!」

 

 

 ありがとう沙綾。…お前が嘘を吐いていないこともわかる。そして、思い返せばずっとずっと好きでいてくれたってことさえ、痛いほど伝わる。

 

 

「知ってるよ。…いや、最近気づいた、って感じだけど。」

「ねえ、○○。どうしてそんな離れたところにいるの?どうして、こっちに来て私に触れてくれないの?」

「……俺さ、自分の家に帰るよ。」

「………………ッ!」

 

 

 そんな絶望的な顔をするな。別にこれは、別れの言葉じゃない。

 俺が本当の意味で沙綾と一緒に居るための…そう、序章(はじまり)ってやつだ。

 

 

「大丈夫だよ沙綾。嫌いになったとか離れたくなったとかそういうのじゃないから。」

「だったらどうして…!」

「大好きなんだ。……でもこれはきっと恋じゃない。そう気づいたんだ。」

「………。」

「今はきっと、自分の気持ちもよく分からないままモヤモヤし続けたせいで…そう、おかしくなってんだよ。

 ………依存って言葉、わかるな?」

「私は、○○に依存してもらえるの…嬉しいけど…!」

「はははっ、沙綾ならそう言うだろうと思ったよ。……でもそれはダメだ。俺は依存心を満たすために沙綾といるんじゃない。」

 

 

 伝えたいことを、端的に。この体の震えが、汗が、気づかれないうちに。

 

 

「まだやらなきゃいけないことが、整理しなくちゃいけないことがある。

 …沙綾とこのまま深い関係になるのは、何か嫌なんだ。…ズルしてるみたいで。」

「ズルって……」

「沙綾…そういえば最近()()してなかったよな。」

 

 

 未だ放心状態に近い表情の沙綾にもう一度近づく。心が満たされ、体の不調も収まる。困った身体だ。

 少々強引だが沙綾の顎を軽く持ち上げ、自分と重ねる。おはようとおやすみの…

 

 

「………んっ。」

「……ふぅ。世界で一番大切なんだ、沙綾が。……まぁ俺の世界なんてたかが知れてるもんだけど。」

「○○……。」

「俺は帰る。暫く、俺のやるべきことをやってくる。……もう少しだけ待っててくれないか。」

「…帰ってきて、くれる?」

「勿論。沙綾の傍だけが、俺の場所だよ?だからその為にも、さ。」

 

 

 ずっと一緒に居るためにも。……今は俺なりの筋を通させてくれないか。

 

 

「俺なりのやり方で、もう一度お前を…沙綾を堕としてみせるからな。」

 

 

 暫しの我慢だ、俺。そして沙綾。

 待っててくれよ、イヴ。…そして最愛の、沙綾。

 

 

 




<今回の設定更新>

○○:やる時はやる奴。
   人を好きすぎて依存しちゃうことってあるよね。
   …そのまま堕ちるところまで堕ちると本当に地獄見ますよ。
   彼はきっと大丈夫でしょう。武士道?しらんな。

沙綾:もうちょっとで手に入れられたのにね。
   …まさかの逆転劇でした。
   人を依存させる程の魅力があると信じています。
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