BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 - 作:津梨つな
「〇〇ーっ!!見てみて!!雨よっ!!」
「…言われなくても見えてるよ。外に居るんだから。」
大雨が降った。選りにもよって、こころが遊びに来たその日に。
「うふふっ!…♪ぴっちぴっち、ちゃっぷちゃっぷ、らんらんらんっ♪」
「雨なんかそんなに珍しくもないだろうに…。」
「うーん…すっかり燥いじゃってぇ…」
「横澤さん、カメラ、濡れますよ。」
で、大雨の中何故みんな揃って外に居るのかというと…。
今回は珍しく、こころの気紛れ"だけ"ではないんだよな。
「取り敢えず、事の発端の回想入れときますか。」
「横澤さん、そんな進行役まで…」
**
「遊びに来たわよっ!〇〇っ!!」
「はいはい、上がってくれ。」
「わーい!!」
大雨の降る昼下がり、窓を叩く大粒の雫の音と共にお嬢様と黒服が訪れる。
これだけ書くと、まるで小説のプロローグにでもなるんじゃないかってほどかっこいい描写なんだよな…。
相も変わらず元気いっぱいのこころと、珍しく最初から姿を見せている
「…カメラ?」
「えぇ。御当主様より拝命を頂戴しまして。……これに愛娘の元気な姿を収めてこいと。」
「……なんでまた。」
「実は、〇〇様との交流のご様子はいつも報告しているんですが…。」
「まじかよ。」
「そのご様子が気になるのか、是非一度見てみたいとの事だったんですが。」
「……こころが嫌がる、とか?」
「いえ、ご当主様が「恥ずかしくて無理」とのことで。」
なんじゃそら。…いい歳こいたおっさんだろ?少なくとも俺よりは上だと思うし。
「そっか…折角可愛いのに、見れないなんて可哀想だな。…あ、それでカメラか。」
「はい。お察しが早くて助かります。」
どうやら今日一日、カメラでこころをつけ回すらしい。少し遠めから。何だか「人生初めてのおつかいをする子供を追い回すあの番組」みたいだなと思いつつ、横澤さんを部屋の奥に引き連れていく。
こころの足跡を辿る様にして奥へ……いやいや足跡って。
「こころぉー!!!」
「……はぁい!…何かしら??」
廊下の奥、点々と足跡が続いていった先の部屋の戸枠から頭だけだしたこころが返事をする。
「お前さん、今日は裸足なのか?」
「??ええ、そうよっ!」
「…サンダルで?」
「そうよ??…んっとね、向日葵の飾りがついた、可愛いやつっ!!」
「別にどんなサンダルかは聞いてない。
…雨の中、裸足でサンダルを履いてくるとどうなると思う?」
「うーん………びちょびちょ?」
「正解。…じゃあ、そのびちょびちょの足で家に上がるとどうなると思う?」
「………足が汚れる?」
おい。どうして外よりうちが汚いみたいになってんだ。
お前の足が汚れとるんじゃ…。
「…この足跡見てみろ。」
「…?…まっ!あたしのところまで続いているわ!!一体だれがついてきてるのかしら…。」
「はいはい、馬鹿なこと言ってないでこっちこい。足拭くから。」
「はぁい。」
不思議そうな顔のままとてとてと走って寄ってくる。…裸足で過ごすのは良い事だが、外から入ってくるときは別だ。汚い足で部屋を歩かれたら部屋の主は怒るだろう。
「足、どうやって拭くの??」
「…そうだなぁ…。」
地べたに座らせるのもなぁ…。とすこし考え、周りに座る場所がないか探す。
とは言えここは玄関から少し進んだあたりの廊下。普通こんなところに座る場所を設けるわけもなく…。
「そうだわっ!」
「んー?」
「折角たくさん雨が降っているんだし、お外で遊びましょう!!」
や、言ってることの矛盾がすごいんだが。降ってるからこそ屋内でだなぁ…。
「お嬢様、それではこれを。」
「わぁ♪カッパね!!」
レインコートの準備が早ぇんだよ横澤さん…。
そうして黄色い雨合羽に身を包みご機嫌なこころに手を引かれるまま、土砂降りの外へと繰り出すのだった…。
**
まぁ、いい大人が雨の中外に出たからといって、特に何かがあるわけではなく。
結局無表情でシャッターを切りまくる横澤さんの隣で、傘に跳ねる雨の音色を聞いて立ち尽くす。
あぁ、なんだか俺、
「横澤さん。」
「…なんでしょう。」
「…連絡先交換しない?」
「…急ですね。」
「…こうじめじめしてるとさ、何か良い事でもないと、ね。」
「…へぇ。〇〇様、ナンパのおつもりですか?」
「そんなつもりはないけどさ、…こころのこととか、もっと知りたいと思って。」
「それならば、お嬢様と直接コンタクトをお取りになっては?」
「んー………なんかさ、犯罪臭?がするじゃんか。」
「よくわかりませんが。」
「…まぁいいや。」
「そうですか。………別に交換してもよかったんですが。」
「………そう?じゃああとで。」
「………え、えぇ。」
横澤さんとの交渉が成立したところで、何やら木の根元辺りでごそごそやっていたこころからお呼びがかかる。
…にしても本当に、放っといても一人で延々遊べる奴だなぁ。そういうところも飽きないところだなぁ。…手がかからないってのもいい。
「…どうしたんだ?」
覗き込む俺の目の前に、にゅっと何かを突き出してくる。
「えすかるごっ!!」
「うぉ!……あー、カタツムリか。」
殻を摘まみ上げられる様にして空を飛ぶかたつむり。こんなにまじまじと見たのは子供のころ以来だなぁ…。
…あっ、足場がなくなったことに驚いているのか、めちゃくちゃ触覚が荒ぶってる。
「かわいいもんだなぁ。」
「………これ、食べられ」
「食べられないよ。」
「………まだ全部言ってないのだけれど。」
「お前の言うエスカルゴってのはアレだろ?フランス?料理の。」
「うん。」
「……腹減ってんのか?」
「…ちょっと。」
「そっか。…でもその子は食べないで上げような。」
「どうしても?」
「どうしても」
そんなに食いたいかそれ。絶対まずいぞ。
「そうだわ!!」
「?」
「美咲にも教えてあげましょっ!!」
思いついたようにポッケからスマホを取り出し、電話をかける。
…このタイミングで?美咲ちゃんに?…一体何を教えてあげるってんだ。
「……あっ!もしもしっ、あたし、こころ!」
「………うん、うん。…そーなの!!」
「……あっ…えーっと、えすかるごっ!」
「…??…えすかるごっ!……しらない?…えすかるご…。」
「………んーん、ちがうわ。……えすかるご。…………でもね、○○が、食べてはいけないって言うの。」
「……うんっ!……じゃあまた、学校でねっ!えすっ…美咲!!」
うーんどこから突っ込んで良いやら…。
ひとまず美咲ちゃん、ご愁傷様。きっとなんのことか訊こうものにも、こころからは「えすかるごっ」しか返ってこなかったんだろうなぁ。
ゲシュタルト崩壊しそうだ。
「ぅっ……くくっ……」
少し後ろでは横澤さんが酸欠になりかけている。そんなに面白かったかエスカルゴ。何なら食わせてやれエスカルゴ。
「エスカルゴって……カー○ィにいた変な奴ですよね……ぶふーっ!!」
「…横澤さんがわからんゾイ。」
相変わらず勝手にツボって…あの人もあの人で楽しそうな人だこと。
「……ん。」
袖をくいくい引っ張られる感覚に視線を戻すと、何やら切なそうな顔のこころ。
「どうした?」
「…えすかるごさん、おうちに帰っちゃったの。」
「おうち?」
こころの摘んだかたつむり。殻からは先程の荒ぶり君の姿が見えない。…どうやら殻に戻ってしまったらしい。
「そっか。…じゃあえすかるごさんは元の場所に戻してあげて、俺たちも帰ろっか?」
「うん、そうする。」
「ん。…よしっ、じゃあ行くか。」
「……んっ。」
「??……あぁ、手な。繋ぐからそんなに押し付けんな。」
両の手の平を俺の両頬へぐいぐいと押し付けてくる。…手を繋いで欲しい時のサインだということは最近わかったが、それ、蛙やらかたつむりやら色々触った手だよな?勘弁してほしいな?
…顔がベタベタになるのを防ぐためにも、押し付けられている手を取りしっかりと握る。……うん、満足そうな笑顔だ。
「むふー。」
「………横澤さんも、帰るよ。」
「……くくっ…、ええ。わかりました。」
「雨の日は色々な発見があって楽しいわねっ。」
「お前それ晴れてても曇ってても言うだろ。」
「毎日が楽しいことでいっぱいなのっ!……あっ!」
急に足を止め振り返る。
…忘れ物か?最後に居た木の根元あたりをじっと見ている。
「…ばいばいっ!えすかるごさんっ!」
あぁ。挨拶はしっかり出来る子だったね。
<今回の設定更新>
○○:蛙もかたつむりもこころもみんな可愛いと思っている。
雨の日がちょっと好きになった。
こころ:無邪気。えすかるごっ。
書いてるうちにどんどん子供っぽくなってしまっているのはきっと気のせい。
自然大好き、生き物大好き。主人公は大大大好き。
…手をつなぐのも好き。
横澤さん:相変わらずツボがよくわからない。
こころの親父さんに託されたカメラはメモリいっぱいまで写真が詰められた。
秒間16連写が特技。
このあと滅茶苦茶連絡先交換した。