BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 -   作:津梨つな

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こころの中に落ちる影

 

 

「うーん。……あっ!……ちがうわ。」

 

「………。」

「………。」

 

「これなら…っ!だめねぇ。」

 

「……なあ。」

「はい。」

「あれ、何やってるんだっけ。」

「お嬢様は今、「もっと友達大量生産大作戦」の計画中でございます。」

「……友達は生産するもんじゃねえだろ。」

 

 

 何を躍起になって書き散らかしているのかと思いきや、そんなことを…。見た感じ、第一印象というべきか、こころは割と打ち解けやすいというか友達に囲まれて~な子だと思ってた。

 それが蓋を開けてみたら"友達大量生産"…ね。

 

 

「こころ、友達いっぱい欲しいのか?」

「ええ!きっと仲良しさんは多いほど楽しいもの!!」

「そういうもんかね。」

「……○○は、お友達いないの??」

「う"っ」

 

 

 無垢な顔して心を抉ってくる。こころが、心を……ふふっ、またつまらぬ事を言ってしまったな。

 

 

「ブフッ……○○様、相変わらず、お戯れが、過ぎるようで……フェヒッ」

「横澤さん、人の心読んで笑うのほんとやめて。…あっ、また心って言っちゃった…」

「アッハッ!!……ンフー!ンフー!」

「……ありゃもう手遅れだ。」

 

 

 口を必死に抑えて顔を真っ赤にしている横澤さんを尻目に、再びこころへと視線を戻す。…あっ、こころ、その目はいけない。自分のお付の人をそんなに冷たい目でみちゃいけません。

 

 

「こ、こころ?」

「…あっ、ごめんなさい。カナコがいつもの状態に陥ってるなって。」

「うん、それはもうどうしようもないよな。」

「ええ。」

 

 

 あれはもう病気みたいなもんだし、使用人ガチャに外れたと思って我慢するしかないのさ。……まだジタバタしてるし。

 

 

「で、だ。具体的に作戦は何か思いつきそうなのか?」

「んー。それが結構難しいの。……どうしたらみんなと仲良くできるかしら??」

「クラスの子とかにさ、朝の挨拶して雑談して~って流れじゃダメなのか?」

「あー無理無理。不思議と避けられちゃうのよ、この子。」

「……あれ、いつからいたの?美咲ちゃん。」

 

 

 確かうちのチャイムを鳴らして入ってきたのはこころと横澤さん、いつもの二人セットだけだった筈。…そのあともドアが開いた気配はなかったし、黒服さんの出入りも見ていない。

 

 

「あぁ、こころ達が入ってくる少し前に、そこから。」

「そこ?………美咲ちゃん、うちにはちゃんと玄関っていうのがあってね?その指をさしてるものは窓と言って、空気とか偶に虫なんかを入れるためのものなんだよ。」

「はぁ?あたしは虫ですか?」

「キレるんなら玄関から入んなよ…。」

 

 

 こっちがキレたいわ。

 …と、こちらでアホな二人が揉めてる間も、こころは黙々と手を動かしている。いい案が浮かんだのだろうか、先程までの独り言は全くと言っていいほど無い。

 

 

「………じゃあ、邪魔しないように俺達はあっちで揉めようか。」

「はぁ?もういいでしょ。別に怒ってないし。」

「何なんだ君は…。」

 

 

 今この空間で謎ランキングを集計するとしたらTOPに君臨するのは間違いなくこの女王・奥沢だと思う。全く読めない、どころかもう意味がわからない。

 とは言え、さすがにこころの友達を長いことやっているだけあってか、邪魔にならないように部屋の端の方へ俺を引っ張っていく美咲ちゃん。めっちゃ力強いやん自分。

 

 

「…ここならいいかな。」

「なに、こんな端っこまで連れてきてくれちゃって。…告白?」

「あたしにだって人を選ぶ権利くらいあるんですよ。」

「………続けて、どうぞ。」

 

 

 どうしよう、最近の美咲ちゃんやたらと当たりが強くて心が折られるんだけど。残機がもう……。

 

 

「実のところね…こころ、学校じゃ有名人でして。」

「そりゃあんなご令嬢だもん、有名にもなるよ。」

「あいや、そうじゃなくて…。割と暗いというか、学校じゃ笑顔どころか言葉も発さない子なので。」

「うっそやろ。」

「本当ですよ。……ほら、写真。」

 

 

 突きつけられたスマホに映る、窓際の席で一人弁当を突く俯きがちな美少女。……え、これマジ?

 

 

「…ね?あたしがこころの家に遊びに行ってもあまり笑ったりしないし、この家に居る間だけなんですよ…こんなこころが見られるのは。」

「それは……」

 

 

 確かに、それなら突然友達云々言い出したことにも合点がいく。…だが、それを知ったことでどうする?俺に何ができる?

 美咲ちゃんも、何を思って俺にそれを伝えたんだ?俺なら何かができると思って?

 

 

「美咲ちゃん……。」

「…ん。」

「友達って、どうやったらできるんかな…。」

「知らないですよ。あたしも割とぼっち寄りですし。」

「えぇ……。俺もだよ。」

「知ってますよ。…で、カナコさんもぼっちです。」

「まぁ社会人だし…。大人になってから友達って難しいしね…?」

「いえ、酒癖が悪いんですよあの人。…黒服連中の中でも浮いてるみたいで。」

「えぇ……??」

 

 

 なんてこった。こころの問題が発覚すると同時に、ダメな大人二人の存在も浮き彫りになってしまった。なんてこった。

 

 

「……横澤さん。」

「ぼっちの件ですか?如何にもでございますが。」

「あっさりと……じゃなくて、こころの件だけど。」

「…それは私に訊かれても。結局お嬢様は、○○様に頼っているんですよ。」

「俺に?」

「ええ、○○様は大人で唯一信頼している方らしいので。」

 

 

 それはそれは、責任重大だな…。

 

 

 

**

 

 

 

 その後すっかり辺りを闇が支配した頃。…満足したのか、すっかり草臥れたノートと筆記用具を引っさげ、こころは帰っていった。…あと、気づけば美咲ちゃんもいなくなっていた。

 俺には一体何ができるのか。こころは、俺に何を求めているのか…。

 

 誰にも相談できず、久しぶりに一人酒を呷った夜になった。

 

 

 




<今回の設定更新>

○○:ぼっちその①
   相変わらずほのぼのした一日になるかと思いきや、少し重い命を背負った日。
   下戸。

こころ:何かを決心した模様。
    原作とは違い、イマイチ殻を破れない引っ込み思案な子だったんですね。
    がんばれ。

美咲:賑やかしかと思いきやちゃんとこころのことを見ている外での保護者。
   主人公には辛辣。
   ぼっちでも気にならない派。

横澤さん:今日もツボが浅い。
     酔うと只管に人に絡みまくる質の悪いやつ。
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