BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 - 作:津梨つな
久々の平日休み。
親からの勅命を受け、俺達兄妹は隣街のさらに隣街を目指してドライブ中だ。
勿論運転は俺、ナビ&賑やかし担当は妹のはぐみだ。
平日ということもあってか道は空いている。
二時間近くの運転だが、前後の車間にも余裕があって運転のさほど得意ではない俺にも音楽を鳴らす程の余裕が生まれている。
「にーちゃんにーちゃん、次の曲にしていい?」
「いいよ。…嫌だったか、ハインリッヒーズ。」
「んーん。嫌じゃないけどね、うーんとね、もっと元気な方が楽しいなって思って。」
「いいよ、そのスマホで流してるから、好きなの選びな?」
「わぁい!」
ふんふんふん…♪と口ずさみながらどんどんと左にスワイプしているのだろう。
最初の一瞬のみ聞こえる曲が次々とチェンジされて行く。まるでイントロクイズだ。最終問題クラスの難易度だが。
「…はぐ?その左上の
……そうそう、ずらーっと出てくるだろ?」
「ほんとだ!!ここから選ぶんだね~。
さっすがにーちゃん、めかにっくだね。」
「違うよ。」
「…えっとね……これ!」
軽快な前奏が流れ始める。
確かにはぐみの好きそうな、ポップでキャッチーな、明るいテンションの……
「あ、お前、自分のバンドの曲で来たな??」
「にひひー。特別に、隣で生披露してあげるよ!!」
「え?これはぐも歌ってるんだっけか?」
「うん!サビだけ!!」
「………今もサビだけ歌ってくれるの?」
「うん!そこ以外のところ何て言ってるか知らないんだ~。」
知っとけ。
お前ベース弾いてんだろ。信じがたいけど。
「そっかー。……もうすぐサビだぞ。」
「うん!歌うよ!
♪それゅけ!わちゃもちゃわちゃ…あ、これ2番だったや。」
「…せめてサビだけなら覚えときなさい。」
本番は一体どうしてるのやら…。
この一見アホそうな妹がバンドをやってる。
それも、触った事もないベースを弾きながら歌まで歌っている。
更にそれが有料で配信されているというこの事実。全部があまりにも非現実的だが、この子も外に出るとしっかりできるのだろうか。
うーむ、世の中不思議でいっぱいだ。
「他の曲で、完璧に歌えるのは入ってるか?」
「んーとねー…。
あ!これ!」
「なんて曲?」
「わ…わいてんぜろてんしてんぜろ。」
「は?」
「わいてんぜろてんしてんぜろ!!」
「……しらん。そんなの入ってたか?」
「えー、にーちゃんの携帯だよ??
もう流しちゃうね!!…歌ってもいい?」
「歌えるならどうぞ。」
ふむ……ふんふん……
あぁ!……あぁいいねえ…。
「はぐ、ノリノリなところスマンが、これ"ヨロ"って読むんだぞ。
わい、おー、える、おー、だよ。」
「へー。」
「Afterglow、か…
幼馴染って、響きがもういいよなぁ…。」
しっかし上手いなおい。
あ!サビでは"ヨロ"って読めてんじゃねえか!
その後も目的地に着くまで、他バンドオンリーのはぐみソロライブは続いた。
**
無事予定もこなし。
帰りに夕食をと、大盛りで有名な店に寄る。
一人前こそ普通だが3人前サイズ、4人前サイズと見た目も実量もインパクトが増していく。
「はぐみね、この一番大きいのにする。」
「や、絶対無理だって。4~6人前って書いてあんぞ。」
「でも、すもうれすらーってかっこいい!」
「相撲レスラー…飯のサイズに付ける名前じゃねえなこりゃ。」
「ねーねー、にーちゃん、これがいい!」
「えぇ…絶対残すだろ…
兄ちゃんと半分こする?」
「うーん…じゃあ、まずこれだけ注文して、全部食べれそうだったらにーちゃんも頼めばいいと思うっ!」
我儘か。
「はぐ…お前天才だな。」
結局まずはぐみのオムライス・相撲レスラーサイズのみ注文することに。
あ、ドリンクバーもつけた。
「おぉ…こりゃ圧巻だ。」
「山だ…。山が出来てるねにーちゃん!」
「これはすごい…写真撮っとこ。」
「あ、はぐみその写真欲しい!こころんに見せたい!」
「なぜこころちゃんに…。」
「なんかね、こころんのおっぱ」
「ん、言いたいことはわかった。」
こころちゃんとは、はぐみの友達で、同じバンドの仲間だ。確か。
身長の割に大変素敵なものをお持ちなのは知ってる。
「まぁ、話はいいから、冷める前に食っちまおう。」
「もう半分食べたよ。」
「大食いの人かお前は。」
そういえばこいつ超早食いなんだったっけ。
いつも量が多いせいで早いイメージがないけど、改めて見ると掃除機みてえだ。
みるみるうちに山は削られて行き、綺麗に整地されていく。
あ、これ全部行ける流れだわ。
「はぐ、全部食べられそう?」
「うん、よゆー。」
目の前で見ていても信じられないが、これなら安心だ。
俺はまぁ、そんなに大食いな方じゃないし、普通に1人前でいいや。
再度店員を呼び、自分の分とサイドメニューを注文する。
オーダー取りに来た店員のお兄さん。その表情、わかるぜ。
態々取り皿と取り分け用のスプーンまでくれたのに、小さい女の子の方が空にしてるんだもんな。しかもこの速さで。
「なあ、すげえ食った分ってどこでどう消費されてるんだ?
はぐ、背も大きくないし太りもしないだろ?」
自分の分が来たが熱くて食べられないので冷ましつつ訊いてみる。
もしかしたら恐ろしく燃費が悪いのかもしれない。
テーブルを挟んだ向かい側でジンジャーエールと野菜ジュースを混ぜて遊んでいた妹は、俺の質問に身体をまさぐり始める。
やがて、とことこと隣に来たかと思うと俺の手を取り。
―――
「!?」
「なんかね、最近柔らかくなった気がするからここかもしれない!
こころんみたいになれるかなー。」
妹よ、いつのまにかちょっと成長しちゃって…。
お兄ちゃんは、複雑です。
「はぐ、今の、兄ちゃんだからいいけど、ほかの人にやっちゃだめだぞ?」
「えー?うーん、しないよ。
にーちゃんでもそうだけど、擽ったいからあんまり嫌!」
「うーん理由は不安だけど…まあいいか。」
あまり知る気がなかった新事実も知りつつ、満腹になった二人は帰路に着く。
案の定というか何というか、行きであれだけ燥いだ後満腹になった妹は、帰りの助手席ですやすやと寝息を立てていらっしゃった。
うん、寝顔も天使だなぁ…。
そのぷにぷにとした頬を暇つぶしに弄りつつ、すっかり対向車の居なくなった道をのんびり帰るのであった。
頬を突っついた時にあの膨らみの感触が頭を過ぎったのは内緒だ。兄としても、それはいけない。
<設定更新>
○○:実はハロハピメンバーとは大体顔なじみ。
前回の話時点では又聞き程度だったが、その後みんなでご飯に行きました。
こころを見ているとはぐみを見ている気分になるらしい。
はぐみ:最近新しい経験や発見の毎日に色々成長が見られるよう。
気づけばベースも弾きこなしてるし、日本語もしっかりしてきた。
『ハロハピは学校』