BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 - 作:津梨つな
「おーい、香澄ー?
…あれ、かーすみー??」
先ほど後ろでギターを弾いていたはずの
ギターはある。
…どこいった?
「香澄ー?」
呼べども返事もなく姿も見えない。
ギターはある。
と、そのとき。
「か…香澄ぃいいいいい!!!」
トイレから聞こえた物凄い破壊音に、いやそれよりも愛すべき妹の悲鳴に、
持っていたケータイを放り投げた俺は全力で階段を下った。
「香澄!無事か!?」
「うえぇ…うぇええええええ」
生憎とトイレには鍵が、そしてその向こうからは悲痛な叫びが。
「大丈夫か!?クソッ…とりあえず、鍵を開けろ香澄!!」
「うぅぅぅ……ひっく、ひっく…」
「よくやった香澄ぃ!!」
勢いよく開けると。
そこには、破壊された便器のフタが破片となって散らばり、便器の中には可愛い香澄の綺麗な左足。
右足は曲がっちゃいけない方向に曲がりその素晴らしい身体と共に床に横たえられていた。
香澄お気に入りのMP3プレーヤーも真ん中でパックリと二つに割れ破片と群れるように投げ出されていた。
その惨状を前に、俺は思ったより冷静で、痛みを与えないように足を便器から引き抜き、廊下に香澄を寝かせ、寄り添いながら救急車を呼んだのであった。
当時高1だった俺にしては中々の判断力だったと言えよう。
親もいない中で、テンパリのあまり一周回って、却って落ち着いたのかもしれないが。
香澄は、左足の捻挫・右足首と脛の骨折と膝の脱臼。ついでに腰と頭を強く打ったことから入院を余儀なくされた。
**
あれから数年。
「お前さぁ、学習とかないわけ?」
「えへへ…面目ない…。」
現在高校2年になった香澄だが、部屋の角の部分でギターごとダンボールの山に埋もれて動けなくなっていた。
ずっと助けを呼んでいたそうなのだが生憎とヘッドホンのせいで気付かなかった。
すまんな妹よ。
空のダンボールを除け、足がつく場所を作ってやる。
「ありがとう、お兄。」
「パンツ全開だぞ。」
「お兄、えっち?」
「疑問形にするな。男は大体えっちなの。」
よいしょよいしょと言いながら立ち上がった香澄を見るに、今回は怪我等無さそうだ。
「で?なんでこんなことに?」
「うーんとねー。
お兄が通販で溜めた空き箱が一杯あったから、ステージみたいにして練習してたの。
そしたら、盛り上がりすぎて踏み抜いちゃって…。」
うちは大抵のものは通販生活だからね。
そこに溜めてあるのは…あぁ、Amaz○nね…。
…つか上に載るならせめて中身を詰めなさい。よく空っぽの身で少し耐えられたな。
「…香澄、あの時の怪我覚えてるか?」
「トイレに落っこちちゃったやつでしょ?
覚えてるよ。音楽聴きながらトイレしてて、ノリ過ぎちゃって蓋の上に乗ってジャンプしたら割れたんだよね。」
「うん…お前、ほんと馬鹿な。」
「むー…。だって、好きな人の歌だったからぁ…。」
「好きなのはわかるが、そのせいで今も困ってるじゃんか。」
あの時のトラウマからか、香澄は一人でトイレに行けない。
流石に中まではついて行けないが、いつもトイレは付き添いで行っていた。
まぁ、トイレだけでなく、"狭い個室"・"水回り"も想起に繋がるためか風呂場や洗面所もダメだったりする。要するに四六時中一緒だ。
更に、入院していた時に寂しかったのか、寝床も独りを嫌う傾向にあるので、我が家にはベッドが一つしかない。つまり、そういうことさ。
おかげで俺はひとり暮らしもできず、進学に合わせて
今ではすっかり二人暮らしも熟れたもんだ。
「いいもん、お兄が一緒に来てくれるから。」
「…それもそうか。
ま、何にせよきれいに治ってよかったよ。」
「ちょっと脱臼グセだけ残っちゃったけどね。」
「それだけで済んだだけいいさ。
俺が何回でも入れてやるからな。」
「うん!…お兄に触ってもらえるから、脱臼しちゃうのもちょっとはいいかなーなんて…?」
「バカこの。
ならないに越したこたァないぞ。」
「はぁい、気をつけますぅ。えへへへ。」
何せたった一人の可愛い妹だ。
自分の人生なぞ投げうってでも一生一緒に居るつもりだ。
「あ、そうだ。
お兄あのね、そのときに聴いてた歌を歌っていた人のね、新しい曲が結構前に出たんだけど……聞きたい?」
「ん…いや別に。」
「えーっ。…折角歌ってあげようと思ってたのにぃ…。」
「え、あ、香澄が歌うってこと??」
「そーだよ!…いーもんいーもん。お兄なんかしーらないっ。」
やばい。
香澄の歌だって?
ギターを持ったところを見るに、最近練習していたやつか??
録音と録画と…あ、スマホの充電あったっけ。
「おねがいだよ香澄、兄ちゃん、聴きたいなぁ。」
「…ほんと?」
「ほんとほーんと。ほら、録画してコレクションを増やす準備も万端だ。
香澄の歌楽しみだなぁ。」
「…ふふん、仕方ないなぁお兄は…。
じゃあよく聞いててね?……『流星群』」
…贔屓抜きで言っても最高だった。
確かに、飽く迄素人の演奏ということでミスだの技術云々はあるのかもしれないがそれでも。
それでも、流石は俺の妹だと、感激のあまり妹を抱き締めつつ思った。
「香澄はかわいいなぁ…」
「えへへー、知ってるー。」
<今回の設定>
○○:主人公。妹溺愛中。
恋人やら結婚やら、果ては友達までも諦めて香澄に尽くしている。
もう、病気かもわからんね。
香澄:過去のトラウマの為、兄から離れるとパニックを起こす。
学校も通えないため、通信制の高校に入学。
たまにある面談も兄が付き添う形で行っている。