BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 - 作:津梨つな
「ねね、聞いてた?聞いてた??」
「うっせえなぁ…。弾くんならスタジオやら何やら行って弾いてこいよ…。」
「えぇー?いいじゃん○○っちの家一軒家なんだしー。」
「近所迷惑にならなくても俺が迷惑してんの…。」
朝から晩までギターをかき鳴らしていたらしいこの幼馴染。
…"らしい"ってのは、朝出勤前と夜帰宅後の様子が全く変わってないことからの推測だ。まぁいつものこと、ってのもあるんだけど。
こいつ、ギターを始めたのは高校生の時らしいが、それから数年。周りが社会に出てんのに仕事もせず毎日毎日ギターばっか弾き続けてんのは正直異常だと思う。
せめてバイトぐらいせえよ。
「…香澄、君仕事決まったん?」
「えっ?…なんで?」
「何でって…。え?疑問に思う俺がおかしいん?」
「???だってほら、私はギターで手一杯だから?」
「いや当然のように言うんじゃないよ。あのね、働きもしないで毎日毎日うちに居られても困るんだけど。」
この幼馴染、働かずに遊びに来るだけならまだいい。
…帰らないのだ。しかも放っとくと飯も食わない風呂も入らない…いずれ干からびて死ぬんじゃなかろうか。
向こうの母親に相談しても笑いながら「お願いね~」とか言われる始末だし。あの家、まともなのは妹だけだな本当。
妹は、かわいい。
「えー、だってー…」
「だってじゃないの…。風呂は?飯も食ってないんやろ?」
「ぶー…。あっ、ご飯は食べたよ!これ!!」
「喜々として見せてくれるのはええんやけど、それの筒は…?少なくとも飯じゃ無いやんな?」
「あいす!!ぽきってするやつ!!」
あー…あったあった…。
冷凍庫に大量に突っ込んで食うタイミング見失ってたやつな。あれ一人暮らしの身でで処分とかどないせえっちゅうんじゃい。
あ、そうだ。俺別に特定の地方の人じゃないからね。ただ単に語尾とか喋り方が変なのよ。昔の友達のせいでね。
「今日は、それだけ?」
「うん!暑かったから!!」
「へー。じゃあ取り敢えずそのギター没収な?」
「え"」
「え、じゃないよ。夜も遅いし、まずは生活をしなさいな。
飯はこれから作ったるから、お風呂入っちゃいなさい。」
「う"……はぁい。なんか○○っち、お母さんみたい…。」
「君のお母さんこんなに口うるさくないべ?」
「お風呂いただきまぁす!」
自分から振ったくせに聞いちゃいないよ。…いや、俺が勝手に拾っただけか。
あいつの着替えとタオルと用意して、と…。どうせ脱衣所に置いても着てこねえし、居間に置いときゃいいか。
ギターケースは…と。…何事においてもこれくらい真剣になってくれたらなぁ。ギター以外はからっきしだもんな、あいつ。
シャワーを使い始めた合図であろう壁越しの水道音を聞きつつ冷蔵庫の中身を確認。
…まぁ特別なもんはできんでも一人分は用意できるか…。
**
「ただいまぁ…あづーい……。」
「…やっぱ裸で上がってきたか…。暑いのはわかるけど、さっさと服着て髪乾かせよー。」
「うー……。」
「はぁ……。ほい、麦茶。」
「あ"ーり"ーがーどー……んぅ、んっ、んむっ…。ぷはぁあああああ。」
一気か。風呂を溜めるところから任せるといつもこうだ。
温度の加減ってもんをしらんのかねこの馬鹿は。…いや、加減を知らんのは温度だけじゃないか。
今だって一気の後氷まで食い尽くすせいで頭痛にのたうち回ってるし。
「あぁうぅ……誰かぁ…誰かぁ…コーンポタージュを…それか、ホットミルクをぉ…」
「熱いもん飲んだって頭は治らんよ…。ほれ、飯食っちまいな。」
「うぅぅぅぅ。ありがどう…。………おいしい!!」
「ん、特に凄いもん作れなくてすまんな。」
「んーん、○○っちのご飯好きだよ!!」
…まぁ、何食ってもおいしいって言う奴だしな。
「君が何かにまずいって言ってるのを聞いたことないがね…」
「ねえ、○○っち…?」
「…ん、どうした。」
「その…ね。言いにくいんだけど…さ。…おかわり。」
「…そんな腹減るなら昼間からちゃんと食べときなさいや。」
なんつーか、幼馴染よりペットって言ったほうが正しい表現なような…。
懐いてる分には扱いやすいからいいんだけど、今日も帰らないつもりなんかな…。
「えへへへー。見て!全部きれいに食べたよー!」
「…犬か君は。」
皿を見せんでいい。
あぁもう、すっかり忘れてた。髪、濡れたままじゃないか。
「皿は全部置いといていいから…こっちこい。」
「…う?」
「髪、痛むだろ。ついでにドライヤーも持って来んさい。」
「わかった!!」
駆け出す尻にしっぽが見えるぞ…。
曲がり角で姿が見えなくなり、ほぼノータイムでドライヤーを持って現れた。ちゃんと櫛も持ってんな。
「お、言わなくても櫛持ってきたなー?えらいぞや、えらいぞや。」
「えへへー。お願いねー?」
座椅子に座らせ、後ろに回る。
スイッチと同時に吹き出す温い風と轟音。…俺はこの音があまり得意じゃないんだが、髪は女の命とも言うしな。
こいつが自立するまでは毎日こうして面倒を見ることになるのだろう。
そういや、こういう状況を羨ましいとか抜かす同僚もいたが…。全然わかってない。そういうのじゃないんだよな。
期待しているようなことは起こらないし、俺としても早く仕事を見つけて欲しいくらいしか望んじゃいない。
だから、こいつに異性を感じることがあったとしても、異性として好かれるような兆しがあっても、それは気のせいだ。うん。
「はぁーあ。○○っちがお嫁さんになってくれたらいいのに。」
風の合間に聞こえた不穏な言葉もきっと気のせいだろうな。
<今回の設定>
○○:首都の生まれだが、科学の発展により画面越しの友達しかいない少年時代を過ごす。
そのおかげか、様々な方言と訛りが程よく混合した喋り方に。
それでもちゃんと働いて持ち家まであるんだから大したもんだよ、うん。
香澄:24歳現在プーさん。バイトすらしてない。
究極の手段として、主人公を嫁にもらおうと目論んでいる。
ポピパの皆とは今も交流があるが他四人はきちんと社会人をやっているため
色々合わない。
今はぼっち。