BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 - 作:津梨つな
「
溜息を一つ吐き、ここ二時間程集中してやっていたスマホアプリを終了させる。特にスマホでゲームをする方ではない俺だが、この音ゲーだけは珍しく続いている…と思う。
課金もそこそこするし、自信を持って「この子が推し!」と言える子が出来たのも初めての経験かもしれない。…それ程、このアプリには…いや、このシリーズには波長が合ったのだ。
さて話を戻すと、アプリ内では本日限定でクリスマスイベントが開催されている。女子高校生たちの青春をロックバンドに注ぎ込む姿を描いたストリーが主軸の音ゲー…取り分け俺が入れ込んでいるのは"Poppin'Party"というバンドだった。
主人公の所属するバンドであり、どのキャラも個性がしっかり確立されており好感が持てる。
「
メインとなるキャラクター、
端から見れば多少危ない人に見えてしまう程の溺愛っぷりだが、俺個人としてはまだまだ足りない方だと思う。確かに部屋の壁や天井は香澄ちゃん関連のポスターやタペストリーで埋め尽くされ、スマホケースも鞄のキーホルダーも、お気に入りのカードゲームのスリーブも全て香澄ちゃん。
フィギュアは公式系は全て持っているし、金で買えるグッズはほぼ集めた。…それでも足りない。まだまだ満足するには遠すぎるのだ。
「さて今日はどんな香澄ちゃんに会えるのかなぁ…?」
一人暮らし、友人の一人も居ず身内も近くには居ない男が、何の苦労もせず時間を潰せるとしたらそれは妄想に浸ること。いくらしようと誰にも迷惑を掛けないし、金や体力を奪われることもない。その上自分にとって最大限迄都合の良い状態で夢を見られるのだから、これ以上有意義なことはないだろう。
特に香澄ちゃんは主役格を担うこともあって、他の登場人物との交流もそこそこに有り、カップリングの可能性も上々。ネットでも様々な"掛け算"を散見するが、どれも中々に評判がいい。
これ即ち戸山香澄という一人の少女の持つポテンシャル・可能性であって、まさに万能の女神。妄想も捗ると言えよう。
「シーツよし、タオルケットよし、枕カバーの交換もよし。…ふむ、それでは消灯…無限の可能性を秘めた
俺は最近自分の持っていたとある特殊能力に気付いてしまった。…自分の妄想を睡眠時に夢として体験できる能力。
夢をコントロールできる能力と言い換えてもいいだろう。明晰夢の様なアレではなく、夢のチョイスから夢の中での行動・設定・視点等、ありとあらゆるものを好きに支配できるのだ。当然毎晩のように香澄ちゃんと過ごしているのは言うまでもない。
恋人・妹・幼馴染・姉・教え子・同僚・上司……それはもう色んな可能性を試してきた。夢の完成度・自由度は、妄想をどれだけ強く深く掘り下げたかで変動する。お陰で、寝る前にはこのアプリをやりこみ、"香澄ちゃん欲"を存分に高めた状態で瞑想と称した妄想に浸る。気付けばそれが日課となっていた。
その日課は聖夜だという今日でも変わることは無く、俺もまたブレることはない。
「ふふふ…待っていてね香澄ちゃん…。」
さて、そろそろ能力を発動させる時が来たようだ。俺の唯一取り柄とも言えるこの
カチ、カチ、カチ…三度紐を引っ張れば部屋は暗闇に支配される。嫌が応にも眠るしかない状況の中、寂しくないと言えば嘘になる。
勿論香澄ちゃんについてだって分かっている。彼女は手の届かない低次元の存在。文字通り住む世界が違う女性を愛してしまった俺は、恐らく一生この業を背負って一人で現世を生き抜かなくてはならないのだ。
「おやすみぃ…ふふっ…」
だからこそ、妄想は止まらないし現実からは逃げ出したくなるんだ。
――俺の愛する彼女はキャラクター。平面世界に生きる無限の可能性を有し、溢れんばかりの魅力で俺を翻弄させる。
今日も、
未知数の可能性を生きようじゃないか。
<今回の設定>
○○:全ての回の創造主。Poppin'Party、戸山香澄推し。
一応リアルでの生活もちゃんとしているが、夢に生きている。
彼にとって、現実は漏れなくゴミなのである。
香澄:可能性の権化。総じて天使。結婚して。