BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 -   作:津梨つな

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不可避

 

 

「…………!!」

「あれれ~~??○○~~!!どこ行っちゃったのかしら~??」

 

 

 商店街。魚屋とコンビニの間、路地にあるポストの後ろで息を潜める二人――僕と奥沢さん。

 

 

「くっ…しつこいな……まだ動いてくれない…」

「こら、そんなに顔出したらみつかっちゃうでしょ…!

 もっとこっち…!下がってきなってば!!」

 

 

 何故こんなかくれんぼのような状態にあるかというと、事の発端は一時間ほど前に遡る。

 

 

**

 

 

「…ふぅ、何とか締切には間に合ったな…。」

 

 

 夕暮れの街を一人歩く。

 長いこと着手していた1件がようやく僕の手を離れたのだ。これで暫くは直帰、穏やかに自由な放課後を謳歌できるというものだ。

 勿論、好きだから受けるのであって、作業に費やす時間も苦痛などではないのだが、それでも自由な時間というのはやはり良いものだ。

 あぁ、その自由な時間…何をしようか…。

 

 

「ちょ、ちょっとまって○○!!」

「…え?」

 

 

 後ろから呼び止められる。

 この時点で正直、関わり合いになりたくない物への恐怖と嫌な予感がしてはいた。

 

 

「…奥沢さん。」

「はぁ…はぁっ……今日、教室に行ったら…誰も、居なかったから…。」

「……それで態々走って追って来たって?」

「もう、帰るなら帰るって言ってよ…」

「…どうして?」

「だ、だって…あたし達、友達じゃん?」

「…だから?」

 

 

 友達だから予定くらい共有しろとでも言うのだろうか。それは勘弁願いたいものだね。

 友達だかなんだか知らないが、彼女にそこまで僕に付き纏う権利はないだろう。…まぁ、奥沢さんなら、別にいいけど…。

 

 

「だから!…友達が危ない目に遭いそうならそれを守ってあげなきゃって言ってんの!!」

「…はぁあ?」

「もう、いいからこっち来る!!」

「うぇっ、あっちょ…!?」

 

 

 危ない?僕が?ただ帰宅するだけの時間に何があろうというのか。

 考える間もないまま僕の右腕は捕らえられ、近くの婦人服屋へ引き摺り込まれる。

 

 

「お、奥沢さん!…説明を、求めても良いだろうか??

 いや、説明すべきだぞ君は!」

「しーっ!!ばか!みつかっちゃうでしょ!!」

「見つかるって何に…」

 

「もーっ…つまんないわねぇ…。」

 

「!?」

 

 

 この声は…弦巻さん?

 こんなところで、随分とでかい独り言だな。

 

 

「…わかった?今日はこころの、『楽しいもの探し』の日なの。

 …○○、前に一度興味持たれてるんだから、見つかったらどうなるかわかったもんじゃないよ。」

「彼女は天災か…?」

「まぁ、関わったらいろいろ諦めるしかないっていう点は確かにそうかも…。」

「言い得て妙であるな。…ところで奥沢さん。逃げ込むならもうちょっと隠れやすい場所の方が良かったのでは?」

「うるさい。近くに店がなかったんだから仕方ないでしょ。」

「しかしだね、こんなに狭い空間じゃ君との距離もまた僕の精神を不安定にさせるというか…」

 

「あら?美咲と○○!こんなところで何してるの??」

 

「…ッ!」

「……あー…。あはは、見つかっちゃったかぁ。」

 

 

 マネキンの後ろで言い合っていたせいで周囲にアンテナを張れていなかったか。

 声をかけられるまで、近づく悪魔の存在に気付かなかったようだ。

 というか奥沢さんすごい汗だな。僕より君の方が拒絶してるんじゃないか。

 

 

「もうっ!どうして二人とも先に行っちゃうの??

 あたし退屈だったのよ!!」

「いや、しらないし…」

「それに、こんなところで二人で仲良くしちゃって…。

 あたしも仲間に入れて頂戴!!」

「えーっと…」

 

 

 こっちに視線をやらないでほしい。

 返事くらい自分で考えるべきだと思うよ奥沢さん。

 

 

「弦巻さん…。僕はね、今日は家に帰りたいんだよ。

 何もない放課後ってのが久々で、ゆっくり休みたいんだ。…だから、君たちに構ってる暇は」

「ふんふん、なるほど。

 それじゃあ、今日はみんなで○○の家に行きましょう!!」

「は?」

「ちょ、こころ…それはさすがに…」

 

 

 このふたりが…うちに??

 いやいやいや。それはまずい、絶対にダメだ。

 

 

「こころ、それはさ。○○の家のご都合とかもあるっていうかね?

 もっと前もって約束するもんだし、急に行くっていうのも難しいでしょ?わかる?」

「…美咲は、○○の家行きたくないの?

 好きな人の家って、普通行きたくなるものなんでしょう?」

「へ…?………ッ!?」

「……奥沢さん?」

「ちょっとま、いや、そういう……」

「あははは!美咲、お顔が真っ赤よ!!タコさんみたい!!」

 

 

 何をそんなに真に受けてるんだか…。

 あの弦巻さんが思いつきで喋ってることだろうに…。

 

 

「ちょ、こころ…あのっ、いや…」

「行きたいでしょ?美咲?」

「いやあの弦巻さん、やめたげようよ…。

 こんなテンパる奥沢さん初めて見るし。」

「じゃあ、○○の家、お邪魔してもいいかしら?」

「えー?…うーん…。」

 

 

 どうしよう。

 僕今物凄く面倒なことの中心にいる気がする。

 そして、僕の返答次第では長引くし解決もするだろう。

 従って、僕の出すべき答えは―――

 

 

「…今日はちょっと急で厳しいし、また今度、前以て言ってくれるならご招待してやろう。」

「ほんと!?絶対、絶対よ!!」

「あぁ、ただし、4,5日前には言うようにしてくれたまえ、準備があるんでね。」

「わかったわ!!きっとよ!!!」

「…奥沢さんも、それでいいかな?」

「ひぇっ!?…え、ほ、本当にいいの…?」

 

 

 うん、なんかもう…面白いからどうでもいいや。

 きっとこの二人からは逃げ切れない運命なのだろう。

 元はといえばあの作業場を選んだ自分が悪いのだ。

 

 僕の馬鹿。

 

 

 




<設定更新>

〇〇:後悔。

美咲:こころに感謝したり、恨んだり。

こころ:好奇心って素敵。
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