BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 -   作:津梨つな

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目指せ病みキャラ

 

 

「この部屋、別の女の匂いがするわ…。」

「うん、そりゃまあ、隣に奥沢さんいるしね?」

 

 

 月曜日。

 只でさえ憂鬱な曜日であるというのに、今日は誠に残念なことに放課後の時間を人に抑えられていた。

 …僕のスケジュールだぞ。好きにさせてくれたまえよ。

 

 

「時に弦巻さん?結局君は何の目的でココに来たがっていたんだい?」

「?そんなの決まってるじゃない。

 もっとあなたを把握して、より深い関係になるためよ?」

 

 

 ん?言葉の端々から香る隠しきれない違和感。

 …この人、こんなキャラだったっけ?

 

 

「…………奥沢さん、これはどういう状態?」

「あー…。」

 

 

 面倒くさそうに頭を掻く奥沢さん。あのね、止めなかった君も同罪だからね?

 其の辺も弁えた上で僕に絡んで欲しいものだが…

 

 

「こころってさ、簡単に言うとほら…世間知らず?じゃん。」

「まぁ、否定はしようがないね。」

「すっごいお金持ちだし、"弦巻"って名前も知らない人なんかほぼ居ないじゃん?」

「うん…?」

 

 

 彼女の家は世界でも有数の"財閥"の一つである。

 その名前を聞けば誰もが一様に「あぁ、あの…」と言った反応をするレベルだ。

 生活をしている中で誰もが関わる物、商品やら場所やら。国内のものは殆ど弦巻グループが関わっているのでみんなも探してみよう。

 

 

「だからさ、一般的な知識が結構足りてなかったりするのね。」

「…ええと、端的に纏めて話すとどういうことだい?」

「……はぁ。漫画とかドラマとかに影響されやすいってこと。」

「…………ああ。じゃあ、コレも?」

「何よ○○。あたしが折角家まで来てあげてるっていうのに、別の女のほうがいいってわけ?ねえ?」

「………。」

「…………。」

「これ、一体何を見てどこを目指してるの?」

「…あ、あはは。多分、これかなぁ…。」

 

 

 手帳型のスマホケースを開きこちらに見せてくれた画面には"ヤンデレデビューのススメ"の文字。

 勧めんなそんなもん。

 

 

「奥沢さんのスマホで見られるってことは…?」

「…うん、まあ。あたしがちょっと目指してみようかなーって思って調べたところを、隣からこう、ね。」

 

 

 …勧める方も勧める方だけど、目指す方もどうかと思うよ奥沢さん。

 ま、まあ?とっ友達のやることだし、僕があれこれ言える権利はないんだけどさ?

 

 

「ふ、ふーん?奥沢さんは別に…そのままの、感じで、いいと…おもうんですけど…」

「…ッ!…そ、そうかな?」

「………。」

「…………。」

 

 

ガシッ

 

 

「へっ?」

「何そんな女に照れてるの?…あたしだけ見てたらいいじゃない…。」

「ちょ、弦巻さん?い、痛い痛い…」

 

 

 後ろから思い切り肩を掴まれる。力強すぎない?てか、身長差からしてありえない向きで掴まれてるんだけどどうなってんの??

 もう言動も滅茶苦茶になっているように見えるし、話の整合性なんてあったもんじゃない。助けを求めるように奥沢さんを見やると…

 

 

「………///」

 

 

 あぁだめだ。真っ赤な顔しちゃって、一見こちらを向いているように感じる視線も僅かにずれている。

 あれは自分の世界に入ってしまっている顔だ。

 まぁ理解できなくはないがね。僕も時々この世の理について、第六次元の彼方まで意識を…

 

 

「いやまって弦巻さんほんとに痛いから!!」

「…いずれあなたも、その痛みを快感として感じられる日が来るわ。

 そうなればもうあたしのもの…ふふ、ふふふふ。」

「あのね弦巻さん?恐らく、君は方向性を見失っているんじゃないかと推測するんだがね?」

「何を言っているのかわからないけれど…あたしは何も見失ってなんかいない。

 ずっとあなたのことだけ見ているのよ。だからあなたもあたしだけ…」

「……?あたしだけ?その続きは?」

「………えーっと。」

「あぁ、○○くん。」

「あ、お、奥沢さん?戻ってきたの??」

「…うん。あれね、多分ネタ切れ。」

「ネタ切れ?」

 

 

 …何の?

 

 

「○○。あたし、困っちゃったわ。

 ここから先は、まだ読んでないの。」

「……はぁ?」

 

 

 なんだそりゃ。

 さっきまでの何かを身体に降ろしたかのような完成度は一体何だったんだい。

 …すっかり素の弦巻さんじゃないか。

 

 

「…ぷっ。」

「??」

「あっはははは!!何だよそれ!!おっかしいなあ弦巻さん!」

「もう、そんなに笑うことないじゃない!頑張ったんだからっ!!」

 

 

 笑われているのが自分だとワンテンポ遅れて気がついたのか。

 顔を赤らめて頬を膨らませる弦巻さんに、先程までの違和感とも言える"ヤンデレ"とやらの姿も影一つも見当たらない。

 うん、こっちの弦巻さんの方が自然でいいよね。

 

 

「はー…笑った…。

 ごめんごめん弦巻さん。調子の差が面白くてさ、馬鹿にしたりしてるわけじゃないから。」

「美咲が途中までしか見せてくれなかったんだもの…。

 ○○は、どう思ったかしら?」

「さっきまでのアレ?…うーん、兎に角違和感がすごくて…。

 僕は今の、演技も何もしていない弦巻さんの方がいいかな。」

「あら!…聞いた?美咲!

 やんでれって奴じゃないあたしの方が、○○は好きらしいわ!!」

「…そう、よかったねーこころ。」

「ちょ、好きとは言っていないだろう。捏造はやめたまえよ。」

「あら、そうなの?…そんなことより、さっきのあなたの笑顔!

 とってもキラキラしていたわ!!あなたも素敵な笑顔を持っているのね!!」

 

 

 うっ…。そんなこと言ったら弦巻さん、君の笑顔だって僕には眩しすぎて…

いや勿論そんなことは言えないがね。

 それでも、今日の一件のお陰で、弦巻さんに対する苦手意識が少し減ったかも。

 その点に於いては、奥沢さんに感謝しなくてはいけないだろうね。

 

 ――その後の奥沢さんがちょっとテンション低めになっていたのは気になったけど、それはまた別のお話。

 

 

**

 

 

「…そう。○○くんって。あたし以外の女には、そんな顔で笑うんだ。」

 

 

 




<設定更新>

〇〇:こころに感化されるように少しずつ明るさが。

美咲:独占欲は強い方。

こころ:色んなものになりたがり、色んなものが自分じゃないと再認識する。
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