BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 -   作:津梨つな

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破壊、からの、修復

 

 

 運命って何だろう。

 運命…ネットで調べると、人間の力や意志の及ばない、人間に幸福や不幸を齎す力の事と出てくる。

 確かに、今の状況を考えるに、人間の力じゃどうしようもないところまで来てしまっているのかもしれない。僕じゃもうどうすることもできないし、僕は何よりも情けない。

 今だって、結局ずるずるとあの状況が続いてしまっているし、こころとも関係を切れず奥沢さんにも答えを出せていない。

 そのせいもあってか、こころは定期的に謎の怪我を繰り返すし奥沢さんもどんどんエスカレートしている気がする。

 そして今日もまた、人を信じられず外出すら恐るようになったらこころを慰める名目で徒に身体を重ねているんだ。そしてまた、形容しがたい胸の痛みに支配されるんだ。

 

 

「…ありがとう○○、今日も幸せで、あたし……」

「………うん。」

「あっ、どこへ行くの○○!あたしを置いていかないで?ね?ね??」

「……ちょっと今日、用事があるんだ。」

「ようじ…?」

 

 

 今日は、どうしても外せない、大事な用事があるんだ。

 正直気が進むものじゃないし、一つ間違えば全てが壊れてしまうことだと思っている。でもきっと、それが"運命"とかいう人間じゃ到底力の及ばないものに対抗する唯一の賭けだと思ったから。

 

 

「ごめんね、こころ。」

「……○○、あたしね。…あなたが何を考えているかまではわからないけれど…できることなら頑張らないで欲しいの。」

「…どういうこと?」

「あなたを失うなんて嫌よ。……例え毎日どんな仕打ちを受けようと、あなたとだけは共に歩んで行きたいの。あなたが、必要なのよ。」

「……僕は、こころが傷つくところを見たくないんだ。それに、奥沢さんも。」

「そうよね。…あたしが止めたところで詮無いことだったわ。」

 

 

 横たわったまま名残惜しそうに僕の背中に指を這わせていたこころだったが、それはやがて何かを思い留めるように抱きしめる力へと変わる。

 背を向けるようにして寝ている僕を後ろから抱きしめる形になったこころは首筋に一つ二つ、と啄む様なキスを降らせる。

 

 

「…んっ、んっ……ん……んっ。……お願いよ○○。」

「…なあに。」

「……どんな姿でもいい。あなたが満足したら、必ず私のもとへ帰って来てちょうだい。」

「……善処するよ。」

 

 

 嗚呼、こんな時でさえ気の利いたことすら言えない僕だ。

 

 

**

 

 

 弦巻邸を出て暫く歩いた。相変わらずこの辺は居住エリアでもなく商業区でもなく、開発途中といった印象の風景が続く道である。

 飽く迄勘ではあるが、付いて来ているであろう気配に声を投げかける。

 

 

「…奥沢さん、いるんだろ。」

「さすが、ずっとあたしに気づいてたんだね。…気づいていながら、こころとあそこまで出来るんだね?」

「……奥沢さん。」

 

 

 いつの間にそこにいたのか、背後に立つ何かに奥沢さんを感じる。

 …相変わらず心底楽しそうに笑うね君は。

 

 

「奥沢さん、もうやめよう。」

「やーだ。○○があたしの物になるまで、永遠に続くんだよ。」

「……知ってた。」

 

 

 だからこうして覚悟を決めてきているんじゃないか。

 

 

「君は前に言ってたね。…これは運命だって。」

「そうだね。運命だよ。誰にも止められないし、誰も止まる気がない。○○のせいでここまで転がっちゃったんだもん、ぴったりでしょ?」

「……ふふふ。じゃあ…始まりが僕のせいだとするなら、終わらせるのも僕であるべきだよね。」

「わっからないかなぁ…終わらないんだってば、これは。」

 

 

 終わらせる方法はあると思うよ。君がそれを言いたがらないってだけでね。

 僕は予てより準備していたものを上着の右ポケットから取り出す。

 

 

「……ふぅん?それであたしを…やる気なんだ?こころの為に…。」

 

 

 ピンクのクマ柄の可愛らしい彫刻刀。怪我が酷くて動けなかったこころのために、部屋で版画をする為に黒服さんが用意したものを一本拝借していたのだ。

 ぱっと見た感じ用途のわからないこれは…ええと、確か切り出し刀とか言ったかな。武器にしか見えないんだよね、これ。

 

 

「いいよ?刺しなよ。」

 

 

 両手を広げて挑発するように近づいてくる奥沢さん。…彼女は本気で刺されてもいいと思っているんだろう。目が据わっている。

 

 

「全く…君の愛とやらも底が知れるね。」

「は?どういう意味。」

「僕にそんな度胸があると思ったかね?」

「……大事な人の為なら何でも出来る人だと思ってるけど?」

「…うーん、それじゃあ50点だね。」

 

 

 大事な人のためなら何だって出来る…そこに関してはイエスと答えられるだろう。

 ただ…

 

 

「君だって、僕にとっては大事な人なんだからね。」

「…はぁ?それじゃあどうしてこころなんかと!!」

「黙ろう、奥沢さん。………これが運命に対する、僕の答えだよ。」

 

 

 取り出した切り出し刀。それを、気が迷ってしまわないうちにと急いで首筋…左耳の下辺りに当てる。さっきまで暖かい口付けを受けていた場所にヒヤリと冷たい金属の感覚。

 その姿を見て、不気味な程楽しそうだった奥沢さんの顔がサッと青くなる。

 

 

「う、うそでしょ?…何してんの○○っ!」

「君の行動もこころの傷も、僕らの関係も君らの関係も過ごした日々も過ぎ去った時間も全てが運命なら、これもまた運命だ!!!!」

 

 

 ひと思いに刃を根元まで突き刺し、震える手のまま一気に肩へ向けて振り抜く。

 ほんの少しの痛みと共に訪れる急激な寒気。グルリと世界が回ったような感覚が来てその後に―――

 

 

「○○ッ!○○!!!!」

 

 

 ひどくとおくにおとがきこえるきがする

 

 

「い…いやぁぁあああああああああ!!!!!」

 

 

 いたいよ…

 

 

 




<設定更新>

〇〇:行動力。

美咲:我に返る。

こころ:縋る。信用は、ない。
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