BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 -   作:津梨つな

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料理長のリハーサル

 

 

 

『もし』

 

「もしもし、兄貴から電話とは珍しいね。」

 

『…今大丈夫か?』

 

「??まぁ、もうすぐ友希那が来るまでなら。」

 

『あぁ…ちょうどその件なんだが。』

 

「ん??……べ、別に手は出してないからね!?」

 

『…………本当か?』

 

「えっ………うん。」

 

『…最近な。やたらと小遣いを要求されるんだよ。』

 

「はぁ。」

 

『他にも、い、いやらしい小道具とか、持ってくるし…』

 

「…何で兄貴が恥ずかしがってんの?」

 

『馬鹿野郎!実の娘のそういう姿…興味ない訳無いだろう!』

 

「ちょっと何言ってんだかわかんないけど。

 …要は友希那でそういう妄想をしてるってこと?」

 

『…殺すぞ。』

 

「相変わらず冗談を冗談ととってくれないな兄貴は…。」

 

『お前が解り難いんだよ。』

 

「あそ。いやらしい小道具って、猫耳とかしっぽとか?」

 

『そうだ。』

 

「兄貴は、友希那が猫好きって知ってる?」

 

『…昔飼ってはいたが、未だに好きだとは。』

 

「もっとコミュニケーションとんなよ…。

 大好きなんだと。まぁ直接聞いたわけじゃないけど、見てたらわかるよね。

 それでプレゼントしたら喜んじゃって…。」

 

『じゃあ、如何わしいものではないんだな?』

 

「当たり前だろ…姪にそんなこと求めねえよ…。」

 

『後はなんだ…、何やらよくわからない食べ物を持ってきたり…。』

 

「それは前にも説明したろ、友希那の練習の副産物だよ。」

 

『…それもなぁ…なかなかしんどいんだよな。一週間じゃがいもはやばかった。』

 

「あぁ、ポテトサラダか。」

 

『あれがポテトサラダ?…お前何を教えてるんだ?』

 

「料理だよ。あれは友希那の独特の感性によって引き起こされた化学反応の結果だ。」

 

『……せめて美味いものを作らせてくれ。』

 

「兄貴…独り身の俺から言わせたら自分の娘の手料理を食えるってだけで幸せなことだと思うけどな。」

 

『…お前…。』

 

「……またいい写真が撮れたら送るからさ。」

 

『あれはいいものだな!!ぜひ頼む!!』

 

「急にテンション上げんな気持ちわりぃ。」

 

 

ピッ

 

 

「……………娘の見た目大好きかよ。」

 

 

 兄貴こそ、親として大丈夫かよ。コミュニケーション足らないんじゃないか??

 

 

「…ただいま。」

 

「おま、ついに自宅と俺の家の区別もつかなくなったか。」

「…ふぅ。もう第二の自宅のようなものじゃない。」

「そう思ってくれるのは嬉しいんだかなんだか…複雑な気分ではあるな。」

「それよりも、喜びなさい。」

「なに。」

「リサの誕生日まで丁度一週間でしょう?…今日はリハーサル、あなたに料理を振る舞うわ。」

「えぇ…。」

「何よ。」

「別に。」

「あそう。あ、でもね…んしょ。」

 

 

 来た時から若干気になりつつも触れていなかった二つのビニール袋を突きつけてくる。こいつ…何度言ったらエコバッグ使うんだ。

 

 

「材料は買ってきたから安心して?」

「あーあー…。どうしてこう大量に買い込むんだ。…本番の買い物は俺も一緒に行くからな?」

「それは、失敗した時にもう一度買い物に行くのが面倒だからよ。」

「失敗を先に考えてる時点でどうなの。」

「うるっさい男ね…。」

 

 

 あのなぁ友希那、君普段からあんまり目付き良くないんだから、眉間に力入れるのよそうな。すっげえ目力・圧を感じるぞ。

 

 

「第一、バイトとかしてないだろ?」

「お金はいいのよ、あなたにもらった猫耳つけて頼んだら父さん一発だから。」

「悪女か。」

 

 

 見た目だけは可愛いもんなぁ…。

 つか兄貴、「せびられる」とか言ってたけど、完全に手玉に取られてんぞ。

 

 

「まぁいいや、今日は何を作るんだ?」

「一応最終目標でもある、お弁当に入れられそうなものを作るつもりよ。晩ご飯用だから、完全にお弁当を作るわけじゃないけれど。」

「……この量の買い物で?」

「いいでしょう別に。…それと、一人でやるから、あなたはキッチンに来ないでちょうだい。」

「…火事とかは勘弁な?」

「失礼ね、そこまで料理音痴じゃないわ。」

 

 

 というわけで、友希那の一人クッキングタイムが始まった。

 来るなとは言われてもやはり不安なもので。エプロンをつけてご機嫌に揺れる、ポニーテールな姪の後ろ姿をリビングから眺めていた。

 

「…あら、すりごまってそのものが売ってるのね。

普通のものしか買ってこなかったわ。」

「なるほど…ここで「みじん切り」ね。」

 

 思い返してみたら、友希那に料理を教え始めて早2ヶ月。

 一人ではあまり感じる事のない時間の流れも、あの子が来るようになってから楽しいものになって。

 

「いったぁ!?」

「もう包丁なんて嫌いっ。

…嘘よ、好き。」

 

 …最初は包丁一つ握れなかったあの子が、「一人でやるからキッチンに来ないでちょうだい」だもんなぁ…。

 成長、したよなぁ。

 

「赤ければ何でもケチャップなんじゃないの…?

トマトソースじゃだめかしら…。」

「…入れちゃえっ」

 

 そういえば、今はすっかり見慣れたあのエプロンも、最初は燥ぎまくってポーズなんか決めちゃったりして…。

 あの時も、正直料理ができるようになるとは思ってなかったけど、形だけ・気持ちだけでもと思ってプレゼントしたんだよなぁ。

 

「…フライパンを振るって、結構腕力いるのよね。」

「まぁでも?この前紗夜にギター持たせてもらったもの。」

ガチャァン!

「!?あっあわわわわわわわわ」

 

 モチベーションが上がった友希那なんて、滅多に見られないからね。変な意味じゃなくて、途轍もなく可愛かった。

 一度だけ見に行ったライブとはまた違って、純粋に一人の女の子って感じの…

 

「…もうこれでいいわ。」

「さて次はこれね……本で見てやってみたかったのよね。」

「火を付けて…このよくわからないお酒をっと…。」

「この行為…フランベって言うのよね。…Flammeにちょっと似てるわ…」

 

 勿論、バンドの方も順調みたいだし?リサちゃんにもいいプレゼントができればいいけどなぁ…。あの友希那がバンドかぁ…。音楽に対して真剣なのは知ってるけど、友達と上手くやれてるってのがすごい。

 この前来た…ええと、氷室ちゃん?あれ、氷…川ちゃんだっけ?あの子と喋ってる姿も新鮮だったけども。

 

「片手でフライパン持つって辛いわ…

さっき両手でアレなのに…」

「こう、お酒を…わっさぁあああ、と。

ふふっ、響きが…ぅわあああ!?」

 

 …目の前の惨状、勿論見えているからね?敢えて綺麗な思い出に浸ることで、具体的な片付けの労力を考えないようにしてんの。

 

「…もうサラダなんてこれでいいわ。」

「めんどくさっ。」

 

「………。」

 

 

**

 

 

「ほほー!!なかなかいい感じじゃないか!」

 

 

 目の前、食卓に並べられた料理。盛りつけは…まぁ教えてないから仕方ないけど、匂いからして味には期待できそうだ。

 …ポテサラの時は無臭だったもんな。

 

 

「ただ、このサラダ?の丸投げ感はなんだ。キャベツ半分とドレッシングって…。」

「いいじゃない。食物連鎖よ。」

「食物繊維だろ。」

「…むーっ」

「いてぇ!」

 

 

 今日の駄々っ子パンチは力入ってんな…。骨が、骨がやられる…。

 

 

「いいから、食べなさい!」

「…おう。」

 

 

 あの料理中の、いや戦争中の惨状は思い出さないようにしつつ一口目。

 ……おぉ。うまいなぁこれ!

 

 

「…なるほどな。…これ、塩コショウとバターの他に何入れたん?」

「え?…あぁ、ケチャ…うん、ケチャップよ。あとコンソメを少し。」

「ほほぉ、それだけでこんなに旨くなんのか!!」

「!?ほんとっ??おいしい??」

「おう、いい味だ。」

「…よかったぁ!!この前ファミレスで見かけて以来作ってみたかったのよ。…オムラ」「形はあれだけど、卵焼き添えてるのもいい感じだよな。…このピラフ。」

 

 

 そうか…まさかピラフで来るとはなぁ。うん、確かに弁当にも入れられるしな。ただの白米入れるより、全然いいかもしれない。

 

 

「いやその、オム」「ただ、この黒炭みたいなのはなんだ。」

 

「………」

「…友希那?」

 

 

 顔が真っ赤だぞ?目に涙まで浮かべて…。あっ、部屋暑いかな?エアコン…はあとでいいや。

 …まぁ、まさか黒炭ってことはないだろうし、食ってみればわかるか…。

 

 

「ほう……仄かに香るアルコールの香り。なるほど…牛肉の、…何かだろうな、うん。さっきのボヤ騒ぎは、あれか、フランベ?」

「……そうよ。」

「うん、美味いよ。…見た目はあれだけどな。」

 

 

 焼け残りかと思ったもん。

 フランベ?…あぁ、顔が赤いのってそういう…。ダメだぞキッチンドランカーは。何にせよ、これはもう成長以外の何物でもないな。

 

 

「友希那。」

「…何よ。」

「来週の弁当、喜んで貰えそうだな。」

「…えっ?じゃ、じゃあ。」

「ん。………友希那には、これをプレゼントしないとな。」

 

 

 ついにこの日が来たか。独り立ち記念でプレゼントしようと思っていた()()()()を取り出す。箱に入ったままのソレは、正直埃を被る直前まで忘れかけていたものだったが。

 

 

「わぁあ…!!!」

 

 

 例のコック帽。これでフルセット完成だな。

 何も言わずに例の部屋の扉を開けてやる。そこに駆け込む一匹の猫(友希那)

 さて、このあとはきっと撮影会が始まるんだろうし、キッチンの後処理は徹夜でやるしかないなぁ…。

 

 

**

 

 

「…んぁ?兄貴?…また電話かよ…。」

 

ピッ

 

「はい?」

 

『お、おま、あああああれ、あのぼぼぼぼうし、こっくこっくここっく』

 

「落ち着け兄貴。」

 

『なんつー写真を送ってくるんだお前は。』

 

「…ダメだったかよ。」

 

『ぐっじょb』

 

ピッ

 

「………興奮がもう。」

 

 

 兄貴との通話を終了するや否や、再度着信が。

 

 

「…なんなんだもう。」

 

ピッ

 

「…はい?」

 

『○○さっん…!?…あ、あああああれはどどどどどいう…?』

 

「…氷川ちゃん?」

 

『フーッ!フーッ!フーッ!フーッ!ふ、ふへへへへ』

 

「あー…なんだ。

 喜んでもらえて何よりだわ。うん。」

 

ピッ

 

 

…周囲の人のキャラがもうお腹いっぱいだわ。

 

 

 




<設定更新>

○○:もはや紗夜にしか名前を呼ばれない。
   料理がそこそこ成り立つのが不思議なくらい舌バカだったりする。

友希那:にゃーん。
    にゃにゃにゃー、にゃーにゃーにゃー。
    (言わずもがな。
     みんなだいすき、ゆきにゃちゃんです。)

友希那パパ:娘とあまりコミュニケーションを取らないのは
      大好きな妻に瓜二つで緊張して素直にお喋りできないから。

紗夜:失血量の多さに、二日ほど昏睡した。
   あれ?デジャブ?
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