BanG Dream! S.S.B.N. - 少女たちとの生活 完結倉庫 -   作:津梨つな

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最終回


勝負の日(終)

 

 

 

 おぉ……決まってんなぁ。格好だけは。

 

 

「どう…かしら?」

「おう、今日もサイッコーに可愛いな。友希那。」

「あ、ありがと……じゃなくって!」

 

 

 さて。ついにこの日がやってきた。

 リサちゃんの誕生日。友希那にとって、決戦の日だ。今まで学んできたこと、培ってきたことを全て伝える。

 

 

「…ま、弁当を作るだけなんだがな。ちょっと大袈裟か。」

 

 

 友希那本人はエプロンを始めとした猫セットをフル装備で気合が入ってる御様子。猫耳と尻尾はいるかって?……友希那はほら、変わってるからな。

 

 

「ねえ、材料は揃っているのよね?」

「あぁ、前に渡されたメモ通りに昨日、な。」

 

 

 丁度行きつけのスーパーがセールをやっていたのもあって昨日まとめて買ってきたのだ。お陰で冷蔵庫はパンパンだ。結局最後まで治らなかったな…必要なものを必要な量だけ買うって教えたのに。

 

 

「じゃ、じゃあ…早速やるわよ。」

「おう。俺は、どうしたらいい?」

「…基本私がやらないと意味ないことだし。あなたは、隣でサポートしてちょうだい。」

「サポートぉ?」

「何よ、嫌なの?」

「いや、いいけどさ。サポートってほど大層なことはできないぜ。」

「…居てくれるだけで、いいのよ。」

 

 

 そういうものらしい。

 ま、保護者が近くにいてくれるって、結局なんだかんだで落ち着くもんな。

 

 時刻は朝6時。

 リサちゃんがうちに来るまで、6時間強。…今更だけど、何でうちに来ることになってんだ。

 

 

**

 

 

 しかし、こうして隣で見ていると改めて思うが。

 随分できるようになったもんだな。最初俺に「料理を教えて欲しい」と言ってきた時なんか……あいや、感慨に耽るのは前回やったからやめておこう。

 

 

「で?…肝心の弁当箱が見当たらないんだが…。」

「あぁ、それなんだけど。

 結局今日は、ここにリサが来るじゃない?だからもう、普通にお昼ご飯を作って振る舞えばいいんじゃないかってことになったのよ。」

「えーっとだな、そもそもここに呼ぶって聞いたのも今朝なんだが?」

「そうね。」

「リサちゃんの誕生日のお祝いだよな?…普通、呼びつけるんじゃなく行くもんなんじゃないのか??」

「…あぁもううるさい。集中できないでしょうが。」

 

 

 苛つく友希那の手元を見ると、その小さな手でおにぎりを作っているところだった。

 はぁ、可愛いモミジのような手のひらだ。真っ赤で…。

 

 

「そのおにぎり、なんでそんな赤いわけ?」

「当たり前でしょう…チキンライスだもの。」

「ほー。ついに誰かやっちまったのかと思ったぞ。」

「馬鹿なこと言ってないでフライパンを熱しておいて。」

「何すんの。」

「…卵焼いて、オムライスみたいなおにぎりつくるの。」

 

 

 あぁ、そいつぁオシャレでいいな。

 …そうそう、オムライスといえば。前回俺が食べたものはピラフじゃなくてオムライスだったらしい。次の日ちょっと怒られた。

 

 

「……ご飯の方はこれで全部?」

「うん、次は卵を……」

 

 

 気づいたか。その両手じゃフライパンも持てまい。

 

 

「…んっ。」

 

 

 観念したのか、両手をこちらにつき出してくる。拭けという意味だな。

 まったく…手際がいいと思ったらこういうところ詰めが甘いな。濡れ布巾も用意してないし。手を取り、油分のヌメリが取れるまで丹念に拭く。まーまー、顔真っ赤にして目を逸らしちゃって…。まぁ、子供扱いされてるみたいだもんな。そりゃ複雑か。

 

 

「…ぁりがと。さて、気を取り直して次に行くわ。」

「はいはい、頑張れぇ。」

 

 

**

 

 

 その後もところどころ計画性の無さを感じさせる部分はあったが、無事デザートまで漕ぎ着けた。こっそり練習していたという、飾り切りリンゴを作るらしい。…作る?という分類になるのかこれは。

 

 

「これこそ、弁当でやれよって感じだよな。」

「…いいじゃない、お皿に盛るか小さい箱に詰めるかの差だけよ。」

「そういうもんかね。」

「そういうもんよ。貴方が細すぎるだけよ。」

「わかったわかった。怪我だけはしないようにな?」

 

 

 なるほど。ここまでの作業工程を見ていて若干疑問だったんだが、手に大量についている絆創膏はこの練習でついたものだな?今日こそは傷を増やさないように頑張ってもらいたいものだが…。

 

 

「…ちょっと、あまり見ないでよ。」

「えっ」

「緊張すると、手が震えるのよ。」

「えーっ」

「回れ右!」

「はぁ……。」

 

 

 言われる通りに後ろを向く。どうでもいいけど、緊張とかするんだな。

 後ろから、「……んしょ、…にゃーん……にゃーん……」と聴こえてくるあたり、初めの時に否定した猫型の飾り切りでも目指しているんだろう。料理ベタな人って、結局なんだかんだ自己流や拘りが強い傾向にあるんだと思う。視野が狭いんだろうな、きっと。

 

 

「できたわ!!…ねぇ、見てっ!できた!ほら!」

「わかったわかった……。えーっと。」

 

 

 確かに、残った皮は "A_A" っぽい形になっている。…が、これなら別にうさぎさんでも良くないか…?

 

 

「まぁ、リサちゃんに伝わればいいか。」

「大丈夫よ、リサならわかるはず。」

「これで完成?」

「いいえ、まだりんごは残っているもの。」

「全部やる気?」

「もちろん。」

 

 

 お前、またあの大量生産地獄をする気か。

 

 

「余ったらお弁当にでも詰めて明日の練習に持って行くわ。」

「弁当の意味よ。」

 

 

 斯くして、そこそこの量の昼飯と平皿いっぱいの"にゃーんちゃんリンゴ畑"が完成した。これをリサちゃんに…。胃薬、用意しといたほうがいいかなぁ…。

 

 

「…ッスゥー」

「満足したならいいか。…ここまでよくやったな。」

 

 

 コック帽を取って、段ができた髪をくしゃくしゃと撫でてやる。

 友希那の横顔は、やりきった感がありありと伝わって来るような、誇らしげな表情に見えた。

 

 

**

 

 

「やっほー、友希那ぁ。」

「…ん、外は暑かった?」

「まあまあかなぁ…。それで?言われたとおり、まだご飯食べてないんだけど、どっか行くの?」

「いいえ。……こっち座って。」

 

 

 食卓の、いつも友希那が座る席。そこにリサちゃんを座らせる。状況が飲み込めていないのか、落ち着きがないように見えるリサちゃん。だいぶ困惑気味だ。

 

 

「ゆ、友希那??」

「ちょっとまってて。」

 

 

 料理を取りにキッチンへ。少しできてしまった時間、残された俺とリサちゃんは若干気まずい空気に。

 

 

「友希那、頑張ったんですねぇ。」

「…え?」

「…今から楽しみですよ。」

「……あぁ、うん?」

「まさか、あの友希那が――」

 

 

 その後、友希那の帰りを待つ間、暫し二人で話し込み…リサちゃんが如何に友希那を愛しているかがわかったところで、ぱたぱたと可愛らしい音を立てて戻ってくる。

 …あぁ、わざわざフル装備にしてきたのね。

 

 

「!!何それ!友希那ぁ!うひゃぁ、可愛い…///」

「ふふん、いいでしょう?」

「しゃ、写真撮るね!?…ひゃぁぁああ!!こっち、こっちにポーズ頂戴!?…あぁ…っ。尊い…ッ!」

 

 

 あの姿見たらみんなああなっちゃうんかな。物凄い勢いでぱしゃぱしゃやっとる。

 一旦料理は受け取り、代わりに配膳しておこう。

 

 

「はぁっ…はぁっ……こ、これが見せたかったもの??」

「お疲れ様ね、リサ。本題は……こっちよ。」

「……えっ、これ…。」

 

 

 食卓に並べられた食事を見て固まる。そらそうだ。まともに卵も割れなかった友希那の姿を知っている者なら皆こうなるでしょうよ。全部友希那が作ったって、まるで冗談か手品だもんな。

 そのまま驚いたような表情で、ゆっくりと席に就く。

 

 

「すっご……、こ、これ、アタシの為に?」

「ええ。…リサ、誕生日、おめでとう。

 これは全部、私がリサ一人の為だけに覚えた物よ。貴方に日頃の感謝とか、伝えたくて…その…。」

「……ッ!」

 

 

 友希那と対照的にしっかりメイクアップされた彼女の両目から雫が溢れる。

 やがて絞り出した「ありがどう…」の言葉は演技でも何でもなく、友希那の気持ちがしっかり届いた証でもあったろう。

 

 

「良かったな。…友希那。」

 

 

**

 

 

 暫し素敵な光景に心を温められた後、二人して仲良く手を繋いで帰っていくのを見送りつつ先ほどの会話を思い出していた。

 

 

『まさか、あの友希那が料理のプレゼントとは…。』

『やっぱ、気づかれてた?』

『ええ、まあ…。…前に一度お邪魔したときにも薄々は感じたんですけど、ね。』

『そうだよなぁ…ちょっと前の友希那を知ってる人なら当然気づくよな。』

『ははは…。○○さん、この話は友希那には内緒にして欲しいんですけど…』

『ん。』

『アタシ、気づかないフリしようと思います。』

『…そっか、優しいんだね。』 

『優しい…とはまた違うんですけどね。

 只でさえ人と関わろうとしなかった、音楽以外を切り捨てようとしていたあの友希那が、こんな形で他のこと・人に興味を持ってくれたんです。』

『うん。』

『…その成長というか、気持ちの変化というか、それだけでアタシには凄い大きなプレゼントで…。』

『……。』

『その気持ちに応えることが、アタシの役目だと思うんです。

 …勿論、不味かったら正直に言いますけどね?…こう、ズバァッと。ふふっ。』

『……リサちゃん。』

『だから○○さんも、頑張って演技してくださいね?この話は、オフレコなんで。』

『…了解。リサちゃん、本物の親よりよっぽどあの子の保護者みたいだね。』

『えぇー?…うーん…そうなのかなぁ…。』

『うん、友希那に対しての愛情?っていうのかな。それがすっごく伝わってくるんだよね。

 …本当に、友希那の幼馴染が君で良かったと思うよ。』

『あ、あははは…。まぁ、友希那のことはずっと大好きですけどねー。…今までも、これからも。

 それに、そういう事言えちゃうあたり、○○さんもお父さんみたいですよ??』

『まぁ、本当の父親よりはコミュニケーション取れてると思うしね。』

『あっははは!何それー!』

 

 

「何はともあれ、大成功で本当によかったなぁ友希那。……リサちゃんと、これからも仲良くなぁ。」

 

 

 やれやれ、これじゃあどっちが誕生日かわからんね…。

 

 

 

終わり




<設定更新>

○○:この話の主人公だったのか疑問は残るが一先ず目標は達成した。
   すっかりお父さん。

友希那:料理長。
    無事に任務は遂行したため、これからは普通の女の子に戻ります(?)

リサ:意外と演技派?…子供からの見え見えのサプライズに対するお母さんってこんな感じなのかな。
   早く結婚しろ。
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