蒼穹の一閃   作:hareth

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一か月ぶり


3.

 ──―テアンとイヴがノルンと合流する少し前。

 

 ここで、いやノルン自身にリオレウスを釘付けにするという無謀な試みを始めてから少し経った時のこと。ノルンはリオレウスの大体の攻撃を確認できたため、攻めに転じようと試みていた。

 エリア10に飛び去ったリオレウスに追いつき、今まさに降り立とうとしている火竜の目の前に閃光玉を投げる。

 

「グギャ!?」

 

 短い悲鳴と共に地面に落ちたリオレウスの頭に渾身の溜め斬りをお見舞いする。が、当たり所が悪く手応えはいまいちだった。ノルンはそれに構うことなくヴァルキリーブレイドの横っ腹で打撃を与え、抱え込むようにして力を溜める。大剣使いの最大の攻撃、強溜め斬りだ。

 

「くらえッ!!」

 

 今度はしっかり頭部に叩き込む。手応え良好。そこでリオレウスは起き上がった。

 

「ゴアアアアァァァッッッ!!!」

「ぐっ…!?ゴハァッ!!?」

 

 怒りの咆哮と共にバックジャンプブレスを繰り出すリオレウス。咆哮によってその場に釘付けにされた。直後のバックジャンプブレスをまともに食らい吹き飛ばされる。少しでも衝撃を逃がすために後ろへ跳んだが、気休めにもならなかった。

 

「…流石に、効くなぁ……ゲホッ…。やっべ…」

 

 吹き飛ばされた時にブレスの熱気で肺を少し焼いてしまったようだ。このままでは体の内側から焼け死んでしまう。しかし現在1人で押さえている状態なので撤退も不可。なら手っ取り早く治すしかないだろう。半ば無意識でアイテムポーチを探り、閃光玉をリオレウスの鼻先に投げる。そして奥底にあった秘薬(とっておき)を口に放り込む。

 呼吸が少し楽になる。本来ならもう少し安静にしていなければならないが、いつまでもここに隠れているわけにはいかない。

 リオレウスは既に視力を取り戻していたが、岩陰に身を隠したノルンの姿を見つけられていなかったようだ。ノルンはヴァルキリーブレイドに手早く砥石を当て斬れ味を回復させ、リオレウスに突撃する。ノルンに気が付いたリオレウスがその強靭な脚を持って突進してくる。ノルンはその赤い巨体を見据え、翼爪と胴体の間を紙一重で回避する。

 

「うおおおおおおッッ!!」

 

 リオレウスとすれ違い、すぐさま反転して肉薄する。踏み込んで斬り上げ、そして高速強溜め斬りを振り向いたリオレウスの頭に叩き込む。その衝撃で頭部を保護していた堅殻が弾け飛んだ。

 怯んだ隙に右翼に前転、横殴りをしてから再度強溜め斬りをお見舞いする。斬撃の入った右翼爪には僅かに傷が入っていた。一撃でへし折るにはまだまだ技量も装備追いついていなかった。そのことを気にすることなく離脱すると、背中に爆風を感じた。間一髪でバックジャンプブレスを回避できたようだ。

 

「あぶね」

「ゴアアァ!」

 

 空中からブレスを放っているリオレウスには近づけない。閃光玉を投げるかどうか一瞬悩むも滑空突進をしてきたので射線上から全速力で退避する。かなりギリギリだったがダメージはない。

 リオレウスは着地したあとノルンに目もくれずに飛び去った。ペイントボールの臭いはエリア9から漂っていた。

 

 

 

 エリア9に入った直後リオレウスがブレスを吐いてきた。予想外からの攻撃ではあったが、リオレウスを正面に見ていることが幸いし回避できた。

 

「いきなりブレスとは、礼儀がなってないんじゃないか?」

 

 冷や汗を掻きながらも、軽口をたたき己を奮い立たせる。先ほどまで2方向からペイントの実の臭気がしていたが、目の前のリオレウス以外の臭気を感じなくなっていた。おそらく討伐にまで漕ぎつけたのかもしれない。ノルンはその事実に安堵していた。二体が合流することが無くなったと考えているからだ。

 リオレウスがなかなか攻めてこないノルンを見つめている。ノルンもまた同じように見つめ返している。つかの間の空白。その空白はマグマの表面に浮かんできた気泡がゴポッという音を立てた瞬間砕かれた。

 

「ギャアアアアァァァァ!!!」

「うおおおおぉぉぉぉぉッッ!!!」

 

 ヴァルキリーブレイドの柄に手を添えながら突撃するノルン。背筋に悪寒が走るがそれを無視し真っ直ぐ突っ込む。激突する寸前にリオレウスの体が浮かび上がり、ノルンの視界からリオレウスが消えた。対するノルンはそのまま通り過ぎて尻尾に一撃入れて離脱。

 その攻撃をものともせずにリオレウスは滑空突進をしてきた。流石に真後ろにいるノルンを射線軸に捉えることはできなかったが大きく距離を離した。着地せずに反転し、もう一度滑空突進を行うが、ノルンは体をひねって回避しすぐさま反転、溜め斬り上げをリオレウスの顎にお見舞いするとリオレウスを撃墜できた。

 ここまでの戦闘で斬れ味を大きく消耗してしたヴァルキリーブレイドではせっかくの隙を活用できない。が、赤紫の風がノルンを横切る。さらに後方から軽快な発砲音が聞こえてきた。イヴとノルンが合流したようだ。

 

「すみません、遅くなりました!」

「遅いよ…少し下がります」

「なら僕らはカバーするよ」

 

 ノルンがイヴと前衛を交代し、テアンの元まで下がる。ノルンはヴァルキリーブレイドに砥石を当てている間イヴのことをテアンに聞いた。

 

「イヴ大丈夫なんですか?」

「問題ないと思うよ」

 

 一言で済ませノルンも戦線に復帰する。再度空へ飛びあがったリオレウスのブレスを紙一重で回避しながら、垂れ下がっている尻尾へイヴが斬りつける。後ろに回り込んだイヴに対応するためリオレウスは反転するが、既にそこに姿は無かった。代わりに閃光玉の強烈な光がリオレウスの視界を潰す。

 

「セイッ!」

 

 イヴが気刃斬りを尻尾に入れていく。斬れ味を回復させたノルンはリオレウスの頭部に溜め斬りを叩き込む。テアンは剣士2人の邪魔をしないように雷撃弾Lv1を翼に当てている。

 ノルンが合流前から尻尾を重点的に狙っていたおかげで、イヴの気刃大回転斬りで尻尾が千切れ飛ぶ。体勢を立て直したリオレウスは足を引きずっていた。リオレウスはこちらに目もくれずに飛び去った。

 

「弱ったか…」

「ノルンさん、大丈夫ですか!?」

「問題ないよ。ブレスは一回貰っちゃったけどね」

 

 駆け寄ってきたイヴに若干擦れた声で応える。やはり肺を少しやって(・・・)しまっているらしい。

 

「足を引きずっていたから捕獲で仕留めよう。タイミングが悪かったこともあるけど彼に罪はないからね」

「了解です。麻酔玉はありますか?」

「問題ないよ。基本的に常備してるからね」

 

 エリアを移動し、火山の頂上であるエリア8で寝ているリオレウスのすぐそばにシビレ罠を仕掛ける。起動した瞬間にテアンが2発麻酔弾を鼻先に当て深い眠りへと誘った。

 

 それから数刻後、異変を起こした鎌蟹の亡骸と寝息を立てる火竜の巨体が火山から運び出される姿が確認された。

 

 

 

 

 

 

 ドンドルマに戻る前にマンテに寄り道をする。若干肺を焼いたノルンの体を休めるため。それとテアンの用事を済ませるために数日滞在していた。

 

「ノルンさん体大丈夫じゃなかったじゃないですか…」

「いや、あの時は大丈夫だったんだって!」

「それだったら今更お医者様が必要になる訳ないじゃないですか!」

「いや、それは、そのぉ…」

 

 イヴが怒るのも無理はない。明らかに身に有り余る立ち回りを長時間やっていた上、休むことなく引き付け続けたノルンの体はあと一歩でハンター生命に関わるところまで消耗していた。一番の原因はやはり火球ブレスであった。

 それら以外にもイヴがハンターになるまでに無茶をし続けていたこともバレてしまっていた。ノルンの性格はどちらかといえば臆病である。がそうとは思えないような立ち回りをしていた。例えばイーオスの毒を気にせずに攻撃し続ける、イャンクックやゲリョスのブレスに対して真正面から突っ込む、などである。性格とはかけ離れた猪突猛進型のハンターであった。控えめに言えばバカである。

 

「いいですか?ドンドルマに戻って狩猟の報告を済ませたら訓練所の教官に会ってもらいますからね!」

「ちょ、それだけは勘弁…」

「心配する私たちの身にもなってください!生き残ることについてもう一度教わって来てください!」

 

 この場には現在ノルンとイヴとテアン(・・・)がいる。完全に空気になっているテアンが苦笑いを浮かべながらここでようやく話しかけた。

 

「その辺にしなよ…一応周りにも人がいるんだからさ……」

 

 その言葉にイヴははっとし赤くなりながら小さくなった。無理もない。周囲の人が暖かい目でノルンとイヴを見つめていたからである。

 夜も更けてきたので一行は早々に宿へ戻っていった。

 

 

 

 ドンドルマに戻り、イヴが狩場で患った謎の症状がわかった。名前を「狂竜症」と名付けることにしたらしい。名づけることにしたとあるが、この症状はこれまた最近になって大陸各地で情報が寄せられた未知のウイルスによるものだと判明した。それの元凶はまだわかっていないが人であろうがモンスターであろうがこのウイルスに侵されてしまうという。ノルンたちが遭遇したショウグンギザミがいい例だ。そうしたモンスターからは必ずと言っていいほど禍々しい紫の決勝が手に入る。テアンが厳重に保管していたのは幸いだった。

 

「狩猟環境不安定ではなかったけど生態は不安定だったね」

「もうあんなのと戦いたくないです」

「遭遇したら一先ず距離を置こう」

 

 いい経験だったとテアンは頷いたがノルンとイヴはかなりのしかめっ面をしていた。

 

「っ!?」

 

 突如イヴが頭に手を当てて立ち上がる。不信に思ったノルンが手を伸ばすもイヴが制止し席に着いた。

 不穏な風がノルンの胸中に吹き荒れていった。

 

 

 

 

 

To Be Continued……




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