蒼穹の一閃   作:hareth

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二章 瞬閃の白疾風
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 潮の香り漂う絶海の孤島。

 

 その奥地に眠る"白"が目に真紅の光を宿し、咆えた。

 

 

 イレギュラー続きだった新米ハンター時代のショウグンギザミ狩りから約2年。一年前にノルンとイヴは上位ハンターへ昇格し腕を上げつつあった。武具もそれ相応に強化され、ノルンは使用用途によって武具を変え、イヴもまた属性別で武器を揃えていた。

 ある狩りの帰りに、ノルンとイヴがクエスト報告に訪れると受付嬢から名指しの依頼があると伝えられた。

 

「誰からなんだ?」

「交易船の船長さんで、この地域の特産品をとある村に運ぶらしいです」

「トラブルがあったんですか?」

 

 イヴの言葉に受付嬢は首を振った。ようは護衛依頼なのだろう。しかし名指しで依頼するとはどういうことなのだろか、とノルンは考えたが考えるだけ無駄と思い直し、その依頼書を受け取った。そこに書いてある地域の名は、孤島地域だった。

 

「この地域の生態ってどんな感じなんだろ。名前を見る限り森丘と似たようなところかな…?」

「だとしたら火属性と雷属性の武器を持っていくべきでしょうか…」

「俺は俺で柔らかめな相手をする装備でいいかな…」

 

 既にその地で狩猟すること前提になっているが、このクエストは狩猟ではなく護衛である。

 出発は二日後なので明日はめいっぱい羽を伸ばすことにしようと、2人は宿に足を向けるのであった。

 

 

 二日後の朝、イヴは朝日が昇る頃に工房へ訪れていた。狩りの前に強化のため預けていた愛刀、凍刃【氷華】を受け取りにである。

 

「おはようございます!受け取りに来ました!」

「おう来たか嬢ちゃん、預かってたものは無事に完成したぞ!」

「ありがとうございます!」

 

 受け取った太刀の銘は雪一文字【銀世界】。氷属性を宿すスタンダードな太刀である。

 

「今度の狩りはどこに行くんだい?」

「孤島という狩場の近くまで行ってきます!」

「じゃあ、モガの村かな。あそこの村はいいぞ。何と言っても魚がうまい」

 

 どうやら親方はモガの村に行ったことがあるらしい。心躍らせるイヴであった。何度も言うがこれから行くのは旅行ではなく護衛クエストである。

 受け取ったばかりの雪一文字【銀世界】を背負い、待ち合わせ場所である港にイヴは向かっていった。

 

 

 

 それからイヴはノルンと合流し、交易船の船長に連れられロックラック地方へと旅立った。

 旅立ってから約2週間。海路と陸路(大砂漠)を経てロックラックの街に着き、そこで食料などの消耗品を補給し再び航海へ出るとのこと。

 

「それにしても、砂漠の真ん中ってだけあって乾いてるな…」

「ちょっと苦しいですね」

「そこはまぁ、我慢してもらうしかないゼヨ。またすぐ海に戻るからそこまでの辛抱ゼヨ」

 

 竜人族のゼヨこと船長は、太刀を背負いながらノルンたちにロックラックの街を案内していた。ノルンたちもそれぞれ装備を着て歩いている。

 ノルンの装備はリオソウルUシリーズにハイジークムント。防具に溜めの速度を上げられるような調整をしている。また、体力への負担が大きいのでそれを打ち消すための装飾品もつけている。

 

 イヴの装備はベリオSシリーズに新調した雪一文字【銀世界】。武器は相手によって変えている。防具はこれともう一つのEXジンオウシリーズもあるが、普段使いの防具はベリオSシリーズである。どちらの装備にも斬れ味の消耗を抑える調整をしている。

 

 上位ハンターの中でもトップクラスの実力を持ち始めた彼らだが、どんな狩りでも油断することなくこなしていく。共に狩りに出たことがあるハンターは彼らのことを装備にちなんでこう呼んでいた。「蒼穹と白閃」と──―

 かの「疾風の翼」や「ヘルブラザーズ」といった超有名な渾名という訳ではないが、密かに有名になりつつある渾名であった。

 

「ロックラックはこんな感じの街ゼヨ。あらかた回ったからハンターズギルドに向かうゼヨ」

「わかった」

 

 ロックラックのギルドでハンター登録しないと、この地方での狩りはできない。別地方で受けた依頼ではあるものの許可をとって悪いことはないだろう。と、ノルンが思いながらふとクエストボードを見た。そこには、これからノルンたちが行くモガの村に程近い狩場「孤島」にジンオウガが出没しているからどうにかしてほしい、という依頼書があった。

 

「ジンオウガか…ちと面倒ゼヨ」

「何がですか?」

「見ての通り狩猟地は孤島。今の所被害は出ていないがどうやらかなり凶暴な個体らしいゼヨ」

 

 凶暴、と断言する船長にノルンは疑問を抱いた。が、船長の懐に手紙のようなものを見つけたので納得した。

 ギルドに登録したついでにそのジンオウガについて聞いてみると、縄張り争いの最中で気が立っているのではとのことだった。たかが(・・・)縄張り争いだが、付近の村に被害が出そうなのでクエストとして張り出した。しかし出向いたハンターたちはみな返り討ちに遭っている。

 

「なるほど……。船長」

「任せるゼヨ」

「ありがとう。この依頼、僕たちが受ける」

 

 と、依頼書を手にした。……のだが、なぜかもう一つの蒼い腕(・・・)が同じ依頼を掴もうとしていた。

 

「なっ…!?」

「えっ…!?」

 

 その腕……その女性ハンターの装備はこの砂漠には不釣り合いなほど蒼かった。

 

 

 お互いに譲る気が全く無いので、ギルドマスターの鶴の一声により即席パーティーを組むことにした。

 

「私はメディス。見ての通り操虫棍使いよ」

「僕はノルンだ」

「ワタシはイヴです!よろしくおねがいします!」

 

 と自己紹介もそこそこにギルドカードを交換し合う。話を聞くに彼女は「我らの団」というキャラバンの専属ハンターとのこと。詳しいことは割愛するが、団長の持つ金色の鱗の持ち主を探しているらしい。

 

 彼女の装備はラギアSシリーズに斬竜旋ヘルダイト。猟虫はスピード極振りのオオシナト。ジャンプ攻撃の威力を上げる調整を施している。

 今回の護衛クエストはモガの村についた時点で一応完了となる。そのためジンオウガの狩猟の受付はモガの村で受けることになった。

 

 

 

 それからさらに一週間弱が経ち、ようやくモガの村についた。

 

 船長は我らの団のキャラバンも船に乗せたので再び出航するのに時間がかかってしまった。が、護衛のハンターが増えたことで航海の途中の安心感が増えたのも事実だ。

 

 近年かの大海龍ナバルデウスが出現したとの報告もあったのだが、既に撃退されたとのことで船が沈むような驚異が出る確率は格段に低くなっていた。

 が、モガの村の人々の表情は明るさからは程遠かった。

 

「村長、何かあったゼヨ?」

「おぉ、船長。実はな……」

 

 話を聞いているとやはりジンオウガが孤島で暴れていて、資源の確保ができていないという。夜に村長の息子が森に出たところ相当気が立っているジンオウガと白い何か(・・・・)が争っているところを目撃したという。

 

「ジンオウガと縄張り争いしている何かが出てきてるってことですか?」

「恐らく。あやつらが争っている以上我らは森に出ることができん。なんとかして追っ払って欲しいのだが……」

「僕たちが行ってきます」

 

 メディスはノルンの言葉に納得が行かないような表情をするも、「今はそんなこと言ってる場合じゃない」とでも言うように頭を振って村長を見た。イヴも同様に、目からやる気を迸らせ笑顔を見せた。

 

「ならお主たちに任せよう。アイシャ」

「わっかりましたぁ~!既に依頼書ができているのでいつでもどうぞ~!」

 

 村についたばかりで疲労が無いとは言い切れないが、武具の準備はできているし体調は良好である。なので持っていくアイテムを選別するだけとなっていた。

 

 ベースキャンプはモガの村からも見える山の内側、その崖下に位置していた。上には滝ができており、そこから流れる水は透き通っていた。

 また海に繋がっており、滝の水と海水が混ざり合って生命を育んでいる。一見すればのどかなところではあるものの、それ故強大なモンスターたちも存在する。今回の狩猟対象であるジンオウガもそうである。

 

「とりあえず、エリア5に行ってみるか?」

「固まって動くのね、わかったわ」

 

 そう答えるメディスの武具は、初対面のときから変わっていた。

 武器は砕竜ブラキディオスの素材を用いた爆砕の黒曜杵と猟虫のオオシナト。防具は武器と同じくブラキディオスの素材を使ったブラキSシリーズ。武器の属性を強化できるなど武器との相性がいい物となっている。

 

「連携はどうするの?」

「このメンバーでの狩りは初めてなので、あんまり気にしないほうがいいと思います。メディスさんは思いっきり動いてください!」

「……そうね、あなた達はコンビでやっているんだものね。そうさせてもらうわ」

 

 連携は取れそうもないのでしょうがないだろう。それでも同ランクのハンターだったらお互いに気を使いながら狩りをすることもできるだろう。

 一行はまずエリア5に向かう。ジンオウガのダイナミックな攻撃法を活かす広いエリアであるためだ。しかし、

 

「…ここにはいないのね」

「あてが外れたか…」

「でも、かなり激しく戦ってたんですね」

 

 ジンオウガ本人はいなかったものの、戦闘の痕跡が残っている。地面は割れ、岩壁には亀裂が入り、ジャギィのものと思われる鳥竜種の骨は黒焦げになっていた。

 

 アオオオオォォォォン──―

 

「!?……エリア7か?」

「行きましょう。ここまで激しく戦っていたのなら相当消耗してるはず」

「漁夫の利を得るのは少し心苦しいですが……しかたありません」

 

 ノルンを先頭にエリア6を突っ切り、エリア7へと足をすすめる。と、そこに広がっていたのは、蒼く輝くジンオウガが空に向かって吠えているところだった。

 ノルンとイヴは目を合わせ、すぐに左右に分かれる。その動きをみたメディスはジンオウガの正面やや左から頭部に向けて猟虫を飛ばす。操虫棍を扱うにはエキス採取が必須だからである。オオシナトの高らかな羽音がジンオウガの折れている角(・・・・・・)に触れ、赤いエキスを採取してきた。

 

「気をつけなさいっ!コイツ手負いよ!」

「了解!」

 

 右後脚にたどり着いたノルンは抜刀斬りを叩き込む。その手応えは、思っていたより硬かった。

 逆側のイヴも雪一文字【銀世界】から伝わる手応えに顔をしかめていていた。

 

「硬い…!」

「来ます!」

 

 ジンオウガが包囲から抜け出すために唐突に走り出した。そして反転し飛翔、活性化した雷光虫のいる蓄電殻を叩きつけた。メディスは叩きつける直前に跳躍で回避、ノルンはハイジークムントを横に構えて防御、イヴはノルンの後ろでその体を支えた。

 

「ぐっ!?」

「こンのっ…!」

 

 跳躍ついでにジャンプ攻撃をけしかけ乗り攻防を始める。が、すぐに振り落とされてしまう。地面に転がるメディスに向かって前脚を叩きつけようとするジンオウガの前にイヴが出た。

 

「セイッ!」

 

 ジンオウガの鼻先に刺突を繰り出し気を引く。そうしてイヴを標的に定めたジンオウガは右前脚の筋肉を引き絞りながら、電力をチャージし始める。対するイヴは太刀を構えたまま目を閉じ、その場で立ち止まった(・・・・・・・・・・)

 

「イヴ、何してる!?」

「早くそこから引きなさいっ!」

 

 ジンオウガがイヴを叩き潰す。誰もがそう思った次の瞬間──―ジンオウガの右前脚の爪が弾け飛び、横倒しになった。

 

「今です!」

 

 ポカンとしているノルンとメディスを尻目に頭部を斬りつけるイヴ。気刃斬りを繰り出し胴部の堅殻を削っていく。

 我に返った2人はすぐさま左右に別れ、ノルンは後退したイヴの代わりに頭部を、メディスは尻尾を斬りつけていく。爆砕の黒曜杵の飛円切りによって尻尾が千切れ飛ぶ。その様子にノルンが疑問を浮かべた。

 

 ──―コイツ、どこまで消耗してたんだ?

 

 その後の狩猟もこちら側の一方的な狩りが展開された。不審に思いつつも村への危害を考えてなんとかその個体を捕獲することに成功した。

 

「疑問はあるけどひとまずお疲れ様」

「そうね、お疲れ様。……それでイヴ、さっきのアレはなんなのよ」

「え?なんのことですか?」

 

 とぼけるイヴだったが2人分の鋭い視線に耐えきれず、口を開いた。

 

「あれは鏡花の構えです。わかりやすく言うと太刀によるカウンターです」

「ほぇー。…じゃあさっきの叩きつけは……」

「ギリギリのところで避けてます。ちゃんと五体満足です!」

 

 満面の笑みを浮かべ両腕を広げるイヴだったが、直後に笑みをしまいエリア6の方を睨んだ。そちらの方からは猛禽類のような甲高い方向が聞こえて──―

 

「…引きましょう」

「それがいい。メディスもいいな?……メディス?」

 

 顔面蒼白になったメディスがエリア6に千鳥足で向かっていった。

 

 

 

 

To Be Continued……




防具は完全に趣味ですが武器はかなり考えて選んでます。

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