蒼穹の一閃   作:hareth

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 撤退直前にイヴが放った鏡花の構えにより、肩の傷が開いてしまった。なのでアイシャによる治療を受けている最中である。

 

 そしてノルンはメディスを寝かせた後、我らの団の団長に話を聞こうと探していた。あそこまでの状態になるには何か理由がある。それこそ、自分と同じように特定のモンスターに対するトラウマが。

 しかし、話を聞いても自分たちには何もできないことは分かっている。己自身が乗り越えなければならない壁であると。

 

「で、聞きに来たと」

「パーティーメンバーの事情は聞いておきたいので」

 

 そういうノルンに団長は少し悩んだ表情をしたが、口を開いた。

 

「お察しの通り、アイツにはトラウマがある。ナルガクルガに対するトラウマだ。小さいころ住んでた村の近くにナルガクルガが出現した。こちら側が手を出さなきゃ襲って来ないどころか、普通のモンスターと違い非常に友好的だったそうだ」

「そりゃまた……ギルドの対応は?」

「危害を加えられていないことから放置。まぁその村にはそれなりの実力を持つハンターもいたし問題ないと踏んでいたのだろう。事実何もなかったからな」

 

 そこで団長が言葉を切り息をつく。どうやらここからが山場らしい。ノルンは少しばかり緊張をする。

 

「だが悲劇が起こった。そのナルガクルガの縄張りを奪いに別のナルガクルガが現れ、凄まじい争いになったそうだ。村にも甚大な被害が出た。その中でアイツの両親に怪我を負わせ、家を壊された。村に気に入られていたナルガクルガは縄張り争いに負け、大地の肥やしに。争っていたナルガクルガは白かったそうだ」

「なるほど……そりゃあんなふうになるな」

 

 そんな話を聞かされたが、ノルンはそこまで驚きもしなければ憐れむ様な表情もしなかった。自分が既に天涯孤独であるから自分よりマシじゃないかとも思わないでもない。生きているだけ良かったと思っている。

 だから、ノルンは何もしないと改めて決めた。

 

「お話終わりましたか?」

「聞いてた?」

「聞こえてしまったので。…多分ノルンさんは手を出さないつもりだと思いますが、私はできる限り協力しますよ」

「そうか」

 

 イヴに見抜かれて一瞬たじろぐも、自身と同じ様な意思を感じた。だから理解はした。

 しかし続けて言われた言葉に、心臓を掴まれるような感覚を覚えた。

 

「私は、ノルンさんも似たような出来事があったと確信しています。なにかに恨みがあるのでしょう?私はメディスさんにもノルンさんの目的にも協力しますよ」

 

 花のような笑みを浮かべて伝えてくるイヴに唖然としながら、そして冷や汗をだらだら流しながらノルンは頷いた。

 

 

 

 程なくしてメディスが目を覚ました。体調は悪くないが、気分は悪いだろう。顔を見れば、先程までのことを覚えているよな表情だった。

 

「…悪かったわ。無理に突っ込んで」

「気にしないでくださいっていうのは簡単ですけど、気にすると思うのでこういいます。パーティーメンバーのことを考えてください」

「……意識するわ」

 

 苦虫を潰したような顔だが、反省しているのだろう。その上でどうにもならない自身を攻めている。

 

「メディスさんの事情は聞きました。白疾風ナルガクルガに恨みを持っていることも」

「!?」

「だから、話してください。私をどう使ってくれたって構いません。力になります」

 

 決意の籠もる目でメディスを見る。メディスは唇を噛みながら俯く。

 その2人にばれないように息を殺しながら聞き耳を立てる者が2人。ノルンとエイデンである。

 

(なかなかキツイこと言うっスね、イヴって娘は)

(…多分あれ素だぞ。今までは実力が上の先輩ハンターとよく狩りに出てたからわからなかったけど、あれが素なじゃないか?)

(その先輩ハンターって?)

(疾風の翼)

(……あんたら何者なんスか)

(ただの一般ハンターだよ)

 

 村に戻ってくるまではお互い遠慮気味に会話していたが、ここ数時間で距離を大分縮めたようだ。

 ノルンはイヴの話を聞きながら考え事をしていた。イヴと2人で狩りに出る時は、似たような武器であることから互いの動きを読みながら攻め一辺倒で狩るというある種ごり押し戦法を好んでいた。モンスターとの相性によって変えることはあるもののその戦い方が一番効率よく、尚且安全に狩りを進められていた。それはメディスが加わってもそこまで変わらないことだった。

 しかしノルンの戦い方はごり押し戦法だが、イヴ1人(・・)の場合は〈鏡花の構え〉からわかるように、モンスターの行動を読んだ上でのカウンター戦法をやっている。武器種的にもその様な攻め方がいいのは理解できる。だからこそ、自分と組んでいる理由がわからなくなっていた。

 

(…その表情、多分どうでもいいことを悩んでると思うんスよ。大方得意な戦法が違うから自分と組んでていいのかって思ってるんじゃないんスか?)

(……僕ってそんなわかりやすい?)

(いつもニブいって言われる俺が気づくくらいには)

 

 苦笑されるノルンであったが、エイデンの呆れ顔を見ているうちにどうでも良くなってきた。

 

(詳しいことは知らないっスけどその心配はしなくてもいいと思うっスよ。他でもないイヴさん自身から聞きましたから)

(なら僕はイヴを信じることにするよ)

 

 

 

 

 

 3日後。

 

 イヴの傷もきちんと塞がり、何があったか理解できないがメディスの調子も戻っていた。ここまでナルガクルガの襲来は無かったが、今朝村長の息子が森に出たところ、ナルガクルガの攻撃で裂けた岩や岸壁、ジャギィ等小型モンスターの死骸までもが転がっていた。

 

「という訳だ」

「メディス、体調はどうだ?」

「良好よ。心配かけたわ」

「キツくなったら言ってくださいね」

「なら、準備して出発しよう。アイツは常に怒り状態の様だから十分気をつけるように」

 

 ノルンのその言葉で全員が動き出した。

 ノルンは前回と同じく、煌炎剣リオレウス。

 イヴは手持ちの武器の中では一番相性の良い飛竜刀【双紅蓮】。

 メディスは最初に会った時に担いでいた斬竜旋ヘルダイト。

 エイデンは、雷盾斧ヴァンクロム。

 アイテムは基本となる回復薬や砥石等に加え、怒り状態でのみ効果のある落とし穴を人数分、シビレ罠を捕獲用に1つ、さらには大タル爆弾Gが8個とかなり大掛かりな荷物となった。

 

「討伐に持ち込めなくてもいい、この村の安全が保たれるのならなんでもアリッス」

「そうですね。ということは序盤から罠を活用していくということですか?」

 

 持ち物を見ればそうも考えられるだろう。しかしエイデンとノルンは首を振り、メディスを指差した。

 

「…え、わたし?」

「そうだ。君の武器なら乗りも行えるだろ?それによるダウンと罠、榴弾ビンによるスタンを絡めて叩く」

「攻撃させないようにってこと?」

 

 言いたいことは理解できた。だが、罠が効くかは未知数でもある。既に片目を失っているからなのか、視力がいいとイヴは感じていたのだ。だから、

 

「罠の多用は難しいと思います」

 

 己の直感を口にした。このまま行けば取り返しの付かない被害を被る可能性がある。

 代替案として、シビレ罠をもう一つ持っていき、イヴとエイデンが囮になりメディスが超近距離で攻撃、ノルンはヒットアンドアウェイを意識しここぞという時に一撃を叩き込む戦法。相手は恐らく同種の中でもかなりの地力がある個体だ。安全を取る作戦もあった方がいいだろう。

 

「なら、その2つで行くっス。落とし穴が有効と分かったらそこが攻め時っスね」

「分かったわ。…今度はあんなヘマはしないから」

「無理だけはしないでくれよ?」

「分かってるわよ」

 

 あんなことがあったから心配するのは当然のことだろう。しつこいくらいが丁度いい。そうして彼らは村の出口の門をくぐって行った。

 その様子を見ていたペパが心配そうに彼らを見つめていた。

 

 

 

 エイデンが千里眼の薬を飲み、ナルガクルガの位置を確認する。前回と同じくエリア6にいるようだ。

 

「あの場所が好みなんでしょうか…?」

「寝床としてはあそこはアリだろう。結構涼しいし」

「そういう問題?」

 

 話している内容はほとんど世話話。緊張感がないとも取れるが、それはお互いの信頼によるものからだとメディスとエイデンは理解した。微笑んでいながらも、身の毛が逆立つような雰囲気を醸し出すノルンとイヴから思わず目を背けてしまった。

 そんなことを感じることもない2人は武器の手入れをして出発しようとしていた。

 大荷物である罠とタル爆弾は置いていきエリア2、5と回る。そこに広がっていたのは――

 

「こりゃ酷いな」

「とんでもないことになってますね…」

 

 ――死屍累々に広がる狗竜や水獣たちであった。

 そしてその上空から、黒い靄を纏いながら降下してくる白疾風ナルガクルガの姿が見えた。

 

To Be Continued……




戦闘皆無。

続きはロケハンできる様になってからっすね…()
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