【TS】配信者やってると、こういうこともあるらしい。   作:16色のレイン・コーラス

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別のゲームの新作小説かな? 配信しろ。


医者にとっての患者はただの患者です【前編】

「──”緑光虫(りょっこうちゅう)ファクス”の効果。『デッキの上から4枚のカードを確認し、その中から待機値2以下の緑光虫ユニットを全て場に出す』コール。”セネデスムス””フラギラリア”」

 

 フィールドに浮かび上がる緑色の小さなユニットたち。

 

「さらに呼び出されたフラギラリアの効果。デッキから同名のカードをこのユニットの後方1マスに呼び出す。呼び出されたフラギラリアの効果を使用してもう一体のフラギラリアをコール」

 

 ユニットによって次々とフィールドが埋められていく。とても目に優しい。

 

「光虫呪文”赤緑反転”の効果。場にある自分の緑光虫ユニットを3枚まで墓地に送って、その枚数までデッキ・手札・墓地から相手の場に”赤光虫(しゃっこうちゅう)ダフニア”をコールする。セネデスムス1体とフラギラリア2体を墓地に送る。デッキから3体のダフニアを呼ぶ」

「うわ、張り付きだ。嫌だなぁ」

「”セネデスムス”が場を離れるとき、自分の場に緑光虫ユニットが存在するのでデッキから1枚手札に加える。さらに”緑光虫ボルボックス”をプレイ。このユニットが場に存在するとき、プレイヤーを直接攻撃する全ての光虫ユニットの攻撃は+1される」

 

 緑色の光がフィールドを満たしていく。 

 

「バトル。直接攻撃が可能なのはダフニア3体。攻撃力の合計は12Pのダメージ。ターン終了」

 

 3ターンでこんなに張り付かれると次のターンはないな。取りあえずは雑に対処。

 

「ターン開始。ドロー。呪文”巨人襲来のルーン”をプレイ。手札の待機値が最も重い巨人カードの待機値を0にする。”蛇神(へびがみ)ミドガルズオルム”の待機値を0にしてプレイ。ミドガルズオルムが存在する限り、全ての敵ユニットの体力は半減する。今はあまり意味がない。さらに”魔槍グングニル”をプレイ。このユニットが場に出たとき、敵ユニット1体に5Pのダメージを与える。先頭のダフニアを破壊」

「ダフニアは墓地へ送られる」

「”魔槌ミョルニル”をプレイ。このユニットが場に出たとき、全ての敵ユニットに1Pのダメージを与える。呪文”暗黒合成”をプレイ。グングニルにミドガルズオルムとミョルニルを合成。”魔神槍槌グニングニングニル”」

「いやそうはならない」

 

 武器に生物を合成する禁忌の呪法。

 

「結果が出たよ。……何やってるんだ?」

 

 続かない。

 

 ◇時間は少し遡る◇

 

 午後三時半。『湯川けい』と名乗る少女が時間通りに現れた。

 バイク用のコートを羽織っていて、顔が赤く息切れしている。話を聞いてみれば自転車に乗ってきたとのこと。この暑い中を? 死ぬよ? コートを脱がせたらその下はモアイのプリントされたTシャツ一枚。極端だな。中学生の服装意識ってこんなもんだったか? *1

 

「お疲れ様。何か飲み物を出そう。何がいい? 麦茶と、牛乳と、野菜ジュースと……」

「麦茶でお願いします」

 

 グラスに注いで渡すとごくごくと一気飲み。

 いい飲みっぷりだ。もう一杯どうぞ。

 

「落ち着いた?」

「はい先生!」

「それはよかった」

 

 それで、何だっけ。髪が伸びて声が変わって? 目の色が変わるのは割と別人レベルだと思うけど。

 本当に肌が白くてきれい。これ後天的なものなの? 

 

「今日は身体の調子が変だということだけど、もう一度説明してもらえるかな?」

「あの、笑わないでもらえますか……?」

「もちろんだよ」

 

 これくらいの子供は多感な時期だからなぁ。*2

 それにしてもこの緊張度合い、まるで学生のころ僕に告白してきた後輩女子のようだ。

 

「俺が『湯川慶』なんです!」

「知ってるよ?」

 

 俺? 

 

「……。違うんです、先生のよく知ってる『湯川慶』なんです、男の!」

 

 そんなには知らないけど。一般的な医師と患者の関係だよ。

 

「どういう?」

「免許証あります! 本物です! 朝起きたらこんな風になってて……もう俺、どうすればいいか分かんなくて」

 

 確かに免許証は本物っぽいけど目の前にいる女の子とは全く結びつかない。うむむ、どうしよう……。

 

「ちょっと待って。そういうのに詳しい機械持ってくるね」

 

 あれだ、嘘発見器。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「ここに座って」

「はい……」

「これを頭に被って」

「はい……洗脳装置? 

 

 聞こえてるよ? 

 

「じゃあ質問するから『はい』か『いいえ』で答えてね」

「はい」

「あなたは湯川慶ですか」

「はい」

「あなたは男ですか」

「はい」

「ふーむ。あなたは花袋紅葉(もみじ)を若いと思う」

「はい」

 

 ブーッ! 嘘を検知した反応。まだ分からないな。

 

「先生、違うんです!」

「大丈夫、分かってるよ。次、あなたは動画配信者です」

「はい」

「あなたは歌を歌うことが好きだ」

「はい」

「あなたは──」

「あのー。これは何をやってるんですか?」

「嘘発見器」

「真面目に! お願いします!」

 

 分かった。分からないということが。嘘はついていないみたいだけど、そもそも彼とめちゃくちゃ親しかった訳じゃないから秘密の質問とかもできないし。配信をやっているというから、実験で使う予定の薬剤について聞きに来るくらい。ああ、そうだ。

 

「あなたがインフルエンザに罹ったのは何歳のとき?」

「予防接種を打っているのでかかってないです」

「正解。引っかからなかったね、っていうのは違うか……。でも人に話してるかもしれん情報だしなぁ。よし分かった。ひとまずは信じよう。装置は外していいよ」

 

 何だったかな悪魔の証明? それは違うか。

 

「それじゃあ採血させてもらえる? 血を調べれば何か分かるかも」

「お願いします……」

 

 そう言っておずおずと腕をさし出してくる少女。かわいい。これが元々は成人男性だって? 嘘でしょう。

 

「きれいな肌だよね。注射器を刺すのがもったいないくらい。いただきます*3

 

 無意識に変なこと言っちゃった。

 

「結果が出るまでは――出ないかもしれないけど、30分くらいかかるかもしれないから待合室で待ってて」

「はい先生。あの、トイレ借りていいですか?」

「いいよ。場所は分かる? ……! 僕もついていこう」

「うええ、一人で大丈夫ですって!」

 

 この少女が知り合いの男の子だと仮定して、もしかすると女子用のトイレを使うのは初めてなのでは。まさか男子用トイレの方には行かないよね?

*1
そんなことはないしそもそも中学生ではない。

*2
中学生ではない。

*3
血をね。




 ◇時系列未回収につき後編へ続く◇


感想・誤字報告よろしくお願いします。特に誤字報告。
自分で読み返していて何か所か間違いがあったので修正しました。お目汚ししてすいません。
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