ナイチンゲールは支えたい   作:織部よよ

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ラスト。メインヒロインのターン。


【挿絵表示】


最近よくよく見れば、リズの髪の色(光陰どちらも)がより正確に好きな感じであることを知ってテンション上がってます。プラチナブロンドフェチズムは伊達じゃない。






描いてて思いますが、リズのおぱーいは控えめ一択で盛るような人たちは情状酌量の余地なしだと思ってます。コーデの控えめさを見ていただければわかることですから当たり前なんですよね・・・(‘ω’)



#9 OF-LPA-EX3 斜陽

「待たせたな、リズ。ここからは君との時間だ」

 

「…いえ、私と同じくらい、アズさんとプラチナさんも逢瀬を楽しみにしていたそうですから…私がどうこう言えるものでは、ありません…」

 

「それでもだ。プラチナ、ここまでリズを連れてきてくれてありがとう」

 

「そんなの、礼を言われるまでもないよ。それじゃ、後は2人で楽しんでね」

 

 

そう言うとプラチナは早速来た道を戻っていった。それを2人で見届けた後、改めてリズの方へと向き合う。

 

 

「……なんだか、気合入っているな……」

 

 

リズの今日の服装を一言で表すなら「清楚さと開放感の両立」だろうか。

 

彼女もアズと同じように普段の戦闘服のデザインを一部採用している感じではあるのだが、それがよりによってベアトップ__つまり肩の出ているような半そでのサマーワンピースだったのだ。しかも服の構造上鎖骨あたりもかなり大胆に開かれている。

 

よくよく思い返してみれば普段の戦闘服も白い肩がまぶしかったような気がする(し、なんならその綺麗な両脚さえ見えている)が、こちらの私服でぐっと深窓の令嬢を彷彿とさせる雰囲気を醸し出してきたのは良い意味で予想外だった……不謹慎だが、車椅子に乗っていることで更にそのオーラを際立たせているだろう。

 

リズに対して常々感じていた不安定さや内向性は見る影もなかった。ばっちりだな。

 

 

「…ドクターはここに来る前、『せっかくの見知らぬ土地だから、外に出てみるのも悪くないだろう』とおっしゃっていましたが……私も、それに倣おうと思って、アズさんに衣服の選出をお願いをしたのです……」

 

「なるほど。うん…非常によく似合っている。いつにも増して綺麗だ」

 

 

嘘偽りない本音を伝える。つい無意識に普段言わないようなことまで言ってしまったような気もするが祭りで浮ついているせいにしておきたい。

 

さて、そんな誉め言葉をリズはどう受け取るかなと思って様子を窺うと。

 

 

「…………」

 

 

…目を少しだけ見開いて固まっていた。おそらくミスしたなこれ。

 

 

「あー……その、なんだ。今のは気にしないでくれ。それじゃあ、行こうか。車椅子押すぞ」

 

 

誤魔化すように(というより実際誤魔化しとして)未だに固まっているリズの後ろに回り、何故か木で出来ている車椅子を押そうと持ち手を掴む。いや、確かに現代の科学技術の水準に合わせた無機質なものより、こちらの方が雰囲気的には合うのだが、こんなものどこにあったのだろうか。

 

 

すぐ前にいる人の表情も心情もわからないまま、2日目の午後が幕開けてしまった。

 

…最初の目的地に着くまでには再起動してほしい。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

“綺麗”。

 

美しいさま、汚れのないさま……という単語だったような、覚えがあります。

 

 

…記憶喪失になってから、私は特に、自分については考えたことがありませんでした。小鳥さんとお話をしていれば、それで良かったですし…戦場でも、特に困ることはなかったので……それが、ドクターとあのようなことがあってからこの方と会話することが増え…アズさん、プラチナさんとも関わるようになり……以前と比べて、私は随分と変わったように思えます…。

 

…最近は、少しづつ檻に入っているとは感じなくなりました…目の前に、私よりも雁字搦めな人がいたから、というのもありますが…。

 

 

…先ほど、ドクターから言われた「綺麗」というフレーズ…おそらくこの方の本心なのでしょう…それをなんとなく理解しているからこそ、私の頭の中でそのフレーズが…ぐるぐると、回っているのです。

 

何故でしょう……ひどく、心が落ち着きません。

 

 

「…ドクター」

 

「んぉっ、ど、どうした」

 

「…先ほど、ドクターから“綺麗”だと言われてから…心臓の動悸が収まりません……どうしてでしょうか…?」

 

「……あー…すまない、私にもあまり見当がつかない…それより、もう復帰したか?」

 

「…え……あ」

 

 

…ここでようやく、とっくに待ち合わせ場所から離れて街を巡っていることに気が付きました…随分と、呆けていたようです…。

 

 

「…すみません、ご心配をおかけしました…」

 

「いや、いいさ。それより、見てごらん」

 

「…これは………」

 

 

…ドクターに促されて周りをよく見れば、そこには…私の思うよりも、遥かにたくさんの人がいました。テラスで席に座り、飲み物を片手に談笑している男女…別のテラスでは、ギターを弾いているらしい2人組の男性…他にもさまざまな種族の人たちが、分け隔てなく思い思いにこの地を楽しんでいるように見えます……。

 

 

「どうだ、これが人の活気というものだ。悪くないだろう?」

 

「…はい……これが、外の世界…」

 

 

…今まで全く見向きもしなかった世界が、とても鮮烈に見えます……私が、檻から出ようとしているのか、それとも__ドクターが、私を連れ出そうとしているのか…。

 

…今度はそれがわからなくなって、もう一度ドクターの方に振り返りました…ですが、その顔を見るたびに「綺麗だ」と言われたことが脳裏をよぎり、すぐに動悸が増して…何故か、顔を見られなくなってしまいます。

 

 

「…リズ、どうかしたか?さっきから周りの景色と私の顔を交互に見やって…」

 

「…い、いえ…ドクターの顔を見ると何故だか落ち着かなくて……」

 

「ふむ……それはちょっとよく分からないが、それなら存分にシエスタの景色を見ているといいよ。最初の目的地まで私が連れて行くから」

 

「…最初の目的地、ですか…?それは一体…」

 

「ああ、とりあえず昼餉を食べようと思ってるが、普通に何処かで食べるんではなく食べ歩きをしようと思っていてな。昨日からいくつか目を付けていた店があるんだ」

 

「…ええ、それで構いません…」

 

 

…ひとまず、今は無視してしまうことにしましょう…ドクターと接していると、どうにも、原因不明の軽い不調が続きます……。

 

そのまま、私はドクターの目指す場所と連れられて行きました…。

 

 

 

 

 

………不調に伴って顔が熱を帯びていることにも、気が付かないままで。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

目を付けていた店の中で、待ち合わせ場所から一番近い、おおよそ徒歩5分程度のところにある「ケバブ」なるものを売りにしている異国料理屋(ほぼ屋台だが)に来ていた。ケバブというものはここで初めて見たが、激烈に空腹を刺激するようなキレのある匂いから恐らくゲテモノの類ではないだろうと判断し、採用。

 

問題はリズがこういう感じの、ジャンク系を食べられるかどうかだったのだが。

 

 

 

 

 

「…こういったものは、初めて食しますが…とても、食欲をそそられるような味ですね……ロドスの食堂にも、似たような料理があるでしょうか…?」

 

 

彼女の浅葱色の目は、先ほどまでの驚愕とはまた別の感情を映し出し、わずかに見開かれている。ケバブを食べる両手は止まる様子を見せていない。口周りにも微妙にソースが付着している__この通り、大変気に入ったようだ。

 

 

「どうだろうか。メニューにはないかもしれないが、マッターホルン辺りに頼めば作ってくれるかもしれないな。ロドスに帰ったら早速掛け合ってみよう__しかし、あまり頻繁に食べるものではないな、これは」

 

 

確かに味の点からすれば文句なしで美味しいのだが、いかんせんこの分だとあまり健康に良さそうな成分ではなさそうだ。この場にアズがいればより詳しい視点の意見がもらえただろうが、生憎と私たちは料理に関してはぺーぺーなのである。

 

しかしやはり、このままリズがジャンクフードに入れ込むような事態は避けた方がいいと感じている。釘を刺しておく必要があるな。

 

 

「おそらくこの手の料理は健康に悪い。リズはこうやって普通に動けてはいるが、それでもロドスの中で格段に体が弱い部類に入るのは事実。先ほども言った通り、あまり高頻度で食べるものではないだろう」

 

「…そうですね、確かに少し塩辛さが多いような気もします…」

 

 

…ある意味、ケバブに最初に連れてきたのは奇跡だったかもしれない。思わぬリズの可能性を見てしまった。それにリズには言っていないが、別にジャンクフードを抑えておきたい理由がある。とても個人的な理由だからあまりおおっぴらに言えないが。

 

 

「…ドクター?」

 

 

改めて、彼女の方を見やる。華奢という言葉がロドスで一番似合うのではないかというくらいに細くしなやかな女性。

 

言えるわけがない、「その華奢さがリズにはとても似合うから不測の事態であまり変わってほしくない」とは。ひどく独善的な話だ。

 

 

「いや、なんでもないよ。食べ切ったら二軒目に行こうか。その前に口周りを拭かないと」

 

 

とりあえずポッケからティッシュを取り出すか…。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

二軒目。

 

シエスタで獲れる魚をふんだんに使用した海鮮丼が、屋台として軽い感じで売られている店にたどり着いた。価格もそんなに高くはない…と思う。

 

 

「リズ、悪いが少し待っていてくれ。少しだけ列に並ばなければいけないから」

 

「…わかりました」

 

 

屋台から少し離れたところまで車椅子を押していき、待機してもらうことにする。流石にな。

 

待たせるのも悪いが、それ以上に万が一ナンパに合うと面倒なので早めに戻りたいが。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

「ねぇ、そこの姉ちゃん。今暇?俺らと一緒に遊ばない?」

 

「…どちら様でしょうか…?」

 

「俺ら3人ともシエスタ人なんだ。君、見たところ観光客でしょ?俺らが楽しいところいっぱい教えてあげるからさ?」

 

「…すみません。私はドクターと一緒に来ているので……」

 

「じゃあ、そのドクター?も一緒でいいからさ」

 

「この女、車椅子とは思えないくらいしっかりしてんな。当たりを引いたか?」

 

「…いや、ダメだ!彼女は諦めようぜ!」

 

「はぁ!?なんでだよ、こんな上玉なのに」

 

「バカ言えッ!よく見ろ女の顔を!知らないのか!!」

 

「……どうかしたのか?随分と可愛い面してるが」

 

「あぁ、クソっ!とにかく他を当たった方がいいんだ!事情は後で説明するからさっさと離れるぞ!!」

 

「なんなんだよ本当に___!」

 

 

 

「……何だったのでしょう……?」

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

「お待たせ、リズ。待ってる間、何かあったか?」

 

 

プラスチック製のどんぶりを2人分持って戻る。ものを買う時だけ目を離してしまっていたが、それ以外では特に何もなかったようなので確認程度だが。

 

しかし私の予想は外れていたことを知る。

 

 

「…3人組の男性が話しかけてきましたが…特に、何かされてはいません……それどころか、少し避けているような印象さえ抱きましたが…」

 

「…ほう?」

 

 

どうやらいろんな意味で失礼な奴らがいるらしい。これはカチコミ案件。

 

が、そんなことをしてしまうとリズとの時間がなくなってしまうので当然何もしないが。

 

 

「リズを避ける理由…いまいち見当がつかないな。もしかしたら記憶喪失前のリズを見たことのある人なのかもしれないが、個人的には考えたくない可能性だな」

 

「…例え、そうであったとしても…今は、ドクターのお傍にいることだけが私の生きる理由ですから…関係ありませんよ……」

 

「…そうだな。それに、今はこのシエスタを楽しもうじゃないか」

 

 

事実リズには何も被害が及んでいないようだし、わざわざ今熟考する必要もないだろう。それにこういうちょっとしたことでいちいち思考を巡らせるのも無駄だ。

 

 

「ほれ、海鮮丼だ。一緒に食べよう」

 

「…ありがとうございます…」

 

 

新鮮さが重要なためか、ロドス内ではあまり見かけない魚介類。こういう機会なので食べておきたいと思っただけだが…美味いな。

 

慣れないが確かに舌鼓を打ってしまうようなイイものを食べながら、これからのことを考えよう。もう食べ物はいったん置いておくべきだろう。まだ気になっているところはいくつかあるんだ。余計なナンパなど頭の片隅に放って置けばいいのだ。

 

 

 

だが、リズをナンパした野郎どもが彼女を避けた本当の理由、それを後で身をもって知ることとなる。

 

私ごときにはどうしようもない理由を。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

ひとまず屋台系の店に二軒寄って現地の料理を堪能した後も数軒、小物系や現地系の店舗をいくつか回り、良い時間になった頃合いでお土産屋にやってきた。流石にアズと寄ったせっけんだけではお土産としては不足しているだろうと思い、何かちょうどよさそうなものを見つけられればいいだろう。

 

一番大きいところではないが、販売品の性質上他よりもやはり人が多い。車椅子で移動をするのもなかなかに厳しいな。

 

 

「定番を攻めるのであれば、だいたいお菓子とか食べられるものを買うべきか…どうだろうか。例えばこのクッキーとか」

 

「…それなら、確かに丸いでしょうが……こちらの、黒曜石モチーフの入浴剤なども良さそうかと…」

 

「あー…なるほど。効能的にも効くだろうし悪くない選択だな。であればいっそのこといろんなものを取りそろえた方がいいかもしれないな…?別のスペースにも行くか」

 

 

通路を挟んでもう少し奥に進む。他の客に迷惑のかからないように比較的ゆっくりと移動しているが、誰かが物を選んでいたりでどうしても通れないところが出てきてしまうので、そのときは一声かけるのだが。

 

言っているとちょうど通過しようと思ったところに一人のフェリーンの男性がいた。こちらには気が付かない様子。

 

 

「すみません、通していただけますか」

 

「あ、ああ、すまない____な?」

 

 

急激に言葉が尻すぼみになる彼。何か私たちの顔に見覚えでもあるのかと思ったが、どうやらリズの顔を見て固まっているらしい。やるか?やるべきか?

 

…しかし次に男性が発した言葉は、今度こそ私の予想を完全に裏切ることになる_それも、マイナスの方向で。

 

 

 

 

「…な、なんでサルカズなんかがここにいるんだよ…ッ!!」

 

「……?」

 

「は…?」

 

 

 

 

一瞬言葉の内容が理解出来なかったが、やがてすぐに腑に落ちる。

 

ああ、そうか。ナンパ野郎どもがリズを避けた理由は、これか。

 

教官や他のオペレーターから聞いたことがある。サルカズ族…リズやシャイニング、エンカクらは何かしらの同族同士の内紛に参加していたこと__そこに、私がいたらしいということも、含めて。

 

目の前の彼の顔には、怯えと怒りが浮かんでいるように見える。そしてその負の感情は、そのままリズへと向かうこととなる。それは、困る。

 

 

「お前らのせいで、俺は…俺た「待ってくれッ!!!」…!?」

 

 

たまらず言葉を遮る。当の本人はどう対応していいかわからないといった顔だが、ここはもう仕方がない。この場で何かしらが起こるよりマシだ。

 

 

「なんだよお前はッ!!サルカズなんかと付き合いやがって!!!!」

 

「良いから話を聞いてくれ……彼女は、リズは記憶喪失なんだ。私と同じでね。だから責めないでやってくれ。サルカズが昔に何を起こしたのかは具体的には知らないが、今ではただの病人…被害者なんだ」

 

「…記憶、喪失…?」

 

「…はい、ドクターのおっしゃる通りです。私は…自分の名前以外、何も覚えていません。ドクターとは、こうなった後に知り合いました…ですから、すみません。種族について聞かれても…私は、何もお答えできないでしょう……」

 

「…………くそッ」

 

 

彼の体に見受けられるフェリーン族特有の耳としっぽ。どう見てもサルカズ族ではない。ということは、彼は何らかの理由でカズデルに住んでいた__いや、住まざるを得なかったのだろう。それできっと内紛で被害を被ってしまったのだろう。他人とはいえ少し申し訳ない。

 

彼は、どうすることも出来ない感情を必死に抑え込んでいるように見えた。

 

 

「…彼女は記憶喪失だけじゃない。君も、一目で分かるだろう?」

 

「…ああ、取り乱してすまなかった。だがこの怒りを忘れることはない。この恐怖は拭えるものではない……俺はもう行く。迷惑かけたな」

 

 

その捨て台詞のようなものを最後にして、彼は何処かへと行ってしまった。彼の怒号につられてこちらを見ていた野次馬たちがパラパラと元通りになっていくが、その中に確かにリズへ、彼と同種の視線を向けている人らがいることに気が付いていた。

 

 

「…リズ、ここを出ようか。それが他の客のためだ」

 

「…それが良さそうですね」

 

 

お土産は他のオペレーターの誰かに買ってもらうように、後で通信機で連絡するか。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

「リズ。ビーチに行く前に、あと一か所だけ私用で寄らせてほしいところがあるのだがいいか?」

 

 

今日は夕方からビーチの一角を貸し切りにしてもらって、こちらに来ているオペレーター全員でバーベキューをしようという話になっていた。もう時間に近いため今からビーチに向かってちょうどくらいなのだが、ふと思い立ち急遽寄り道をしようと思ったのだ。

 

 

「…私は構いませんが、バーベキューまでに間に合うでしょうか……」

 

「まあ、なるべく急ぐよ。幸い目的の店はほど近いから」

 

 

会話が途切れる。しかし不思議と気まずさは感じない。そこかしこから聞こえる人々のビート。遠い会場で沸き立っている歓声。そんな喧騒が鳴りやまないこの街で、2人だけが静かで、シエスタに溶け込んでいく。この時間がひどく心地が良くて、自分とリズの体が混ざって、輪郭がぼやけて……。

 

思わずすべてをあるがままに受け入れようという悟りの境地に入ろうとしたところで、遠くに見えていた目当ての看板がすぐそこまで来ていたことに気が付いた。

 

 

「…ここは、アクセサリーショップ…ですか?」

 

「そうだ。いろんなお礼を兼ねて、さっきここを思い出したから。じゃあ、少しだけここで待っていてくれ」

 

 

 

 

 

店内をいろいろ見回っているが、なかなかピンと来るものが見つからない。ペンダント、ネックレス、ピアス…前2人のようなものを思い出しながら探すが、難航している。

 

すると見かねたのか、店員の一人が声をかけてきてくれた。

 

 

「彼女さんへの贈り物ですか?」

 

「ああ、まあ。そんなところだ」

 

 

実際はそうではなく単に身近な女性へと日ごろのお礼をするだけなのだが、こうやって勘違いしてもらった方がそれっぽいものをおすすめしてくれそうだと思い敢えて濁して答えた。

 

 

「彼女さんはどんな人なんですか?」

 

「…そうだな、一言でいえば“天使”だろうか。肌も髪も白くて本当にかわいらしいのだが…生憎と、自力で歩くことができなくて」

 

「…何か、まずいことを聞いちゃいましたね」

 

「いや、幸い私は専門分野というか。私が必ず治したいと思っているからそうでもないさ」

 

「お医者さんなんですか?すごいですね!……あ、これなんかどうでしょうか!」

 

「厳密にいえば医者ではないんだが……と。これか」

 

 

そうして女性の店員は一つの指輪を手に取り見せてくれた。

 

 

「こちらにはめ込まれている宝石は『健康』『明るい未来』などの石言葉を持っているので彼女さんにピッタリだと思いますよ」

 

 

宝石以外の部分もスタイリッシュなデザインをしていて、個人的にポイントが高い。石言葉もリズによく合うし、いいなこれ。

 

 

「いいね、じゃあこれを買ってしまおう」

 

「お買い上げありがとうございまーす!」

 

 

 

 

 

「リズ、待たせたな」

 

「…この人が、彼女さん?想像した50倍はかわいいし綺麗なんですけど……」

 

 

一応日陰に車椅子を寄せたが、それでも外は十分に暑い。リズを外で待たせてしまったことに深く詫びつつ、先ほど購入したアクセサリーを彼女に手渡した。

 

 

「これを。改めて、日頃のお礼として受けて取ってほしい」

 

「…ありがとうございます…開けてみても、よろしいでしょうか…?」

 

「ああ」

 

 

自分の言葉に従ってリズが小袋を開ける。中から取り出されたのは青い宝石をあしらった直線的なデザインのシルバーリング__にネックレス用としてチェーンを通したものだ。普段身に着けないような代物を見て、リズは少なからず驚いているように見える。

 

 

「着けてみてくれ」

 

「…ドクターが着けていただけませんか?」

 

「…お、おう」

 

 

ノータイムで返された。

 

とはいえ私自身手伝うのはやぶさかではないため、リングネックレスを受け取ってリズの後ろに回る。同時にその白金色の絹糸をかき上げると、感染者とは思えないくらいに白くなめらかなうなじがこんにちはした。

 

 

「………」

 

 

何故だろう。きめ細かなそれに、自分でも信じられないくらいに目を奪われる。いかんいかん。無心だ無心。

 

なんとかネックレスをかけてやり、改めて正面から彼女を見やると。

 

 

「おお……いいな」

 

「あら……あらあらあら……すごく似合ってる…」

 

 

私と件の店員、両名感嘆の息を漏らさずにはいられなかった。店員の言う通り非常によく似合っているし、買ってよかったと感じざるを得ない。

 

 

「…どうでしょうか」

 

「控えめに言ってずっとつけt……ああ、買ってよかったと5回連続で感じているよ」

 

「…そうですか、ありがとうございます…」

 

「…あれ、彼女さん、あまり喜んでいませんね…?」

 

「…いや、そうでもないな、これは」

 

 

彼女は感情の起伏に乏しい。傍から見たらそう感じても仕方ないだろうが、私にはなんとなくわかる。声にわずかに喜色が滲んでいたし、こちらに向けている視線が平時よりも温かみのあるものになっているので、結構喜んでくれているみたいだ。

 

 

「はえ~。やっぱり彼氏さんはわかるものなんですね」

 

「実は、恋人ではないんだ。職場の上司と部下というか、彼女は私の秘書でな。日頃からいろいろと世話になっているから、これを機に何か贈ろうと思っていたんだ」

 

「そうだったんですね…それにしても、今まで見てきた人の中でぶっちぎりに顔がいいですね、彼女」

 

「はは、まあ職場が職場なだけに私の知る限りではあまり気にしていない人が多いがな」

 

 

ふと気になって時間を確認するために腕時計を見ると、既にバーベキュー開始予定の17時半を十数分ほどオーバーして……まずい、過ぎてるじゃないか!

 

 

「リズ、すまん!予定の時間に遅れてしまっている。急ごう」

 

「…あ、はい。そうしましょう…」

 

「店員さんも、良い買い物をさせてもらったよ。ありがとう。それじゃ」

 

 

相手側の反応もそこそこに、車椅子をビーチの方へ押していく。おそらくほとんどのオペレーターが既に集まっているはずなので、まず間違いなく目立ってしまうが私の落ち度だし仕方がない。

 

リズに事前に時間の方を言及されていたので、申し訳ないことこの上なかった。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

ある意味初めてかもしれない、たくさんのオペレーターたちとの食事。ロドスで生活しているとどうしても食生活が乱れる…というか最低限になりがちなのであまり食堂などには顔を出せずにいたので、こうして皆を見ているといろいろと気が付くものがある。

 

自分としてはしっかりとコミュニケーションを取っていた気になっていたが、どうやら使命感に囚われすぎてオペレーターたちの観察や把握を怠っていたらしい。そのことを深く恥じる。

 

 

「おい、その肉はオレサマのものだ!」

 

「駄目よ~イフリータちゃん。ちゃんとお野菜も食べないと」

 

「シュヴァルツ、これは直接野菜を取ってもいいのかしら?」

 

「私がお取りいたしましょう、セイロン様」

 

 

…その他、さまざまなオペレーターたちが皆して談笑している。一時的といえど戦いを忘れて、普段と違う装いを身に着けて。

 

この光景は、ここ最近で私が朝に見ているものと同質のものであるだろう。私はこれを守りたい。この普通でありふれた景色がいつまでも続くように、()()()()()()()()()()()()()()

 

そして____

 

 

「…リズ」

 

「…ドクター、こちらにいましたか」

 

 

水平線の斜陽を見ながら文字通り黄昏ていると、やはり隣に来るオペレーター。何の運命か、今では大切な秘書と感じるようにまでなった鳥籠の天使。

 

 

「リズ……君のことは、私が救う。君だけじゃない、全ての患者を救いたい、皆がいつでも笑っていられるように」

 

「……はい」

 

「だが、私一人ではどうにもまだ暴走してしまうきらいがあるみたいだ。だからこれからも秘書として、私を支えてほしい」

 

 

しっかりと彼女の目を見る。そこには無理な命令だと感じている不快な感情も従来のような無機質な感情も微塵も感じられない。

 

 

「…ドクターをお支えすることが、今の私の生きる理由です。ですから…これからも、宜しくお願い致します、ドクター…」

 

 

海風に揺られた彼女の長髪が煌めく。

 

それは私と彼女の誓いを表すような、鮮やかな金色だった。

 

 

 




10000近い文字数にタグ通りのちょっとシリアス。これはメインに相応しい物量。

ようやっとオブフェス編、終わりです。次からやっと本編に戻れる…。

リズは絶対髪の毛ふわっふわにするべきだし肌は綺麗でいるべき。異論は認めない。ロドスでゆったりとした生活を送ってほしいだけの人生___。

そろそろUA10000行きそうなので

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