ナイチンゲールは支えたい   作:織部よよ

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爆誕。



【挿絵表示】



ちなみに言うタイミングがなかったので今言いますが、ドクターの真名「クラヴィス」はラテン語で「鍵」を意味しています。(リズ)に対しての(クラヴィス)

今回はドクターが暴走気味です。


UAが20000件を超えました。いつもいつもありがとうございます。評価平均1位を独走して「刺さる人に刺さる」の極致を進む所存。



#15 少女体

 

 

8:00 a.m. 晴天

 

 

 

 

 

「………」

 

()()()()……いかがいたしましょう…」

 

「…本当に、どうしようか」

 

 

今この執務室には、私の他に一人の()()がいる。

 

足まで届く緩くウェーブのかかった金髪に、ブルートルマリンを彷彿とさせる綺麗な碧眼。種族が色濃く表れている頭の一対の角も、今日は幾分か小ぶりである。

 

見慣れているはずの端正な顔は、いつもよりも一回りも二回りも幼い。雰囲気も相まって、どこかの名家の一人娘のような印象を受ける。

 

 

「…からだが、ちぢんでしまいましたが…」

 

 

少女の名はリズ。コードネーム・ナイチンゲール。

 

私が信頼している秘書が、どういうわけか小さくなってしまったのである。

 

 

 

 

 

とりあえず、心当たりを思い出すことをほっぽって膝に乗せてみたい衝動をこらえるので必死だった。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

昨日は、特になんてことない一日を送っていた。

 

リズはよくやってくれているし、たまにやってくるプラチナやアズを始めとする他のオペレーターたちとの歓談も楽しい。以前に比べて随分と環境は良くなったと、殊最近そう感じる。

 

そうやってつつがなく時間を送っていると、何とも珍しいオペレーターが執務室にやって来たのだ。

 

 

『ドクター、ナイチンゲール、いるか?』

 

『…ワルファリンさん?如何なさいました?』

 

『ワルファリンか、珍しいな。君がここに来るのは』

 

『ああ、ちとそなたらに渡したいものがあってな。まずはドクターに、ほれ』

 

『これは……錠剤?』

 

『血液への有効成分を含んだ栄養剤だな。いつか渡そうと思っていたんだが、知っての通り妾たち医療チームは日々忙しい。なかなか良いタイミングが見つからず、今になってようやく渡せる状態になったというわけだ。ただでさえそなたの血は特殊なのだから、質を高く保つことには気を配らねばならない。毎食後に服用することだな』

 

『なるほど、そういうことならありがたくもらうことにするさ』

 

『ナイチンゲールには、体に優しい成分が入っている栄養剤だ。主に循環器系の調子を整える効果がある。気休め程度だが、一日一回、寝る前に飲んでおくといい』

 

『はぁ……ありがとうございます』

 

『そなたらは決して普通の人間とは言えない。ゆえ、妾たちもサポートをする必要がある。そなたらの心配をする者が一定数いることを心に留めておくことだ。それでは、妾はもう行く』

 

『ああ、本当にありがとう』

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

「………リズ。昨日の就寝前、ワルファリンからもらった栄養剤を服用したか?」

 

「……あ…」

 

 

昨日あったことをざっと思い出してみた結果、心当たりがワルファリンしかなかった。

 

とあるオペレーターの原因不明の物理強度を探るべく200人分の睡眠薬を用意したり、最近加入した龍門の闇医者とセットで「怪医」と呼ばれていたりと何かと問題行動が目立つワルファリン。もう少し注意して服用するように言えばよかったか…。

 

 

「ナイチンゲール!どこか体に異常は起きてないか!?」

 

 

すると大きい音を立てて開かれる扉。走って来たのか、ワルファリン(当の本人)

が血相を変えて執務室に駆けこんできた。

 

 

「やあワルファリン。これは一体どういうことか、説明してもらえるか?」

 

「ああ…妾の手違いが原因だ。昨日ナイチンゲールに渡した栄養剤があるだろう?それが“体が幼体になる薬”とラベルを変えてしまっていたようだ。今朝……つまり、ついさっき気が付いた」

 

「……なんてもの持ってるんだ…体に悪影響はないんだろうな?」

 

「ああ、副作用はなるべく発生しないように調整してあったから大丈夫なんだが、それを飲んでしまうと、24時間は元には戻らない。今日一日中は小さいままで過ごしてもらわねばならないだろうな」

 

 

調整したって…ワルファリンが作ったのか。それはそれで凄いことなんだが、やっぱりその効果はいろいろおかしいと思う。

 

とは言え体に害がないのならまずは一安心と言ったところか。見る限り、どうやらワルファリンもわざとリズに渡したわけではなさそうだし。

 

リズもリズで、ワルファリンの話を一通り聞いても特に驚いたりショックを受けていたりということはなさそうだ。いつもより5割増しで可愛い。

 

 

「ナイチンゲール、今日一日はその姿で過ごしてくれ。この件に関して()完全に妾に非がある。もし一刻も早く戻りたいというのなら今からすぐに中和剤を作るが」

 

「…いえ、それはかまいません……きょうは、このすがたですごそうとおもいます」

 

「そうか。そういうことなら妾はケルシーにバレないようにしておくから、なるべくここからは出ないようにな。それでは失礼する」

 

 

ひどく焦った様子で執務室を出ていくワルファリン。それはそうだ、ただでさえ度重なる問題行動で減給されているうえに、リズという重症患者に対して“実害”が出ているのだ。これがバレたらいよいよ無給になってしまうのは想像に難くない。心の中でひっそりと祈っておく。

 

 

さて。

 

 

「リズ、今日はどうする?」

 

「とくにからだがうごかない、というわけではないので……いつものようにしょるいをかたづけましょう」

 

 

……なんだろう。幼児体型になったせいか、しゃべり方が舌足らずになっている。かわいい。

 

 

「なあ、リズ……」

 

「…どうかしましたか?」

 

「……ちょっと、こっちに来てくれ」

 

 

悪いが我慢できない。リズも許してくれるはずだ。

 

 

 

 

 

「いかがしましたか…?」

 

「私の膝の上に乗ってみないか?」

 

「………ひざ、ですか?」

 

 

後悔はなかった。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

「すまん、リズ……小さくなった君を見ていると、無性にこうしたくなってしまって…」

 

「……いえ、その…ふかいではないのですが…」

 

「本当にすまない…」

 

 

我慢できず、小さくなったリズを膝の上に座らせてひたすらに頭を撫でるという凶行。なまじ拒絶されていないだけに、先ほどから心苦しさが胸中に立ち込めている。

 

私は別に幼児性愛だとかそういうわけではない。ロドスのオペレーターの中には、アーミヤやクオーラを代表する小柄な子も少なくないのだが、彼女らに対してこのようなことをしたいとは思ったことはないのだ。

 

それがどうだろう、幼児体型ともとれるような体になったリズを視界にいれてからというものの、このように「愛でる」という衝動を制御することが難しくなっていた。これにはリズも私も驚愕ものである。

 

 

……とはいえ。

 

正直な話をすれば、今現在私は3つの攻撃によって半ば生き地獄を食らっていた。

 

1つ目は、これまでに何度も感じる機会のあった彼女特有のミルクめいた香り。少女化したことによってその匂いがより幼いというか、純度が上がって私の鼻腔を占有しているような気がする。

 

2つ目は、髪。これも過去に__というよりもごく最近の話だが__何度か撫でさせてもらっている。最上級の絹糸を彷彿とさせる艶やかでふわりとした、非常に長い部類に入る金髪。手入れなどはとても大変そうだが一体どうしているのだろうかと、とても気になる部分はあるのだが、それはプライバシーに関わりそうなのであまり積極的に聞こうとは思わない。

 

そして3つ目が、リズの現在の状態(やけに愛い姿)だ。

 

 

「…どうして、こうも君を愛でたくなるのだろう……」

 

「……わたしにも、けんとうがつきません……」

 

 

本当にすまない、リズ。手が止まらないんだ。

 

本格的にそろそろ仕事をしないといけないのだが、なんらかのアーツが働いているかのようにリズを撫でる手が自動で動いてしまう。このままでいると、執務室に入ってきたオペレーターにいろいろあらぬ誤解を与えてしまいそうだ…。

 

 

「ドクター、いる……___!?」

 

「あ」

 

 

あ。

 

懸念したそばから執務室に訪問してきてしまったのはプラチナ。入ってくるなり、私とリズのとんでもない姿を見て硬直している。

 

 

「や、やぁ…プラチナ……」

 

「……ごきげんよう、ぷらちなさん」

 

「……ドクター、ちょっとお話しようか。一体何がどうなればリズさんとの子供が生まれたのかな??」

 

「ち、違うんだプラチナ!!この少女はリズなんだって!」

 

「……え、そうなの?」

 

「…はい」

 

「ほら、リズもこう言ってるし、とりあえずその弓だけはしまってくれないか…?」

 

「……わかった。詳しく教えてね」

 

 

プラチナがもう後数センチ右手を引いて放せば、私は寸分たがわず眉間を撃ち抜かれていただろう。

 

とはいえ彼女も私たちには理解がある側のオペレーター。とりあえず冷静になってくれたらしい。まだ顔には猜疑心がありありと浮かんでいるが。

 

ひとまず彼女をソファに座らせる。もちろん私はワークデスクの椅子から動かないままだ。もうここで死んでもいい。

 

 

「さて……まあ、端的に言うとワルファリンからもらった栄養剤のせいで体が縮んだそうな」

 

「……それ、大丈夫なの?ワルファリンさんって結構いろいろ問題発言とか行動とかが多いって聞くけど」

 

「彼女が言うには、副作用は発生しないように調整したらしい。仮にもロドスの古株で実力はあるから大丈夫だとは思うんだが」

 

「そう。それならいいけど………会話するときくらい、リズさんを撫でる手を止めない?リズさん縮こ「すまないがそれは出来ない」……食い気味だね…」

 

「すまない。私も止めたいとは思っている…だが、何らかのアーツがかかっているのか、全く手が言うことを聞いてくれないのだ」

 

「……私もちょっと撫でてみていい?リズさん」

 

「え……その、かまいませんが……」

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

「わ、凄くふわふわしてる…キューティクルも整ってるし、私よりもボリュームがあるのに不思議だね……」

 

「だろう?私も時折撫でさせてもらっているが、そのたびに私の理性が大幅に回復されるようだよ。それが少女化したことで更に強化されて、本当に天国を見るような心地だ……」

 

 

……とても、不思議な感覚です。

 

プラチナさんの手は、弓を握る人のものとは思えないほど柔らかく…まさに手櫛と言えるほどと言えるでしょう…。心地の良い手つきです。

 

 

それに比べて、ドクターの手は……平時よりもはるかに心地が良いのです……私の肉体が、少女のそれになってしまっているからでしょうか。

 

ドクターの少し角ばっていて、それでいて大きく広い手は、私の頭をすっぽりと覆うほどで……ずっと慰撫されていると、どこかに飛び立ってしまいそうな…。

 

 

「………」

 

「あれ………リズさん、顔赤くなってない?」

 

「見たい……見た……愛いな…」

 

「…ドクターの顔が、今まで見たことないくらいのにやけ顔だ……」

 

 

お2人の会話も、左から右へと通り過ぎるだけ。

 

私は成す術なく、お2人の思うままに撫でられ続けました…。

 

 

 

 

 

…はっきりと自分の顔が熱くなるのを知覚しました。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

ただひたすらにプラチナと私でリズを愛でる時間を過ごしていると、突然、部屋に聞き慣れた効果音が響き渡った。ロドスで支給されている通信機だ。しかし私のものではない。

 

 

「私か…めんどくさいな……こちらプラチナ。一体何が……え、また?最近多くない?……はいはい、わかった。30分後だね……はぁ」

 

「こんなときに誰からだ?」

 

「ケルシー先生に召集をかけられた。行きたくないけど、ロドスに留まる以上は仕事はやらないといけないから行ってくるよ」

 

「そうか……ないとは思うが、もしどこかに出撃することになったら必ず無事に戻って来てくれ」

 

「もちろん。こんなところでくたばってはいられないから。それじゃあね、ドクター。リズさんも頑張って」

 

 

言うが早いか、プラチナは急ぎ足で執務室を出ていった。ケルシーの直属チームに所属しているらしいが、詳しいことはあまり聞いたことがない。どういうわけかケルシーにはあまり気安く接することが出来ないのだ。

 

まあ、それはいいとして。

 

 

「……すまん、リズ。やっと手が放せそうだ」

 

 

そう言って自由に動かせるようになった手をリズの頭から退かせた……のだが。どういうわけか、私の膝の上から彼女の小さな肢体が離れることはなかった。

 

 

「…リズ?」

 

「………どくたー…」

 

 

離れることはなかったどころか、そのまま体ごと私に体重をかけてきたではないか!

 

基本的に撫でているときにしか__つまり手という一部分でしか__触れることが出来ない髪の質感や感触が、リズが体をこちらに傾けてくることによって私の顔や首に非常に近づいてくる。幼体化したことによって上昇したであろう体温の高ささえほんの十数センチの距離で感じることの出来る状況……。

 

普段の彼女を鑑みれば、ここまで直接的に近距離に迫るのは相当珍しいということだけが汲み取れる。

 

 

「リズ…大丈夫か、リズ」

 

「………ど、どくたー……?」

 

 

トントンと肩を軽く叩いたり何度も呼びかけたりしていると、ようやく反応してくれた。しかし、今の自分の状況についてはよく分かっていないらしい。

 

 

「いや…リズがこんな直接的に体を預けてくるなんて珍しいから、どうしたものかと思って」

 

「……?」

 

 

一通り自分の身の回りを確認するリズ。そこでようやく、自分が今結構な状況にあることを理解したらしく、しなだれかかっていた体を(彼女にしては)機敏な動作で先ほどのように正した。

 

 

「…降ろすよ」

 

「……ありがとう、ございます」

 

 

……流石においたが過ぎただろうか。リズに不快な思いをさせてしまっただろうなぁ……。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

どうしてでしょう。

 

どうして、あのように体を預けたくなってしまったのでしょう……。

 

 

体が小さくなってしまって、ドクターの膝に乗せられると…体の大きさの差が非常に大きくなってしまいます。その結果、ドクターの広い体躯が、人肌が。とても心地の良いものに感じられてしまって……いつの間にか、自分でも気が付かないうちに身を委ねてしまったのです……。

 

ドクターにもご心配をかけさせてしまったみたいです。本当に、この体になってから……自分の知らない安らぎばかり感じてしまいます。

 

 

「リズ、今から茶を淹れるが、君も飲むかい?」

 

「…おねがいします」

 

 

今の時刻は朝の9時。少なくとも後半日は、この状態です……これなら、ワルファリンさんに中和剤を作ってもらうように頼んだ方が賢明だったかもしれません……。

 

 

 

 

 

……全く未知の感情で、今日は正常に頭が働きそうにありません。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

それからしばらく時間が経って、お昼に差し掛かった頃。

 

流石にこの姿のリズを衆目に晒すのはいろいろ混乱を招くだろうと思って食堂からこちらまで料理を運んでもらおうか…と考えたときに、またしても執務室のドアが開かれた。

 

 

「ドクター、いるかしら」

 

「……ス、スカジ」

 

「ごきげんよう、すかじさん」

 

「………その子供、もしかしてナイチンゲールかしら……?随分と変な姿になっているようだけれど」

 

 

気付かれた。

 

たった今リズの正体を見抜いたのは、2月ほど前にロドスと契約を結んだ前衛オペレーターのスカジ。ここに来るまでは賞金稼ぎとして各地を転々としていたそうだが、それ以前の経歴は不明。

 

彼女を一言で表すなら「シンプルイズベスト」。そのしなやかな肢体からは想像もつかないほどの膂力を発揮し、やれ山を切り崩しただのやれ大地を割っただのといろいろと噂が絶えない。

 

だが彼女のその純粋な力には、私は何度も助けられた。敵地への単騎の強襲が得意な彼女を生かし、幾度も強敵の撃破に貢献してくれた。今ではうちの主戦力であり、例え他の誰もが忌避しようと私は彼女のことを信じ続けると決めている。

 

 

「ああ、全くもってその通りだ。どうやらワルファリンからもらった栄養剤が実は『幼体になる薬』だったみたいでな」

 

「ああ……彼女、以前にも私の体のことで何か申し出てきたような気がするけど、あんまり興味がないわね」

 

 

そう語りながらソファに座っているリズの方へと近づくスカジ。心なしか、彼女の目にはわずかな好奇心が表れているような見えるが?

 

 

「……ふぅん、こんなことが出来るのね」

 

「あの…すかじさん……いかがなさいましたか?」

 

「…いや、なんでもないわ。ドクターと…貴方。2人は私が守るしかないと、再確認しただけよ」

 

「?ああ、それはとてもありがたいが…」

 

「……わたしは、みなさんをおまもりするちからがありますので、だいじょうぶだとおもいますが……」

 

 

スカジは、いつにも増して覚悟を決めた顔をしていた。

 

 

「貴方たちには、戦う力がない。守るだけの力では、いつか必ず綻びが生まれる……ドクター、今のロドスに__いや、貴方たちに私の力は必要かしら?」

 

「……何を言っているんだ、スカジ。君の力は幾度となく私たちに勝利をもたらしてきた。ロドスの皆は君のことをよく思っていないかもしれないが、私はむしろ君が味方で良かったとすら思っている。当然、私にとってはなくてはならない大切なオペレーターだ」

 

「……そう」

 

 

何か良くない回答をしてしまったのか、いつにも増して歯切れの悪い返答をする彼女。どこか不安要素がある表情をしているし…。

 

 

「何か問題があったか?」

 

「……嫌な予感がするのよ。近いうちに、貴方の身に何か大きな災害が降りかかるような」

 

「……さいがい、ですか?」

 

 

ここでリズも会話に参戦してくるが、どうにも話がつかめないといった口調だ。かく言う私も、いきなりそんなことを言われても…とは思っているんだが。

 

 

「ええ。もちろん私の勘違いかもしれない。けれど、理屈という理屈を越えて、嫌な予感が私の首筋を刺してくるのよ。私はそれをどうすることも出来ず、ただそのひりつく首筋を気にしながら日々を過ごすだけ。いつ現実に起こるかもわからないまま……本当にただの勘違いだといいのだけれど、一応気を配っておいて」

 

 

性格上、彼女は冗談という物を知らなければ妄言を吐くこともしない。痛切に訴えかけてくる目つきはとても真剣で。その声音には、憂いの他に心配の色が見て取れた。彼女がこんな状態になっているということは、余程なのだろう。

 

 

「わかった。そこまで言うのなら、念頭に置いておく。伝えてくれてありがとう」

 

「……わたしも、じゅうぶんにけいかいしておきます」

 

「……勿論、私も気を付けるわ。今日言いたかったのはそれだけよ」

 

 

その言葉を最後に、スカジはここを出て帰っていった。

 

戯言と言い切れない予感に対する不安が、しばらく部屋に漂っていた。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

とは言え、今すぐどうこうすべきというのが明確に思いつくわけでもなく。

 

 

午後も私たちは、書類整理を筆頭にいつもの日常を送っていた。リズが少女体なので完全にいつもの、というわけではないのだが。

 

結局その日の夜も食堂からわざわざ食事を運んでもらい、なんとか人目に付くことだけは防ぎ切った。夕餉の後はまったり茶を飲みつつ執務室のテレビで番組を見たりして、比較的穏やかな時間を過ごしていた。

 

 

そのときである。

 

 

「あ……ど、どくたー……」

 

「どうした、リ…!?」

 

 

突如として、リズの体が膨張し始めたのだ。

 

みるみるうちに少女体から元の体躯へと戻っていく。私よりも三回りほど小さくなった手も、すっぽりと手のひらで覆えるほどだった頭も、体を預けていた小さな背中も。

 

 

「……戻りました」

 

 

全てが戻り、十数秒という短い時間で、すっかり見慣れた秘書の姿が視界に映っていた。

 

 

「…良かった、体が戻って!」

 

「…ワルファリンさんからは1日と聞いていましたが、案外早かったですね…」

 

 

……うむ。少女化したのも大変よろしかったが、やはり私は見慣れた姿の方がいいな。これこそまさにリズだ、という感覚。別に名残惜しいとかはあまり思わない……思わない。

 

リズは自分の体の調子を確認すると、どういうわけか私の方に体を寄せてきた。またか?

 

 

「あの……ドクター。今一度、私の頭を撫でていただけないでしょうか」

 

「……なんだ、そんなことか。いくらでもしてやるさ」

 

 

 

 

 

その後30分くらい存分にリズを撫でまわした。途中で入ってきたプラチナやスペクターに見られてちょっと場が張り詰めたのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドクター………ドクター……!」

 

 

 

____聞こえる。

 

 

 

「しっかりしろ盟友…!」

 

 

 

____音が、聞こえる。

 

 

 

「……私が、お守りするはずでしたのに………」

 

 

 

____ありふれたの日常の、崩壊する音が。

 

 

 

 

 

 

 




21日の22時から執筆配信+サブ垢でフレ(自前)のエイヤを借りての龍門市街攻略配信します(唐突)。

基本緩いスタンスですのでお暇であれば是非来てください。


1年前に作って数回配信したきりのチャンネル


https://www.youtube.com/channel/UC0XzD_qAx-UjsxuYfap7Lpw


あ、ちなみに危機契約は無事初週18達成しました。
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