ナイチンゲールは支えたい   作:織部よよ

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滴水村に複数人で遊びに行くお話
時系列は適当です。たぶん2人はまだやってないと思います






番外編
緑色の原風景①


 

 

 

「やっほーキャロル!遊びに来たよ!」

 

「あっ、いらっしゃいグラニ!……そちらの方々が、ロドスの?」

 

「そう、あたしの仲間と上司だよ!」

 

 

 

 

 

某日。

 

「キャロルからまた来てほしいという手紙が来たから、ドクターも良かったら来ない?是非キャロルに紹介したくて!」というグラニの申し出を受け、私たちはカジミエーシュの田舎にある滴水村という場所に来ていた。

 

ここはかつてグラニやスカジが悪い賞金稼ぎどもと一悶着あった場所らしく、その時に仲良くなった村長のキャロルという少女にグラニがお呼ばれしたのを、私たちが付いていく形になったのである。

 

……最初は私一人で行こうかと考えていたのだが____

 

 

「へぇ、カジミエーシュにこんな村があったなんて知らなかった。良い所だね」

 

「そうですわね。日常的にロドスの中で生活していると、このような雄大な自然にはあまり触れられませんから、とても新鮮ですわ」

 

「うわーすごーい!こんなに広い場所、ボク初めてだよ!」

 

「ウフフフ、あまり遠くへ行かないよう気を付けてくださいね、クオーラさん……」

 

「……まさか、私がまたここに来るなんて思ってなかったわ……」

 

 

……何故か、プラチナ、アズ、クオーラ、スペクター、スカジも付いてきてしまったのである。

 

前者三名はまだいいのだが、普段から厳重に接触が管理されているスペクターやここで人々に恐怖を植え付けてしまったらしいスカジが来ているのは如何なことか。大丈夫か……?

 

だがスペクターはともかく、スカジはグラニが直々に指名してここに連れてきたのだ。そうそう問題は起こらないだろう。

 

_____けれど、私にとってはそれもさほど重要じゃない。何故なら、私がここに来た理由はたった一つだけだから。

 

 

「…………」

 

「どうだい、狭いロドス(鳥籠)を抜けて、本物の大地に立った感想は」

 

「……心が、軽いです。このまま何処までも羽ばたいていけそうな……このような感覚は、紛れもなく貴方のお陰です」

 

「……一面に広がる緑を前にすると、心地が良いだろう?その足で、是非方々に歩き回ってみるといいよ………リズ」

 

 

そう。

 

私がこの地を踏んだのは、たった一つの理由。

 

私の秘書にして対の存在であるリズに、この自然を、原風景を体感してほしかったから。

 

 

「………当然、貴方も付いてきてくださいますね?」

 

「もちろんさ」

 

 

それを前にして、傍目にもわかるくらいリズの気分は高揚している。仕方がない、今までの生活では全く考えもしなかったのだから。

 

 

「あの、初めまして。私はこの村の村長を務めているキャロルと申します……」

 

「あ、ああ。すまない、私はドク……クラヴィスという。グラニの上司で、周りからはドクターと呼ばれている。それでこっちから__」

 

「リズ、と申します。ドクターの秘書を務めています」

 

「カジミエーシュ騎士殺しのプラチナって言うんだ。短い間だけどよろしくね」

 

「アズリウスと申します。申し訳ございませんわ、勝手に付いてきてしまって」

 

「ボク、クオーラ!よろしくね!」

 

「スペクター。どうぞ、よしなに」

 

「……スカジよ。また会ったわね……」

 

 

……いや、改めて見ても、流石にこの人数で押しかけるのはまずいだろう。それに因縁付きの人まで連れて。

 

 

「……な、なんであの人がここに……!?グラニ、一体どういうことなの!?」

 

 

……スカジ、この幼気な少女にまで畏怖を抱かせていたのか……オペレーターとしてはある意味誇らしいのだが、この場に居合わせるべきではなかったんだろうなということが容易に想像できるほど、キャロルの様子は分かりやすかった。

 

 

「落ち着いてキャロル。今日は皆目的もないから何もしないはずだよ。それにドクターがいるからね!」

 

「え?」

 

 

え?何にも聞いていないが。

 

 

「一応スカジにとってもドクターは上司だから、命令されればあんまり無茶は出来ないはずだよ。ね、ドクター!」

 

「……いや、今はプライベートで来ているから、あまり上司とか部下とかは気にしないで行く方向だったんだが……まあ、何があったかは知らないが、スカジも今日は休暇だ。あまり暴れないようにな」

 

「……元よりここで戦いが起きるなんて思ってもいないけど……当り前よ。この剣も、ドクターを守るために持ってきたのだから」

 

「ね!」

 

「………分かった。そういうことなら、私も拒みはしない。ようこそ、滴水村へ」

 

 

……ふー、何とか治まったようだ。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

その後私たちは、キャロルの家にお邪魔していた。グラニの知り合いということもあってか、概ね好意的に歓迎されている。概ね。

 

 

「えと……プラチナさんは、カジミエーシュの、ナイトキラー?って言うんですか?」

 

「そ。平たく言えば、腐った騎士どもを叩きのめすための組織だね。今はドク……ロドスにいるから元っていう形になるけど」

 

「……そうですか。騎士の方を……」

 

「もしかしたら、ここ担当の奴らも殺っちゃったかもしれないなあ。なんかごめんね」

 

「……いえ。そのおかげで私たちは比較的平穏に過ごせていますから」

 

 

向こうではカジミエーシュに縁のあるプラチナがキャロルや他の大人と会話して。

 

 

「はは、クオーラちゃんは元気だねえ。うちの孫を思い出すよ。ほれ、これもお食べ」

 

「わぁーいありがとう!スペクターさんもどう?」

 

「あら、くださるのですか……それでは、お言葉に甘えて」

 

「クオーラさん、顔に食べかすが付いていらっしゃいますわ。ほら」

 

 

また別の向こうでは、クオーラとスペクター(なるべく大人しくしているように厳命している)とアズが村人たちに手厚くもてなされ。

 

 

「ねえねえ、2人ってもしかして恋人同士なの?」

 

「どうしてそう思ったんだい?」

 

「だって他の人たちよりも距離近いし!2人ともすごく楽しそうだもん!」

 

「……そうですね……一般的に“恋人”と呼ばれるような関係では、あると思われます」

 

「うわ~!オトナだ~~!かっこいい!」

 

 

……そしてこちらでは、私とリズが数少ない子供たちに質問攻めに遭っていた。主に、そっちの関係で。

 

それほど意識しているわけではないけれど、やはり傍から見ればわかるものなのだろうか。そう思ってチラリと隣にいるリズを見やると、偶然彼女と目が合った。どうやら彼女もこちらの方を向いていたらしい。

 

 

「……はは」

 

「ふふっ」

 

 

そんな何気ないことが何故か少し面白くて、顔を見合わせては互いに微笑みが零れていた。

 

 

「……これが、“じゅくねんふうふ”……?」

 

「それは、さすがにないとおもうよ……」

 

「……ま、私たちは切っても切れない関係なのさ。それより……スカジ。君もこっちに来たらどうだい?」

 

 

私たちから少し離れて独りでいるスカジに声をかける。彼女は渋々と言った様子で席を離れ、こちらに寄ってきた。

 

 

「せっかくここに来たのだから、一緒に話そう。ほうら、彼女が私の大切な仲間のスカジだ」

 

「覚えなくてもいいわよ」

 

「すげーきれーなねーちゃんだな……そうだ、これ食べてみろよ!」

 

「………何かしら、これ」

 

「コイツが作ったクッキー。めちゃくちゃ美味いんだぜ!」

 

「……それはいいすぎ」

 

 

少年の誉め言葉に対し、少女は強く言いながらも満更でもなさそうな顔をしている。仲が良いのだろう。微笑ましいな。

 

 

「……どうしましょう、ドクター」

 

 

突然眼前に差し出されたバスケットに、スカジはどうすればいいか分からず困惑している。純真無垢な子供の申し出には、流石のスカジも無下には出来ないか。

 

 

「邪気がないんだ、受け取ってやったらどうだ」

 

「……分かったわ、それじゃあ、一枚だけ」

 

 

おもむろに手を伸ばし、そっとクッキー群の中から一枚をつまみ上げるスカジ。そしてそのままゆっくりと口に運んでいく。

 

さくっ、という軽い音を立てて食べている。

 

 

「……美味しいわね」

 

 

そうして零れたのは、素直な感想だった。

 

 

「へへーん、そうだろ!こいつのお菓子は世界一うまいからな!」

 

「なんできみがうれしそうなの……でも、おいしいっていってもらえてよかった。まだたくさんあるからだいじょうぶ。たくさんたべてね」

 

「……え、ええ。そうさせていただくわ」

 

「こいびとのひとたちのぶんも、もってくるね」

 

 

そう言って少年と少女は追加のクッキーを取るべく席を外していった。隣では、スカジがスローペースで、けれど黙々と一枚ずつ口に入れている。

 

 

「どうだ」

 

「……そうね。恐れられないというのは、不思議な感覚だわ。貴方で慣れたつもりだったけど」

 

「はは。戦いさえしなければ、君は普通の女性となんら変わりないのさ」

 

 

そう。例え災害のような力を持っていたとしても、普通にしていればただのオペレーター。私にとっては大事なオペレーターの1人だ。

 

 

「まあ、それがなくても私は君のことを信じ続けるが」

 

「……はぁ。貴方も頑固ね……でも、そうね。悪くないわ。少なくとも、貴方の剣になろうと思うくらいには」

 

 

そう呟くスカジは、口角がわずかに上がっていた。うむ、やはり誰であっても笑うのが一番だ。

 

 

「……クラヴィスさん」

 

 

そうしていると、ふと左腕の袖がくいっと引っ張られるのを感じた。その方向を見れば、少しだけ不満げな顔をしたリズが。

 

 

「……そうしてむくれているのも、随分と可愛らしいのだな」

 

「……そのような誉め言葉は、少々ずるいと思います……」

 

 

頬をうっすらと朱に染め、視線を逸らすリズ。そんな彼女の様子が愛おしくて、自然と体が動いてしまう。

 

意識する間もなく、気が付けば彼女の頭に私の手が乗せられていた。

 

 

「……大丈夫。私が一番信頼しているのは、他でもない君だ。それはずっと変わらない」

 

「………はぅ……心得て、います……」

 

 

そのままゆったりと、金に塗れたふわふわの絹糸を撫でていく。もう既にいつもの行為となっているものだ。だいぶ手馴れてきたのか、どうやって撫でれば彼女の気が安らぎそうかがなんとなく分かっている。

 

時間にすれば短いが、すっかりリズの機嫌は直ったようだった。

 

 

 

 

_____後から聞いたのだが、そのとき同じ空間にいた人間の8割が、こちらを見ていたらしい。

 

普通に恥ずかしい。

 

 

 

 





秘書拡大機能、良いですね。

わざわざ昇進絵の方にして最大まで拡大しました。全身を見つつ足も見る欲張りな位置へ。
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