ナイチンゲールは支えたい   作:織部よよ

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_人人人人人人_
>リズはエルフ耳 <
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緑色の原風景②

 

 

 

 

 

その後しばらくキャロルの家で緩く楽しんだ後。

 

 

「それでは、私たちはそこらを歩いてくるよ」

 

「行ってらっしゃい、ドクター、ナイチンゲールさん、プラチナさん、アズリウスさん!暗くなる前には帰ってくるように!」

 

「分かっているよ、グラニ。じゃあ、行ってきます」

 

『行ってきます』

 

 

いつもの4人で滴水村の自然を散策しよう、という話になった。今日の私の本題でもある。

 

軽く身支度を整え、屋内から外へ踏み出さんと玄関のドアを開ければ、すぐさま目新しい自然が視界一面に広がる。緑、緑、また緑と、ロドスにいては滅多に目にする機会のない色ばかりだ。

 

 

「改めて見れば……とても、心が澄むようです……」

 

「あそこに山があれど、私たちが来た方向には地平線がある。本物の、生きている地平線がな………この光景を目にしていると、私たちの存在が矮小に思えてすら来る」

 

「私もこんなにだだっ広い自然は初めてだ。騎士殺しをやってたころは、専ら森の中で動き回ってばかりだったし」

 

「わたくしも、あまり木々に縁がなかったので……これほどの雄大なものは初めてですわ」

 

「……それじゃあ、せっかくリズも自由に歩けるようになっているし、いろいろこの村を回ってみるか」

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

「わ、この水車……音といい動きといい、すごい迫力だね」

 

「あまり近づくと濡れるぞー」

 

「大丈夫、気を付けてるから」

 

まず私たちが見つけたのは、そこいらの家々に設置されている水車。川などの水流のエネルギーを動力に変換するもので、見たところ電力的なものが存在しないこの滴水村では貴重な動力源になっているようだ。

 

木組みで出来ている歯車のような印象を受けるが、文字通りこの村の重要な歯車の1つなのだろう。

 

 

「……それにしても、本当に凄いな……ロドスでは見たことがない」

 

「ロドスの中枢に行けばもっとスケールの大きいものはあるでしょうが、これは人々の生活に根付いているが故の存在感がありますわね」

 

「……何だか、このまま見ていられそうな気がします」

 

「………リズの言わんとすることは、何となく理解できる気がするな」

 

 

よくよく観察すれば、水車に絡めとられる(?)水は一回ずつ微妙に異なった様子を見せている。水流の音も相まって、なんとも言えない絶妙な気分になるな。

 

 

「……いいな、これ」

 

「……ほら、もっと方々に散策するんでしょ。行こう、ドクター、リズさん」

 

 

水車の前でリズと立ちっぱなしになっていると、別の水車にいたプラチナとアズリウスに注意されてしまった。

 

 

「あ、ああ。そうだな……リズ、そろそろ行こう」

 

「……はい、行きましょう」

 

 

 

 

 

______

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「………ここが、水源とも呼べる川か。さっきのは用水路のように引っ張って来ていたんだな」

 

「水が澄んでいて綺麗ですわ。時期が時期であれば、ここに素足で入ったりして遊べましたわね」

 

「いいな……そう言えば、バグパイプがロドスに農園のような畑のようなものがある、という旨の言葉を言っていたような……」

 

「え、そうなの?」

 

「私も詳しくは分からない………そう考えると、私はまだまだロドスについて何も知らないな。今度、ロドス内も散策してみよう」

 

「……そのときは、私も連れていってくださいますか?」

 

「当たり前だ」

 

 

川沿いに歩きつつ、今後やることが1つ増えていく。

自分の予定が増えるのは楽しいことだ。「何気ない生活」というものを出来ることが、この上なく。

 

そしてそれをリズと遂行出来ることが、どうにもむず痒い。

 

 

「……けど、ちゃんと護衛は付けないとな。グラベルとシラユキに控えていてもらうか」

 

「それが良いよ。こと取り回しや隠密行動に関しては彼女たちが抜きんでているから……ドクターとリズさんの2人だけで回ってもらうためにも、私やアズさんは見えていない方が良いと思う」

 

「……そうだなあ………全く、どうして私なんかを狙うものがいるんだろうな」

 

 

ウォッチ、リーテ、その他多くのオペレーターたちは、口をそろえて「ドクターは危険に晒されている、狙われている」と言う。

 

ロドス・アイランドは様々な人材を受け入れているが、当然その中には昔の私を知っている者もいる。相当に悪名を響かせていたらしい私は、恨みを買うものも多かったそうだ。

 

だから私の命を狙う奴らがいてもおかしくはない……のだが、今の私にしてみれば勘弁してほしい。私は普通に緩やかに過ごしたい。

 

 

「はぁ………まあ、それがこの体に宿った私の宿命として受け入れるしかないな」

 

「……どのようなことがあろうと、私が、お守りします」

 

 

ぎゅっと握っている手の力を込めて、リズがそう言ってくる。決して力強いとは言えないが、そこに宿る意思の強さは、しっかりと流れ込んできた。

 

 

「………ありがとう、本当に。けど、スカジの言っていた通り私たちに武力はないなぁ」

 

「そこは、私たちの専門だから」

 

「わたくしたちがドクターに襲い掛かる脅威を殲滅して差し上げますわ」

 

 

私の隣にプラチナが、リズの隣にアズが並び歩いて頼もしい発言をしてくる。

 

そう……そうだ、私は一人じゃない。少なからず私に与する人たちがいる。今は、それでいい。

 

 

「……頼りにしているよ、2人とも」

 

 

 

 

 

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「おや、此処は向こう岸に渡れるのか。せっかくなら渡ってみよう………ほら、リズ」

 

 

そのまましばらく歩き進めていると、飛び石を見つけた。清流の中に点在しているそれらは、一見雰囲気を損なうように見えてその実非常にマッチしている。これが情緒か。

 

ただ大きさとしてはそれほどではない。私が乗ってみたところ、2人同時にギリギリ乗れなさそうなくらいか。

 

 

「_____そのまま、こっちに飛んでみて」

 

 

手は繋いだまま。飛び石に渡った私は、自由な小鳥を身許に誘う。

 

 

「……はい。今、行きます」

 

 

ふわり、と緩く跳躍して、彼女は私の胸元へと飛び込んできた。バランスを崩しそうになるが、繋いだ手を引っ張って調整してやる。

 

 

「よ……っと。無事に移れたな」

 

「……初めて、ジャンプというものをしてみましたが………不思議な感覚ですね」

 

「ああ、そうか、そうだな……君の足が、十全に機能を取り戻している証拠だ………」

 

「……改めて、本当に……私の足を治してくださって、感謝が尽きません」

 

「……いいんだ、私がしたかったことだから」

 

 

 

ちょうどひと月ほど前、私はリズをもう一度十全に歩けるようにするべく奔走した。とは言っても、たまたま()が神経学を専門としていて、たまたま()の知り合いが万能細胞を取り扱っていて、運よく試験的に譲ってもらえただけ。

 

偶然の積み重ねによる奇跡で、リズはもう一度自由に羽ばたくことが出来るようになった。

 

 

「……本当に、1つでも欠けていればどうにも出来なかったかもしれない………よし、このまま対岸まで行ってみよう。プラチナもアズも来てみるといい」

 

 

そう2人に呼びかけたものの、2人ともその場から動く気配は感じられない。何か問題でも起きたか?

 

 

「ううん、ドクターとリズさんの2人でそっちに行きなよ。私たちはこっちでいい」

 

「せっかくの休暇なのですから、お2人だけのお時間も必要でしょう?」

 

「……ああ、成程な。そういうことならそうしよう。気遣い感謝するよ……リズ、行こうか」

 

 

彼女の手をもう一度握り返して、飛び石を渡っていった。

 

足取りは、軽い。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

「……やっぱり、お似合いだね」

 

「今考えれば、あのお2人は似た者同士……本当に、見ていて微笑ましいわ……」

 

「………やっぱり、側室かなぁ。何だかアレを見ていると完成形のように思えてくる」

 

「あら、諦めるのかしら?」

 

「まさか……ただ、ドクターとどういう関係になろうが、私はドクターの側に付くつもりだよ……それこそ、ケルシー先生から離れる覚悟くらいはね」

 

「………そう言えば、プラチナさんはどうしてドクターに懸想するようになったのかしら?」

 

「……んー、そうだね。元々カジミエーシュが嫌になったってのもあるけど、まあ……流れ、かな。結局のところはね。アズさんは?」

 

「………わたくしは、言わずもがなよ。“毒物”として忌み嫌われ、誰も触れることもなかったわたくしに、あの方は触れてくださった……それどころか、わたくしにささやかな夢をかなえる機会さえくださったの。こんなの、落ちない方がおかしいわ」

 

「……ドクターも、大概人たらしだよね。あのカランドの人といい、リズさんといい、他にもたくさん」

 

「それがあるからこそ、ドクターらしいとも呼べるわね」

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

「……おや?」

 

「あれは………」

 

 

リズとそのまま2人きりで川沿いを歩いていると、遠くに十何人の人影がこちらに歩いてくるのを見つけた。

 

 

「……滴水村の人間……と呼ぶには、なんだかシルエットがいかついような気もするが、私の視力では詳細は分からない」

 

「……たぶん、賞金稼ぎの奴らだね。カジミエーシュでよく見た覚えがある」

 

 

……たしか滴水村は、スカジが暴れまくったおかげで伝説が残って賞金稼ぎたちは立ち寄らなくなったって聞いたんだが。知ってて来たのか、それとも単に知らないで来たのか。おそらく後者のような気もするが。

 

 

「……あいつら、弱そうだね。殺っとく?」

 

「………そうだなぁ……プラチナは弓を持ってきてはないだろう?アズは?」

 

「貴方をお守りするための“毒”は、何時でもここに」

 

 

そう言って腰のポシェットから小型ボウガンを取り出すアズ。よし、それなら都合がいい。

 

 

「このまま歩いていって、とりあえず話を聞こう。滴水村に被害が及ぶようであれば無力化するのもやむなしだが」

 

「了解しましたわ。今回の休暇を邪魔されては困りますものね」

 

 

緑一面の大地の中で、唐突な疑似殲滅作戦が展開されることが決定した。

 

 

 

 

 

 

 








敬語を使わないアズリウス概念はボイスで確認できています。プラチナとはなんだかんだで「狙撃小隊のツートップ」「ドクリズ見守り隊」など接する機会が多かった上に2人の関係性の変化に伴ってアズは敬語取ってそう(強めの妄想)
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