とある洋食屋の物語   作:ジャンパー

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氷川紗夜のタグを追加しました。
他に付けるべきタグってありますかね?

自分で読み返してて、あまりにも読みにくいと思ったので全話修正しました。


幼馴染み達

東雲悠介の朝は早い。

 

朝4時半には起床し、寝起きのシャワーを浴びて身支度を整えたら仕入れに向かう。

 

とは言うものの、肉類、野菜、パンは同じ商店街にあるお店で配達してくれるから、朝に自分で仕入れに行くのは魚介類目当ての魚河岸ぐらいである。

 

うちのグランドメニューにはエビフライ以外の魚料理は入れていない。

 

代わりに日替わりの魚料理を用意するのである。

 

魚河岸に通い、使いたい食材を吟味してその日の魚料理を決める。

 

こんな適当ではあるが、これがわりと評判が良く、こればかりオーダーする常連さんもいるぐらいだ。

 

今日はどんな食材に出会えるか、とても楽しみだ。

 

 

 

「おはようございます!おやっさん!」

 

「おお、悠介!おはようさん!」

 

 

 

行き付けの仲卸店に着き、挨拶をする。

 

もう5〜6年の付き合いになるのでお互い仲良くもなる。

 

 

「今日は何がオススメですか?」

 

「今日はダントツでサワラだな! 焼いたら最高に美味いぞ! あとはイカも結構いいのが入ってるぜ?」

 

「サワラにイカか…。見せてもらいますね」

 

 

数年も経てばある程度は自分でも目利きは出来るようになるので、直接見せてもらう事にした。

 

 

「………うん。じゃあこれいただきます」

 

「まいどあり!!」

 

 

 

そんなわけでサワラとイカと、いつもの車海老を購入。

 

サワラは個人的になら西京焼きが好きなんだけど、うちは洋食屋だからな…。

 

ポワレにでもして、バジルのソースをかけてみるのもいいかな?

 

帰ったら少し試してみよう。

 

 

 

 

戻ったら朝食の準備を……と思っていたのだが、既に葵が起きて準備していた。

 

 

「あ、兄さん、お帰りなさい。ご飯にしますか?お風呂にしますか?それとも……私ですか?」

 

「ただいま、葵。馬鹿な事言ってるんじゃないよ。ご飯でよろしく」

 

「サラッと流されちゃったのが腑に落ちませんけどわかりました!」

 

 

そう言って朝食を出してくれる葵。

 

今日のメニューはご飯、じゃがいもと玉ねぎの味噌汁、焼鮭、納豆に常備菜のきんぴらごぼうときゅうりの浅漬け。

 

THE 日本の朝食って感じだ。

 

昨日の夕飯が重めだったからちょうどいい。

 

 

 

「「いただきます」」

 

 

 

味噌汁を一口飲んでホッと一息ついていたところ

 

 

「そういえば兄さん。氷川さんのバイトの話は結局どうするんですか?」

 

 

そう、昨日の氷川さんの帰り間際の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの…こちらでバイトとして働かせていただきたいのですが…」

 

「……………え?」

 

 

考えてもみなかった事態でしばし脳がフリーズを起こしてしまったが、バイトの申し出はとてもありがたい。

 

現状が葵頼みになってしまっており、葵の休みを作るためにも他のバイト人員は早急に確保したいのだ。

 

 

「あの……駄目でしょうか……?」

 

「いや、バイトの申し出はうちとしてはすごくありがたいよ。すぐにでも来てもらいたいぐらい。でも氷川さんは未成年だし、親の承諾とか校則………は、花咲川なら大丈夫か。親御さんの承諾書さえ貰ってくれればうちとしては大歓迎だよ」

 

「わかりました。では親に相談して、また明日伺います」

 

「おっけ。うちはオープンが17時だから、それまでに来てほしいかな。もし無理なら、21時以降だと助かる」

 

「では学校が終わり次第、すぐに伺います」

 

 

 

そう言って帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなわけで今日来ると思うから、具体的に決まるのはその時になる。どのぐらい働きたいかとかはまだわからないけど、当面は葵と一緒に入ってもらうから色々教えてあげてくれ」

 

「わかりました! でも、まさかクラスメイトの方と一緒に働く事になるとは思いませんでした。それも氷川さんとは…」

 

「ん?どういう事だ?」

 

「いえ、氷川さん、学校では風紀委員に入ってまして。バイトをするってイメージがなかったので意外だなと…」

 

「ああ、なるほどな」

 

 

確かに昨日話した雰囲気だと、そんなイメージは抱きやすい。

 

とても真面目で礼儀正しいが、その反面、表情の変化が乏しく、堅物といった雰囲気さえあった。

 

そんな彼女が突然バイトしたいと言えば驚いても仕方ないのかもしれない。

 

とは言え、思いがけずかわいらしいところも見せてもらったし、慣れればどうって事はないだろう。

 

最初は誰でも初心者なのだ。

 

 

そんな話をしつつ、朝食を食べ終える。

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

「葵、悪いけど洗い物頼んでいいか?

多分そろそろ納品が来ると思うんだ」

 

「いいですよ。置いといてください」

 

「すまんが頼むな」

 

 

 

洗い物は葵にそのまま任せて店の方に行く。

 

そろそろ仕入れの配達にみんな来る頃だろう。

 

 

 

カランカラン

 

 

 

「おはよう悠介。あなたの山吹沙綾がパンの配達に来たよ!」

 

「おはよう沙綾。最近そういうの流行ってるのか?」

 

「……え?流行ってるってどういう事?」

 

「いや、葵にもさっき同じような事言われたからな」

 

「ああ、なんだ葵お姉ちゃんか。それなら納得だよ」

 

 

いつも思うのだが、なんで葵はお姉ちゃん呼びなのに、俺は呼び捨てなんだ?

 

まぁ別にいいんだけどさ、俺にとってもかわいい妹分だと思っているんだけどなぁ…。

 

あ、紹介が遅れたが、こいつは山吹沙綾。

 

近所のやまぶきベーカリーの長女だ。

 

今年から葵と同じ花咲川女子学園に入学したのだとか。

 

親父が店をやってた頃からの付き合いで、幼馴染みその1といったところだろう。

 

まぁ感覚的には幼馴染みというよりは近くに住んでる葵の友達って感じだけどな。

 

弟と妹がいる関係か、とても気配り上手である。

 

 

「これが注文のバケットとバターロール。あと、これは私が焼いたクロワッサン。良かったら後で食べてみて」

 

「おお、沙綾もクロワッサンが焼けるぐらいに成長したか…。この東雲悠介、感服仕り候!(かんぷくつかまつりそうろう)!」

 

「あはは、なーに言ってんだか」

 

 

 

苦笑いしながら沙綾に流された。なんか悔しい。

 

 

 

「まぁせっかくの焼き立てっぽいし、今1つ食べてみるよ」

 

 

 

食べる前からわかる、とても芳しいバターの香りに我慢出来ず1口食べてみる。

 

うん、中はふんわりしてて、表面はサクサクでめちゃくちゃ美味い!

 

水分量調整が上手くいってるのであろう、とても日本人好みの食感だ。

 

めちゃくちゃ美味い…のだが…

 

 

「これ、めちゃくちゃ美味いけど材料費かかりすぎじゃないか? このバター、相当いいやつ使ってるだろ」

 

「やっぱ悠介にはわかっちゃうかー。百貨店で一番高いやつ買ってきちゃったんだよね」

 

「なんで店にあるやつ使わないんだよ…。つーかそれ、エシレバターじゃないのか…?」

 

「あ、確かそんな感じの名前書いてたよ! 悠介に食べさせるんだから、ちょっとでもいいのを…と思ったら気付いたら百貨店にいたんだよね…」

 

「その気持ちは嬉しいけど、いつも使う材料じゃないとちゃんと練習にならないんだから、次から店のやつ使うんだぞ?」

 

「はーい」

 

 

ちなみにエシレバターとは、フランスが誇る、世界最高峰の発酵バターだ。

 

口当たりのクリーミーさと香りの芳醇さが特徴で、口に入れて鼻に抜けていく風味が素晴らしいの一言でしかない逸品だ。

 

まぁ当然ながらお値段も世界最高峰ではあるんだが。

 

とてもじゃないが、商店街のパン屋で使える代物ではない。

 

そしてクロワッサンはバターが命であり、その使用量は他のパンよりもだいぶ多い。

 

それを考えると…なんて恐ろしいもんを作ったんだ…。

 

というか羨ましい、俺も使ってみたい。

 

 

 

「まぁめちゃくちゃ美味かったよ。店売りは無理だろうけど、沙綾もパン作りが上達してきたのはわかった。ご馳走様」

 

「そっか!それなら良かったよ。じゃあ私は家に帰るね。また夕方!」

 

「おー、気を付けてな」

 

 

 

沙綾は学校に行く前とディナータイム前の2回、パンを配達してくれる。

 

ちなみに沙綾が来れない時は親父さんが来てくれる。

 

とても助かるのだが、俺が自分で行くと言ってもなぜか沙綾がそれを良しとしないのだ。

 

ちなみに自分でもパンは焼けるのだが、やまぶきベーカリーのパンはめちゃくちゃ美味いし、毎日パンを焼くほどの時間の余裕はないのだ。

 

多少なら余ってもクルトンやブルスケッタ、パンプディングにしたりと色々使い道もあるしな。

 

ちなみにラスクは作っていない。

 

それはやまぶきベーカリーでお買い求め下さいませ。

 

 

カランカラン

 

 

「うーっす、おはよう悠兄ぃ。いつもの持ってきたぜ」

 

「ゆーくんおはよー!はぐみも来たよー!」

 

「おはようますき、はぐみ。いつもサンキューな」

 

 

来たのは銀河青果店の佐藤ますきと北沢精肉店の北沢はぐみ、又の名を幼馴染みその2とその3。

 

ますきは白雪学園という、幼稚舎から大学まで一貫のお嬢様学校に通っているのだが、スカジャンを愛用している服装や口調でヤンキーにしか見えなく、お嬢様学校に通ってると言われてもピンと来にくい。

 

しかしかわいいものや少女マンガ好きっていうギャップもある子だ。

 

ちなみに早起きは苦手だったはずなのだが、沙綾が配達に来始めた頃からますきも来始めた。

 

もう1人は北沢精肉店の北沢はぐみ。

 

葵や沙綾と同じく花咲川女子学園に通っている。

 

スポーツ万能でソフトボールをやっているらしく、よく走っている姿を見掛ける。

 

いつも笑顔の、活発な子である。

 

はぐみが来る前ははぐみの兄貴が来てくれてたんだが、大学の関係で配達に来れなくなり、去年からはぐみに交代になった。

 

 

「悠兄ぃ。これがいつものやつと、こっちが今日のオススメだ!」

 

「こっちがはぐみが持ってきた今日のオススメだよー!」

 

 

はぐみが持ってきたのは豚の肩ロースか。

 

ますきのは…初めて見るな…?

 

 

「ますき、これはなんなんだ?」

 

「やっぱ悠兄ぃも知らなかったか。たまたま見つけて仕入れてみたらしいんだけど、わさびの葉らしいぜ」

 

「ほう、面白いな!」

 

 

1口食べてみると、つんとしたわさびの清涼な辛みがマイルドになってやってくる。

 

おおおおお、これは閃いた!!

 

さっき仕入れたサワラにかけるソースのベースをこれにしよう!!

 

辛みの調整さえすれば絶対美味いに違いない!!

 

 

豚肩ロースの方も身の色合いがとても良く、見ただけでかなりの上物であるのがわかる。

 

おそらく三元豚だろう。

 

オーソドックスにポークカツやポークソテー辺りでもいいが、脂が絶対に美味いはずだからそれを活かしたのがいいな!

 

 

 

「ますき、はぐみ、サンキューな! 今日のオススメも最高だ!」

 

「そう言ってもらえて良かったぜ!じゃあそろそろ学校行かないとだし、戻るな!」

 

「はぐみも帰るねー」

 

「おう!また時間ある時にでも食いに来いよ!」

 

 

 

今日の仕入れはこれで終わりだな。

 

早速試作してみるとしよう。

 

 

 

試作を始めて少ししてから葵が学校に行き、10時半にパートの人がやってくる。

 

ランチのオープンは11:00から、クローズは14:30。

 

そこからは休憩するなり仕込みをするなりといった感じである。

 

 

ちなみに今日の日替わりは

 

 

ポークピカタ トマトソース

 

サワラのポワレ わさび風味のジェノベーゼソース

 

魚河岸直送イカスミのスパゲッティ

 

 

この3つにした。

 

イカは中にいい肝とイカ墨が入っていたから、肝を漉してイカ墨に混ぜてソースにした。

 

ピカタは簡単に言うと卵をコーティングしたポークソテーだ。

 

ちなみにイタリアでピカタを頼むと全然違う料理が出てくるから気を付けるんだぞ。

 

 

 

そんな感じでランチも終わり、仕込みもひと段落したのでコーヒーを飲んで一息ついていた。

 

時間は15時半すぎ。

 

そろそろ葵も帰ってくる頃だろうし、氷川さんも来るだろう。

 

 

カランカラン

 

 

入り口を見ると葵と氷川さんの姿があった。

 

どうやら一緒に帰ってきたみたいだな。

 

とりあえず形式だけの面接をやってしまいますかね。




紗夜メインですが、商店街という立地を活かして他のキャラも出ます。
他にも出る予定ですが、あくまでメインは紗夜です。
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