とある洋食屋の物語 作:ジャンパー
目に見える評価があると嬉しいもんですね。
「兄さん、ただいま戻りました」
「東雲さん、こんにちは」
「2人ともお帰り。氷川さん、親の承諾はどうなったかな?」
「ええ、こちらです」
あ、ちゃんと承諾書を持ってきてくれたのか。
さすが氷川さんの親御さんだけあってきっちりしてるな。
「じゃあ面接、というか雇用条件の確認をしちゃおうか。葵はディナータイムにまた頼むな」
「わかりました。また17時前に降りてきますね」
そう言って2Fに上がる葵。
「じゃあまずはこっちの希望から言うね。うちとしてはディナータイムに入ってもらうから17:00〜21:30でお願いしたいんだけど大丈夫かな?」
「大丈夫です」
「おっけ。あと、氷川さんは週に何回ぐらい希望かな? 一応うちは日祝だけ休みで、他は全部やってるんだけど」
「そうですね…。実は私、バンドをしてまして、その練習もあるので週2〜3にしてもらえると助かるのですが…」
「全然大丈夫だよ。無理ない範囲で入って貰えたらいいからね。あとは給与面や…」
そんな感じで色々な事を確認し、面接は終了した。
話の結果、とりあえず明後日の16時から来てもらう事にした。
初回だけは制服とか、物の配置とか色々説明する事が多いから早めに来てもらう。
連絡先だけ交換させてもらい、氷川さんはバンドの練習があるとの事で帰っていった。
さて、また一息つくかとコーヒーミルに視線を向けると、どうやらコーヒー豆を切らしていた事に気がついた。
ディナーで必要だろうし、仕入れに行っとくか。
「葵ー! ちょっとコーヒー豆買ってくるからなんかあったら対応頼むなー!」
「はーい!了解ですー!」
返事が返ってきたので安心して店を出て、2件隣の店へと向かう。
「いらっしゃいませー……あ、悠介くん、こんにちは」
「こんにちは、つぐ。いつものを買いに来たよ」
「わかったよ。用意するからちょっと待っててね」
この子は羽沢珈琲店の羽沢つぐみ。
幼馴染みその4だ。
見ただけでわかる、癒しオーラを常に振り撒く天使。
とても頑張り屋さんで、とにかくいい子!とでも言えばいいのだろうか。
ますきがたまにつぐみを見てうずうずしてる時があるぐらいだ。
「やあ、悠介くん、いらっしゃい。いつもの用意出来たよ」
「あ、どうもマスター、こんにちは」
この人はつぐの親父さんだ。
コーヒー関係の腕前はピカ一で、この人の焙煎したコーヒーを知ったら他の豆を使う気なんか一切起こらなくなるぐらいだ。
うちの店のアフターで使わせてほしいとお願いしたら、快く承諾をもらい、それ以来はずっとここのコーヒー豆を使っている。
だからうちでは喫茶のみの利用はお断りをし、そのお客さんには羽沢珈琲店をオススメしている。
「そういえばディナーのバイトは何とかなりそうかい? 良ければまたつぐみに行かせるよ?」
どうしても葵が無理な日や団体予約が入った時は、つぐや沙綾たちが手伝いに来てくれるのだ。
もちろん本人たちもだが、店の人員が1人減ってしまうんだから行かせてくれたマスター達にも感謝しかない。
もちろんうちが休みの時は俺も手伝いに行ったりもするから持ちつ持たれつではあるんだが。
「実は明日から新しい子が入るので、当面は必要なくなるかもしれません。それでも急遽ってのはあるかもなので、その時はよろしくお願いします」
「おお、それなら良かった。まぁなんかあれば遠慮なく言うんだよ?」
「ありがとうござい『あー、ゆーくんだー』いいいい!」
急に後ろから衝撃が走る。
チラッと首だけ振り向くと、銀色の何かが腰の辺りにくっついてる。
「こらっ、モカ! 急に抱きつくなっていつも言ってるだろ!」
「えー、抱きついてるんじゃないよー。くっついてるんだよー」
一緒だろ!!と思ったが、モカはこういうやつだなと思い直してツッコむのをやめた。
こいつは青葉モカ。
つぐの幼なじみで、その関係で知り合った。
彼此長い付き合いだし、もはや俺とも幼なじみと言っても差し支えないとは思う。
そして異常なパン好きで、よくうちに来ては余ったパンを強奪していくやつだ。
「こらっ、モカ! いつまで悠介に抱きついてるんだ! いい加減はなれろー!」
「そうだよモカ! そんなうらやま…けしからん事を!」
「……はぁ、だる…」
上から宇田川巴、上原ひまり、美竹蘭だ。
みんなモカと同じく、つぐ経由からの知り合い、もとい幼馴染み。
この5人はほんといつも一緒だな。
仲良き事は美しきかな。
巴は姉御肌で、このグループのまとめ役的な存在。
高身長でさっぱりした性格なので、女子に人気そうな子だ。
ひまりは一応リーダーらしいがどちらかと言えばムードメーカーか。
そして身体の一部分がとても目立つ(どこかは言えないが)
蘭は基本的にクールに見えるが、実はかなり熱いやつだし、めちゃくちゃ仲間想いだ。
しかし連絡不精な一面もあるので、ひまりがよくやきもきしてるのを見る事がある。
こう見ると実はかなりいいバランスだよな。
「悠介、時間大丈夫なら一緒に話でもしないか?」
気がついたら腰にひっついてたモカが取れており、巴からお茶のお誘いを受ける。
時間的には…まぁ少しならいいか。
「30分ぐらいならいいぞ」
「よし!じゃあ行こうぜ!」
マスターにブレンドだけ頼んで席に向かう。
つぐも含めていつもここにいるから、買い出しの度によく捕まっては少しだけお茶して帰る事が多くなった。
一応わかってはいそうだが、葵に連絡しておいた。
お茶して少ししたらカランカランと、ドアが開く音がしたので振り向いたら、そこには葵がいた。
「兄さん、お茶するなら私も呼んでくださいよー!」
「そんなに時間ないから連絡だけでいいかと思ったんだよ。まぁ今日は早い時間の予約もないし、別にいいか」
「あー、 あーちゃん、おひさー」
「葵姉さん、久しぶり!」
「葵お姉ちゃんもお茶しようよ!」
「…葵姉ちゃん、ここ」
モカ以外は何故か葵を姉と呼ぶ。
沙綾もそうなんだが、なんで俺は呼び捨てなんだろうな?
ちなみになんでかは知らないけど、蘭は葵にかなり懐いている。
葵に聞いてもはぐらかされるし、いつしか気にしなくなったんだけどな。
結局わりとギリギリまでいてしまい、慌てて戻って準備をするハメになってしまった。
葵がわりと久々だったからか少し慌ただしかったが、まぁたまにはいいだろう。
さて、明日から氷川さんが来るから、その準備をしとかないとな。
次回でようやく紗夜がバイトします。
早く紗夜と仲良くなるとこまでいきたい。
そして早く日菜も出したい。