このカレイドなスレイヤーズに祝福を!   作:猿野ただすみ

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投稿する予定はなかったのですが、仮の投稿日付を直すの忘れたので、そのまま出来てる話は投稿することにしました。


出逢いA(前編)

~稲葉リナ~

あたし、稲葉リナは困惑していた。

 

 

 

 

 

この日の授業も終わり、いつものようにイリヤ、クロエ、美遊と一緒に帰路…、と言うか、あたしはエーデルフェルトのお屋敷へと向かっていた。

 

「ミユ、新しい生活は慣れた?」

 

イリヤが尋ねると、美遊はコクリと頷いた。

美遊・エーデルフェルト改め、朔月(さかつき)美遊。並行世界の生きた聖杯であった彼女は、エインズワースが起こした聖杯戦争のしがらみから解放され、お兄さんと共にこちらの世界へとやって来た。その際に本来の家族の元に戻る、という設定でルヴィアさんが戸籍を作り、晴れて朔月姓となったのだ。

……さすがに、衛宮姓じゃマズいし。衛宮士郎さんが二人になっちゃうからねぇ。実際士郎さんの名前も、朔月()()に変えてるしね。

そんなわけで、美遊は四郎さんと一緒に旧衛宮邸、向こうの世界の衛宮邸と同じ武家屋敷に暮らしてるんだけど、ルヴィアさんとこのレディースメイド(侍女)の仕事は継続して行っていた。四郎さんも、執事見習いとしてエーデルフェルト邸で働いている。

 

「ねー、ミユ。今度の日曜日、遊びに行ってもいい?」

「ん…、いいけど、その日はお兄ちゃんいないよ?」

 

クロエが遊びの約束を取り付けるものの、四郎さんはいないという。

 

「あれ? シロウさん、何か用事?」

 

疑問を口にするイリヤ。まあ、それも最もだ。ルヴィアさんは気を利かせて、兄妹水入らずで過ごせるように、二人の休みを土日にしているのだ。実際、オーギュストさんがいれば大体事足りるし。

で、当然この兄妹も、そこんとこは理解してるわけで。

 

「お兄ちゃん、士郎さんと弓道部に顔を出すんだって」

 

そ、それはシュールな絵面になりそうね。桜ねーちゃんや桜ねーちゃんを見た四郎さんの反応も気になるし。

 

「それは、こっそり見守らないとだな」

「うん、そーね。……って雀花!?」

 

いつの間にか、雀花、那奈亀、龍子、美々の四人があたし達の傍にいた。

 

「イリ助の兄貴と美遊吉の兄貴ってそっくりなんだろ!?」

「興味深いよねー」

「うん。出来たらインタビューさせてもらいたい」

「いや、わたし達のお兄ちゃんで盛り上がられてもッ!」

「てかミミ!? インタビューって、何を聞く気よ!?」

 

穂群原小の四神+αに突っ込むイリヤとクロエ。……おいこら、美遊。頬を染めて興味深そうに、美々を見てんじゃないわよっ! 創作物とはいえ、アンタのにーちゃんが毒牙にかかろうとしてるってのに!

 

「というわけで日曜日、穂群原小(ホムショー)の校門前で集合な? 時間は美遊、あとで連絡頼む」

「わかった」

「「「美遊(ミユ)うぅぅ!?」」」

 

あたしとイリクロが同時に突っ込んだ。

 

 

 

 

 

ご満悦の四神+αと別れると、今まで息を潜めていた二人が話しかけてきた。

 

『それにしても士郎さんと四郎さん、こんなに仲良くなるとは思いもしませんでしたねー』

『全くです。通常、同位存在同士は嫌悪感を抱くものなのですが…』

 

ふーん。そういうものなのか。

あたしはルビーとサファイアの会話に感心したが、同時に疑問も浮かんだ。

 

「あたし、並行世界のあたしに、嫌悪感なんて抱かなかったけど?」

 

かつて異空間と美遊の世界で出会った、それぞれの世界のあたしとは、むしろ気が合ってたと思う。

 

『それはリナさんが、その身体の本来の持ち主、「稲葉リナ」さんの魂を取り込んだために、変質してるからでしょうね』

『憑依転生に加え、「稲葉リナ」として生きていたために、今のリナさまは本来の「リナ=インバース」とは違う存在なのかもしれません』

 

ああ、なるほど。あたしの場合は「≒」ですらなくなってたわけか。

 

「つまりお兄ちゃん達の場合は、それぞれの世界での生活環境の違いで、本質は同じでも性質が違くなって嫌悪してないって事かしら?」

『あ、クロさんのそれは、結構的を射てるかも知れませんねー』

 

確かに。士郎さんは、人助けしたがるお節介な性格ではあるものの、ごく普通の高校生だ。一方の四郎さんは、正義の味方を目指し、それを捨て美遊の(みかた)であることを選んだ人。その行動理念は同じ所から来ているのかも知れないけど、実際の行動には大きな違いがある。何より普段の士郎さんは、結構ヘタレだ。

 

「ねえ、リナ。なんか失礼なこと考えてない?」

「大丈夫。イリヤのことじゃないわよ」

「失礼なことは考えてたんだねッ!?」

 

ふっ。あたしは前世で、例え相手がガウリイだろうが魔族だろうが、言いたいことはハッキリ言ってたのよ? むしろ心の中に留めてるだけ、まだマシってもんよ。

……まあそれはともかくとして、あのふたりが仲がいいのも、絶妙なバランス故なんだろう。どちらかが少しズレてただけで、お互いを嫌悪する仲になっていたのかも知れないのだ。

 

 

 

 

 

なんてやってる間にエーデルフェルト邸の、そしてイリヤの家の前までやって来た。だけどイリヤとクロエは、エーデルフェルト家の門の前にいる。

実は最近、四郎さんに挨拶する呈で美遊の妹モードを観察して帰るのが、この二人の日課となってるのだ。全く、いい趣味してるわ。

そんな事とは露程にも思っていない当の美遊が、格子状の門戸を押し開けた。

 

 

 

 

 

そして今、あたしとイリヤは、雪の積もる冬枯れの森の中にいる。これが困惑せずにいられようか。

 

「……え? あれ? なんでわたし達、こんなとこに? ミユとクロは?」

 

そう、今ここには美遊とクロエの姿は見えない。おそらくここへ飛ばされてきたときに、離れ離れになってしまったんだろう。そして、この現象は多分…。

 

『これは、原因はおそらく違いますが、以前異空間へ飛ばされたときと同じ現象のようですね』

「異空間って、なのはちゃん達と出会ったときの、あれ?」

『そのとおりです』

 

やっぱりか。ただ、ハッキリと違うのは、この世界は現実にありそうな風景で、且つ安定しているということだ。

ともかくあたしは、気持ちの切り替えを図った。いつまでもこんな場所で、突っ立ってるわけにもいかない。あたしは遠話球(テレフォン・オーブ)を取り出して、美遊とクロエに向けて語りかけた。

 

「美遊、クロエ、聞こえたら返事して」

『……リナ、こちらクロエ。今、ミユと一緒にいる。そちらの状況を知らせたし』

「……どーやら二人とも、無事みたいね。こっちはイリヤと一緒よ」

『もう、リナってば。ノリが悪いなぁ』

 

いや、ここでノリを求められても。

 

『……おかしいですねー?』

 

ん? ルビー?

 

「どうかしたの、ルビー?」

『いえ、イリヤさん。私もサファイアちゃんに連絡しようとしたんですけど、何故か繋がらないんですよ』

 

繋がらない? 遠話球での会話は出来るのに?

 

「クロエ、こっちではルビーが、サファイアと繋がらないって言ってるんだけど?」

『こっちもサファイアが、おんなじ事言ってる』

 

……どういうこと? 技術は若干違うとはいえ、魔術特性には殆ど差がないはずなのに。

 

『なんて言いますか、私達の使うチャンネルに共鳴する何かがあって、結果的に妨害してるって感じなんですよねー。サファイアちゃんの意見はどうですか?』

『こちらも同じ印象を受けますね。おそらくそれが解明するまでは、私達を通しての会話は不可能かと思われます』

 

遠話球を通しての会話をする、ルビーとサファイア。……おや?

 

「ちょっと二人とも。確か遠話球(テレフォン・オーブ)の術式、ダウンロードしたわよね?」

 

それであたしは、遠話球の出来を確認したんだし。

 

『いえ、どうも私達を介してることが、妨害の影響を受ける一因となってるみたいなんですよー』

『つまり、私達を介する通信は一切不可能だと認識していただいた方が、よろしいかと思われます』

「そっか…。ってことは、あたし達の相互の位置は、確認できないってことね?」

 

むみゅうぅ…、こりはこまった。こんなワケのわからん世界であたし達が合流するには、結構時間がかかるかも知れない。

とはいえ、嘆いてたって始まらん。

 

「仕方ないから、お互い周辺を探索しましょ。とりあえず、この世界のことが知りたいしね」

『うん、わかった』

『リナ、イリヤ。二人とも、気をつけて』

 

遠話球から美遊の声が聞こえる。どうやら彼女も遠話球を起動させたようだ。

 

「ミユ。うん、ミユとクロも気をつけてね!」

 

イリヤは、あたしの遠話球に口を寄せて言った。

 

 

 

 

 

「イリヤ、とりあえず…」

 

遠話球での会話を終え、イリヤに行動を促そうとした、その時。

 

どぐわおぉん!

 

突如鳴り響く爆発音。

 

「えっ、何? ドラグ・スレイブ?」

 

……いや、美遊に貸してるのはアサシン(ズーマ)のカード。宝具[竜破斬(ドラグ・スレイブ)]を持つキャスター(シルフィール)のカードはイリヤで、クロエが持つのはアーチャー(エミヤ)のカード。あたしはスィーフィード世界の術が使えるから、普段はカードが無くても構わない。

従って、あたしがここにいる限り、ドラスレの可能性はない…、いや、少ないのだ。

しかし、それに近い威力の爆発があったことには違いない。

 

「……イリヤ」

「うん、行こう!」

 

イリヤは魔法少女へ転身する。あたしも急ぎ呪文を唱え。

 

翔封界(レイ・ウイング)!」

 

[力ある言葉]とともに風を纏い、上空へ舞い上がる。あたしはぐるりと周囲を見回し。少し離れてクレーター状にえぐれた場所を見つけた。

 

「イリヤ、あそこへ行くわよ」

『わかった』

 

遠話球(テレフォン・オーブ)を通して連絡を取り合ったあと、あたし達はクレーターへと向かっていった。

 

 

 

 

 

クレーターの縁へと降り立ち、辺りを捜索することおよそ十分。

 

「誰か、いるの…?」

 

あたし達の雪を践み歩く音に気づいたのだろう。女性、……女の子の警戒する声か聞こえた。あたしとイリヤは頷き合い、声のした方へと進んでいく。するとやがて大きな岩が現れ、足を前に投げ出して岩にもたれかかる少女と、その隣にちょこんと座る少女の二人がいた。どちらもあたし達より、少し年上みたいね。

もたれかかっている少女は黒髪ショートの、いろんな意味で小柄な子。もう一人はセミロングの黒髪を左右に分けてリボンで縛っている、いろんな意味で発育のいい子。あたしの敵ね。

そして最も特徴的なのは、その赤い瞳。イリヤ同様、ルビーのように赤いその瞳には、強烈な意思の力が宿っている。

 

「……なんでしょう。あなたを見ていると気が合いそうな気がします」

「な、なんだか私を見る目が恐いんだけど…」

 

どうやら勘もいいようだ。

 

「ああ、ごめんなさい。あたし達は…」

 

あたしが事情を説明しようとした、そのとき。

 

グルォアァァ!!

 

突如聞こえる絶叫。姿を現したのは、空を舞う巨大な飛竜(ワイバーン)

 

「そんな…、ワイバーンまでいるなんて…」

「我の魔力さえ回復していれば、必殺の爆裂魔法をお見舞いしていたものを!」

「言ったよね? あそこはめぐみんの爆裂魔法より、私のライト・オブ・セイバーの方がいいって、私言ったよね!?」

「過ぎたことをウジウジと。そんなだからゆんゆんは、いつまでたってもぼっちのままなんですよ」

「ぼっちじゃないよ!? ちゃんとパーティーだって組んでるんだから!」

 

ううみゅ。この掛け合いは見ていて楽しいが、今はそれどころじゃない。イリヤなんて、どうしたらいいのかわからず、オロオロしてるし。というわけで。

 

「しゃーない。あたしがなんとか…」

「…待って!」

 

おう!? イリヤ!?

 

「リナは、魔力量が格段に上がったとはいえ、それでも全盛期ほどじゃないんだよね? だったらわたしが、あれを何とかするよ! わたしならルビーがいるから、魔力もすぐに回復できるし、ね?」

 

イリヤ…。ホントにこの子は、目を見張るほど成長したわね。

 

「……うん、わかった。それじゃあイリヤに任せるわ」

 

イリヤはコクリと頷いて、カードを取り出す。

 

「クラスカード『キャスター』、夢幻召喚(インストール)!」

「えっ、あの服装って…」

 

ゆんゆんって呼ばれてた子がキャスターの衣装を見て、何かポツリと呟いた。

イリヤは上空の飛竜を見上げると、印を結びながら[混沌の言語(カオス・ワーズ)]を唱える。

 

---黄昏よりも昏きもの

   血の流れより紅きもの

   時の流れに埋もれし

   偉大な汝の名において

   我、ここに闇に誓わん…

 

「その詠唱は!?」

 

今度はめぐみんって呼ばれてた子が、驚きの声を上げた。……ってか、ドラスレのこと知ってる…?

 

---我らが前に立ち塞がりし

   すべての愚かなるものに

   我と汝が力もて

   等しく滅びを与えんことを!

 

そんな中、イリヤは呪文を唱え終え。

 

竜破斬(ドラグ・スレイブ)!」

 

[力ある言葉]とともに、イリヤが生んだ赫光が飛竜へと収束して。

 

ドギュわあぁん!

 

強烈な爆音を放ち、粉塵へと帰した。




この自作コラボ三作品は、現在(2023年1月現在)よりも少し未来の話です。
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