このカレイドなスレイヤーズに祝福を!   作:猿野ただすみ

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明けましておめでとうございます。


再会と邂逅

~イリヤスフィール~

クロが、テレフォン・オーブとかいうアイテムで連絡を取り合っている。そこから聞こえた声は、確かにアニメで聞いた閣下の声とよく似ていた。そして更に聞こえた別の声は。

 

「これ、確かにイリヤの声だな」

 

カズマさんが呟くように言った。わたし自身は、自分の声というより他人の声っぽく聞こえるけど、多分きっとそうなんだろう。

やがて通信が終わって。

 

「リナが居場所の目印になるように、定期的に火炎球(ファイアー・ボール)を打ち上げてくれるって…」

 

そこまで言ったその時。

 

どおおおおおん!

 

上空で炸裂音と共に炎が巻き起こった。

 

「早速みたいね。それじゃ行きましょうか」

 

軽い口調で促すクロ。並行世界のクロとはいえ、わたしの知ってるクロと変わらないその言動に、わたしは安心感を覚える。

それからしばらく進んだ所で、カズマさんが口を開いた。

 

「なあ。さっき、『そっち世界には【スレイヤーズ】があるんだ』とか言ってたけど、それってどういう事なんだ?」

 

あ。そういえば、わたしも疑問に思ってたんだった。

 

「ああ、うん。ええと、わたし達が亜空間で出会った子達から聞いたんだけど」

「うん? それってもしかして、なのはちゃん? あれ? でもあの時は、クロは一緒じゃなかったけど…」

『イリヤさん。彼女達は並行世界のクロさん達です。同じ現象に巻き込まれたとしても、まったく同じ条件だったとは限りませんよー?』

「あ、そうか」

 

そもそも向こうのわたしは死んでないし、リナ=インバースらしき人もいたりするんだから、色々違っててもおかしくないもんね。

 

「……なのはって、【リリカルなのは】が思い浮かぶんだが」

 

うにゅ? リリカルなのは?

 

「そう、そのなのはよ。リナが見てた魔法少女ものの主人公。ただしアニメとは違う可能性世界、要は並行世界の彼女だけどね」

 

……アニメの主人公?

 

「……それなら、【マジカル☆ブシドームサシ】の世界もあるのかな?」

並行世界(そっち)のイリヤも、それが好きなのね。……まあ、可能性としてはあるんじゃないの?」

 

呆れたように返すクロ。別にいいじゃない。好きなものは好きなんだから。

 

「三人とも。話が逸れてる」

 

あう。ミユに突っ込まれちゃった。

 

「えっと、【スレイヤーズ】の話だったわね。わたし達の世界には【スレイヤーズ】という作品は無いけど、そこで会ったなのは達の世界には【スレイヤーズ】という、リナ=インバースを主人公にした作品があったってワケ」

「なるほど。それを聞いて知ってたからの、さっきのセリフってワケか」

 

ほへぇ。不思議な事ってあるもんだなぁ。……いや、ルビーに巻き込まれて以降も不思議なことの連続だけど。

 

『ところが、それだけではないのです』

 

ん? サファイア?

 

「……そっちの世界にも、リナがいたの。逢魔リナって名前の転生者として」

 

……はい? なんだかミユが、とんでもないことを言ってる気がする。

 

「つまりは何だ。【スレイヤーズ】が存在する世界に、その主人公が転生してたって事か?」

「そういう事よ。因みに、そっちのリナのデバイスはL様だったけど」

「[金色の魔王(ロード・オブ・ナイトメア)]かよっ!」

 

ロード・オブ・ナイトメアって確か、リナ=インバースの最強魔法を司ってる魔王だったっけ?

そんな事を話したりしていると。

 

どおおおおおん!

 

再び炸裂音が聞こえてきた。

 

『どうやら、進んでいる方角で間違いないみたいですねー』

「うん。少し近づいた気もするし」

 

さっきよりも音が大きく聞こえたから、多分そうだと思うけど。

 

「ねえミユ。一度上空から、辺りを確認してくれない?」

「……うん。わかった」

「あ、それならわたしも一緒に」

 

クロの提案にわたしも乗っかることにする。

 

『……と言うことは、わたしとしては久々にアレですね。いきますよ、サファイアちゃん!』

 

おおう。ルビーがいつもより気合いを入れてる!?

 

『『コンパクト・フルオープン!

鏡界回廊最大展開!』』

 

二人の声が綺麗に重なる。そして、わたしとミユは光に包まれ。

 

『カレイドルビー、カレイドサファイア、プリズマ☆イリヤ&美遊推参です!』

 

わたしは可愛いポーズをとらされながら、ルビーがノリノリで口上を上げた。

 

『……おや、イリヤさん? いつもの様な文句は言わないんですか?』

「うん、まあ、今日くらいは生温かく見守ってあげようかと思って」

 

並行世界のとはいえ、サファイアと再会できてテンションが上がってるのは、わたしとしても理解できるし。

 

『……なんと言いましょうか、望んでた反応ではないのに嬉しくも感じてしまう自分が、非常に悔しいです』

「お前、難儀な性格だな?」

 

屈折したルビーの感情に、カズマさんは呆れながらツッコミを入れた。

 

「ほら、くだらないコントなんかしてないで、さっさと見てきなさい!」

「イエッサー!」

 

 

 

 

 

わたしとミユはある程度の高さまで来ると、ファイアー・ボールが上がった方角を見てみる。……んだけど。

 

「んー…。さすがにまだ見えないね」

「そう、だね」

 

ミユはそう返した。……うーん。なんだかぎこちないなあ。

 

「ねえ、ミユ。あんまり畏まらないで?」

「え?」

「多分、ミユが知ってる『イリヤ』じゃないから、どう接していいのかわかんないのかも知れないけど。

でも、カズマさんが言ってたでしょ? 別人かも知れないけど同一人物だって。だからわたしは、同じ人だけど別人って考えるんじゃなくて、別人だけど同じ人って考えるようにしたんだ。

……わたしはミユに、そっちのわたしと同じ様に、わたしと接してほしいよ。確かに話が噛み合わない時もあると思うけど、それでもわたしは、『ミユ』の親友の『イリヤ』だから」

 

わたしは思ったことを、包み隠さずにミユに告げた。

 

「……うん。わかった。確かに、イリヤはイリヤだものね」

 

そう言ってミユは、わたしに微笑みかけてくれる。

 

『いいですねー。女の子同士の友情! ちょっと百合っぽい感じがして、また何とも言えませんよー』

「ちょっとルビー、雰囲気台無しにしないでよ!」

『アハー!』

 

まったく、ルビーってば。

いや、今はこんな事を、いつまでもグダグダ考えてる場合じゃない。

 

「えっと、それじゃ戻って報告しよっか」

「うん、そうだね」

 

ミユも頷いて同意したので、戻ろうとしたのだけど。少し離れたところから、すうっと上空に飛び立つ姿が見えた。

 

「……あっ! イリヤと美遊だ!」

 

そう言って近づいてきたのは、ピンクのワンピースのコスチュームを纏った、長い赤毛の女の子。年の頃は、わたしと同じくらい。

でも、何より驚くべきところは、その手にしているのがわたしと同じ、カレイドステッキのマジカルルビーだということだ。

 

「……あれ? わたしの知ってるイリヤじゃない?」

「えっ! わかるの!?」

 

この子が、ここに居るミユと知り合いなのは、ミユの反応を見てわかってる。でも、多分見た目が変わらないわたしが、この子の知り合いの「イリヤ」じゃないなんて、ぱっと見でわかるとは思えないんだけど?

 

「ああ、うん。わたしって何故か、そーいうのがパッとわかっちゃうときがあるんだ」

 

へぇ。きっと直感力が高いんだろうなぁ。

 

『ええと。ところで、そちらのわたしはひょっとして、【hollow ataraxia】か【タイころ】のわたしではないですか?』

『おや、さすがはわたしですね。そのとおり。わたしは【タイころ】のルビーちゃんですよー』

 

【ホロウ】? 【タイころ】? 何言ってんのかわからないんですけど?

 

「イリヤ。彼女達の会話は深く考えない方がいい。あと、わたし達は向こうのルビーを[羽根ルビー]って区別してる」

「羽根ルビー?」

「よく見たらわかるけど、向こうは二枚の羽根が重なって一枚に見えるから、六枚×二で倍の枚数。そして数が多いから羽根ルビー」

「なるほど、了解」

 

単純と言えば単純だけど、非常にわかりやすい。……って、それよりも。

 

「ところで、あなたは誰?」

「あ、まだ名前言ってなかったね。わたしは稲葉リナだよ」

 

……へ? 確か稲葉(イナバ)リナって、クロから聞いた、向こうの世界に転生したリナ=インバースの名前じゃあ?

 

「彼女はわたしの世界にいる、リナ=インバースが憑依転生していないリナだよ」

 

わたしの…って、ミユの世界?

 

「え? つまり、並行世界の稲葉(イナバ)リナさんって事?」

「うん。そうだよ。あ、それからさん付けじゃなくていいから」

「うん、わかった」

 

何だろう。リナ=インバースじゃない、聞いた話の方の稲葉(イナバ)リナじゃないのはわかってるけど、なんて言うか、元気一杯の普通の子って感じだな。

 

『そりゃあ同位存在とはいっても、生活環境やらなんやらが違いますからねー。イリヤさんが想像してるリナ=インバースと違ってもおかしくはありませんよ』

「そうだけど。……って言うか、モノローグ読むのはやめてってば」

 

まったくルビーは、隙あらばすぐにこれなんだから!

 

「あ、そうだった! ねえ。二人に会わせたい人達がいるんだけど、ついてきて」

「会わせたい人達?」

「あ、ちょっと待って。下にカズマさんとクロがいるから、連れて来るよ」

「……カズマさん?」

 

わたしがそう告げるとカズマさんの名前に、リナは少しだけ首を傾げたのでした。

 

 

 

 

 

二人の許に戻ったわたし達は簡単な説明をして、わたしがカズマさん、ミユがクロを連れて再び上昇、リナの後を着いて少し離れた場所に降り立った。って!?

 

「な、アクアにダクネス!?」

「二人もこっちの世界に…!?」

 

カズマさんとわたしが驚きの声を上げると。

 

「え、カズマ? 何言ってるの?」

「石龍の調査は私達も一緒だったじゃないか」

「「石龍?」」

 

アクアさんもダクネスさんも、何を言って…。

 

「お二人とも、少し待ってください」

 

そんな二人を制したのは、長い黒髪の清楚そうなお姉さん。……でも、どこかで見たことあるような?

 

「カズマさんとそちらの女の子は、私とこちらの剣士に見覚えがありませんか?」

 

うん?

 

「……いや。どこかで見た格好ではあるが」

「わたしも。同じく、なんか見覚えがある気はするけど」

「……やはりそうですか」

 

やはり?

 

「アクアさん、ダクネスさん。こちらのカズマさんは、私達が知るカズマさんではないようです。先程アクアさんが説明された並行世界、そちらのカズマさんではないでしょうか」

「「「「あ」」」」

 

わたしとカズマさん、アクアさん、ダクネスさんが、同時に短く驚いた。

 

「……さすがサイラーグの巫女、シルフィールね」

 

……え、クロ?

 

「……私の事をご存知なのですか?」

「直接は会ったことないけどね。貴女が言った並行世界の、そっちのガウリイには会ったことがあるわ」

「ええっ、そうなの!?」

 

クロがなんか、とんでもない爆弾を落とした。って言うか。

 

「おい、それじゃあこの二人は、【スレイヤーズ】のガウリイ=ガブリエフとシルフィール=ネルス=ラーダって事か!?」

「何だ、オレの事知ってるのか?」

 

あ。受け答えがアニメで見た感じに似てる。それに、確かに二人とも、アニメの声優さんが当ててた声にそっくりだ。

 

「知ってるって言うか…」

 

カズマさんが答えようとした、そのとき。

 

ずごおおおん!

 

上空にファイアー・ボールが炸裂する。

 

「……また火炎球ですね。リナさんが放っているんだと思いますが…」

 

……なん、だと!?

 

「あの、リナ=インバースも一緒なんですか?」

「え? ああ、そうです。石龍の調査にはリナさんも同行してましたから、おそらくは」

 

ミユの質問に答えるシルフィールさん。やっぱりそうなんだ。

 

「……って言うか、リナ、多過ぎじゃない!?」

 

聞いた話も含めると、稲葉(イナバ)リナが二人に、更にリナ=インバースも! しかも異世界の同位存在で、内、片方はリナ=インバースが憑依転生してるって言うしっ!

 

「……因みに、ミユ世界のリナの育ての親…姉?のミリーナ=サンダースは、更に並行世界のリナ=インバースだからね?」

 

わたしの耳許で、更に爆弾投下をするクロ。

 

『この作者さんは、相当【スレイヤーズ】がお好きなようですねー』

「作者って何の事よ、ルビー!?」

『いやー、見事なメタ発言ですねー』

「羽根ルビーは黙っててっ!!」

 

うう、ルビーが二人もいると、突っ込むのも大変だよぅ。

 

「もうみんな、落ち着きがないわねー。ホラ、私の芸でも見て、少しは落ち着きなさいな。花鳥風月ー!」

 

ええっと。空気を読まないというか、読んでるけど対応が明後日の方向に行ってるというか、とにかくそんな、いつもと変わらないアクアさんを見て、ある意味気分が落ち着いた。

 

「……取りあえずは、自己紹介だな」

 

なんとも言えない空気の中、カズマさんはそう言ったのでした。

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