このカレイドなスレイヤーズに祝福を!   作:猿野ただすみ

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今年最初の話は、少し長くなってしまった。


黒化英霊

~魔道少女リナ~

宙に浮かんだ、濃紺のローブを纏った女の人。あれってもしかして、リナが言ってたカードの英霊?

 

『な…、あれはまさか』

「ルビー? 何か知ってるの?」

「知ってるも何も、あれは【Fate/stay night】のキャスターの英霊です」

「……いやだから、わたし達にもわかるように言って」

 

こんな場面で、いつものよくわからない発言は止めてほしいんだけど。

 

『いやー、すみません。つい、いつものノリで。では言い直しますが、あの英霊は、より本流に近い世界線での第五次聖杯戦争で呼び出された、キャスターのサーヴァントです。真名はメディア。ギリシャ神話の、コルキスの魔女ですね』

「急にマジメに話されても追っつかねぇんだが」

「慧、これで追いつかないと、リナの相手は務まらないわよ?」

 

この場合のリナは当然、もうひとりのわたしの方の事だ。

 

「でも、そうか。イリヤちゃんが使ってるキャスターのカードと同じ英霊って事だね」

 

カナ大さんが納得しながら言った。って事は、そっちのイリヤはまだ、メディアのカードを持ってるんだね。こっちの世界の、五次のサーヴァントカードはアーチャー以外、 エインズワースに破棄されちゃったから。

 

『……ですが、わたしが知ってるキャスターさんとは些か違って、自我らしいものが殆ど感じられませんねー』

 

あ、やっぱり。

 

「ねえ、多分だけど、あれってリナ達がサーヴァントカードの回収のために戦ってた、カードの英霊だよ。本来の英霊と違って、英霊の現象でしかない、聖杯(ピトス)の泥で汚染された黒化英霊だと思う」

「サーヴァントカード?」

 

わたしの説明を聞いてたミリィが聞き返した。……あ、そうか。

 

「サーヴァントカードはエインズワースが創ったカードの本来の名前で、リナ達が回収してた世界じゃクラスカードって呼ばれてたものだよ」

「あ、その名前なら聞いたことある」

「本当はサーヴァントカードって言うんだな」

 

うん。ただ、イリヤ…プリヤの方が持ってるシルフィールさんのカードは、ミーねえがサーヴァントカードの屑カードを利用して創ったもので、ミーねえが命名した、本当の意味でのクラスカードだけど。

 

「つまり()()を倒せば、そのカードになるって訳だね?」

 

カナ大さんがそう締め括って、再び上空を仰ぎ見る。充分距離があるためか、フードの女の人…キャスターはただ、わたし達を見つめている。でもそれは、同時に警戒しているってことだと思う。だから、もう少し近づいただけで攻撃してくるに違いない。戦闘経験の少ないわたしでも、それくらいは理解できた。

 

「でも、どうやってだ? 俺の剣じゃ当然届かないし、ミリィの銃も、所詮はエアガン。射程の範囲外だ。そうなると、カナ大さんともうひとりの稲葉次第になるが…」

「……わたしは陰陽術以外でも、転生した世界でアークウィザードの術を修得してる。でも、相手はキャスター。しかも神話時代の、現代の魔術師とは比べものにならないほどの使い手だよ。多分、並の術だと防がれちゃうと思う」

 

なるほど。中々厄介な相手みたいだ。それなら。

 

「わかった。それじゃあみんなが攻撃できるように、わたしがあのキャスターを地上に叩き落とす!」

 

わたしがそう言うと、慧くんとミリィが驚いた顔でわたしを見る。

 

「……普段はちょっと天然が入った活発な子って感じだけど、こういうときはやっぱり、リナの同位存在なんだなって思うわ」

 

ミリィはため息を吐いてから言った。って言うか。

 

「わたし、天然入ってる?」

『まあ、適度に』

 

わたしの疑問に、ルビーは答えた。何だか納得がいかない。

 

 

 

 

 

「それじゃあ行くよ! カナ大さん、牽制、お願いします!」

「任せて」

 

そう言葉を交わして、私は()()()で飛び立つ。途端にキャスターはわたしへと視線を移し。

 

「『インフェルノ』ッ!」

 

キャスターの気を引くために、カナ大さんが強力な炎の魔術を放つ。だけどその炎が届く前に、魔力の壁が現れて防がれてしまった。

 

『魔力指向制御平面ですか。これでは、地上からの魔術はキャスターには届きませんよ』

 

やっぱりカナ大さんが言ったとおり、とても強い魔術師みたいだ。それならなおのこと、わたしが頑張らなくちゃ!

わたしは全速力で魔力指向なんたらを突破して、キャスターへと向かっていく。するとキャスターは、複数の魔法陣から複数の魔力の光線を放った。わたしはそれを躱し続けて。

焦れてきたんだろう、キャスターは更に複数の魔法陣を展開する。だけど、そのひとつひとつは小さくなって、中に描かれている図形も簡略化されていた。

今だ!

 

「ルビー、魔力結界最大出力っ!!」

 

わたしはそう指示をして、キャスターへと突っ込んでいく! 慌てたキャスターは狙いも定めずに威力の落ちた魔力光線を放ったけど、それに構わずにわたしは突っ込む。いくつか当たった光線は、だけど魔力結界で防がれ、物理的な力は翔封界の風の結界で緩和する。

これはあらかじめ、ルビーと立てた作戦だ。戦闘経験の少ない今のわたしは、いくら頑張ってもキャスターとはまともに戦えない。だから躱して、焦らして、より広範囲で威力の低い攻撃に切り替えたところで。

 

「ていっ!!」

 

ズゴォッ!

 

「■■■!?」

 

キャスターに体当たりをぶちかました! その予想外の攻撃に防御もとれず、直撃を受けたキャスターは地面に落下、わたしも一時的に翔封界(飛行呪文)の制御が出来なくなって落下したけど、高度があったおかげで持ち直すことが出来た。

わたしはそのまま地上に降りて、術を解いたそのタイミングで。

 

「はぁっ!!」

「『ライト・オブ・セイバー』ッ!!」

 

慧くんが改良黒鍵で、カナ大さんは光の刃で、同時にキャスターを斬り付けた所だった。

 

「■■■■!!」

 

そしてキャスターは、声にならない声を上げて消失、その場に1枚のカードが残される。

 

「[Caster]…。リナちゃんが言ったサーヴァントカードで間違いないみたいだね」

 

拾い上げたカナ大さんが言った。

 

「それでこのあとどうするか、だが…」

 

カチャリ

 

慧くんが言ってるそばから、どこ●もドアの様な扉から鍵を開けたような音がする。

 

『どうやらこの扉を潜れ、って事みたいですねー』

「なんか、RPGみたいね」

「……ごめん、ミリィ。RPGって何?」

「あ。わたしも知らない」

 

わたしが尋ねると、カナ大さんも続けて言った。ミリィは一瞬驚いた表情になったけど、すぐに何かに気がついたみたいだ。

 

「ごめん。考えてみたら魔術師って、機械はあんまり使わないとか言ってたっけ。カナ大さんは、黒神家にあまり黒物家電が無かったの思い出した」

 

確かに、凛ねえが極力電化製品を置かないのは間違いない。って事は、RPGって機械関係の用語なのかな?

 

「RPGはロールプレイングゲームの略で、いわゆるゲームのジャンルのひとつよ」

 

ゲーム…。この場合のは、テレビゲームとかそういうのなんだろう。

 

「まあ、その中の展開で、敵を倒すことで次に進めるっていうのがお約束のパターンのひとつって訳だ」

 

話を引き継いだ慧くんの説明で、ようやく納得する。カナ大さんも同じみたいだ。

 

『というわけで、早速次へと進みましょうかー』

 

と、ルビーが先へと促した。やっぱり納得がいかない。

 

 

 

 

 

扉を潜った先は、今度は林の中の開けた場所で、やっぱり1枚の扉が立ってる。そして潜った方の扉は、全員が通り抜けたあとに忽然と消えてしまった。

 

「これって、第二戦があるってこったよな?」

「まあ、わかりやすくていいんじゃない? 戦うのは嫌だけど」

 

慧くんとミリィ、なんか慣れてるなぁ。

 

「軽口はそこまで! 周り、囲まれてるよ」

 

カナ大さんに言われて注意深く辺りを見ると、ドクロのようなお面を被った人が何人か視界に映った。

 

『これは、アサシンの様ですが…。おかしいですね。五次のアサシンは佐々木小次郎か、呪腕のハサンのどちらかだったハズです』

 

ルビーが珍しく戸惑ってるけど、これに関してはミーねえ、凛ねえ経由でわたしの方が詳しいと思う。

 

「アサシンのカードは他の6枚と違って、1枚のカードが全てのハサン・サッバーハと繋がってるんだって。だから夢幻召喚する人や状況によって、現れるハサンが違うんだと思う」

「つまりどのハサンが現れて、どんな攻撃をするかはわからないって事だね?」

 

 

カナ大さんの質問に、ルビーは器用に柄の部分を曲げて頷いた。

 

『そういう事になりますね。ですが相手は暗殺者。かなり変則的な攻撃をするはずです。事実、本来は一体であるところが複数人、実際は相当な数が隠れていると思われます。これで一斉に襲いかかられるのは厄介ですし、お約束的に毒にも警戒した方がいいでしょうねー』

 

なるほど。つまり、出来るだけ一斉に倒した方がいいって事だよね? それなら。

 

「ねえ、カナ大さん。さっきのカードを渡して」

「え?あ、うん…」

 

戸惑いつつもカードを差し出すカナ大さん。わたしはそれを受け取って。

 

「みんな。少しだけ時間を稼いで。その間にわたしが、カードと契約するから」

「カードの契約…。わかった! 青川くん、星見さん、アサシンの気を引いて、全員を林から誘き出して。ただし、毒攻撃に気をつけることと、契約中のリナちゃんを護ること!」

「OK!」

「わかった!」

 

どうやらカナ大さんは、わたしがやりたい事を察してくれたみたいだ。

三人が駆け出すと、林の中からアサシンがわらわらと現れた。いや、多過ぎでしょ? ……って、そんなことより早く契約を済ませないと!

 

「告げる!

汝の身は我に!

汝の剣は我が手に!

聖杯のよるべに従い!

その意 その理に従うならば応えよ!」

 

この詠唱は、ミーねえ、凛ねえに無理を言って教えてもらったもの。二人は渋々だったけど、結果的にここで役に立った!

 

「誓いを此処に!

我は常世統べての善となる者!

我は常世統べての悪を敷く者!

汝 三大の言霊を纏う七天!

抑止の輪より来たれ 天秤の守り手 ── !」

 

これで最後、というその時。わたし目がけて1本のナイフが…!

 

「危ない!」

 

そう言ってわたしの前に出て庇ったカナ大さんに、アサシンのナイフが…刺さらずに落ちた?

その代わりにカナ大さんの衣服の中から、パキリという木の板が割れたような音がする。

 

「……人形(ヒトガタ)1枚、使っちゃったか」

 

ヒトガタって、聞いたことある。術士が身代わりにする護符の一種で、人形の原型のひとつだったよね?

 

「さあ、リナちゃん。今のうちに!」

 

そうだ。さっさとしないと。

わたしは、最後の一節を唱える。

 

夢幻召喚(インストール)ッ!」

 

その瞬間、ノイズ混じりのメディアの記憶が一瞬だけ流れ込み、わたしはキャスターを夢幻召喚していた。

 

「全方位壊砲、六門!」

 

わたしは上空以外の全方向に魔法陣を展開させて、魔力をため込んでいく。

 

「青川くん、星見さん! 戻って!」

「うん!」

「……って、マジやべぇ!?」

 

カナ大さんの合図に慌てて戻る二人。それを追ってアサシンも近づいてきて、一斉にナイフを放った。でも、もう遅い!

 

神官魔術式・灰の花嫁(ヘカテック・グライアー)!!」

 

わたしが一斉に放った魔力砲が、辺り一帯を焼き尽くす。そして1枚のカードが残された。

 

「……なあ、これ、例の扉は大丈夫なのか?」

『「「「あ!?」」」』

 

慧くんのセリフに、声を上げるわたし達。慌てて振り返ると、扉は傷ひとつ無くその場所にあった。そしてさっきと同じく、カチャリと鍵の開く音が聞こえる。

 

『いやー、焦りましたよー。しかしどうやら、かなり強力な術でも揺るがない、強固な概念で構築されてるみたいですねー』

 

いや、本当に無事で良かった。

 

「それじゃあカードを拾って、次へ行こうか」

 

カナ大さんはそう言うと、カードを拾いに行く。

……出来れば扉の先は、「三度目の正直」になってほしいけど、何となく「二度あることは三度ある」の様な気がする。

 

 

 

 

 

扉の先には身長2メートルを優に超える、色黒で肌面積のやたら広い大男がいた。うん、やっぱり。

 

『ま、まずいですよっ!』

 

え? ルビーが今までになく慌ててる?

 

『アレは、バーサーカーの英霊、ヘラクレスです! 十二の試練を達成した逸話が昇華して、十二の命を持ってます。つまり十二回倒さなくてはならず、更に一度与えた攻撃には耐性が出来てしまうんですよ!』

「ちょっとそれ、無理ゲーじゃない!?」

 

ミリィが突っ込む。って、無理ゲー? あ、無理なゲームか。……うん。わたしもそう思う。

 

「でも、イリヤちゃんは倒したはずだよね? だって、バーサーカーのカードも持ってるんだから」

 

あ。確かにその通りだ。

 

『それはまあ…。先程も言った第五次聖杯戦争でも、あるルートではアーチャーが六回殺して力尽きたあと、別の方が投影品のカリバーンで残り六回分のダメージを与えて倒してますが、それだって特殊な例ですよー?』

 

……なんだろう。それこそいつもルビーが言ってる、メタ発言してる気がするんだけど。

まあ、それは置いとくとして。確かに、どうやって倒せばいいんだろう。

 

「……いや、何とかなるんじゃないか?」

「え、慧?」

『本当に何とかなるんですかー? 言っておきますが、ヘラクレスにはAランク以上の攻撃じゃないと通用しませんよー? まあ、わたしの見立てでは能力がワンランク下がっているので、Bランク以上でも通るとは思いますが、それだって、慧さんの改良された黒鍵で何とかってレベルです』

 

ルビーが物凄く分析された正論をぶつけてきた。何だか、より絶望感が漂ってくるんだけど。

 

「いや、それこそ今、もうひとりの稲葉が夢幻召喚してるキャスターの、さっきの攻撃があるし、稲葉と同じ術だって使えるんだろ? カナ大さんも、さっきの光の刃と同レベルの術があるんじゃないのか?」

「「あ」」

 

わたしとカナ大さんの声が被る。そうだった。わたしには[スィーフィード世界]の術があるし、カナ大さんも異世界の魔術がある。あまりにも絶望的な情報を聞いたせいで、思わず思考から抜け落ちてたみたいだ。

 

『いやー、さすがですねー。わたしと同じ事に気がつきましたかー』

 

むかっ!

 

さすがに今のは聞き捨てならない。ってワケで。

 

ごいん!

 

『あぱっ!?』

 

わたしはキャスターの杖の姿をしたルビーを、思い切り下に叩きつけた。

 

「わたしはリナの同位存在だよ? リナよりも沸点は高いけど、怒ったら結構乱暴になるのは自覚してるんだからね? わかった?」

『イ、イエス、マイ・マスター…』

「うみゅ。わかればよろしい」

 

ミーねえの口癖を真似て、そう締め括る。

 

「さて、ルビーのせいでちょっと脱線したけど、バーサーカーを何とかしないとね」

 

わたしは気持ちを切り替えて言った。

 

「それじゃあ、リナちゃんがさっきの攻撃の準備をしてる間、わたしが上級魔法で攻撃をするね。全部が効くかはわからないけど、いくつかは通ると思う。そしてリナちゃんは攻撃が終わったら、接続解除(アンインストール)してから攻撃に加わって。

青川くんは星見さんを守ってあげて。さすがにその銃じゃ、牽制にもならないと思うから」

「うん」

「わかった」

「悔しいけど、その通りね」

 

ミリィ、本当に悔しそうだなぁ。まあ、さっきから火力不足気味だったし、仕方が無いけど。

 

「それじゃあ、行くよ!」

 

そう言ってカナ大さんが駆け出した。それに反応して、バーサーカーも駆け出す。……って、見た目に反して速い!?

 

「『カースド・クリスタルプリズン』ッ!」

 

カナ大さんが強力な氷結魔術を放ち、バーサーカーは氷漬けにされた。そしてその目から、生気が失われる。

すごい。早速バーサーカーを1回殺してる。

だけどすぐに目に生気が戻り、閉じ込めていた氷を打ち砕いた。

 

「『インフェルノ』ッ!」

 

即座に放った火炎の魔法はだけど、バーサーカーには効果がない! バーサーカーの拳が唸り、カナ大さんはとっさに後ろに跳ぶけど、間に合わない!?

ドゴォ、という激しい音と共に、吹き飛ばされるカナ大さん。だけどカナ大さんは、両足でしっかりと着地した。そして同時に、複数の木の板が割れる音。カナ大さんは顔をしかめた。

……そうだ、ヒトガタ! きっとダメージを相殺しきれなくて、たくさんのヒトガタを消費しちゃったんだ。多分残りがもう少ないんだと思う。だから顔をしかめたんだ。

 

「……『カースド・ライトニング』ッ!」

 

それでもカナ大さんは気を取り直して、次の術を唱えた。降り注いだ黒い雷が、バーサーカーを撃つ。バーサーカーは黒焦げになって、がくりと膝をつく。

 

「カナ大さん!」

 

わたしが声をかけると、カナ大さんは大きく後ろへ飛び退いた。

 

神官魔術式・灰の花嫁(ヘカティック・グライアー)!!」

 

わたしは再び魔力砲を放ってから、すぐに接続解除(アンインストール)する。これで魔力の消費量よりも供給量の方が多くなった。

 

「ルビー、魔力増幅を常時開放状態にして」

『リナさん!? それは負担が…』

「わかってる。でも今は、無理しなきゃいけないときだよ!」

『……わかりました』

 

渋々答えるルビー。……心配してくれて、ありがと。

わたしはすぐに[混沌の言語(カオスワーズ)]を唱え。

 

獣王牙操弾(ゼラス・ブリット)!」

 

[力ある言葉]と共に術を放った。

 

 

 

 

 

その後もわたしの覇王雷撃陣(ダイナスト・ブラス)覇王氷河烈(ダイナスト・ブレス)、カナ大さんのライト・オブ・セイバーでダメージ()を与えて、更に。

 

暴爆呪(ブラスト・ボム)!」

 

ぎぎゃあああ!!

 

爆発系の精霊魔法を放った。これで八回目! これなら、あの術で倒せるかも!

 

「カナ大さん! 少しだけお願いします!」

 

わたしはそう言うと、次の[混沌の言語(カオスワーズ)]を唱える。リナさんの言いつけを破ることになるけど、この空間なら問題ないよね?

 

---黄昏よりも昏きもの

   血の流れより紅きもの

   時の流れに埋もれし

   偉大な汝の名において

   我ここに闇に誓わん

 

「ちょっと、それって竜破斬(ドラグ・スレイブ)!?」

「もうひとりの稲葉も使えんのかよ!?」

 

ミリィと慧くんが驚いてるけど、二人も竜破斬知ってる方が驚きだ。

 

---我らが前に立ち塞がりし

   すべての愚かなるものに

   我と汝が力もて

   等しく滅びを与えんことを!

 

わたしが呪文を唱え終わると。

 

「カナ大さん! さっき話してた、爆裂魔法とか言うのと同じ様な術がいくからっ!」

「大きく距離をとれっ!」

 

ミリィと慧くんが声を張り上げて注意を促すと、びっくりしたカナ大さんが慌てて距離をとった。って言うか、逃げ出した。

 

竜破斬(ドラグ・スレイブ)!!」

 

どぐわおおおおん!!

 

竜破斬の暴力的な爆焔がバーサーカーを襲う。これは[スィーフィード世界]の魔王の力を借りた術。今までの攻撃と違って、数回分の死のダメージが入ったはずだ!

けれど。爆焔が収まっていく中に、動く影。それが飛び出して、わたしの目の前に。その拳を振り上げて…。

わたしが記憶する中で、初めて感じる死の恐怖。体がすくんで動かない。

……え、うそ。わたし、こんな所で…?

その時。

 

パシュパシュッ!

 

そんな音がして。

 

「■■■■!?」

 

バーサーカーが目を押さえ。

 

「ハッ!」

 

短いかけ声と共に何かが視界を横切り、バーサーカーの眉間に突き刺さる。……あれは、黒鍵!!

バーサーカーはビクンと体を震わせると、そのまま後ろへと倒れて、最後は光となって消え、そこにはカードが1枚残されていた。

 

「この銃でも、役には立ったでしょ?」

「俺も、投擲の練習しといて良かったよ」

 

格好つけながら言うミリィに、安堵のため息を吐いて言う慧くん。わたしは腰が抜けてぺたりと座り込み、変な笑いが込み上げる。

それから少ししてから二人を見て、笑顔を浮かべて言った。

 

「助けてくれて、ありがとう」

 

って。

まだ、しばらくは起ち上がれそうにない。それでもバーサーカーは倒し、カードもカナ大さんが拾って、扉の鍵も開いてる。

わたしは心の中で願った。今度こそ誰かと合流できますように、って。




怒濤の三連戦。でも、この三体であるのには意味があります。
なお竜破斬は、バーサーカーの命を3つ削りました。残りはあとひとつ。惜しかったです。
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