「……やっぱり通じないみたい」
テレフォン・オーブとか言う、レグルス盤のオーブ版の様なアイテムを試していたプリヤが言った。むみゅう。そりはこまった。
多分あたし達は今、それぞれ別の空間に移動させられたんだと思う。そしてそれぞれの空間の隔たりのせいで、通信が届かなくなってるんだろう。
『結局、わたし達カレイドステッキ同様、通信手段を断たれてしまったということですねー。とにかく今は、どうにかしてこの空間を抜け出し、皆さんと合流することが第一ですねー』
ルビーの説明に、あたし達は頷いた。
……そう。あたし達。今はあたしとプリヤ、クロエ、クリス、ダクネスの5人だけ。ルビーを頭数に入れても6人だ。
それにしても、ここは一体…? 雪に覆われているとはいえ、この切り立った崖はどこかで見覚えがあるんだけど。
「ねえ。向こうの方に何か、ど●でもドアみたいな物が立ってるんだけど」
「どこで●ドア、とは何だ?」
「て言うか、よく見えるね?」
クロエの発言に、聞き返すダクネスと突っ込むクリス。いやまあ、あたしも両方、思ったけど。
「●こでもドアはわたしのいた世界の、ある物語に出てくる道具だよ。扉を開けると、開けた人が願った場所に繋がるっていう便利アイテムなんだ。
あと、クロは今、[アーチャー]をインストールしてるから。アーチャーの目は、遠くまで見通すことが出来るんだよ」
なるほど。カズマの千里眼の様なものか。決してガウリイの様な異常枠ではないと。と言うか。
「それじゃあひょっとすると、その扉を潜ればこの空間から脱出できるかも知んないわね」
「そうだな。そもそもこの空間へも、門を潜ってやって来たんだ。可能性としては充分だろう」
あたしの思いつきに、ダクネスも同意する。が、クリスは少し思案顔だ。
「でも、それだと少し、簡単過ぎない? こういうのってさ、何か試練を乗り越えるっていうのがお約束みたいなところがあるでしょ?」
『そうですよねー。それに、もうひとりのクロさんが言っていた、おもてなしの件もあります』
「あ、そうだった」
そうなんだよなー。そもそも、そんなあっさりとこの空間から脱出出来るのなら、わざわざあたし達を分断した意味が無い。
「……ねえ。扉の近くに人影が見えるんだけど」
「人影?」
あたしが聞き返すと、クロエは小さく頷いてから続きを話し出す。
「長く伸ばした赤毛の大柄な男の人で、厳ついけど野性的なかっこよさがある顔立ち、大きな剣を携えてるわ。……え? こっちを見て、気が、ついた? っな! 消えた!? 転移魔じゅ…違う! あれって空間渡り!?」
空間渡り!? それってまさか…!
「正解だよ、嬢ちゃん?」
突然、あたし達の後ろからかけられた声。それは聞き覚えのある、けれどそうであって欲しくない声。ゆっくりと振り返り目にした人物は、だけどやはり、想像どおりのあたしが知っている者だった。
「何で、あんたがここに居んのよ。……
そう。彼はここには居るはずのない人物。何故なら。
「どうして…。魔竜王は冥王にとどめを刺されたはずだよ…?」
「ほう? 白い方の嬢ちゃんも、俺を知ってるみたいだな? まあ、それは後回しだ。
さて。久しぶりだな、リナ=インバース!」
あたしの名を呼ぶガーヴ。つまりこれは、あたしの知る魔竜王だということか。
「リナ、この男は一体…」
「こいつは魔竜王ガーヴ。あたしのいた世界の魔王、シャブラニグドゥが生み出した、五人の腹心のうちのひとり。つまり、魔王の直属の部下よ!」
ダクネスの疑問に答えると、ガーヴはハッと短く笑う。
「まあ、そういう事だ。で、だ。リナ=インバース、お前の疑問だが、ひとつは貴様へのリベンジだ」
「……リベンジって、相変わらず魔族らしくないわね」
まあ、彼の主である魔王、その七つに分かたれたうちのひとつはリベンジマッチを仕掛けてきたけど、あれは依り代の人格が影響していたのが原因である。……いや、まったく無関係でもないか。
「まあな。魔族は本来、仇討ちなんてウィットな感性は持ち合わせちゃいねえ。だが俺は、人の内に封印されていた魂が、何かのきっかけで封印にほころびが入り目覚めた存在。魔族ではあるが人の感情も持ち合わせている。……って、前にも説明しなかったか?」
そう。ガーヴもまた、人の部分が影響しているのだ。故に滅びよりも生を望み、魔王から離反した魔族。
「ねえ、『ひとつは』って言ってたわね? と言うことは他にも理由があるんじゃないの?」
「ほう。黒い方の嬢ちゃんもなかなか目鼻が効くな。ああ。もうひとつは、お前らにあの扉を使わせないこと。その理由は…わかってるよな?」
どうやらあの扉で、この空間から抜け出せるのは間違いないみたいね。
「せっかくこんな、おあつらえ向きな舞台まで用意してくれたんだ。お互い生き残りをかけようじゃねえか」
……おあつらえ向き? 舞台?
「やっぱりここって、リナと魔竜王が戦った、カタート山脈の
え? あっ! 言われてみたら確かに、[
「ちょっとイリヤ、何でそんなこと知ってるのよ?」
確かにクロエの言うとおりだ。イリヤ…プリヤも含んだ彼女達は、別の世界の住人なのに。
「わたしがミユの世界に跳ばされたとき、空間の狭間に嵌まって[スィーフィード世界]を覗き見てたって話、クロも聞いてたよね?」
「あ…、その時に…」
ふみゅ、よくわからんけど、あたしとガーヴとの戦いを見ていたって事だろう。
「おいおい、下らない話なんかしてないで、さっさとおっぱじめようぜ? お前らも、悠長にしてる時間なんか無いんじゃねえか?」
くっ、そのとおりだ。少しでも早く、みんなと合流しないと。でも、いきなり腹心クラスと戦闘を始めるには、準備が…。
「やれやれ、リナさん。この程度の相手に冷静さを欠くなんて、あなたらしくありませんねえ」
……なんでこいつは、いつも妙なタイミングで現れるんだ。
「てめえはゼロス!?」
そう。[ヴォルフィード世界]の天使と行動してるはずの、ゼロスが目の前に現れたのだ。
「ゼロスさん!? カナ…キャナルさんと一緒だったんじゃ…」
「それに、魔王の腹心相手にこの程度って…」
プリヤとクロエの質問に、ゼロスはにっこりと笑って答えた。
「僕達も別の空間に閉じ込められていたんですけど、敵を倒した途端に元々あった扉が三つに分かれてしまいまして。僕とキャナルさん、神名さんとで話し合った結果、おそらく後からやって来たあなた方が分断されて、それぞれそのどこかに繋がってるのだろうというという結論に達したのですよ。
それで僕とキャナルさん…と言うか神名さんは、それぞれ別の扉を潜り、僕はあなた方と合流した、というわけです」
……名前を言い直したって事は、そのキャナルって天使は納得してなかったって事ね。
「そしてこの程度というのは、この魔竜王さんは本物の魔竜王ではないということです。ですよね、魔竜王さん?」
本物じゃない? あたしが疑問に思ってると、ガーヴは苦笑いを浮かべて言った。
「ああ、そうだな。俺は本物の魔竜王ガーヴじゃない。リナ=インバース、お前ともうひとりのお前の記憶から再現された、いわば幻だ。
だが! 本物の俺であったとしても、おそらくお前にリベンジしていただろうし、俺自身が本物・偽物関係なく、魔竜王ガーヴであると認識してる。これに関しちゃどう思われようと、誰にも文句は言わせねえ!」
彼自身が認めているとおり、おそらく能力は本物には及ばないんだろう。だが、その気迫と共に発せられた瘴気はその様なことは関係なく、途轍もない力を感じさせた。
と。そんな相手に向かって駆け出した人物が。
「悪魔、死すべし!」
って、クリス!? しまった! 女神として、我慢が出来なくなったか!?
クリスは魔力の隠ったダガーで斬り付けようとするが、ガーヴは軽く体をひねり躱すと同時に、クリスの背中を軽くついて泳がせる。
「ほう? 貴様は邪魔だ」
まさか、クリスの正体に気づいた!? ガーヴは大剣を軽く振り下ろし。
「させるかっ!」
クリスの後を追っていたダクネスが間に割って入り、その剣を肩口で受け止めた。
「く…、いい攻撃だ」
……言ってることは格好いいが、その表情からドMを発動してるのが見てとれる。うむ、かろうじて体裁を保っているとは、何とか場の空気を読んでくれたようだ。
「ヒュウ。力が削がれているとはいえ、俺の剣を食らって傷ひとつ付かないとは。どんな魔法を使ってやがる?」
いえ。彼女は単に硬いだけです。
そんな僅かな間にもクリスは体勢を立て直し、再びガーヴに攻撃を仕掛けようとする。だが。
「
あたしが放った烈閃槍がその前を横切り、クリスはその場に踏みとどまる。
「ちょっと、リナ!? 一体何を…」
「クリス、一端冷静になりなさい。あなたがガーヴを倒したいのはわかるけど、それはあなたひとりですることじゃない。……違う?」
「そうだぞ、クリス。私やリナを…いや、プリヤやクロエも信じて、みんなで戦うべきだ」
「う、……ごめん」
あたしとダクネスに諭されて、クリスは短く謝った。
「僕は頭数に入ってないんですね」
『わたしも無視ですかー?』
「ゼロスはどうせ、見物するだけでしょーが!」
「ルビーはイリヤと契約してるんだし、どのみち魔術礼装なんだから問題無いでしょ」
あたしとクロエがツッコミを入れる。何かクロエってこういうところ、ちょっとあたしと似てるかも。
ええい、とにかく!
「ガーヴ。あなたの望みどおり、勝負を受けてあげるわ。まあ、こっちは全員でかからせて貰うけど、卑怯とか言わないでよ?」
「ああ、構わねえ。お互い生き残りを賭けて戦うんだ。卑怯とは言わねえよ」
本物のガーヴは、念のためにとあたしの命を狙うようなヤツだったが、それでも、あたしが生き残るために立ち向かったことは認めていた。どうやらあたしも、思っていた以上に
「じゃあ、いくわよ!
……黄昏よりも昏きもの
血の流れより紅きもの…」
「おいおい、いきなりそれかよ!?」
あたしが唱える呪文に、ガーヴは呆れたように言う。だが、こちらとて考えあっての事!
「ガーヴさんっ!」
「リナばっか意識してると、足を掬われるわよ!」
魔法少女になったプリヤとクロエがガーヴに襲いかかる。
「ハッ! 子供だろうと容赦はしねえ!」
そう言って横薙ぎに振るった剣を、クロエは瞬時に消えてガーヴの後ろに現れ、プリヤはステッキを盾にしてわざと後ろに弾かれた。その隙を突き、クロエが白と黒の双剣で背後から斬り付ける。
「ぐっ!? ちぃっ!」
舌打ちをしながらガーヴは、体を半回転させてクロを斬ろうとする。しかし、クロエは既に後ろへ大きく飛び退き距離をとっていた。……というか、ガーヴにダメージを入れた? クロエのあの双剣、結構な魔法剣なの?
「
「なっ!?」
ぎゃいいいん!
「……我と汝が力もて
等しく滅びを与えんことを!」
そんなやり取り間に、あたしは術を完成させた!
「
どぐわおおおおおおん!!
絶対的な破滅がガーヴを襲う!
「すごい…。まるで、めぐみんの爆裂魔法みたい…」
呟くクリス。因みにカズマ…B作が言うには、めぐみんの方がパチもんだそうな。
やがて、爆煙が晴れてゆき。
「ふう。さすがに今の俺じゃ発動は抑えられないが、それでも来るのがわかってりゃ、これくらいは充分に耐えられるぜ?」
やっぱり。プリヤの攻撃を弾いていたことから、ダメージが無いって事はないだろうけど、それでもドラスレの2、3発くらいでは倒せないということか。……でも。
「みんな! 今のガーヴは高位魔族クラス! 絶対に侮れない相手だけど、決して倒せない敵じゃないわ!」
そう。あたしが放った竜破斬は単純な攻撃の為などではなく、今のガーヴが魔族としてどの程度の実力があるかを測るためのものだったのだ。ついでにクロエとプリヤの攻撃のお陰で、よりその能力を見極められたのにも助けられた。おそらく今の彼は、彼が生み出した部下、竜神官や竜将軍と同じくらいの強さだろう。
「ハッ! まさか魔王の術で実力を測ったのかよ! 相変わらず侮れねえじゃねえか!」
そう言いつつも、楽しそうな表情のガーヴ。そちらこそ相変わらずの戦闘狂だ。
それから、あたしやプリヤ、クロエが攻撃を仕掛けている…のだけど。
「
「ぬるいっ!」
ばぢゃあああ!
「
「小賢しい!」
ばきゃああん!
ガーヴはプリヤの魔力斬撃を、腕に魔力を纏い軽く一振りして相殺し、その隙を突いたはずの、クロエの矢による攻撃を剣の一振りで叩き斬った、そのタイミングで。
「
覇王の力を借りた魔法を放つのと。
ヒュウ…
ガーヴが口笛の様なものを吹いたのが被り。あたしの術は発動しなかった。
「魔王は無理でも、元同僚の術くらいなら防げるぜ?」
ちっ、面倒な。この様にさっきから、ガーヴに決定的なダメージを与えられずにいるのだ。……でも、さすがに少しばかり油断してくれたみたいね。
ざっ!
「ぐっ!?」
「アタシの事、忘れて貰っちゃ困るよっ!」
《潜伏》を使って背後からダガーを突き立てたクリスが、すぐさま距離をとりながらに言う。
「それで逃げたつもりか!」
ガーヴが剣を振ると同時に、魔力が斬撃となって放出される。先程のプリヤの技と同質のものだが、威力は桁違いのハズ!
「クリス!」
再びダクネスが間に割って入り、クリスを庇って背中で斬撃を食らう。
「……くふっ! いい。いいぞぉっ!」
……あ。もう化けの皮が剥がれた。
「さあ!貴様の劣情を込めたその斬撃、もっと私に撃ち込んでこいっ!!」
「な、何言ってんだ!?」
くるりと振り返り、上気した顔でとんでもないことを口走るダクネスに、今まで見たこと無いほど戸惑った表情のガーヴは、それでも斬撃を連発で放つ。
「ああっ! いいっ!! もっと! もっとだああああ!!」
「き、きちぃ…」
ガーヴが、どこぞのデュラハンの様なセリフを吐いているが、まあ、気持ちもわからなくはない。
「ねえ、リナ」
と。そのコントの様な状況を利用して、クロエが近づいて来て声をかけた。
「ちょっと相談があるんだけど」
そう言ってクイクイと指を曲げる仕草をする。あたしが少し腰を落としてクロエの口元に耳を近づけると、彼女は囁くように言った。
……え? いや、でもそれが本当なら、その手に乗ってみるのも悪くはない。
あたしは無言のまま、クロエに向かってサムズアップで了解の意を示した。
「プリヤ! たたみかけるわよ!」
「うん! クラスカード[キャスター]、
あたしに応えたプリヤが再び、シルフィールの衣装を纏う。そして。
---黄昏よりも昏きもの
血の流れより紅きもの…
「何? テメェもそれが使えるのか!?」
気がついたガーヴがプリヤに攻撃しようとする。が。
---四界の闇を統べる王
汝の欠片の縁に従い
汝ら
我に更なる力を与えよ!
「な、魔力増幅!? ……まさか!?」
あたしの魔力増幅の詠唱に気をとられるガーヴ。そう、そのまさかだ。
---
凍れる黒き 虚ろの刃よ…
あたしは神滅斬の詠唱を始める。一方。
---我らが前に立ち塞がりし
全ての愚かなるものに…
「ちぃっ!まずは貴様からだっ!」
竜破斬の詠唱を続けるプリヤに向かって駆け出すガーヴ。だが。
「行かせるわけないでしょっ!」
転移とかいう術でガーヴの前に現れたクロエが、双剣を振り抜く。それを躱すために一歩引いたところで、再びクロエが転移して。
「
プリヤが術を放った!
「ぐおおおおおおおっ!!」
ガーヴが雄叫びをあげると、竜破斬の爆焔が弾かれた。とはいえダメージはあったのだろう、やや肩が上下している。あたしはその懐へと入り込み、[力ある言葉]を解き放つ!
「
「食ら…うかああっ!」
ガーヴは無理矢理身体を後ろへと移動して、辛うじて虚無の刃を躱しきった。彼は剣を振り上げ。
「俺の、勝ちだっ!」
「いいえ。あなたの負けよ」
あたしが言い返す。直後。
「
ガーヴの後ろから聞こえる、クロエの短い詠唱。そして。
ざしゃああ!
「がああああ!?」
背後から体を上下に断ち切られるガーヴ。クロエの手に握られていたのは。
「
地に伏し、斬られた場所から徐々に消えてゆく中、ガーヴはクロエが手にする剣を見て驚愕した。
「ええ。わたしが投影した贋作でランクも落ちるけど、あなたを倒すには充分だったみたいね」
そう。クロエが扱う投影魔術。正しくは、クロエが扱うカードの英霊の魔術らしいが、その能力は頭抜けたもの。曰く、神造兵器以外の剣にまつわる武器なら、ランクが一段階落ちるものの、完全にその能力をコピー出来るそうだ。
その説明と共に斬妖剣の投影を聞かされたときは魂消たが、お陰でガーヴを出し抜くことが出来たというわけだ。
「ハ…、まさか、アレの術が…、囮だった…とは…なぁ…」
徐々に言葉から覇気が失われてゆく。
「だが、まあ…、
あの時。前世でガーヴと対峙したときは、いきなり現れた冥王の横槍によって彼は倒された。
このガーヴはあたしとリナ子の記憶から再現された存在だが、同時に、あたし達の想いも投影されているということ。つまり、生き残れたことは別として、あたしも冥王の横槍に腹が立っていたのだろう。
「……楽し…かったぜ…、リナ……インバース……」
「あたしはもう、こりごりよ」
「ハハ……、つれ……ねえ…なあ……」
それを最後に、ガーヴは完全に消滅した。
遠くからカチャリという音が聞こえる。
「どうやら扉の鍵が開いたようですね」
あたしが指摘したとおり、今まで傍観を決め込んでいたゼロスが言った。
「この世界の創造主が余程のひねくれ者でなければ、扉を潜れば本来の空間に出られると思いますよ?」
「本来って言っても、固有結界…だっけ? その中なのは変わらないけどね」
あたしにとっての本来の空間は、あたしのいたあのヘンテコな世界だ。決して固有結界の中ではない。
「ところでクリスさんは、どうしてゼロスさんからそんなに離れてるの?」
「……これ以上近づいたら、絶対斬りつけに行っちゃうから」
「ええっ!?」
クリスの返答に驚くプリヤ。まあ、答えがまるで殺人鬼の様だから、当然っちゃ当然だが。
「クリスは私以上に敬虔なエリス教徒だからな。エリス教、そしてアクシズ教の教義には、『悪魔死すべし』というのがあるから仕方がないんだ」
「……本当は今すぐ滅ぼしたいのを、一応仲間らしいから、滅茶苦茶我慢してるんだからねっ!」
「……あー、なるほどー」
をや? プリヤの返事が妙に空々しいような? あ。もしかしてこの城に来る途中、円陣組んでしてた内緒話って、クリスの正体についてか? なるほど、それならあの時の驚き様も納得がいく。
「厳密には、そちらの世界の悪魔とは違うんですけどね」
「うるさい黙れ、話しかけるな」
あーこりゃ、マジでやばそうね。
「ほらクリス、どっかの天使だって我慢してたんだから。さあ、さっさと扉を潜りましょ」
「あ、ちょっとリナ!?」
あたしはクリスの背中を押して扉へと向かう。とりあえずアクアの近くなら、正体バレしたくないだろーから、もう少し大人しくなるだろう。悪魔が絡むと、若干知能指数が低下するっぽいのが不安ではあるけど。
「じゃあ、行くわよ」
扉の前までやって来ると、あたしはドアノブを掴んでみんなに促し、思い切って押し開けるのだった。
因みに、ゼロス・キャナル(神名)組の扉は3つに分かれましたが、その中に前話の空間は含まれていません。
つまり後二組あって、残り二枚はそれぞれそのどちらかと繋がっています。
あと斬妖剣についてですが、ガウリイが現在手にしているものは天界で再現されたために準神造武器ですが、リナ(リナ子)の所持しているものは[スィーフィード世界]製で、【スレイヤーズすぴりっと。】を読むかぎりエルフが創り上げた一品らしいので、クロは投影できました。