このカレイドなスレイヤーズに祝福を!   作:猿野ただすみ

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「ドラまたを!」パートです。


出逢いB(前編)

~リナ=インバース~

ううみゅ。これは一体、どういうことだろうか。

 

 

 

 

 

紅魔の里から帰ってきてから一週間後。あたし、リナ=インバースはガウリイと一緒に、シルフィール及びカズマのパーティーと合同で、石龍(せきりゅう)というモンスターの調査、場合によっては討伐というクエストに来ていた。

そして森の中を進むあたし達の前に現れたのは。

 

「なあぁっ! 何でこんなとこにゴブリンの群れが現れんのよおぉ!?」

「カズマ! 撃っていいですか? 撃っていいですか!?」

「ばかやろう! こんなとこで無駄玉撃とうとしてんじゃねぇ!」

「さあ来い、モンスターども! 貴様らの攻撃は全て、この私が受け止めてやろう!」

 

うん。カズマんトコは平常運転だ。取りあえずはあたしが。

 

氷窟蔦(ヴァン・レイル)!」

「ギャッ!?」

 

地面に触れた掌を起点に、氷の糸が蔦の伸びるように広がっていき、それに触れた多くのゴブリン達が氷漬けになっていく。

 

「ハァッ!」

炎の矢(フレア・アロー)!」

「『ファイアボール』!」

 

ガウリイが取りこぼしたゴブリンを切り伏せていき、シルフィールとゆんゆんが火属性の魔法で、氷漬けのゴブリンを倒していく。

そして間もなく、ゴブリン達を全て片付け。

 

「ま、こんなもんでしょ」

 

あたしは右手を腰に当てて言った。

 

 

 

 

 

「はぁ…、ホント、リナ達がいてくれて助かったよ」

 

ため息を吐いたカズマが、しみじみと言う。いや、しかし。

 

「別にあたし達がいなくたって、アンタらなら充分倒せたと思うけどね?」

「そうだぞ、カズマ。お前達なら、ゴブリン相手でも問題ないと思うぞ」

 

ガウリイもあたしの意見に合わせてくる。

 

「いや、まあ…。そこまで評価してくれるのは有難いけど、それ以前にアイツらをまとめ上げるのが、なあ…」

 

まあ、カズマの言い分もわからなくはない。確かに、あの三人をまとめ上げるのは大変だろう。でも同時に、あの三人を上手くまとめ上げられるのはカズマしかいない。あたしはそう思っているのだ。

 

「カズマカズマ!」

「はい、カズマです」

「石龍が現れたら、取りあえず撃ってみてもいいですか、爆裂魔法」

「いや待て、まずは調査が先だろ。討伐が可能だったら俺たちが石龍の力を殺ぐから、それまでは待機だ! わかったな!?」

「む…、仕方がありませんね」

 

ほら、やっぱり。カズマ相手だとめぐみんは、そしてダクネスも、それなりに言う事を聞いてくれる。カズマはそれだけ、みんなとの信頼を築き上げているのだ。

最も、築き上げたのは「信頼」だけじゃないのかもしんないけど?

 

「めぐみんさんって、やっぱりカズマさんに…?」

「シルフィールもそう思う?」

 

やっぱりシルフィールも気づいてたか。

どうやらめぐみんは、カズマに気があるみたいなのだ。

 

「なあ…、なにがやっぱりなんだ?」

 

あたし達の会話の意味がわからないガウリイが、口を挟んできた。

 

「あんたには関係ないわよ」

「ガウリイさま。女性同士の会話には、秘密が一杯なんですよ?」

 

あたしの素っ気ない返しに続いて、シルフィールが口元に人差し指を当て、ウインクしながら応える。

 

「……そーいうもんなのか?」

「「そういうものなの(なんです)!」」

 

あたし達は声を揃え、ガウリイに向かってキッパリと言い放った。

 

 

 

 

 

「それにしても、石龍とは一体どのようなモンスターなのだろうか?」

「それがわからないから、今向かってんじゃない。……まあ目撃情報だと、全身岩で出来た巨大なドラゴンだって話だけど」

 

ダクネスの呟きに答えるあたし。この情報は、別のクエストでやって来ていたパーティーが、偶然目撃したのが始まりらしい。その後も二つの目撃情報が寄せられ出されたクエストを、シルフィールとゆんゆんのパーティーが受けて、あたし達とカズマのパーティーが力を貸すことになったんだけど。

 

「そーいやシルフィール。聞いてなかったけど、何であたし達の力を借りてまで、このクエストを受けようと思ったの?」

「リナさん。『岩で出来たドラゴン』って聞いて、何か思い浮かべませんか?」

「何か、って…」

 

……ん? おや? 岩で出来た…?

 

「……まさか、()()()()技法で作られたゴーレムとか言うんじゃないでしょうね?」

「さすがリナさんですね。私もそれを思い浮かべました」

「おい! それって、霊呪法(ヴ=ヴライマ)石霊呪(ヴ=レイワー)の事か!?」

 

あたし達の会話に、カズマが割って入ってきた。

 

「カズマさんはご存じなんですか?」

 

シルフィールが驚きの表情を浮かべる。って、そーいやシルフィールは知らなかったんだっけ。

あたしはシルフィールに、小声で説明する。

 

「(カズマが、他の世界から転生してきたのは知ってるわね? 彼の居た世界では、あたし達の活躍が物語として存在してるそうよ?)」

「(え? 本当ですか、それ)」

「(本当みたいよ? 知り合いの、別の転生者も知ってたから)」

「(そうなんですか…)」

 

シルフィールが複雑な表情を浮かべる。

 

「あの、二人でなにをお話してるんですか?」

「ん、ああ。もしかしたら石龍の正体、あたし達が使う魔法で創られたゴーレムじゃないかって話よ」

 

ゆんゆんの疑問に答えると、今度はめぐみんが口を開く。

 

「そういえばリナ達は、別の世界から来た、と言うことでしたね。

……確かに、紅魔の里復興の際にリナが作り上げたゴーレムは、我々が扱うものとはどこか違ってました」

 

さすがめぐみん、見るとこはちゃんと見ている。ってゆーか。

 

「めぐみんには扱えないでしょ? 爆裂魔法一択なんだから」

「そういう上げ足取りは、要りませんから…」

 

めぐみんが拗ねて、プイと横を向く。うむ、カワイイぞ、めぐみん。

そんな会話をしながら歩いていると、突然視界が開け、ちょっとした断崖の上に出た。

 

「……それほど深くはないか。だが、足場は脆いみたいだな」

 

ダクネスの意見に頷くあたし。確かに縁の断面も、風雨に晒されていない真新しいものが多く見受けられる。

 

「こんな所で石龍と出会ったら、ひとたまりもありませんね」

 

なっ!?

 

「おいこらめぐみん! そんなフラグになるようなこと、言ってんじゃねぇっ!!」

 

カズマが叫ぶ! あたしも言ってやりたい、が!

 

ズズゥ……ン………

 

地響きが聞こえる。

 

「ねえ、カズマ。私、すごくイヤな予感がするんですけどー?」

「きき、奇遇だな。俺もそんな気がしてた所だ。

おいアクア、晩飯奢ってやるからちょっと見てこい」

「私が奢ってあげるから、カズマさんが見てきなさいな」

 

……ったく、この二人は。

そんなことやってる間に、森の中から岩で出来たドラゴンが現れた。実際は巨大というイメージほどではなく、森の木々を越えない程度のサイズで納まっている。

そして一目見て気がついた。あれはまさしく、魔法で創られたロックゴーレムだという事を。……いや、だって、あんな左右のバランスが崩れた生物がいるとは思えないし。よくあんなで動き回れるもんだ。

そしてふと、既視感を感じる。前にもこんなの、見たことあるよーな。

ほんのわずか。考え込んでしまったのがいけなかった。想像よりも小さいとはいえ、石龍は全身岩で出来ている。もちろんその重量はかなりのもの。そんなのが断崖に近づけば、それこそめぐみんが言ったとおり…。

 

びききぃぃ!

 

亀裂の入る音が響き、そして。

 

ぼごぉっ

どがらしゃあぁぁ!

 

「うきゃああああああっ!!」

「やっぱりこうなるのかよおぉ!?」

 

あたし達は断崖へと飲み込まれていった。

 

 

 

 

 

そして次の瞬間、あたしは雪が降り積もる平原に立っていた。途方に暮れて当然だろう。

 

「……えっ、あれ? 俺達、崖から落ちたんじゃ…」

 

隣には何故か、カズマがいる。そして、他のメンバーの姿は見えない。

 

「なんかわからないけど、どこかに飛ばされたみたいね?」

「どこかって…。まあいいけど、こういう景色見てると冬将軍思い出して嫌なんだが」

 

あー、あれは確かにトラウマになるわね。

 

「んー、取りあえず、あそこに見える林まで行ってみない?」

「ああ、そうだな。もしかしたら誰かに会えるかも知れないしな。……俺達だけなら、運だって良いし」

 

そう、あたし達は非常に運がいい。特にカズマは、アクセルの街のギルド内で二番目に運がいいと、この間ルナさんに聞いたばかりだ。因みに一番はクリスだという。うむ、さもありなん。

そんなわけであたし達は、林に向かって歩いていく。……どうでもいいけど、カズマと二人きりで行動するのも何だか新鮮ね。大概カズマの周りには誰かがいるし、今じゃあたしも、ガウリイと行動してるからね。

そんなことを考えていると。

 

……ズウゥゥン

 

そんな音と共に、林の中から雪煙が上がるのが遠目でもわかった。

 

「カズマ! ()()()()あたしに掴まって!」

「お、おお…」

 

カズマは頷いて、少し顔を赤く染めながら、恐る恐るあたしの腰に手を回す。……おいこら、いつものクズマでゲスマで鬼畜のカズマはどうした? そんな態度とられると、こっちまで恥ずかしくなってくるじゃないのっ!

くっ、と、とにかくっ!

 

---四界の闇を統べる王

   汝の欠片の縁に従い

   汝らすべての力もて

   我にさらなる力を与えよ

 

あたしは[魔血玉(デモン・ブラッド)]の力を借りた魔力増幅の呪文を唱え、さらに目的の呪文を唱える。

 

翔封界(レイ・ウィング)!」

 

[力ある言葉]と共に、あたしはカズマを伴い飛び立った。

 

 

 

 

 

林に近づき見えてきたのは。

 

「あれはさっきの石龍じゃねえか!」

 

そう、あの石龍が林の中で暴れまくっているのだ。しかも、なんか誰かが戦ってるみたいだし。……ううみゅ、さすがにこのままってワケにはいかないわね。

 

「カズマ、降りるわよ!」

「降りる、……って、あれと戦う気かよ!?」

「誰かいるみたいだし、このまま放置ってワケにもいかないでしょ!」

 

あたしの言葉に、カズマは少し悩んでから。

 

「ったくもう、しょうがねぇな!」

 

まったく、コイツは…。でも、カズマのこういう所は嫌いじゃない。

あたしは石龍から少し離れたところに降り、術を解除した。

 

「まずは石龍と戦ってる人と接触するわよ!」

「おう!」

 

あたし達は石龍に気づかれないように近づいていく。すると。

 

「『ワイヤートルネード』!」

 

そんな声が聞こえてきた、……んだけど、この声って。

 

ざしゃああ!

 

その疑問は、瞬時に解決した。

 

「「クリス!?」」

 

そう、あたし達の前に躍り出たその人物は、顔見知りの少女。その名をクリスと言い、盗賊職の冒険者である。……だが。

 

「えっ、カズマくん!? あと、貴女は誰?」

 

はい? なに言ってんの、この子? いや、でも、この表情は冗談を言ってる雰囲気でもなさそうだし。

ええい、とにかく今は、石龍が先だ!

 

「カズマ! しばらく石龍の気を逸らして!」

「わかった! 『狙撃』ッ! そして『潜伏』…」

 

カズマが背負っていた弓に矢を番え、石龍を射る。もちろん矢は岩の体に弾かれるが、あたし達から石龍の気を逸らすことには成功した。その間にあたしは、クリスに話しかける。

 

「クリス、細かい話は後よ。少しの間でいいから石龍…、あの岩のドラゴンの動きを止めて。その間にあたしが、あれをどうにかするから」

「よくわかんないけど、わかった! それじゃあ、『バインド』!」

 

クリスの『バインド』が石龍の両足を縛り上げる。ミチッと縄に負荷がかかる音がするが、金属を編み込んであるのか、今んとこ切れる様子はない。

よし、今のうちに。

あたしは再び魔力の増幅呪文を唱え、引き続き[混沌の言語(カオスワーズ)]を紡ぎ、そして最後に、[力ある言葉]を唱える!

 

暴爆呪(ブラスト・ボム)!」

 

ぎぎゃああああ!

 

複数の光球を石龍へと放つ。その光球が爆炎を撒き散らし、耳を劈くような激しい音と共に、石龍は跡形も無く消し飛んだ!

 

「なっ、こんな魔法、見たこともないんだけど…?」

 

クリスのその呟きを聞いて、あたしは確信する。

 

「クリス。アンタやっぱり、あたしの知ってるクリスじゃ…」

 

あたしがそう、言い切る前だった。聞きたくもない()()が聞こえたのは。

 

「おーほっほっほっほ! どこの誰かは知らないけれど、ゴーレムを倒したくらいでいい気にならない事ね!」

 

あーっ、聞きたくない聞きたくない! 何で、何であれがいるのよおおおおおお!

あたしは、心の中で絶叫した。




ついに出ます。一見悪の魔道士風の、その実金魚のうんちさんが。
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