このカレイドなスレイヤーズに祝福を!   作:猿野ただすみ

4 / 20
出逢いB(後編)

~リナ=インバース~

林の中に、突如響いた声。あたしは気配を探り。……そこッ!

 

火炎球(ファイアー・ボール)!!」

 

ちゅごーん!

 

「わきゃっ!?」

 

爆音と共に小さく悲鳴が上がる。

 

「えっ! ちょ、ちょっと!?」

 

クリスがうろたえてるけど、そんなのは気にしない。だってアレは。

 

「ちょっと! いきなり攻撃を仕掛けるなんて、何を考えてるのよっ!」

 

うん。やっぱ無事だった。ちらりとクリスを見ると、目を丸くして驚いてる。そして。

 

「……ダクネスの親戚?」

 

……言いたいことはわかるけど、ある意味ダクネスより面倒くさいから。

 

「私を無視するんじゃ、……て、あら? あなた、リナじゃないの」

「よーやく気づいたみたいね、……ナーガ?」

 

姿を現したナーガに、あたしは小さくため息を吐いてから言った。

白蛇(サーペント)のナーガ。あたしが元いた世界で、ガウリイと出会うより前にあたしの周りをうろちょろしていた自称あたしのライバルで、その実態は単なる金魚のうんちだ。

 

「……えっと、なに? 悪の女魔法使い?」

 

ナーガの姿を見てクリスが言う。

まあ、その疑問も当然だろう。何しろその格好は、黒のビキニに棘突きのショルダーガード、黒のマントにドクロのネックレス。うみゅ、どう見ても悪役としか思えない。

 

「あぁら、このセンスがわからないなんて、あなたもリナ同様まだまだお子様のようねぇ」

「……そのセンスを理解するくらいなら、お子様のままでいいです」

 

クリスが頬を掻きながら言った。うん。というか、そんなセンスがわかる大人も、なんかやだ。

 

「ところでカズマ、いつまで隠れてんのかしら?」

 

あたしが声をかけると、[潜伏]を解いたカズマがおっかなびっくり、けれど視線は、ナーガの大きな胸元から外さないまま現れた。

 

「さすがはゲスマねー」

「うん。クズマくんらしいね」

「うぉおい、その呼び方はやめろ! というか、男ならしょうがねえだろ!」

 

あたしとクリスが冷ややかな視線を送ると、カズマが慌てて言い訳を始める。

 

「でも、つい視線がそっちいくってんなら、しょうが無いけど…」

「カズマくん、ガン見してるよね?」

「……すんませんでしたぁ!」

 

カズマは、土下座して謝った。よし、あたしらの勝ち!

……とまあ、カズマをからかうのはこれくらいにして。

 

「ところでナーガ。アンタ、ゴーレムなんか呼び出して何してたのよ?

……てかアンタも、エリスに頼まれて転生してたの?」

「えっ、ア…、エ、エリス様?」

 

しどろもどろになって尋ねるクリス。けど、今は無視。

 

「そうよ。しばらくは色々と理由をつけてくつろいでいたけど、リナやあなたの仲間が転生していったから、私も重い腰を上げたってわけ」

 

いや、重い腰を上げるって、自分に言う事じゃないと思うんだけど。

 

「……で? あのゴーレムは?」

「頼まれたのよ」

「頼まれた?」

 

何だか、わかりたくないけど、わかった気がする。ちらりと二人を見ると、クリスはキョトンとしてるけど、カズマの方は苦り切った顔をしていた。

 

「仕事の邪魔をする連中が時々いるから、追っ払って欲しいって言われたのよ」

「ほう…? で? 邪魔する連中の名前って、聞いてるのかしら?」

「もちろんよ。[白い悪魔]とか[盗賊殺し(ロバーズ・キラー)]と…か……」

 

盗賊殺し(ロバーズ・キラー)]と口に出した途端、尻すぼみになっていくその言葉。一拍おいて。

 

「「アホかあああああッ!!」」

 

あたしとカズマは同時にツッコミを入れた。

 

 

 

 

 

「えーっと、それで結局、貴女は誰さん?」

 

ナーガをスリッパで引っぱたき、とりあえず気が晴れたところでクリスが尋ねてくる。そーいやさっき、話の途中でナーガに邪魔されたんだったっけ。

 

「何言ってんだよクリス。リナは…」

「ちょい待ち、カズマ」

 

あたしはカズマを制してから、クリスに向き直る。

 

「クリス。アンタ、魔族って知ってる?」

 

あたしが尋ねると、軽く小首を傾げてから口を開く。

 

「悪魔やそれに類するモノなんかを魔族って言ったりもするけど、貴女…、リナが言ってるのってそういう種族って事だよね? だったらアタシは知らないよ」

 

ふむ。やっぱり間違いないようだ。

 

「どうやら、あたしたちとクリスは、それぞれ別の世界の住人みたいね」

「「えっ!?」」

 

あたしの推測に驚く二人。

 

「それってまさか、並行世界ってヤツか!?」

「へっ、へいこうせかい?」

 

カズマの言う[へいこうせかい]ってのはよくわかんないけど、何か心当たりがあるみたいだ。

……って、クリス? 何だか真剣な表情をしてるけど、ひょっとして[へいこうせかい]を知ってる?

 

「カズマ、[へいこうせかい]って?」

「あー、そうだな。簡潔に言えば可能性の世界。頭の悪い言い方をすれば、似てるけどちょっとだけ違う世界ってとこか。

確かお互いの世界は並行していて、交わることがないから[並行世界]って言う、……んだったと思うけど、そこら辺はハッキリ言ってうろ覚えだ」

 

ああ、なるほど。確かにあたしが思ってたのも、別の世界があって、でもそこにも、めぐみんやダクネス、ルナさんやテイラー達、そして転生者達やクリスがいて生活を営んでいる。そういったイメージだった。並行世界か…。

……ん、クリス? なんだろ。随分と考え込んでるけど。

 

「どうしたのよクリス。何か気になることでもあったの?」

「ん?ああ、そうだね。キミとカズマくんが言ってたことはなるほどと思うんだけど、アタシ達がここに来た理由はなんだろうなって思ってね」

「あたし達が来た理由…?」

 

それってどういう…。

 

「……ってまさか!?」

「まさかってなんだよ?」

「……ここが、元いたのとは全然別の世界かもしんないって事!」

「なんだって!?」

 

普通じゃ突拍子もないことだけど、あたしとカズマはそれぞれ別の世界からあの世界に来たのだ。それなら、さらに別の世界があったっておかしくはないだろう。

 

「とりあえず、辺りを探索してみましょうか。カズマはナーガと…、ってナーガがいない!?」

「ええっ!?」

 

気がつけばナーガは、忽然と姿を消していた。道理で大人しいと思った。

 

「ねえ、そのナーガって人、捜した方が良いんじゃないかな? キミの友達なんでしょう?」

「あんなの、友達じゃない。ただの金魚のうんち、腐れ縁よ!」

 

キッパリと言い放つあたしに、返す言葉もないクリス。一方、ナーガとの関係を知ってるカズマは()もありなん、という表情であたしを見ている。

 

「ま、ナーガのことだから、そのうちどっかから、ひょっこりと顔を出すでしょ」

「……いいのかなぁ」

「いーのいーの」

 

手をパタパタと振りながら言うあたし。そもそも、ナーガと一緒に行動したら、ひたすら厄介なことに巻き込まれそうな気がするし。味方につけると心細いが、敵に回すと面白い。そーいうヤツなのだ、ナーガは。

 

「えーと、そういうわけで、カズマは一人で探索お願い。クリスはあたしと一緒よ」

「ちょっと待て。何で俺とクリスじゃダメなんだよ。リナは強いんだし、一人で探索出来るだろ?」

 

確かに。言っちゃあなんだが、あたしはこの三人の中でなら、条件付きながら一番強いと自負している。だけど、あたしはクリスと一緒でなければならないのだ。

 

「だって、カズマと一緒にしたら、クリスがどんなセクハラを受けるかわからないじゃない」

「あのなあ、リナの中で俺は、どんなゲス男なんだよ!」

「ぱんつ脱がせ魔」

「ぐはッ!?」

 

あたしの口撃にダメージを受けるカズマ。クリスはそっぽを向き、一筋の汗を流しつつ頬を掻く。やっぱりあの噂の出所はクリスだったか。

 

「まあ、半分は冗談だけど」

「……半分は本気なんだな」

「当たり前でしょ? 心当たりが無いなんて言わせないからね!」

 

ぴしゃりと言うと、カズマも視線を逸らして跋の悪い表情になる。

 

「そんなわけだから、はいこれ」

 

あたしはカズマに、二枚の円形のチップを握らせる。

 

「おい。これってまさか、レグルス盤か?」

 

さすがカズマは、あたし達のことを知ってるだけあって察しがいい。

 

「ええ。アリアがひょいざぶろーさんを通して、ウィズのお店に卸してるものよ」

 

アリアはかつての世界で出会った魔道士の子で、ある事件で自らの命を対価にして、あたし達に勝機を与えてくれた。

その後、数少ないこちらからの転生者として、あたしが今いるあの世界へ、お姉さんのベルさんと共にやって来た、ということだ。

 

『今じゃ私は、おばあちゃんですけどね』

 

そんなこと言ってたけど、あたしは再会できて、ホントに嬉しかったものだ。

 

「そうか。じゃあこれで連絡を取り合えばいいんだな?」

「そういうこと。起動の呪文は

『吹き直ぐ風よ

此方より彼方まで

我が声を伝え給え』

よ」

 

あたしは送信用のチップに呪文を唱えて、実践してみせる。カズマは、受信用のチップからあたしの声が流れるのを聞いて感動していた。

 

「じゃあカズマ、そっちは頼んだわよ」

「おう、任された! 『潜伏』!」

 

カズマは返事をしてから、『潜伏』を唱えて、林の奥へと消えてった。

 

 

 

 

 

探索を始めて、しばらくののち。クリスが口を開く。

 

「それで、リナ。アタシに何の用?」

「……何の事?」

 

あたしはとぼけてみせるが、まあ、通用はしないだろうな。

 

「リナはわざと、カズマくんを遠ざけたでしょ? 多分、カズマくんに聞かせたくない話があるんだ。違う?」

 

やっぱり気づかれてたか。ま、そりゃそうだろう。

今回の振り分け、単独行動ならクリスがやってもいいんだし、最弱職のカズマを気心が知れたあたしが守るって形の方が、状況的にはしっくりとくるはずだ。

 

「その通りよ。彼にはまだ、貴女の正体を隠しておきたいからね」

 

あたしのセリフにクリスは、ぴくりと肩を震わせる。

 

「アタシの正体って、何の事?」

「別に隠す必要はないわよ。向こうのアンタとは、すでに折り合いがついてるから。ね、()()()!」

 

クリスはしばらく黙っていたが、やがて、ふぅ…、と息を吐く。

 

「……だからと言って、こちらの[クリス]が[エリス]であるとは限らないでしょう? 何故そうだと思ったのですか?」

 

纏う雰囲気が変わり、口調が女神(エリス)のそれになる。

 

「いや、だって、あたしが『エリスに転生』の話したら、アンタは『アタシ』って言いそうになってたじゃないの」

 

そう。あそこでしどろもどろなってたのは、なんてことは無い、ただ単に誤魔化すためだったってワケだ。

 

「他にもあるわよ? カズマが[並行世界]って口にしたとき、あたしは知らなかったのに、アンタは神妙な顔をしてた。それって、[並行世界]を知ってたって事よね?

いろんな世界の存在を知っている神様なら、[並行世界]を知ってたっておかしくはないでしょ?」

 

クリスは再び、ため息を吐く。

 

「……リナさん。本当に、よくそんなことが思いつきますね」

「あたし、得意なのよ。鋭い推理ってやつ」

 

まあガウリイには、「お前さんの鋭い推理は当てにならない」とか言われたけど。

 

「それで()()()()聞くけど、ここってやっぱり別の世界なワケ?」

 

そう。あたしはこれを確認したかった。しかしカズマがいると、それに答えられるクリスに疑問を持ってしまうだろう。だからカズマには悪いけど、理由をつけて追っ払ったのだ。

 

「ええ。ここは私の知る、どの世界でもありません」

 

……は?

 

「女神も知らないって、そんな世界もあるの?」

「はい。……と言うより、私の知る世界はそれほど多くはありません。

私が管理するあの世界以外では、後数か所知っているに過ぎませんから」

「そんなもんなの?」

「はい」

 

……なんか、ちょっと予想外なんだけど。

 

「……ただ、この世界はちょっと異質ですね。何というか、閉ざされているというか…。そう、まるで結界の中にいるような、そんな雰囲気がします」

「結界…」

 

一瞬、サイラーグで経験した魔王が創った世界を思い浮かべたけど、さすがにそれは無いと思いたい。

 

「こちらのカズマさんとイリヤさんが心配です。早くお二人と合流したい所なんですが…」

 

……ん? カズマと、……イリヤ?

 

「ねえ、イリヤって…」

 

クリスに尋ねようとした、その時。

 

どぐわおぉん!

 

遠くから聞こえる爆発音。

 

「あれは、爆裂魔法!?」

「きっと、めぐみんだわ!」

『リナ、聞こえたか!?』

 

カズマがレグルス盤を通して聞いてきた。

 

「もちろんよ。カズマ、一旦さっきの場所で落ち合いましょう」

『わかった!』

 

簡単な会話を終え、あたし達は来た道をとって返す。……めぐみん、無事でいなさいよ!




というわけで、「このカレイドの魔法少女に祝福を!」のクリスでした。
クリスの一人称が片仮名で「アタシ」になっているのは、先に書いた「ドラまたを!」でリナの一人称と区別するために行ったことを、そのまま引き継いでいるためです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。