このカレイドなスレイヤーズに祝福を!   作:猿野ただすみ

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やっぱり長め。


パラレル陰陽師

~神名~

わたし、黒神(くろかみ)神名(かな)は走っていた。目的地はイリヤさんの家か、もしくはエーデルフェルト邸。わたしと、私の中にいるキャナルは、そっちに大きな空間の歪みを感じた。

その歪みの大きさは以前、イリヤさん達が異空間に飛ばされた時にわたし達が感じたものと同等だった。

 

「ん?」

「神名?」

 

そんな様子を、青川くんと星見さんに見られてしまった。

これは、困ったなぁ。こんな事話したら、絶対二人とも首を突っ込もうとする。わたし達と関わったときがそうだったから。

足を止めたわたしが何とか言い訳を考えていると。

 

「また何か厄介事か?」

「神名ってわかりやすいからねー」

 

……どうやら、時既に遅し、だったみたいだ。仕方がないのでふたりに説明をする。

 

「ちょっと! それってまたリナ達が、厄介事に巻き込まれたって事じゃないの!?」

「えっと、そうと決まったわけじゃ…」

「いや、聞いた話じゃ二回も別の世界に行ってるんだろ。充分可能性はあるんじゃないか?」

 

……ホントのこと言うと、わたしもその可能性は考え付いてる。そもそもリナさんは異世界からの転生者だって話だし、イリヤさんも何かの魔術儀式の関係者だったみたいだから、何かしら魔術的な厄介事を引き寄せるものがあるのかも知れない。

 

「わたし達も一緒に行くよ!」

「今更仲間はずれになんかしないよな?」

 

う…。青川くんに言われると、どうしても断ることが出来ない。

 

(神名。それが惚れた弱みというものですよ)

(キャナルに言われたくないよ)

 

キャナルからのツッコミに、わたしはツッコミを返した。キャナルだって、聖名お兄ちゃんに弱いくせに…。

 

「黒神?」

「ふぇっ!? あ、ううん、なんでもない! えっと、着いてくるのはいいけど、ふたりとも無茶はしないでね?」

「「黒神(神名)が無茶をしなきゃ()!」」

 

……やっぱりこういう所は、ふたりに適わないな。

 

 

 

 

 

わたし達がエーデルフェルト邸の前まで来ると、門前にエーデルフェルトさんと遠坂さん、そして美遊さんのお兄さんの四郎さんが、何やら立ち話をしていた。ただ、それが世間話でないのはすぐにわかる。何故なら一帯に、人除けの結界が敷かれていたから。わたし達は異変の確認をするために向かっていたから、結界に抵抗できただけである。

 

「エーデルフェルトさん、何かあったんですか?」

「あなたは黒神神名(クロカミカナ)! ……どうやら異変に気付かれた様ですわね」

「ミリィと慧も一緒なのね」

 

エーデルフェルトさんと遠坂さんの疑問に、わたしは軽く成り行きを説明をする。

 

「そう…。(わたくし)達も、空間の揺らぎを感じてこちらに来てみたのですけど、門が開いた状態である事と、空間の歪みが感じ取れるだけで、その他は一切わかりませんの」

「ただ…、神名とキャナルが感じ取った感覚が正しいなら、()()何かの理由で、どこかの空間に飛ばされた可能性はあるわね」

 

やっぱり、魔術師の意見も同じみたいだ。

 

(神名)

 

キャナルがわたしに語りかける。うん、わかった。

すると、わたしとキャナルの意識が入れ替わる。

 

「キャナル」

 

星見さんが呟くように言う。キャナルと入れ替わると、わたしは黒髪から銀髪に変わるので、今どちらなのかはひと目でわかる。

 

「ちょっと待ってください」

 

そう断ってから、キャナルは門の前で目を閉じ、魔力と空間の歪みを感じ取っていた。

 

「…………間違いありませんね。明らかに時空レベルでの空間干渉があった痕跡があります」

「それではやはり…!」

「はい。美遊さんと、おそらくは一緒に帰宅していたイリヤさん、クロエさん、そしてエーデルフェルト邸に向かっていたであろうリナさんが巻き込まれたとみて、間違いありませんね」

 

うう、予想していたとはいえ、ホントにこんな事になってるなんて。

 

「くそっ! せっかく美遊も戦いから解放されたっていうのに、どうしてこんな…!」

 

悔しそうに言う四郎さん。わたしはリナさんに烈光の剣(ゴルンノヴァ)のレプリカを貸した関係で、少しばかり並行世界での出来事を聞いてはいるけど、確かにそれで四郎さんが憤るのは理解できた。

 

(キャナル)

(……本気ですか?)

(うん!)

 

わたしの決意に、キャナルは嘆息する。けれど、それは決して渋々ではなく、むしろ予想通りだったための、諦観に近いものだった。

 

「……神名の意見ですが、これからこの歪みを開き、わたしと神名でみんなを助けに…」

「神名、キャナル」

「今回は除け者は無しだぜ!」

 

な、星見さん、青川くん!?

 

「ふたり共、何を言ってるのですか!?」

 

これに関して、わたしとキャナルは同意見だ。向こうにどんな危険があるか、わからないんだから。しかし。

 

「言っただろ? 俺達が無茶をしないのは、黒神が無茶をしなければだって」

「それに、友達を助けたいのはわたしも同じだよ? そしてその友達には、あなたも入ってるの」

 

……これは、ズルい。こんな言い方されたら、わたしには断れない。そんなわたしの感情を読んで、キャナルが尋ねる。

 

「そちらの世界に、どの様な危険があるかわかりません。下手をすれば死ぬかも知れません。それでも着いてくるというのですか?」

 

キャナルの問いかけに、星見さん青川くんは呆れた様に返した。

 

「今更、何言ってんのよ」

「そんなの、瞬撃槍(ラグド・メゼギス)探してたときからだろ?」

 

……このふたりの意志の強さは並大抵ではないと、改めて知った。

……はあ、仕方ないな。

 

「……わたしも神名も、貴方達には負けました。

無茶をするな、……と言っても、先程と同じことを言われるのでしょうからひとつだけ。必ず最後まで、生き残るつもりでいてください。死んだ気で頑張る、などは以ての外です」

 

キャナル…。このセリフは[瞬撃槍(ラグド・メゼギス)]の事件の時にリナさんが、わたしとキャナルに言って聞かせた言葉。例えどんなに勝てる可能性が低くても、死んだ気等という後ろ向きな気持ちで戦えば、その可能性も0になる。だから必ず、勝つつもりで立ち向かえ、と。

わたしは忘れずいたけど、それはキャナルも同じだったみたいだ。

 

「ああ、わかった」

「わたしだって、まだまだやりたい事あるしね」

 

よかった。この二人なら、きっと大丈夫だ。

 

「では、早速…」

「あ、ちょっと待ちなさい」

 

キャナルが魔力増幅の結界を敷こうとすると、遠坂さんが待ったをかけて屋敷に向かって駆けていく。

何だろうと待っていると、一振りの細身の剣を抱えて戻ってきた。

 

「これをリナに渡してあげて」

「これは…?」

 

魔王の武器にも引けを取らない魔力を放つその剣を手にして、キャナルが尋ねる。

 

「それはリナの前世の世界…スィーフィード世界の武器、[斬妖剣(ブラスト・ソード)]。……正確にはその並行世界の物だけど。リナの前世のパートナー、ガウリイ=ガブリエフが所持していた伝説の武器、その一振りよ」

 

伝説の武器! でも、わたしにはわかる気がする。だって、この武器から感じる魔力は複雑に絡み合ってて、今のわたしの[自身の魔力の質を変化させる能力]じゃ真似るどころか、近づけることすら出来ないと思うから。

 

稲葉リナ(イナバリナ)美遊(ミユ)の世界から持ち帰ったものですけど、さすがに家には置けないからと言って、(わたくし)の所に預けていったのですわ。……向こうがどんな所かわからない以上、手札は多いに越したことはないでしょう?」

 

エーデルフェルトさんが、遠坂さんのセリフを引き継いで説明を続けた。

 

「そういう事ですか。わかりました。この剣は責任を持って、リナさんにお渡ししましょう」

 

キャナルが頷く。もちろんそれは、わたしも同じ気持ちだ。

 

 

 

 

 

「それでは、この結界から出ないようにしてください」

 

キャナルは青川くんと星見さんに注意を促してから、[韻音律(カオスワーズ)]を唱え始める。

 

「本当は俺もついて行きたいんだが…。この二人が許してくれないんでな」

 

そう言ってエーデルフェルトさんと遠坂さんをちらりと見る四郎さん。そんな彼を呆れた表情で見ながら、2人は言い返す。

 

「当たり前でしょ。()()はもう、戦える体じゃないんだから」

「貴方に何かあっては、美遊(ミユ)が悲しみます。それでは本末転倒でしょう?」

「ああ、わかってるよ。理解はしてる。心は納得いってないが」

「「四郎(シェロ)っ!」」

「ああ、だからわかってるって。自重はするよ、今日の所は」

 

……四郎さんも、大概な性格してるなぁ。

 

「……まあ、そんな訳だから美遊を頼む」

 

わたし(キャナル)に向き直って言う四郎さん。わたし(キャナル)はニコリと笑って頷いた。

そして。

 

神魔移送門呪(トランスファー・ゲート)!」

 

リナさん風に言う[力ある言葉]によって、わたし達の体は光に包まれた。

 

 

 

 

~カナ~

わたし黒神(クロカミ)神名(カナ)が、バニルさんからの導き等という一風変わった状況でやって来たのは、西の森。言われるままについていくと、わたしもようやく魔力の、というより空間の異常を感知できた。

 

「ここである」

 

バニルさんが足を止め言った場所は、森の中でも比較的開けた所。陽射しもそれなりにあり、草葉もそれなりに生えている。……あ、ひっそりマンドラゴラ見っけ。

 

「貴様、中々に図太い性格であるな」

 

見通す悪魔が、少し呆れた目でわたしを見てる。まあ、呪符や呪術で身を護るわたしの事はどうやら見通しづらいようで、それが原因なのだろうけど。

それでも全く見通せないわけではなく、今のようにわたしの表層的な思考を読んではいるのだ。地獄の公爵も伊達ではない。

 

「誰に語るでもない吾輩の分析、長々とご苦労なことであるな。運だけは非常に高い最弱職の男が最近なんか気になると、毎晩悶々としている陰陽師の女よ」

「ききき気にしてないからっ! 和真くんの事なんて、これっぽっちもっ!!」

「吾輩は『カズマ』等と、ひと言も言っておらんがな?」

「!!!?」

「フハハハハ! その羞恥の悪感情、大変美味である!」

 

……くぅっ! いつか仮面の数字をⅢにしてやるからっ!

 

「期待せずに待っているぞ」

 

 

 

 

 

「まあ、戯れ言はこれくらいにして」

 

ようやくわたしの気持ちが落ち着いた頃、バニルさんが言う。

 

「ここで貴様が気にしてい…」

「和真くんとイリヤちゃん、それにクリスちゃんが消失したんだね?」

 

これ以上おちょくられたくないので、慌てて話を引き継ぐわたし。もちろんそれでも羞恥心はあるが、このまま言われるがままでいるより遥かにマシである。

 

「ああ、間違いない。貴様も感じているのだろう? この場の、空間の歪みを」

「うん。だけど、どうして悪魔であるあなたが、わたしにこんな情報を…?」

 

そう。悪魔が自分の利益にもならないことを、わざわざ教えてくれたのだ。元の世界でイメージする悪魔とは少し違うとはいえ、道理に適ってないのは事実である。

 

「貴様も知っておろう。悪魔族は契約に厳しいと。それは相手に対しては勿論のこと、我々側も同じこと。契約は対等なのだ」

 

うん。それは何度か聞いたことがある。

 

「そして貴様が気に…」

「和真くんが何?」

「あの男とは、契約の途中である。奴の知的財産を吾輩が買い取ったのであるが、支払い方法に関しては保留したままだ。

もしあの男がこのまま失踪し続けた場合、契約に縛られた吾輩は、知的財産によって作られた品々を自由に売り捌くことが出来なくなってしまうのだ」

 

なるほど。悪魔故に契約がネックになってしまうという訳か。

 

「だが、どことも知れぬ空間に助けに行くには、少々リスクが高すぎる」

「リスク?」

「長く店を空けると、あのポンコツ店主が何を仕出かすかわからん。今も余計なことをしてるのではないかと、気が気でないのだ」

 

……あー、ウィズさんには悪いけど、バニルさんのその気持ちはわからないでもない。

 

「故に、空間を渡れる可能性を秘めた貴様に声をかけた、という訳だ」

「……確かに、空間の歪みが残った今の状態なら、路をこじ開けて渡ることも出来るとは思うけど」

 

転生特典で、陰陽道の知識と能力を底上げしてもらったからこそだが。

 

「だけど、わたしが向こうへ行ったら、こちらの術式をいつまでも維持は出来ないよ? それじゃあ二次遭難になっちゃう」

「安心するがいい。こちらでは吾輩が召喚した眷属を配置し、術式を維持させると約束しよう」

「これも、契約?」

「その通り。だが貴様を送ることで、互いにとってより良い未来の可能性が安定するのも確か。こちらとしても悪い話ではないのだよ。まさに貴様らの言うWin-Winという関係であるな」

 

悪魔にWin-Winとか言われるとは思わなかったけど、そういう事なら腹を括ろう。それに、みんなが心配なのは事実だしね。

 

 

 

 

 

わたしは相生(そうじょう)の陣を布き、その内側に相剋(そうこく)とこちらの世界のテレポートの魔術を組み込んだ、オリジナルの術式の魔法陣を書き込む。空間操作系の魔術で歪みをこじ開けて、それを安定させて相互移動させるためのものである。どちらか片方の知識では、為し得なかっただろう。

 

「相生…相剋…急々如律令…」

 

わたしが小さく(しゅ)を唱えると、陣が輝きだし周りの景色が歪み始める。

 

「それじゃあ、行ってきます」

 

わたしがバニルさんに向かって言った直後、周りの景色は消え失せた。

 

 

 

 

 

軽いめまいと共にわたしが現れたのは、雪が降り積もった枯れ木の林の中である。と同時に、違和感を感じる。

この空間、何か人為的なものを感じる。何というか、人の意思の様なものを。

 

「……まさかこれって」

 

ある可能性に行き着いたわたしが、それを口に出そうとした、その時。ザッ、という雪を踏みしめる音が聞こえた。

振り返りそちらを見れば、剣を携えた長い黒髪の女の子と金髪の女の子、そして赤毛の男の子が立っていた。しかし、それよりも驚いたのは。

 

「……穂群原小学校の制服?」

 

思わず小声で呟いた。そう。わたしが異世界転生する前に通っていた学校の、その制服を着ていたのだ。

だがこの子達が発した言葉に、わたしはまたもや驚かされることになる。

 

「……陰陽師の正装?」

「確かに、神名がたまに着てる服に似てるね」

 

黒髪の女の子の呟きに、金髪の女の子がそんな事を…、え、今何て?

 

「黒神と黒神の兄貴が着ている以外じゃ初めて見たな」

「わたしも、家族以外が着てるのは初めて見たよ」

 

え? ええっ!?

 

「ちょっと待って! あなたの名前、もしかして黒神神名って言うの!?」

「ふぇっ? は、はい。そうですが…?」

 

そういえば、小さい頃の自分に似ている気がするけど…。あ、そうか、第二魔法…。

 

「……わたしは、黒神神名。おそらく並行世界のあなただよ」

「「「え…?」」」

 

そりゃ驚くよね。わたしの方が年上だし。

 

「エロいっ!」

「ええっ!? ほ、星見さん!?」

 

星見と呼ばれた金髪の女の子が、わたしを指差して言った。というか、初対面の時の和真くんと同じセリフなんだけど。

 

「黒髪ロングの清楚系のくせに、和装からでもわかる大き過ぎない、形の良い胸! しっかりと括れた腰! 体が足元まで隠されているからこそ、それらの特徴が妄想を助長させてるのよ!!

神名! あなた将来、どこまでエロくなるのっ!?」

「「風評被害もいいとこだよっ!」」

 

わたしと、もうひとりのわたしのセリフが被った。赤毛の男の子は、呆れた様子で眺めてるだけだ。

 

「おやおや、中々面白い状況に出くわしたみたいですねぇ」

 

突然かけられた声。慌ててそちらを見れば、手に錫杖を持つ、黒い神官服を纏ったおかっぱ頭の青年がいた。

不意に感じる魔力に視線を戻すと、もうひとりのわたしの髪の色が銀色に変わっている。いや、()()()違うみたいだ。

彼女は手にしていた剣を抜き、構えながら言った。

 

「気をつけてください。()()は、魔族です!」

 

……魔族?




転生神名の衣装は、ソシャゲ【あやかしランブル】チハヤ(ノーマル)の陰陽師の衣装を白にして、スカートを袴に変えたデザインイメージです。

最後に出たのは、【スレイヤーズ】の中間管理魔族ですね。
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