俺が虚の女王様?!   作:修司

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ラブコメって難しい。カキカキ


チャリオッツ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・・・」ポト、ポト

 

「あ、ありがとう・・・」

 

 

口に広がる甘い味に意識を向けながら改めて目の前にいる少女に目を向ける。

その少女も言わずもがな、虚の世界の住人の一人である。

重厚そうな鋼でできた薔薇の王冠をブロンドの髪の上に乗せ、両手は鋭いスパイクのついた鎧。両足には車輪がついており傍に時計の針のような剣を置いている。

 

彼女の名はチャリオッツ。

タロットカードのチャリオッツを冠する出灰カガリの思念体である。

 

 

「・・・・・・♩」ポトポトポトポトポト

 

 

「ちょ!?早い早い早い!」

 

 受け渡されたマカロンを食べ終わった瞬間彼女は再び大量のマカロンを俺に渡してきた。そのあまりの多さにマカロンは両手からこぼれ落ちほとんどが地面に落ちてしまった。

 

「・・・・・・」ニコニコ

 

 

(虚の世界の住人って感情がなかったんじゃなかったっけ・・・・?)

 

 

受け取ったマカロンを食べる自分を見て薄ら笑を浮かべるチャリオッツ。なぜこんな状況になっているか。話は前回まで遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うわあああああああ目が回るうううううう!?』

 

 

 

鎖によってぐるぐるまきにされた自分はそのまま凄まじい勢いで持ち主のとこまで飛ばされていた。ただあまりに遠いところからの捕獲だったのか体の節々が建造物の角にあたってしまっている。とても痛い。

 

『ぐぇぇ、こ、この鎖ってもしかしなくても・・・・』

 

 

鎖の勢いがだんだん緩やかになってゆく。それと同時に鎖の彼方の方に一人の少女が立っているのがわかる。それはやがて姿をはっきりさせ、目の前まで来た時点で自分の体を受け止めた。

 

『や、やっぱデッドマス』

 

どさり

 

『だぁ?!』

 

 受け止めたと同時に体を地面に落とす。

 彼女の名はデッドマスター。今は詳細は伏せるが、彼女は現在とある思念体によって支配されている。鎖が体に巻きついたときは考えがまとまらなかったが、この少女が自分を連れてきたということは・・・

 

 

『おろしたと思ったら今度は何!?』

 

地面が動いている。否、地面を覆い尽くすほどの何かの上にハイプリエステスは尻餅をついていた。そしてその正体はうずらの卵はどのサイズの機械仕掛けの蜘蛛で、ハイプリエステスを載せたまま新たな世界へと向かって行く。

霧が出て、辺りが暗く。

周りのものが少なくなり、光と共にそれは現れた。

 

 

 

 

「・・・・」

 

「え、この人形を持てばいいの?なんだか怖い顔してんな・・・・」

 

 

現状を説明しよう。今自分は絨毯のようなものが敷かれたスペースにて目の前の少女、チャリオッツと人形遊びをしている。

あの光の後に現れた世界ーーーーーチャリオッツの世界に放り出された俺は彼女の前に連れてこられた。

そのあとの流れはお察しの通り。

目を見開いたかと思ったら子蜘蛛に乗せられ絨毯の場所に案内され今に至る。

流されやすい、と皆さんが攻める気持ちはわかる。しかし考えて見てほしい。目の前の彼女達はその気になれば一瞬で自分をバラバラにできる力を持った存在なのだ。

なぜか今のところ会っている少女達は自分に対して好意的?だがこれがいつ牙を向くか分からない。

 

 

なんなら戦いの余波で死ぬことだってあるかもしれないのだ。

 

「えーと、君って喋れる?もしくは言葉わかる?」

 

 

「・・・・・」ニコニコ

 

 

(反応がない・・・・)

 

 

勘弁してくれ。俺はまだこの世界に来て2時間もたってないんだ。

好意的?なのはこの世界ではありがたいけど俺寿命までまだ長いんだぞ。このままじゃ体がもたないよ。

 

 

(せめて何か喋ってくんねぇかなぁ・・・この世界の人たちみんなクールすぎるんだよなぁ)

 

チャリオッツは飽きたのか人形を投げ捨てると自分にその無骨な手を差し出してくる。手を繋げ、ということだろうか。いざ差し出してみると正解らしくそのまま足の車輪を動かし始めた。

 

「おっとっと・・・喋んないなぁ。危ないし。」

 

急に動き出した為急いで立ち上がり彼女の後ろをついていく。そして周りを見渡しながら改めてこの世界の外観について考える。

 

 

(まるでまどかマギカの魔女の結界。いや、というより病気の時に見る悪夢をそのまま形にしたみたいだ。いや、この子の精神性の形がある意味・・・)

 

 

「ん?」

 

ふと手の引っ張る力が無くなったのを感じて前を向く。目の前の通路、その道はまだきちんと整えられてないためかクッキーや陶器のぬいぐるみによって荒れ果てていた。

 

「こ、ここに何かあるの?」

 

「・・・・・」

 

チャリオッツは俺の言葉に少し視線をよこす。すると今度はこちらを向き両手を広げた姿勢で上目遣いを向けた。

 

 

「?ん?え、どういうこと?」

 

「・・・」

 

チャリオッツの表情からは何かを掴むことはできない。しかし道、自分、道、自分と視線を交互にさせたことでようやく何をしてほしいのか察することができた。

 

「あ!もしかして抱っこして運んだほしいの?」

 

 「・・・・・」こく

 

よく考えたらチャリオッツの両足はローラースケートの如く車輪がついており整えられた道でなければ進むのは難しいのだろう。

 

 

(君でも普通にジャンプしたり歩いたりできたんじゃ・・・?)

 

 

 しかし彼女は虚の世界の少女である。大体の無茶は行えるくらいの身体能力はあるはずだし実際劇中にてブラック★ロックシューターとこの世界で渡り合った猛者である。

 

(うーん、彼女の本体のカガリちゃんも歩けるのに車椅子に乗ってたし・・・。もしかしたらその分身である彼女も合わせているのかも)

 

 

「・・・・・」

 

 

(えぇぇ・・・この子って一応俺と同じで中学生くらいなんだよな。いや、何を意識してるんだ俺!いくら可愛らしくて仕草に愛嬌があって懐いてるようであったって意識する程のことでもある気がしてきた)

 

 

 チャリオッツが腕を広げた姿勢で固まりハイプリエステスも屈んだ姿勢のまま固まって。そんな状況が20秒ほど続く。ハイプリエステスの表情は虚の世界とは似合わないほど奇妙な顔を浮かべ目の前の少女に対してどのように接するかを考えた。

しかし待ちくたびれたのだろう。彼女は足の車輪を動かしそのままーーーーーーーー

 

 

「うおお?!」

 

ハイプリエステスに抱きつく形で飛び込んだ。

 

 

 

ハイプリエステス。彼も前世は彼女達と同じく中学生であった。しかし異性との触れ合いなど思春期の彼には遥かに遠い場所の出来事と考えていた。そして現在抱きついてきているのはかなりレベルの高い女の子である。

 

 

(うわああああああああああ!?)

 

 

当然こうなる。

ブラックロックシューターの時はあまりの出来事に正常に思考することが出来なかったが今回はそうではない。

 

 

(え!?これこのまま持ち上げればいいの?だ、どこを持てば・・・太腿から抱えて、いや痛いかもああああ柔らかい感じががが)

 

 

正常に思考できるからこそ今の状況に対応しきれない。しかしその混乱をハイプリエステスは表情にはあくびにも出さない。第三者が見たらハイプリエステスの表情は少し戸惑いを見せている困った顔でしかない。

 

このままというわけにもいかない、とは思ったのだろう。

ハイプリエステスは混乱した状態のままチャリオッツを持ち上げるとその荒れた道を歩き始めた。

チャリオッツの表情は感情がないはずなのにどこかご満悦な様子である。

 

 

(落ち着け、落ち着け。そうだ。慌てることはない。この子はあくまで甘えている子供と同じさ。誰だってふとした時に人肌恋しいことくらいあるさ。今は動揺より、この後どうするのかを考えるーーー)

 

カプ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャリオッツはデッドマスターの連れてきたその存在を見て自身の中に何かがわき起こるのを自覚した。自分たちに感情はない。あるのは戦うという本能のみだ。

初めて触れる自分たち以外の存在。わきあがる何かははその存在が自身に近ければ近いほど湧き上がってくるのを知った。

そしてそれに抱きついたとき視界に肌の露出した首が映った。この衝動。心地いい気がするが、それと同時に解消したいとも感じた。

 

そしてチャリオッツは、わきあがる何かと自分の感に従ってーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハイプリエステスの首を甘噛みした。

 

 

 

 

 

 

「ぬぁっ?!な、なになになに?!」

 

 

思わず落としてしまいそうになるのをなんとか立て直す。

急に訪れた未知の感覚。それがチャリオッツに首を甘噛みされていることに気付いたハイプリエステスはその場から動けなくなってしまった。

 

「ちょ、ちょっと待って!急になんで!?」

 

 

慌てるハイプリエステスに構わずチャリオッツは甘噛みを続ける。あくまで首に歯を当てるような力加減で首筋に沿って歯形をつけて行く。鈍い痛みと同時に唇の柔らかな感触が跡を追うように皮膚を這い、くすぐったいような感覚が襲う。

 

 

 

「や、やめてくれ!くすぐったいし力抜けちゃうから危ない!うあぁ、首筋に沿って噛まないで!」

 

 

「・・・・・・」

 

 

しかしチャリオッツは止める気配はない。もはやハイプリエステスは恥ずかしいやらくすぐったいやらで顔は真っ赤になり目元に涙すら浮かべている。それでも構わず、むしろ勢い付け甘噛みを続けるチャリオッツ。

涎に濡れますます敏感になった首筋に息が当たりまた別の感覚を刺激する。

 

ただ噛むだけではない。噛んだことで口に浮き出た皮膚に今度は舌先を這わせ出した。それによりこれまでとは比べ物にならない刺激がハイプリエステスを襲う。そして舌を首筋に大きく這わせ、最後に付いた涎を全て取るかのように首筋に吸い付いた。

 

「まって・・・ほんと待って・・・!これ、なんか、変だ、よ・・・・!」

 

落とさないように彼女を持つ腕に力が篭る。が、足に力が入らなくなったハイプリエステスはその場の瓦礫にチャリオッツを抱いたまま両膝をついてしまう。そしてそれを見届けたチャリオッツは漸く首筋から口を離し座り込んだハイプリエステスを見た。

 

息が荒くなり真っ赤になりながら座り込むハイプリエステスを眺める。ハイプリエステスも急に離れたチャリオッツに上目を向けた。チャリオッツの表情は相変わらずの無表情である。

 

しかし、自分を眺めるその瞳。金色に輝くその瞳に、最初とはまったく違う何かを秘めているのは誰が見ても明らかだった。

 

噛まれた首筋には歯形がいくつもついており、何回か吸い付いた為か丸く腫れた後まである。

両者が目を合わせていた。

 

(何これ・・・!こんなの、どうしてこんな・・・!)

 

 

もはやハイプリエステスは正常に物事を把握できない。

自分よりもはるかに小さい彼女にもはや抵抗する気も起きずにいた。そしてついた歯形に指先を沿わされたことで再び刺激が走った。

 

「ッ・・・・・・!?」

 

その刺激により身体が震えた。

指は上へと上がってゆきやがて頬に当たり、それと同時に両手で頬を挟んだ。

 

 

そして混乱するハイプリエステスに、再び近づこうとした瞬間ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

轟音と共に青い炎の弾丸が彼女を貫いた。




俺は何を書いてるんだろう・・・?

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