中野五月と俺の大学生活(完結済み)   作:よきき

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あこがれ

 本日レポートが出された。お題はどんな教師になりたいのかと言うもの。

 俺は頭の中で適当に考えて、ありふれた、どこにでもありそうな言葉を書き連ねた。

 一体こんな課題になんの価値があるのだと言うのだろうか。これを書いたところでその通りの教師になったものはいるのだろうか。いるのであれば、是非とも今度の講演に連れてきていただきたい。ものの数分で眠る自信が俺にはある。

 

「課題をしてるんだ」

 

 目の前に座る中野五月がそんな事を言う。

 なんでこんなところにいるんだよ、と言いたいがここは大学内にあるカフェテラス。俺を見つけた中野五月は早々に友達と別れ、俺の目の前に座ったというわけだ。

 彼女はトートバックからメガネを取り出すと、俺が取り掛かっている課題を真正面から覗き込んでくる。

 

「ねえ、あなたはどんな教師になりたいの?」

「知るか、別になりたくない」

「私はみんなに頼られる教師になりたいな」

「……話ふっておいて人の話聞いてねーし」

 

 ため息をつきながら、こいつには何を言っても無駄だと悟りレポートに意識を向ける。

 

「教師になったら、勉強以外のことも教えてあげたいだよね」

 

 俺が聞いてると思っているのか、はたまた聞いていないと分かった上で話しているのか彼女は一人でに喋り続けた。

 

「教師の仕事って勉強を教えるだけじゃないと思う。生き方だったり、人との接し方だったり、時には悩み相談なんかも聞いてあげたり。それが本当の意味の教師だと思うの」

 

 妙に俺を刺激する単語ばかり並べる彼女に俺は内心うんざりした。

 彼女の言っていることは全て理想論にすぎない。

 生き方など教えてあげられないし、人との接し方なんて多種多様とある。悩み相談なんて聞くだけ無駄でしかない。生徒一人一人にそんな事をしている教師なんていつか破滅するに決まっている。

 教師とは先駆者だ。

 絶対的に間違えてはいけない。間違えてしまったらそこで生徒の人生は暗い影を落としてしまう。

 そんな重大な責任を一人が背負えるわけがない。

 だから、生徒とは適切な距離を保たなくてはいけないのだ。相手に理想を抱かせず、過度な干渉を図らない。これが一番であり、最適な接し方だと言える。

 理想論はどこまで言っても理想論。理想だから理想と言われるのだ。現実になってしまったらそれは理想でもなんでもない。

 夢とおんなじ原理である。叶わないからこそ夢なのだ。叶ってしまったらそれは夢でもなんでもない、ただの目標である。

 

「ねえ、あなたはどんな教師になりたい?」

 

 そう問うてきた彼女に向かって俺は顔をあげる。

 

「そうだな、強いて言うなら。導かない先生になりたい」

 

 俺は彼女の問いに静かにそう答えた。

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