信頼度300%   作:スイヨウ

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パフューマーさん信頼度マックス記念。


男ドクター
パフューマーの場合


 

 

 どうにも仕事に集中できない。

 ドクターと呼ばれるようになってから経った三ヶ月の間、恋人の様に接し続けた書類達を慣れた手付きで捌きながら一人ぼやく。

 原因はとうに分かっているのだ。オペレーター達の溜まり場にもなっている、執務室のスペースを大きく奪っているソファ。それに座ったまま、飽きもせずに此方をじっと眺め続けている彼女。

 

 

「……先程からずっとこちらを見ているように感じるんだが。どうかしたのか、パフューマー」

「どうもしてないわ。ただ、ドクターくんを眺めて待っているだけよ」

 

 

 それに困っているんだ、とは言えず。溜息を漏らしながら視線をまた書類へと下げ、止まっていたペンを動かす。かりかり、かりかり。くしゅんっ。

 

 

「ッ……分かった。今日は此処で終わりにするさ」

「ん。じゃあ、用意するわね」

 

 

 夕方、陽が落ちて冷え込んでくる時間帯だ。彼女が善意でやってくれているとはいえ、自身の仕事の都合で待たせて風邪を引かせなどでもしたら後悔は尽きないだろう。

 お手上げと言わんばかりに書類をファイルへ乱雑に突っ込んで仕舞い、ソファの隣へ深く腰掛ければ花咲く様な笑みを浮かべた彼女が待ってましたと水筒やコップを取り出し始める。

 

 

「……はい、今日は自信作よ? ドクターくんの好みに寄せようと、私が調合したんだから」

「あぁ……ありがとう。毎日助かってるよ」

 

 

 そう、毎日である。

 つい最近、彼女は医療オペレーターとしての功績を評価され、二回目の昇進を果たした。その時に、彼女が零した本音。それがどうしても忘れられなかった自分が祝いと称して彼女の小型温室を大きく広げたのだ。

 権力と龍門幣による力押しだった為、アーミヤとケルシーから暗い目を向けられたが……まぁ、彼女がいたく喜んでいたんだ。安い出費だろう。

 

 問題なのは、その出来事から彼女との距離が急激に縮まった事である。今までの関係は仲の良い上司と部下、もしくは戦友といったものだった。それが最近はどうだろうか。

 

 

「ふふ、今日はお菓子も用意してきたの。紅茶ケーキって奴ね。かなり良い出来だから、食べて感想を聞かせて頂戴な。はい、あーん」

「……あ、あーん?」

 

 

 この有様である。前まで存在していたパーソナルスペースは何処に行ったんだろうか? 

 これでは最早恋人のようにしか見えないだろう……と、溜息を吐きつつも、役得と思ってしまう自分がまた恨めしい。

 しかし、仕事終わりのこの一時は自分にとっても数少ない癒しの時間となっているのは事実なのだ。彼女のスキルである調香をフルに活用した紅茶やアロマの提供は、驚くほどのリラックス効果をこの身体にもたらしてくれる。速い話が、私自身もこの時間を楽しみにしているという事だ。だからこそ、第三者に見られたら勘違いされかねないこの状況を未だに改善できないでいる。

 

 

「今日も良い食べっぷりね。作り手としては冥利に尽きるわ」

「パフューマーの腕が良いんだろう。少なくとも、私はこれで食の喜びというのを再認識したよ」

「……ドクターくん? 二人っきりなんだから“ラナ”って呼びなさいな」

「そうだったな……ラナ」

「うん、よろしい」

 

 

 不満げに口を尖らせる彼女に慌てて本名で呼び直せば、演技だったのかと疑うほどにころっと表情が変わって。満足げによしよしと頭を撫でてくる彼女にされるがままになる。これまでの付き合いで、ここで断ると彼女の機嫌が悪くなるのはよく分かっている。

 にしても、先程から随分と良い香りがするせいか、思わずうとうとしてしまう。

 

 

「……ドクターくん、眠そうね。夜ご飯の時間になったら起こしてあげるから、仮眠を取りなさい? お仕事を頑張った分は休まなきゃダメなのよ」

「……確かに、そうかもしれないな。お言葉に、甘えようか……」

 

 

 出されたハーブティを一口啜れば、身体の奥まで温かさが染み渡るような気がした。鼻腔を擽る嗅ぎ慣れた花の香りにぼんやりとしてきた意識の中、優しげな声と共にフードが脱がされ、身体が横へと倒される。抵抗する間も無くぽすん、と軽い音を立てて頭が柔らかい何か。既に閉じてしまった瞳では判断が付かないが、おそらく彼女の膝であろう。そこへと乗っかれば、包み込むような安心感と共に意識がゆっくりと遠のいていった。

 

 

「ん……おやすみ、ラナ」

「ええ。おやすみ、ドクターくん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぐっすり寝たわね。まぁ、彼の身体に合わせて調合したんだから効いてくれないと困るんだけど」

 

 

 緩々と口角を上げては、空の小瓶を指でピン、と弾く。

 放っておくと仕事ばかりに存在意義を見出して倒れてしまいそうな彼を強制的にスリープモードへと移行させる魔法のおくすり。

 ケルシーにも投与許可を貰っているそれの効き目に思わずくすくすと笑い声が溢れてしまう。

 

 

「こうでもしないと仕事ばかりで休んでくれないドクターくんが悪いのよ? ああでも、結果的に私が貴方を独り占めできるって考えたら良い事かもしれないわ」

 

 

 跳ねるような声色で音を紡ぎながら、穏やかな表情で規則正しい寝息を零す彼の髪をさらさらと撫でる。普段から彼と話しているアーミヤですら数える程しか見れたことがなく、深い交流のないオペレーターであれば見ることも叶わない彼の素顔を独り占めできるここ最近が、楽しくて堪らなかった。

 

 

「……もう、ドクターくん無しじゃ生きてけないんでしょうね」

 

 

 彼の体温を感じながら、自嘲と嬉しさが混じった複雑な笑みを浮かべる。

 知人、仕事仲間、友人、戦友。全てを飛び越えた彼へのこの感情が溢れて傷付けてしまわないよう、どくどくと激しくなる胸を両手でしっかりと押さえながら、彼の唇に触れるような口付けを、一つ。

 自分達感染者を導いてくれる人。指揮官としても、医者としても優秀な人。頼りになる人。わざと厳格な口調にしているけれど、実際は子供っぽさに溢れているひと。誰もが戦いばかりへ視線を向けてしまっている中で、唯一人本来の望みを覚えていてくれたひと。だいすきなひと。あいしているひと。

 

 

「ふふ……好きよ、ドクターくん。愛してるわ」

 

 

 

 




信頼度が高まりすぎて愛になった子。

各オペレーターの第二話以降をでRー18版を書いてみるのはアリかナシか

  • 正座待機(アリ)
  • 煩悩を捨てよ(ナシ)
  • NLなら許してやろうじゃないか
  • 百合ならいいゾ
  • や ら な い か(男同士なら)
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