「……ふふ、ふふふ。ドクター? どうして、仕事をしていらっしゃるのでしょうか……?」
「待て、待ってくれリスカム。たった数枚、重要な書類だけ片付けてしまおうとしていただけなんだ」
背後に修羅の幻影が見えるほど怒り狂った相棒、リスカムが、先程までドクターのデスクの上にあった書類をぐしゃりと握り締めながら仁王立ちしている。
そんな彼女の姿を見た瞬間、デスクへと頭を打ち付けかねない勢いで必死に頭を下げるドクターのなんと情けない事だろうか。
「医療オペレーターでも治しきれないような怪我を負ったんですよ!? 安静にしていてくださいと一昨日も、昨日も、今日の朝にも、ずっと言ってるじゃないですか!」
「悪かった、すまない、仕事を見たらつい手が伸びてしまって……!」
まぁ、あんな事があったのだから、私としてもリスカムの気持ちはよく分かるのだ。
煩い怒鳴り声に眉を顰めながら、包帯がぐるぐるに巻かれた彼の左腕を見やる。
三日前、龍門市街にてレユニオンの大群が潜伏していると聞いて、近衛局と共に殲滅作戦へと駆り出された時の話だ。入り組んだ路地それぞれへ配置されたオペレーター達へ指示を行き渡らせようとドクターが普段よりも数歩前に出てしまっていた。
結果、オペレーターを狙って放たれた敵のバリスタの矢に左腕を貫かれてしまったというわけである。慌てて最も近かった私が医療オペレーターの元へと運び、失血死や後遺症は免れたものの、一ヶ月ほどは安静にしなくてはならないらしい……のだが。
「……まさか私も、ドクターがここまでとは思ってなかったわ」
仮眠室に閉じ込めれば、携帯端末で基地へ指示を出し。
執務室の椅子へ縛り付ければ、そこら辺のオペレーターを口八丁で騙くらかして仕事を持って来させる。
まったく、仕事をしないと生きていけないのか、この男は。
「フランカ、ここにある書類と端末は全部発掘しました。ドクターの手が届かないよう、私の部屋に持っていっておいてください」
「はいはい。じゃ、後はどうぞごゆっくり〜」
その度に噴火し、暴走するリスカムに同行させられる私の気持ちも少しは考えて欲しいものだ。助けてくれと言わんばかりに震える掌を伸ばすドクターに軽く手を振れば、足取り早く割り当てられた自室の方へと歩いていく。
途中、バチッと電流が流れるような激しい音が聞こえたので、そっと執務室の方へ手を合わせておいた。
南無、ドクター。
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「……ようやく、寝ましたね」
ぜえぜえと肩で息をしながら、残留した小さな電流がバチバチと煩い盾を適当に部屋の隅へと立てかけて。デスクに突っ伏すドクターをひょいと担ぎ、ソファの上へと移動させる。最後に、風邪を引かないよう仮眠室から拝借してきた毛布をぱさりと掛けてやれば、満足そうに頷く。
「これでよし……っと。もう、ダメな事ばかりするんですから」
不満げな声色になりつつも、穏やかな表情のままドクターの頭を撫でていく。あまり見せないフードの下の顔にははっきりとした隈が刻み付けられていて、ほんの少し胸が苦しくなった。
「……私、怖かったんですよ? ドクターが倒れた時、持ち上げただけなのに服が血で濡れちゃって。死んでしまうんじゃないかって、凄く怖かったんです」
目を瞑る度に、目蓋の裏で浮かび上がるあの光景。
ぐったりとした身体を急ごしらえのベッドの上に転がしたまま、ひゅー、ひゅーとか細い呼吸を発するドクター。守ると誓った筈の彼が、今にも死んでしまいそうで。側のフランカに引き剥がされるまで、本来の職務も忘れて縋り付き、泣いてしまったほどだ。
それなのに、彼といったら言いつけを破って仕事を始めるものだから、つい怒りで目の前が真っ赤になってしまって、アーツを使ってしまっている。流石に傷口にも良くないだろうから、電流は抑えてるけど。
「もう、怪我なんてさせませんから。貴方は私が守ってあげます。どんな時も、ずっと」
誰もが忌む鉱石病に罹ってしまった相棒を受け入れてくれたこの場所も、平和をもたらしたいという願いを笑って肯定してくれたあの人も、全て守ると。彼から昇進の証を贈られたときに、そう誓ったのだ。
「……だから、側にいてくださいね、ドクター」
親愛なのか恋愛なのかは妄想で補完してください。
まぁ私は恋愛だと思って書きましたけど。
各オペレーターの第二話以降をでRー18版を書いてみるのはアリかナシか
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正座待機(アリ)
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煩悩を捨てよ(ナシ)
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NLなら許してやろうじゃないか
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百合ならいいゾ
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や ら な い か(男同士なら)