信頼度300%   作:スイヨウ

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お久しぶりです。
検定系が落ち着いて来たので、またちょこちょこ更新していきますね


モスティマの場合

 

「やぁ、ドクター。気分はどうかな」

「……陰で書類が見にくいんだが」

 

 

 楽しげに声を弾ませ、執務机の上へ飛び乗るようにしてぴょんと腰掛ける彼女、モスティマに溜息を漏らす。

 

 

「いつ帰って来たんだ?」

「さっきだよ、さっき」

 

 

 けらけらと笑いながら何でもないかのように言われた事実に頭が痛くなる。

 普段はトランスポーターの仕事で遠出するらしく、一つの場所に留まらないらしい彼女だが、何が琴線に触れたのか、最近はここロドスを拠点としていた。勿論、様々な場所を行き来するのは止めない為に一週間の間で二日も居れば良い方なのだが。

 

 

「帰って来た事、エクシアには?」

「まだ言ってないかな」

「……ケルシーには?」

「言ってないかな」

 

 

 此奴の事だから期待は一切していなかった……が、やはり涙が出そうになる。

 理由など欠片も察せないが、彼女は帰って来るとまず執務室へとやってくるのだ。お陰様で彼女を……慕っているらしい? エクシアやオペレーターの管理をしているケルシーに毎回私が怒られる羽目となっている。何故私なのだろうか。勘弁して欲しい。

 

 

「”何で伝えてくれなかったの“と普段見せない複雑な表情で問い詰めてくるエクシアを見た事があるか。無碍にも出来ず、居心地も悪いんだぞ」

「悪かったって、ごめんごめん」

 

 

 引き攣った笑みを浮かべながら両手を顔の前で合わせて謝る彼女から、溜息と共に視線を切れば錠剤タイプの理性回復剤を一つ口に放り込み、避けられない結末への反抗を諦めて机の上の書類を放り出す。

 

 

「ん……今回は何処に行ってきたんだ」

「東の方。やっぱり極東に近いと料理が美味しくて良いね。外れの店が一個も無かった」

「羨ましいな……私は毎食こんなものだったぞ」

 

 

 自嘲の笑みを浮かべながら空になった理性回復剤の箱をひらひらと掲げれば、彼女が苦笑を漏らしてポーチから小さな紙袋を取り出し、包装を開けていく。

 

 

「相変わらず、体にも心にも悪い生活だねぇ……ほら、お土産だよ」

「いい香りだな。菓子か?」

「らしいね。かりんとうって言うらしいよ? 土産屋のおじさんが包んでくれたんだ」

「ふむ……一つ貰おう」

 

 

 焦茶色のそれを袋から一つ摘み上げ、口へと放り込む。

 ざくざくとした食感に合わせてじんわりと広がっていく優しい甘みに、口元が緩む。

 

 

「あまりベタつかないから書類仕事前に摘めるのも良いな……理性は回復してるか怪しいが」

「食べ物を理性が回復できるかどうかで考えるのはやめるべきだと思うよ? まぁ、気に入ってくれたなら良かった」

「君のチョイスは信頼しているさ。前持ってきた金平糖も美味しかったしな……と、そうだ」

 

 

 理性が枯れかけていた為かすっかり忘れていた紙袋をデスクの引き出しから引っ張り出し、きょとんと首を傾げている彼女に差し出した。

 

 

「……これは?」

「イヤリングだ。龍門でスワイヤーに連れ回された時に見つけてな。君に似合うと思ったんだ」

 

 

 不仲だったのか、スワイヤー、と言ったところで多少眉を顰めたものの、紙袋を開けるとすぐに笑顔へと表情を変えていく。

 

 

「……シンプルだけど、良いね」

 

 

 薄い黄金色の結晶体に銀のチェーンが付いただけのシンプルなものではあるが、どうやら気に入ってくれたらしく、安堵が滲んだ息が漏れた。

 暫く光に透かしたりしながらイヤリングを確認する彼女を眺めていれば、何か含みのある笑顔をした彼女がデスクをぐるっと迂回して近寄ってくる。

 

 

「折角だから、ドクター。君に付けて欲しいな?」

「え……いや、構わないが……」

 

 

 ぐい、と近寄せられた頬に手を添えて押さえながら辿々しい手付きで耳へとイヤリングを付けてやる。

 

 

「……できたぞ」

「うん、ありがとう」

 

 

 機嫌良さげにくすくすと笑い、備え付けられている鏡で様子を確認する彼女の姿に視線が釘付けになる。鮮やかな青色の髪と黄金色が舞う様は、まるで星空のようで。

 

 

「……綺麗だな」

 

 

 愛おしそうに耳元へ触れる彼女の横顔を見て、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分とご機嫌ね? そんなに彼からのプレゼントが嬉しかったのかしら」

 

「うん、最高の気分なのは間違いないかな……盗聴されてる事以外は」

 

「……仕方ないでしょ? 私だってあんな甘い会話聞きたくなかったわよ」

 

「……そんなに甘かったかな?」

 

「まず、貴女がそんな表情豊かに接する方が珍しいのよ……あーもう、こんな事まで報告書にして老いぼれへ送らなきゃいけない私の気持ちも考えなさいよね」

 

「ごめんごめん、監督者さん……いや、今は違うんだっけ」

 

「……“事象観測者”よ」

 

「今の君にはぴったりな名前だね?」

 

「……本当、最悪」

 

 

 

 




耳飾りはドラクエに出てくるほしくずのピアスでもイメージしといてください。
モスティマは書けるシチュが多すぎて悩みましたね…没案が3個くらいあったりします

2021/1/8 誤字報告ありがとうございました。

各オペレーターの第二話以降をでRー18版を書いてみるのはアリかナシか

  • 正座待機(アリ)
  • 煩悩を捨てよ(ナシ)
  • NLなら許してやろうじゃないか
  • 百合ならいいゾ
  • や ら な い か(男同士なら)
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