あべこべ世紀末、転生先は地獄だぜ   作:abc2148

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re.廃墟生活
彼女の変化した日常……?


幸せ、そんなモノは私の人生において一生縁の無いものだと考えていた。

 

自分が何時何処で生まれたかなど私は知らない、気が付けば薄暗い路地裏にいて残飯を漁って生きていた。だが毎日残飯にあり付けるわけでもなかった。何故なら自分と同じような境遇な奴は路地裏には多くいて残飯を巡っての争いごとが絶えなかったからだ。

 

だけど私は生き残った。運良く手に入れた拳銃、それは非力な子供にも確かな力をくれ、その力で私は生き残った。時に脅し、時に奪い、襲う奴は返り討ちにした。

 

そして私には才能があった。だからこそ汚い路地裏にいた私を軍はスカウトした、それだけの価値が私にははあった。

 

路地裏とは比べるまでも無い生活、その代価に優れた兵士として都市に尽くす。

 

不満は無かった、これまでの不安定の生活とはおさらばできたのだから。路地裏の奴らの何人かには嫌味を言われたが所詮は負け犬の遠吠えでしかない。

 

軍に入ったことで多少の贅沢もできるようになった。その中でも食事、特に自分がのめり込んだのは酒だった。旨い酒なら良いが、安酒でも構わなかった。飲んでいる間は心地良い気分に浸れる。

 

そんな生活を続けている、……いや、続けていた。生活自体に不満は無かった、だが思い返してみればそれだけ、空虚な生活だ。

 

……そう、不満は無い。だが同時に満たされないモノがあった。それが何のか分からずに空いた穴を酒で満たそうとしていた。

 

 

 

 

射撃訓練場に銃声が響く。大気を震わせ撃ち出された銃弾は狙い違わずに標的に突き刺さる。そのような光景は誰もが見飽きているものであった。

 

だが今日この日に至ってはそうではなく訓練場には不自然なほど多くの人が集っていた。そして集った彼女達は銃を取って訓練するでもなく見学席に腰かけ、または立っていた。その視線の先にいるのは一人の女性。

 

冷静、冷酷、冷徹……、彼女、カスミは様々な呼び方をされてはいるが総じて優秀な兵士だ。射撃に格闘、他にも戦闘に関する技術を高い水準で習得しており、まだ年若い年齢も相まって期待された人材だ。訓練成績も日に日に上昇しており、このままいけば昇進も間違いなかった。

 

だが今日は、いや、最近の彼女は目に見えて成績を伸ばしていた。実戦を想定して支給された強化外骨格を着込み各種装備を身に着けた状態での模擬演習、そして今行っている射撃、そのどれもが歴代の記録を塗り替えるような勢いだった。

 

しかし最終的なスコアは三位と歴戦の兵が打ち立てた記録には及ばなかった。そして賭け事の対象になっていたのか見学席では笑い声が聞こえてきた。それでも近頃の著しい成長を鑑みれば追い抜くのも時間の問題、次また同じようなことがあれば再び賭けの対象にされるだろう。

 

「どうしたんだ?近頃は人が変わったのかの様に訓練に励んでいるじゃないか」

 

「隊長……」

 

戦闘に支障が無い程度の切り揃えられた黒髪を掻き上げていると隊長、カスミの所属する部隊の上官が話しかけてきた。だがその目は意地の悪さを幾分か含んでおり揶揄う気でいることは容易に察せられた。

 

「で、最近の心変わりには何かあるのか、どうなんだ」

 

「何もありませんよ、何も」

 

表情を変える事無く言い切ったカスミに対し隊長は何度が詰め寄るが冷たく一蹴されるばかり、先に根を挙げたのは隊長だった。

 

「お前……、何もない訳じゃないだろう」

 

「それよりも以前話していた件ですが」

 

「あ?あぁ……、お前の昇級の事か。近頃の成績を鑑みれば1週間後くらいに通達が来るはずだ」

 

「有難うごさいます」

 

「おーい、カスミ。今晩飲みに行かないか?」

 

「すいませんが用事があるのでお先に失礼します」

 

そう言うと使用した銃を担ぎながらカスミは射撃場から出ていく。その後姿を黙ってみていた同じ部隊に所属する同僚達は誰ともなく口を開いた。

 

「……男だな」

 

「あぁ、男だ」

 

射撃場に残ったカスミの同僚達の思いは一致していた。すなわちカスミの変貌の原因は男であると。

 

以前から口数は少なかったカスミだが同僚の誘いを断ることは稀だった。寧ろ余程の事が無い限り酒を安く飲める今回の様な機会を逃すことは無い。

 

そんな飲兵衛が酒を断る、酒より大事な用事?そんなもの彼女達には一つしか思いつかない。

 

「まさか、あのカスミが夢中になるほどの男かいるとはねぇ?」

 

「で、その男の目星はついているのか?」

 

「それが全く……」

 

「生身か、人形か、それすらも分からないか……」

 

「試しに後を付けてみます?」

 

「辞めておけ、彼女は優秀だ。ばれてタコ殴りにされるぞ」

 

そんな風に同僚達の話題の種になっている事を察しているカスミ本人は身支度を手早く済ませるなり基地から出ていく。

 

その足は寄り道をする事も無く自宅に向い歩き、そうして歩いている内に通勤路である都市のメインストリートの一つに差し掛かる。其処には彼女と同じように仕事を終えた人の他にも多くの人々が溢れていた。活気に満ちた店舗には様々な商品が並べられ、香ばしい匂いを漂わせる飲食店が軒を連ねる。それらを横目に見ながら過ぎ去ろうとしたカスミだったがある商品が彼女の目を引いた。

 

それはシンプルながらセンスを感じるチョーカーだ。装飾は少なく一見すれば地味に見える、だがソラの細く白い首には似合うだろうと考えたカスミは迷うことなく購入した。そして店を出て自宅に向かう脚は心なしか基地を出た時より早くなり自宅には直ぐに帰る事が出来た。

 

「ただいま」

 

 

そうして玄関をくぐればソラが『お帰りなさい』と言って出迎えに来てくれる。しかし今日は幾ら待っても出迎えの声が聞こえることは無かった。

 

「……買い出しに行ったのか?」

 

靴を脱ぎ部屋に入ると其処には誰もいなかった。とはいってもこれが初めての事ではなく、大抵が買い物で帰りが遅くなっているだけだ。今日も同じだろうと検討を付けたカスミは上着を脱ぐと部屋にあるソラはたまに帰りが遅くなるだとしたらそのうち帰ってくるだろうと考えたカスミは着ていた服を脱ぎ捨てるとソファーに寝転がる。

 

視界に映るのは手入れが行き届いた綺麗なな部屋。ソラが来る前の衣服が散乱し、空の酒瓶が転がる汚部屋には今更戻れない、そう確信できるほど今の部屋は居心地の良い。

 

「ソラの匂いがする……」

 

ソファーに俯せになればソラの匂いを感じられる。今日も変わらず此処に座ってタブレット片手に勉強に勤しんでいるのが簡単に想像できた。

 

「……早く帰ってこい」

 

だがその日、ソラがカスミの元に帰ってくることは無かった。

 

 

 

 

「埃かぶってるけど大丈夫だな」

 

そう言って隠してあった物資を引っ張り出して点検するソラが廃墟にいました。

 

この少年、ソラは驚くべ事きに廃墟生活の再開を始めたのでした。

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