あべこべ世紀末、転生先は地獄だぜ   作:abc2148

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心の準備が……

荒野には無人機、生物兵器など人間に危害を加える存在が絶えず徘徊している。それらが何処から来たのかは分かっていない、今も稼働している工場で生産され続けているといった説や人間の管理から外れた個体が野生化して自然繁殖したのだという説もある。実際の所は未解明な事が多過ぎて分かっていないことだらけだ。

 

時に、これ等の兵器は時に一カ所に定住することがある。ソラの住んでいる廃墟もその一つであり何種類かの生物兵器が定住、生態系と呼べるのか分からない摩訶不思議な食物連鎖が構築されていたりする。

 

そして、その日は廃墟の外から新しい定住希望者(?)の群れがやってきた。

 

群れで移動しているのは武装狼と呼ばれる生物兵器、別名『ウェポンウルフ』。全高1メートルを超える巨大な狼に背中に乗せた銃器モジュールが特徴的な生物だ。この生物の銃器モジュールは様々なタイプがあり、狙撃に特化したスナイパーモジュール、弾幕を張る多銃身モジュール、誘導性能を持ったミサイルモジュールなどがある。

 

その中でも特に危険度が高いのが群れを率いるボスの武装である。全高が2メートルを超える巨体に合わせるようにこれまた大きな武装モジュールを積んでいるのだ。

 

そして、この群れを率いるボスの武装は特異な物であった。それは一言でいえば剣、刃渡りは自身の全高に匹敵する長さの剣を二振り背中に積んでいるのである。それを操るのは背中から生えている簡易腕部、ただし特別製であるのか太く機敏な動きを行える特別な代物であり、それを十二分に操れるボスの強さは群れでも頭一つ飛び抜けたものだった。群れの援護を受けながら敵に接近しては装甲の有無を関係なく切り裂いていく。その強さを前に廃墟に住み着いていた兵器達は一方的に蹂躙され破壊されていった。

 

だがボスは止まることなく廃墟の奥に進んでいく、自らの群れが住み着くに相応しい住処を探して。

 

時折建物の上に飛び乗って辺りを見渡すボスは一つの大きなビルに目をつけた。遠目にもその大きさは理解でき、それに見合った広さを有しているのだろうと予想する。既に何かが住み着いているのだろうが今迄の戦いで培った経験をもってすれば問題なく排除できると考えたボスは一目で気に入ったビルに向けて移動を開始する。

 

そしてビルの目前まで近づけば群れを収容するのに十分な広さがあり、加えて何も住み着いていないらしくビルの中は静かであった。

 

こうしてボスは群れの住処に相応しい建物を手に入れた。そして──

 

 

 

 

ビルの1階部分、建造物を支える柱以外には外と内を区切る壁しか無い吹き抜け構造の大広間。長年にわたって放置されていたせいか障害物と呼べるようなものは無く只広い空間が其処には広がっていました。

 

しかし今は床一面に侵入してきた武装狼の死骸が一面に広がっていました。そんな惨劇の中でも群れのボスはまだ生きていました。それでも背中に背負っていた剣は一振りは喪失、残る一振りは半ばから折れ、ソレを扱う腕も千切れる寸前、満身創痍の状態でした。しかしボスは諦めません、例え群れが壊滅しよう湧き上がる闘志は衰えることもな──

 

「ギャウンッ!?」

 

しぶとく生きていた群れのボスも流石に遠距離からの大口径弾の狙撃は耐えられませんでした。頭を吹き飛ばされた身体が最後の力を失い大きな音を立てて倒れました。断末魔の叫びがビルの中に広がって反響していき、その声を最後にしてビルの中を静寂が支配しました。

 

暫くすると侵入者が息絶えた事が確認できたのかフロアから一人の少年がひょこっと現れました。そして目の間に広がる惨劇を目にして言います。

 

「大量だぜ」

 

そうしてソラの後ろからは幾つもの無人機が規則正しく並びながら現れ、その中の一機がソラへ近づきます。

 

「作戦行動終了、損失ゼロ、軽度障害二機、弾薬切れ三機、配置済みの罠四カ所が使用不能、以上が今回の戦闘結果です」

 

「分かった、二番から六番は警戒行動、七番から一二番は掃除と罠の再配備を」

 

「了解、システム通常モードに移行、指定行動を開始します」

 

そうしてソラの命令を聞いた一番機が全機体に命令を伝達、各機体が指定された行動を始めていきます。

 

「肉は食用に一部残して、大部分は有機物分解槽にぶち込んで電力と肥料にして、あー、その前に生えている銃器モジュールの摘出だな。あぁ……、それにしても手数が増えるって素晴らしい!手駒が弱くても使い方次第でこうも化けるんだから!」

 

無人機たちが取り付けられたアームを動かして死骸をビルの奥に運んでいき、フロアには水を撒いて血を洗い流していく光景を見ながらソラは感慨深く呟きました。

 

今回の武装狼の群れが辺り一帯で暴れまわっていたをソラはビルの高層階から観察していました。ソラとしては群れが暴れるだけ暴れて荒野に帰っていくなら手出しはしないつもりでした。しかし彼らがソラの根城にしている廃墟に入るや否や定住するための巣作りを始めるのを見ては黙っている事は出来ません。定住されでもしたら今後の活動にも支障が出ますし、単純にソラにとって群れは危険でした。故にビルに仕込んだ罠と手駒の無人機を駆使、一息ついて休息の瞬間を狙って強襲をかけました。

 

群れのボスには手間取りましたが損害無く群れは壊滅、おまけに大量の有機物と銃器モジュールが手に入ってソラはホクホクでした。

 

「ブレードは強化外骨格でもないと使えないし暫くは倉庫で塩漬けにして、それ以外の銃器モジュールはすぐ使えるように整備して……いっその事セントリーガンでも作って拠点防御用にしようか。それにもう少しで促成栽培の野菜が食べられる、余力もあるから畑を拡張する?余ればフリーズドライして貯めとけばいいし……」

 

無人機という労働力を手に入れたソラは拠点の改造に一段と精力的に取り組むようになりました。何より目に見えて生活環境が良くなっていくのは純粋に楽しいというのもあります。

 

「さてとお前たちももうひと働きしてくれよ!」

 

『『『おぉ~~~』』』

 

意欲に満ちたソラは無人機たちに呼びかけ、それを受けた無人機からは間が抜けた抑揚のない合成音声が聞こえてきました。そうして逸る気持ちで根城に戻ろうとし──

 

「み~つけた」

 

その声が耳に届いた瞬間にソラは固まりました。

 

「こんな所にいたんだな」

 

後ろからは足音が聞こえてきます。カツカツと音を響かせながら後ろにいる誰かがソラに近づいてきます。

 

「迎えに来たぞ、ソラ」

 

固まってしまった身体、流れる冷や汗、早鐘のごとく拍動を叩き出す心臓。それでも何とか首を動かして近づいて来る人物を確認しようとします。とはいってもソラの心当たりは一人だけしかいませんが。

 

「さぁ、一緒に帰ろうか」

 

其処にいたのは見知った人物、ソラを攫った女兵士カスミがいました。

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