あべこべ世紀末、転生先は地獄だぜ   作:abc2148

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ちょ、ちょい待ちッ!

脱兎の如く逃げる。言葉にすれば簡単だが逃げる当人にしてみれば命懸け……、今回に限って言えば命は奪われないでしょうが、大事なものが奪い去られてしまうでしょう。その事を謎の勘と理性で理解してしまったソラはビルの中を逃げます。

 

ソラは住処としているビルの全てとは言いませんが全体の八割程度は掌握しているので迷わず逃げる事が出来ます。加えて各所には事前に監視カメラと罠が仕掛けられており侵入者を足止めするくらいには機能します。それらをうまく利用してソラは今迄ビルに入ってくる侵入者を迎撃し続けてきました。

 

「ヤバい」

 

ビルの中を四脚の無人機が甲高いモーター音を立てながら駆けます。その一号と呼ばれる無人機の背に乗り込んでいるソラは端末を見ながら冷や汗を流します。

 

「ヤバいヤバい」

 

画面には管理下に置いた無人機のステータス、ビルの見取り図、設置した罠、そして侵入者である女兵士カスミが事細かく表示されています。そしてカスミがビルを進めば進むほど画面に表示される情報は少なくなっていきます、……主にカスミが罠と無人機を破壊することで。

 

「ヤバいヤバいヤバいッ!」

 

「損失四機、戦力の30%を喪失、戦略的撤退を具申」

 

「逃げたいよ!逃げたいけど、逃がしてくれないの!あの人が!」

 

ビルの中にソラの悲鳴が木霊します。しかし叫んだからと言って現状が好転するはずも無く画面にはカスミソラの元は刻一刻と近づいてきます。真綿で首を締めるように追い詰められていくソラは何とか現状を挽回できないか頭を振り絞ります。

 

「どうして接近に気付かなかったんだ!」

 

「回答、敵が装備している特殊装備のため警戒網に探知されなかったと推測」

 

「特殊装備って最新のモノじゃなくて三世代くらい前のだよ!アレッ!」

 

「当機の観測機器では感知は不可能」

 

「そうでしたッ!武装面は強化していても観測機器はポンコツのままだったわッ!ということは戦犯は俺か、チクショウッ!」

 

そうこうしている間にピコンと端末から音が鳴り無人機がさらに一体破壊されました。

 

「マジかッ!クソ、なんで私生活があんなだらしないのに戦闘力は高いんだよ!戦闘力に全振りかッ、家事にもポイント振りやがれッ!」

 

最早取れる手段は二つ、降伏するか、逃げ続けるか。

 

降伏すればこれ以上ドキドキハラハラする逃走劇を繰り広げないで済みます。その代わり再びカスミの自宅に連行されBadend。おまけに今回の事で元々強かった束縛がどうなるか、命を奪われることは無いでしょうが、ソラの大事なものは奪われて精神的に死んでしまうでしょう。

 

「それだけは絶対に御免だ」

 

結局の所ソラに出来るのは逃げ続ける事だけ。それでも無策に逃げ続ければ手持ちの戦力は磨り潰されしまうだけ。それが嫌なら最終手段として今の隠れ家を放棄するしかない、それがソラの考えでした。

 

「けど、あの人が諦めてくれるのか?」

 

そこまで考えてソラは断定します、それはあり得ないと。

 

執着

 

それが今の彼女を動かしている物であり、そこに理性が介入する余地はありません。そうでなければソラは捕まえるために廃墟を訪れるなんて危険を冒しはしないでしょう。そして例えソラがビルを放棄しようと彼女は追ってくるでしょう。

 

「重いッ!重すぎるわ、あの人ッ!」

 

理性なんて知ったことかとソラを追い詰めるカスミに幾ら理屈を捏ねようが無駄、ならばソラも理屈を捨てるしかありません。

 

「迎撃する!現状の戦闘行為を中断、指定行動をすべて解除、残存機体を指定の地点に集結させろッ!」

 

「警告、侵入者の戦闘力はこちらの戦力を上回っています」

 

一号がソラに警告を発します。それは現状を正確に分析したものであり、普段であればソラも異論を挟みません。

 

「ならば、このまま逃走を続けていれば逃げられるか?」

 

「否定、357秒後には侵入者に追いつかれると予測する」

 

「ならば、どうすれば現状を打開できる?」

 

「現状を打開する、に関する定義を明確に提示し、し、し、すsafaefcear//.,」

 

「嘘辞めて此処で壊れないで!お前に高度なAI付いていないの思い出したから変なループに突っ込まないでッ!」

 

といったドキリとすようなことが起こりながらもソラは急いで画面を操作、戦闘を行っている無人機の行動に介入します。戦闘行為は牽制程度に留めて彼女の周辺にある罠を一斉に起動、警戒して一時的に足を止めた姿を後にして無人機を指定した場所に集め、そしてソラ自身も乗っている無人機を集合場所に急行させます。

 

「舐めるなよ、捕まった時とは違うんだ」

 

あの時のソラは弱かった。

 

以前は無人機を従える事も無く身一つでコソコソ隠れながら暮らしていたいました。

 

しかし今は違います、幾つもの無人機を従えて廃墟に住む怪物どもと渡り合うことが出来る位に戦力は増加した。逃げるだけじゃない、戦って勝つという選択肢も選べるようになった。攫われる以前の頃と比べれば天と地ほども差があります。

 

ならばすることは一つ、カスミと戦い勝つ。そして示すのだ、理屈を無視し感情で迫りくる彼女にソラが決して守られるだけの弱者ではない子を、お前の思う通りにはならないぞと、兎に角諦めて帰ってくださいと。

「今こそ雪辱を晴らす時だ!ボコボコにしてやる!」

 

そうして自身を鼓舞するソラでした。

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