あべこべ世紀末、転生先は地獄だぜ   作:abc2148

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ぶつかる

無人二足歩行兵器、これこそがソラの最後の切り札。ブリキとは比較にならない程の強力な兵器だ。

 

だがコレを出した、出さざる得ない状況はソラにとっては敗北の一歩手前だ。だからこそ勝たなければならない、負ければ今度こそ外に出る事は叶わない監禁生活の始まりだ。

 

だが現実は甘くはない。

 

「はッ!」

 

カスミの放った銃弾が無人機に当たっては弾かれる。火花を散らし、装甲を僅かに凹ませるだけの豆鉄砲が効くわけがない。そんな当たり前のことをカスミが知らない筈がなく、ならば何かしら意図があってのもだろう。それが分からない現状はソラの不安が積み重なっていくだけだ。

 

だからこそ早期に勝負を着ける必要がある。

 

カスミを押し潰そうと無人機の脚が迫る。殺すつもりはない──なんて甘い言葉が言える相手ではない。此処までの戦闘でカスミの実力は思い知らされた。殺すつもりで挑まなければ負けるのはソラだ。槍の様に突き出された無人機の脚に当たれば外骨格を付けただけの人間の身体など容易く潰されてしまうだろう。だが、そんな攻撃をカスミは屈んで簡単に避けてしまう。そして避けられた一撃は背後のあったビルの支柱を只の一撃で砕き瓦礫をまき散らす。

 

円を描くようにして迫る脚は後ろに飛んで避け、断頭台のギロチンの様に振り落とされる脚は左右に除ける。そして避けられた一撃が床を、柱を砕き壊し瓦礫の山へと変える。その暴力の中をカスミは顔色を変える事無く避け続ける。その顔には焦りも緊張の無く、冷静に身体を機械の様に動かす。

 

そして避けるだけではなく飛散する瓦礫から逃れると同時にアサルトライフルをフルオートで連射する。無人機を散々に引き裂いてきた強装弾は威力が減衰する事も無く目標に当たるが装甲を貫く事はない。そうしてアサルトライフルの最後の弾倉も使い切り役立たずとなった銃をカスミは捨てた。

 

これでカスミの持つ武装はショットガンだけ、これも弾切れに追い込めば最早カスミに打つ手はなくソラの勝ち。それなのにカスミの顔には何ら焦りも見受けられない、それが溜まらなくソラを不安にさせる。

 

そしてカスミが胴体部分を狙って一発の弾丸を放つ。弾丸は外れる事無く胴体に直撃、しかし兵器が止まることは無く巨大な脚を動かしてカスミに歩み寄る。

 

「なるほどね」

 

だがカスミは距離を取ることは無く、その顔には笑みが浮かんでいる。

 

「凄いね、コレの直接操作なんて大変でしょ」

 

「……大したことありません、ラジコンの操作と同じですよ」

 

「ラジコンにしたら少しばかり大きすぎない?」

 

カスミに迫る兵器、その胴体の一部が大きく窪み穴が開いていた。そこは先程のショットガンの弾、大質量を持ったスラグ弾が命中したところだ。だが重要なのは其処ではない、そしてカスミは分かったのだろう、装甲の下に収まっている筈の機材がない事に。本来ならば其処には収まっているのは無人機の心臓部、人工知能を含めたハードウェアは先程の銃撃で壊れている筈。だがカスミの視界に写るのは装甲の穴から見える伽藍洞の胴体だ。

 

本来ならば動くことすら有り得ない、だが動いているのであれば何らかの仕掛けがあると見当をつけただけ。そして最も可能性が高いのは駆動部を動かす機構しかなく人工知能に代わって何かが機体を操作している。そしてこの場で機体を操作できるのはソラしかいない。

 

「普段の訓練から動きは見慣れてるからね、動きが精彩を欠いていたのもソラが何とか動かしていたから、違う?」

 

「……本当に厄介ですね、貴方は」

 

コレが見てくれだけを取り繕ったスクラップ同然の状態を見抜かれた。

 

そして其処まで分かれば十分でカスミがやるべきことはただ一つ、このスクラップを完全破壊するだけだ。

 

追い詰められたソラが兵器を操作、残った間合いを詰めるために駆ける。地響きを立てながら迫り、そして間合いに捉えたカスミに向かい前蹴りを繰り出す。

 

それをカスミは屈む事で避けた。掠る事も無く虚しく頭上を通り過ぎていく脚はカスミが背にした壁を簡単に貫くだけ。ソラは直ぐに壁にめり込んだ脚を引き抜こうとし──そこにカスミが襲い掛かる。突き刺さった脚を足掛かりにして機体を駆け上がる。そして難なく胴体に辿り着き、空中に飛び上がると共にショットガンを胴体へ向けて発砲。

 

一発、二発、三発と発生するリコイルを受け止めた外骨格が軋みをあげる。弾丸が装甲を貫き、轟音と共に残り僅かな機構が破壊する。そして胴体を完全に破壊された無人機か断末魔の叫びの様な異音を奏で全ての稼働を停止、カスミが着地すると同時に支える力を全て失った兵器は轟音を立てながら崩れ落ちた。今度こそ完全にスクラップになった無人兵器が動き出すことは無い。

 

そしてカスミは残った弾丸をソラが乗る無人機の脚に撃つ。轟音と共に脚を撃ち砕かれバランスを崩す無人機、その上に乗っていたソラは振り落とされないように機体にしがみ付き──

 

「つーかーまーえーた」

 

そしてカスミの両腕に抱かれる。だがその力は強い、息苦しさと苦痛を感じるほどの力で抱きしめられたソラは腕の一本も動かす事が出来ない。そして動けないようにした当人はソラの首に顔を埋め、その匂いを嗅ぐ。だがそれだけではカスミは

満たされない、ソラの首を自らの舌で舐め、そして噛みつく。

 

「う、あぁ……」

 

噛み千切られる程ではない、それでも鋭い痛みがソラの首から発せられる。そしてカスミが口を離した箇所にはくっきりと噛み跡が残っていた。痛みと共に刻み付けたソレを見て漸く満足出来たのかカスミは腕の力を緩めソラと向かい合うようにする。

 

「ねぇ、どうしようか?ねぇ、どうしたらいい?今度は逃げ出せないように首輪をしてあげようか、それとも勝手に出ていった罰として酷い事でもしようか?」

 

もう二度と手放しはしない、言わずとも伝わってくる言葉が分からない程にソラは愚鈍ではなく、そしてソラは負けた。ならばソラの生殺与奪を握るのはカスミ。その事実は確定したも同然だろう。

 

──だが此処にいる男は其処迄物分かりの良い男ではなかった。

 

「どれもお断りしますよ」

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